孤島激震 MB-3・戦闘後
最初の襲撃
……
ふん!
!
ぐはっ……!
(こいつ、強い……ほかの連中はみんなこいつ一人にやられた。)
……死ねや。
……
(この看守もやるな……でも、どうして彼女は守りに徹してるんだろう?)
ハァッ!
……うっ。
(まずい、この看守も倒されたとは……)
(残るは私だけ……でも、もしここであいつと戦ったら、脱出した後で何て説明すればいいんだろう?)
……あとはお前だ。
(どうしよう、やるしかないの?)
……
フンッ。
……見掛けによらず素早いんだな。
(アンソニー、私を助けたの?)
お前たちが誰かは知らない。だがこんなことを私の目の前ですべきではない。
へへっ、自分の死が目の前に迫っているってのに他人の心配かよ。紳士だなぁ、ええ? アンソニーさんよ。
(! いつの間に背後に!?)
へへっ、悪く思うなよお嬢ちゃん。恨むんなら、ここに居合わせた自分の不運を恨むんだな。
安心しろ。俺たちゃ、アンソニー以外、誰も殺すつもりはねえ……ここでしばらく寝てな。
(しまった!)
ぐっ……
(くそっ! あいつの思い通りになっちゃう……)
(意識が、朦朧として……)
……さあ、アンソニー……もてなして……やる……ぜ……
……しね……
メイヤーさんってこんなに料理が上手だったのね。
フフーン、意外でしょ。
でも、別の殺し屋の暗殺に巻き込まれて気絶するなんて……
ほんと運がないのね。
ほんとだよ、ツイてなさすぎ。
じゃあ、その場はどうやって収まったのかしら?
きっとアンソニーさんが勝ったんでしょうけど、獄中で暗殺未遂事件が起きたんだもの、そう簡単に終わるはずはないでしょ?
うん、でもその時ロビンは気絶してたから、カフカの視点からの話になるよ。
あら、カフカさんもその囚人に気絶させられたんじゃなかった?
カフカは気絶したふりをしてたんだってさ。
アハッ! そうだったのね、今まで聞いた彼女の印象からすれば、確かにやりそうなことだわ。
言え、誰の差し金だ?
へっ……へへ……お前にゃ……教えねぇよ……
――
……気絶したか。
まさかこいつら……
まあいい、今考えても仕方がない。ほかの囚人たちの状況は……
……
……
死んではいないようだな。
……
このお嬢さんは――
誰かは知らないが、さっき私を助けようとしてくれた……
ありがとう、見知らぬお嬢さん。
カフカって呼んでよ。
んん? 気絶してはいなかったのですか?
ちょっ、下手に動かないで。少し右にずれてくれない? あそこに監視カメラがあるんだよ。
これでよろしいかな?
いいよ、これで監視カメラからは見えないはず。
掃除中にチェックしといてよかったよ。
ふむ……貴方は一体?
言ったじゃん、カフカだよ。君を助けに来たんだ。
でも、ついてないなぁ……本当は君にメモを残してそれで終わりのはずだったんだけど、まさかこんなことに巻き込まれるなんてさ。
どういうことですか?
ここで話すのは都合が良くないな……どっかいい場所知らない?
まもなく騒ぎを聞きつけて看守たちがやってくるはず……医務室に行きましょうか、あそこなら大丈夫ですよ。
どういうことだ! アンソニー、何をした!?
それは私が聞きたいですね、バートンさん。
この囚人たちの中に私を殺そうとした者がいました。
これは一体どういうことです?
なんだと!?
本当です、バートン隊長。あの二名の囚人がミスター・アンソニーを取り囲むのを目撃しました。
なに? お前はあいつらを監視してなかったのか!?
私はあの囚人たちに倒されてしまいまして……かなり腕の立つ連中ですよ。
チッ、使えない。
こんな面倒起こして、俺は獄長にどう説明すればいいのだ!?
まずは今のこの状況を片づけましょう、バートンさん。
この二人は刺客です。相応の処分をお願いします。
ゴホンッ、だがミスター・アンソニー……ほら、何というか、この件に関して、あなたの言い分だけでは……
わかっています。
私も怪我を負ってしまいましたので、ひとまず医務室に行かせてください。皆も二人によって倒されて気絶しています。手当てをした方がいいでしょう。
医務室へ行った後、この件について相談しましょう。
わかった。
お前らなにをボサッとしている、この二人を霊安室へ運べ! それから、倒れてるこいつらをまとめて外に連れてけ!
は、はっ!
了解しました!
看守たちは行ったわ、アンソニー。
何が起きたの? みんな慌てた様子だったけど。
私もそれが知りたいのですよ。
さて、もう安全ですよ、カフカお嬢さん。
ドゥーマさんは私の友人です。この監獄で信用できる者といえば、彼女だけです。
最初に言っとくけど、お嬢さんはやめてほしいな。カフカは単に、背がちょっと低いだけだから。
それは失礼をいたしました、ミス・カフカ。
えぇ? 囚人のくせに、外の人より礼儀正しいじゃん。
アンソニーはこういう人よ、誰に対しても丁寧なの。
そうなんだ。めっちゃ強いのに腰が低いなんて……ここの人たちがすごいって褒めるのも分かるよ。
恐縮です。
では、ミス・カフカ。質問してもよろしいですかな? 貴方は私を助けに来たとそう仰ったが、それはつまり私を暗殺しようとした者たちの素性を知っているということですか?
うーん……その前に、一個聞きたいんだけど。
どうぞ。
君の家、もしくは君んちの名が付いたサイモン社で一体何が起きたか知ってる?
もし知ってれば、そんなに複雑な話はしなくて済むんだけど。
……父は十数件の事案で告発されました。あれらの背景は単純なものではない。しかし私にはその辺りを具体的に探る余裕はありませんでした。
それを知ってるなら話は早いや。サイモン社は源石……何だっけ? イホーナントカ……?
違法源石製品密輸罪ですか?
そう、それ! その罪でもう会社には捜索が入ってほとんどのものが差し押さえられたし、中心メンバーも全員逮捕された。
今、君の家族はみんな、バンカーヒルシティの刑務所で服役中なんだよ。
……!
アンソニー……
すみません……大丈夫です。
心の準備はとっくにできていたのですが……
とにかく、誰も死んではいない……それだけでも十分喜ばしいことです。
で、誰の仕業です?
ハイドブラザーズだよ。
ハイドブラザーズ! やはりあいつらか……
えーと、サイレンスはなんて言ってたっけ……そうだ、君の家族、サイモン家は、もともとハイドブラザーズと、ある事業においてライバル関係にあったらしいんだけど――
お互いにその事業で50%ずつのシェアを占めていて、常日頃からぶつかり合っていた。そしてあっちは、君たちの分まで占領しようと企んでいた。
それでとうとう彼らは行動を起こした――とまあ、こういうこと。
……ハイドブラザーズ。
父は、よくその名を口にしていました。客人として彼らの会社に招かれたことすらあります。
私欲に駆られてこんなことまでしでかす人たちだったとは……
似たような話を聞いたことはありましたが、まさかそれが自分の身に降りかかるとは思いませんでした。
アンソニー、大丈夫? 私のアーツで興奮を和らげてあげようか?
大丈夫です……ありがとうございます、ドゥーマさん。
言ったでしょう、とっくに心の準備はできていました。ただこんな形で突然事実を知らされるとは……
貴方を信じます、ミス・カフカ。この件で貴方が私を騙す理由は何もないでしょう。
とすれば、あの刺客たちはハイドブラザーズが送り込んだものなんでしょう。しかし、彼らはどうして今になって私を殺そうと?
それはカフカもほんとにわからないんだよ。でもカフカの経験から言えば、絶対さっきので終わりじゃないと思うよ。
ハイドブラザーズは、きっと何人もの殺し屋を送り込んでるはず。これはまだまだ序の口って考えた方がいいよ。
……
では貴方は? おそらく貴方は、その殺し屋たちから私を守るためだけに来たというわけではないのでしょう? 貴方の目的は何なのですか、ミス・カフカ?
カフカの目的? うーん……これすぐには説明できないんだよね。とにかくカフカは依頼を受けて、君の脱獄を手伝いに来たんだよ。
……
君は外に出て復讐したいと思わないの?
君の判決は終身刑、しかも仮釈放すら望めない。
もしここを出たいなら、選択肢はたった一つ――脱獄しかないよ。
幸いここに、カフカっていう助っ人もいる。
もちろん、君がここで一生過ごしたいって言うなら、カフカは無理に連れ出したりしないよ。
脱獄……でもこの監獄から無事逃げ出せた人はいないわ。
まあね、そりゃ確かにそうだけど。でも、やってみなきゃわかんないよ。
……貴方はこの監獄に入ってしばらく経っている。そうですよね、ミス・カフカ。
ん? そうだよ。
なら私の噂は聞いたでしょう。
うん、君はこの監獄で最も強く、最も自由な囚人だって。獄長も君には敬意を払っていて、君はまさに監獄の主人だってみんなが言ってたよ。
カフカも、君はすごいって思うよ。こんな時でもそうやって冷静でいられるなんて。
……違うのです。いわゆるカリスマ性のようなものが、私にどれだけあったとしても、所詮は囚人です。看守や、まして獄長が私に敬意を抱くなんてありえない。
買いかぶりなのですよ。私は本来、今祭り上げられているような地位にふさわしくない。
うーん、理屈は確かにそうかもしれないけど。でも実際にさ、君はそうなっちゃってるんだよね。
確かに、私は看守たちから優遇されています。
少なくとも私の知る限り、獄長は看守たちに「アンソニーには丁寧に対応しろ」と命令しています。
ここ数年、ずっと疑問に思っていました。アイアンフォージシティへ来たところで捕まり、そしてここに収監された。これは最初から父が手配しておいたものではないのかと。
父は何かを予見し、事前に私をここに送り込んだ――
私はずっとそう考えていました。
へー、サイレンスは知ってたのかな、そのこと。
サイレンスさん、それが貴方の背後にいる人物ですか?
あ。あちゃー……ま、いいや。そうだよ。
事が済んだらその方にお礼を言わなければなりませんね……
いずれにしても、これはただの推測です。真実を知るためには、なんとしても逃げ出さなければなりません。本件を明らかにすることができるのは、もはや私だけなのですから。
アンソニー、彼女に話すつもりなの? 本当に大丈夫?
大丈夫です。ひとまず貴方を信じます、ミス・カフカ。ですから貴方に打ち明けましょう。
たとえ貴方が来なかったとしても……たとえこの監獄生活を悪くないと感じていたとしても、私はいずれここを去るつもりだったのです。
ここにいても、欲しい物はほとんど手に入ります。しかし私も、どうやってここを抜け出すかについては、ずっと糸口をつかめなかったんです。
つまりここは、私から貴方に依頼すべき場面なのですよ、ミス・カフカ。
お願いします、私の脱獄を手伝ってください。