理想都市-エンドレスカーニバル-IC-3・戦闘前奇談怪論
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理想都市-エンドレスカーニバル- IC-3・戦闘前

奇談怪論

ガヴィル

で、滑り台を爆破して鉄道を修復するには、商業代表のクロッケ・ダイアモンドフェースと、工業代表のデカルチャー・シルバーミント、あとキャッチを説得しなきゃならない──そういうことか?

スディチ

そうだよ、その人たちはこの都市で最も重要なポジションにいて、他のドゥリン人たちも彼らの意見を参考に選択をするんだ。

ガヴィル

お前が自分で行きゃいいんじゃねぇのか?

スディチ

……

ガヴィル

どうやらあんま仲が良くないみたいだな。

スディチ

そんなにハッキリ言わなくたっていいだろ。

ガヴィル

聞いただけでメンドくさそうな話だな。だが仕方ねぇ、アカフラのためだと思って行ってやるよ。

それでどこへ行きゃ会えるんだ?


スディチ

ふぅ、やっと一段落ついた。にしても、あのガヴィルって奴は、ホントおっかないな。

エッジ

思い通りに事が運んでいるみたいだな。

スディチ

エッジじい、これで満足か?

エッジ

正直なところ、「どでかい水たまり」は、ちと惜しいがな。

スディチ

ハッ! 鉄道橋の真ん中に建てるのが悪いんでしょ? でなきゃ、オレだって壊す理由はないよ!

エッジ

ところで、新しいアイディアが浮かんだんだ。ドームが壊れて滝ができ、あの巨大滑り台が建設されて半年以上が経った。

皆はまだ楽しく遊んではいるが、少々飽きてきた頃だろう。

いっそこの機会に、新しいものを作るのはどうだ? お前もキャッチと超巨大ウォーターキャノンとかいうものについて、さっき話したんだろ? すでに噂が広まっているぞ!

実のところ、私も非常に興味があるのでな……

スディチ

……はぁ。


アヴドーチヤ

まったくあのアダクリス人! なんとも野蛮で、無礼で、短気で、自分勝手! クロッケさん、想像できますかしら? 創作に行き詰まって気晴らしのために、洞窟に自生する茶葉を摘みに行ったら!

クロッケ

抱えられたまま滝から飛び降りる羽目になったんだよね。

アヴドーチヤ

まったくもってひどすぎますわ。

クロッケ

でも普通のゼルウェルツァ市民にとっては、その体験は魅惑的だと思うよ。もし物語にすれば、大ヒットするかもしれないね。

「ガヴィルを信じろ」「アヴドーチャ、しっかりつかまってろ!」うん、ちょっとロマンティックかも。

アヴドーチヤ

よしてくださいまし!

クロッケ

少なくともあなたが書いた、例の雪に関する物語よりはいいよ。

アヴドーチヤ

そういえば、数日前に子供が何人か、短編小説を読ませてほしいと来ましたわ。ようやくこういう本も誰かに読まれるのだと思ったのですけれど……

クロッケ

その子たちの感想は?

アヴドーチヤ

「めっちゃ笑えた、また読みに来る」ですって。

クロッケ

だろうね。

アヴドーチャ、その子たちに悪意はないよ。私たちドゥリン人にはおそらく、あなたの経験を想像するのが難しいだけなんだと思う。

私があなたの感覚を理解するまでに、何度説明を聞いたと思う? 普通のドゥリン人だったら、まず無理だね。

ドゥリン人は本物の雪すら見たことがないんだから、あなたが書いたあれはなおさら……なんて言うんだっけ、「狡猾」、「逃亡」?

アヴドーチヤ

それらの言葉が文学の中でのみ存在するというのであれば、何よりの幸いですわ。

とにかく、わらわは今の暮らしに非常に満足しておりますの。他人を搾取することも、搾取されることもなく、恐ろしい陰謀が進んでいることも、罠や暗殺に巻き込まれることもない日々に。

わらわは商店街のキャッチコピーを書き、看板をデザインするだけでお腹が満たされるのよ。そこに何の不満がありましょうか?

毎日デッキチェアでのんびりと日光浴ができる──人工光源ではありますけど、それで充分ですわ。

このような平穏な日々が続いてほしいと、わらわは切に願って──

ガヴィル

ここが商業代表のクロッケ・ダイアモンドフェースのオフィスか?

ちょっといいか、例の巨大滑り台を爆破したいんだけど。

アヴドーチヤ

……

クロッケ

……はぁ。

ガヴィル

お、アヴドーチャ、お前もいたのか?

イナム

顔色が良くないみたいね。

アヴドーチヤ

クロッケさん……申し訳ありませんが、わらわはお先に失礼させていただきますわ。

家に帰って、このクロスボウのメンテナンスをし直さなければなりませんの。

ガヴィル

あいつ本気で怒ったのか?

クロッケ

ウオホッンッ! あなたたちは地下都市ゼルウェルツァに来たばかりだよね? キャッチから話は聞いてるよ。

なんて言うか、彼の今回の評価はかなり正確みたいだね。

「ドゥリンよりもドゥリンらしい人たち」か。


奇怪なロボット

回避シマス! 回避シマス!

ユーネクテス

うむ、独特の構造だな。Lancet-2姉様とは全然違う。

奇怪なロボット

警告! 接近ヲ禁ズル!

ユーネクテス

どうやら姉様ほど賢くはないようだ。基本反応はいくつかあるようだが、どういった原理なんだ?

奇怪なロボット

脅威レベル:A判定! 正体不明デス。一定距離ヲ保チマス。

ユーネクテス

落ち着くんだチビすけ。私はズゥママという。悪い人じゃない。

奇怪なロボット

個体識別定義完了シマシタ。個体名ズゥママ。

ユーネクテス

お前の名前は?

奇怪なロボット

プロパティ照会ヲ確認シマシタ。当機ハ、ドゥリン族専属ノ栄光アルR3-E3型アシスタントロボ、ナンバー0429。

ユーネクテス

こんにちは、ナンバー0429。どうしてそんなにグラグラしてるんだ? ダンパーシステムに問題でもあるのか?

奇怪なロボ0429

セルフチェックレポート:部品老朽化ヲ確認。耐用年数ノ満了直前デス。

ユーネクテス

私が見てやろう。ほら、メンテナンスの道具はすべて揃っている。

奇怪なロボ0429

メンテナンス有効性チェック……低レベル。耐用年数満了後ニ即時廃棄ヲ推奨シマス。

ユーネクテス

チビすけ、お前の状況はそれほどひどくない。多分ネジを数本絞めてやるだけで大丈夫だ。そう自棄にならなくていい。

お前はとても可愛いから、喜んで助けてやる。どうだ?

私と友達にならないか。

奇怪なロボ0429

トモダチ? 認識不能ナ入力ヲ確認。

個体名ズゥママ、当機カラノメンテナンス申請ハ可能デスカ?

ユーネクテス

問題ない。

だがまずはお前のボディを切り開く必要がある。

奇怪なロボ0429

拒否! 申請キャンセル、申請キャンセル! 危険! 危険!

ユーネクテス

大丈夫だから、逃げるな!

通行人

……今、地上から来たフィディアが、アシスタントロボットを追いかけてなかった?

変ね、昨日飲み過ぎたのかしら?

そういえば、アヴドーチャの書いたよくわからない物語に、あんな感じのシーンがあったわね。「追いかけて殺す」とかいうような。

うーん、あの子が「これはコメディじゃない」って言ってた理由がわかったような気がするわ。


クロッケ

イナムさん、お茶でも飲む?

イナム

ドゥリン人もお酒以外の液体を飲むのね。

クロッケ

たまには違う味も楽しみたいしね。それに、コホンッ、まだ仕事中だし、お酒はやっぱり休み中に取っておかなきゃ。

さて、あなたが二人だけで話し合おうと提案した理由を聞こうか。

イナム

ガヴィルの戦闘能力は確かなものだけど、こういった件に関しちゃ彼女の拳は何の役にも立たないわ。

それに、私たちは同じタイプの人間だと思うの。ゼルウェルツァの商業代表さん。

クロッケ

どうやらあなたは商売の話が好きみたいだね。ちょうどよかった、私も嫌いじゃないんだ。

ゼルウェルツァはドゥリンの小さな集落にすぎないけど、まだ他の都市と交流があった数年前に、私は商業代表としていくつか仕事をしてたんだよ。

だけど例の地震の影響で、唯一の鉄道が崩壊しちゃったんだ。幸いゼルウェルツァは自給自足が可能だし、住民ものんびりしているから、交通の復旧はそこまで急を要することじゃないんだ。

今の私の仕事は、市民の要求に応えて、娯楽活動を推進することだけだよ。

「どでかい水たまり」近辺のお店を管理したり、セルカーと呼んでる自走式車両(セルフドライバー)の新パーツを発売したり……まあ、結構暇かな。

イナム

……ドゥリン人の感覚をきちんと理解していないんだけど、普通、泥酔してサーフィンに行くのはのんびりしてるって言うのかしら?

クロッケ

言うよ。

イナム

でも、地上の人間の基準だと──

クロッケ

言うんだ。私たちの基準では、それは「のんびり」にあたる。

だから、スディチがあなたに何を約束していようと、もし滑り台の爆破計画について同意してほしければ、私が動きたくなるような何かを見せてもらわないとね。

お互いが喜んで交換できてこそ、商売が成り立つわけでしょ。

イナムさん、あなたはゼルウェルツァの商業に何をもたらすことができるの? アカフラの手芸品ではいまいち魅力に欠けるよ。

嗅覚が鋭いセルカー屋は、すでにあなたたちの外見を新しいパーツに取り入れてるみたいだけど、それじゃ足りないな。

イナム

あんた……思ってたよりも地上のことをよく知ってるのね。

クロッケ

実際に地上へ行ったことはないけど、都市の図書館も飾りじゃないからね。

あなたたちの風習についてはよく知ってるよ……

アカフラ人は、ハガネガニを取り囲んで不眠不休で踊り続け、最後まで踊っていられた者が大王の称号を得るんだ。そうでしょ?

イナム

……どこでそんなものを見たのよ。

クロッケ

『奇談怪論』だよ。ゼルウェルツァで最も流行っている本で、さる大冒険家が昔、地上から大量に持ってきてくれたんだ。地上に関する百科事典とも言えるよ。

イナム

それは作り話だらけのデタラメ雑誌よ!

クロッケ

……え、嘘だろう? あれを読むために、苦労してサルゴン語まで学んだっていうのに……

イナム

……道理でほとんどなまりがないわけね。

はぁ、拍子抜けしたわ。最新の『奇談怪論』数冊であんたを手懐けられそうだなんて……

クロッケ

最新の? あれってまだ続きがあるの!? うーん……もし本当にあなたが手に入れられるっていうなら、考えてもいいけど……

イナム

それよりもっといいものがあるわよ。

クロッケ

これは何?

イナム

ビデオテープよ。見てみたい?


アヴドーチヤ

見つけましたわ。

ガヴィル

おう、アヴドーチャ。奇遇だな、またアイディア探しか?

アヴドーチヤ

貴方がたは一体何がしたいんですの?

トミミ

クロッケさんの方はイナムが任せろと言うので、私たちはズゥママを探しに来たんです。

アヴドーチヤ

そういう意味ではありませんわ。わらわが訊いているのは、地上人──貴方がたは、わらわたちの都市へ何をしに来たのかということですわ。真の目的は何ですの?

わらわは、超便利大エレベーター壱号機周辺をずっと監視しておりましたけど、貴方がたに続く主力部隊はどこですの? サルゴンの首長たちはついに地下の財宝に目を付けましたの?

ここには貴方がたが望む資源はありませんわ。今すぐここから去りなさい。本当に、この平和な小都市を血で染めたくないというのなら。

ガヴィル

誤解だって言ってるだろ。スディチが鉄道の修理を手伝ってくれる奴を探してて、アタシたちはあいつに騙されてここに来たんだよ。

アヴドーチヤ

……それは便利な労働力扱いじゃありませんこと? そのような口車に乗せられてしまいましたの?

ガヴィル

あのな。

あん時あいつがくそマジメな顔で話して、おまけにトミミが大げさな表現をしたせいだよ……はぁ、どんだけ心配したと思ってんだ。激戦に備えて、ズゥママと夜通し全速力で駆けつけたってのに。

トミミ

うぅ、ごめんなさい。私はただガヴィルさんに休んでほしくて……

ガヴィル

はぁ、まぁいいや……今のうちに気晴らしでもしとくか。

アヴドーチヤ

……つまり、貴方がたに本当に悪意はございませんの? どこかの貴族の命令を受けてここへ略奪に来たのではなく?

ガヴィル

信じるか信じないかは、お前次第だ。

アヴドーチヤ

……確かに、たとえサルゴンの仕業だったとしても、貴方のような大雑把な方を遣わすなんてことはありえませんわね。

ガヴィル

大雑把だぁ? アタシはただ無駄話が嫌いなだけだ。

アタシの考えは簡単だよ。スディチのガキンチョに手を貸して、その見返りにティアカウに役立つ技術を持って帰る、それだけだ。

ロドスにはアタシの回診を待ってる患者がたくさんいるからな。

アヴドーチヤ

というと、貴方はお医者様ですのね?

ガヴィル

なんだよ、医者にゃ見えねぇってか? 免許だって持ってるぞ。

アヴドーチヤ

こちらのトミミさんがお医者様だというのなら、まだ数秒の間は信じられましたわ。

トミミ

あっ、お医者さんなら私もできますよ! ガヴィルさんから麻酔術を教わったことがありますから!

首筋に狙いを定めて、それからドンってやるんです──

ロドスの皆さんは、これを……えーっと「ガヴィル式ナチュラル麻酔術」って呼んでます。

ガヴィル

……言っとくが、こういった非常手段は、アタシも特殊な状況でしか使わないからな。

例えば、ちょうど麻酔薬が切れて、補給パックも人を殴ってる間になくしちまった時とか。

アヴドーチヤ

──やはり貴方がたはわらわが監視しますわ。

ゼルウェルツァで、バカな真似をしようなどとは考えないことですわね。ここはわらわの安住の地、貴方がたに壊させはしませんわ。

ガヴィル

好きにするがいいさ。

アヴドーチヤ

貴方がたがやるべきことを終え、完全にゼルウェルツァを去るまで目を離したりはしませんわ。

ガヴィル

んじゃ、事を済ませる前に、のんびりと街ブラでもすっか。

トミミ

あの、アヴドーチャさん……地元の方でしたら、ゼルウェルツァを案内してもらえませんか?

アヴドーチヤ

……先に言っておきますわ。もしも都市の地形を調査しようなどとお考えでしたら、速やかに諦めた方がよろしいですわよ。

トミミ

ち、違います! 私が言いたいのは……

アヴドーチャさんのお洋服がとっても素敵なんです! オススメのアパレルショップとかはありますか? 私……見学したいんです!

アヴドーチヤ

……?

そういうことでしたら、よろしいですわ……確かにいくつかご紹介できるお店はありますわね。

ドゥリンスタイルのアクセサリーにご興味はあるかしら?

トミミ

見たいです!!


キャッチ

スディチ──

スディチ

……キャッチか、何しに来たんだよ?

キャッチ

珍しいね、前はいつも部屋にこもりっきりだったのに。

スディチ

オレにだって、日差しを浴びたいと思う時くらいあるさ。アンタがわざわざ来たのは、そんなことを言うためなの?

キャッチ

僕の滑り台を爆破したがっている人間と話をしに来ちゃダメなの?

スディチ

……ふっ、耳に入ったのか。

キャッチ

エッジ先生が教えてくれたんだ。

スディチ

あのジジイめ……で、オレを非難しに来たってわけ?

キャッチ

違うよ、実は反対はしてないんだ。この夏はもう充分すぎるほど堪能した。

それに建築デザイナーとして、最高の作品っていうのはいつだってこれから創る作品でしょ?

スディチ

チッ、アンタのそういうとこが一番ムカつくんだよ。

キャッチ

どういうとこ?

スディチ

常に楽観的でお気楽なところだよ。

キャッチ

ハハハ、それは嬉しい評価だね!

だけど、巨大滑り台の取り壊しに同意する条件として、君とドームのことについて話がしたいんだよ。

スディチ

……何も話すことなんてない。

キャッチ

少し散歩でも行こうか。「どでかい水たまり」を爆破する前に、せめてアトラクションを体験しておいたらどうだ?


クロッケ

まだ続きはある? 次の試合は!?

んぐんぐ──プハァッ! いー酒だ! イナム、もっと飲む?

イナム

私はまだ残ってるから……

クロッケ

飲むのが遅いんだから~

「ワイン&コーヒー」ってチーム、もうちょっとで優勝だったのに残念! あ〜あ、あの船までほんとあと少しなのに!

イナム

どうやら気に入ってくれたみたいね。

クロッケ

まさかあなたたち地上人の生活が、あんなに楽しそうなものだとはこれっぽっちも思ってなかったよ!

これは一体何ていうビデオなの?

イナム

「ドッソレスウォーリアーチャンピオン」の記録よ。これはキャラバンの友人から手に入れた古いビデオなの。

噂じゃ以前事故があったらしくって、ここ数年はまだ続いてるかどうかわからないわ。

クロッケ

ねぇ……まだ見足りないんだけど! 敗退したチームの、翌年のリベンジマッチが見たい!

イナム

クロッケ、どんなに退屈な娯楽でも、ほんのわずかな「競技性」を加えてあげれば刺激が増すものよ。

自分のひいきのチームを応援しながら、友達と一緒にビールを飲む――そんな生活を嫌がるドゥリン人はいないと思うけど。

それに通常、開催期間中はお酒やファーストフードの売上は倍になるわよ。どう? ドゥリンにピッタリでしょ。

クロッケ

お酒の売上は普段から充分にあるから、大会を開いてまであおる必要はないかな。

でも……うん、思う存分遊ぶっていう観点で言えば、確かに魅力的かも。

イナム

なら率直に言うわね、商業代表さん。

水上レースを開催する気はない?