理想都市-エンドレスカーニバル- IC-5・戦闘後
ラストスパート
ズゥママ、ボート、組ミ立テ、正解カ?
ああ、構造上はそれで問題ない。だがまだ調整の余地はあるな……例えばほら──
見ろ、こうすればもっと頑丈になる。
ズゥママ、ズゥママ! スゴイ!
ちょっと経験があるだけさ。
ズゥママ、やっぱりここにいたのね。
イナム? どうしたんだ?
この源石観測用設備を向こう岸まで運ぶんでしょ? 今はちょうどヒマだし、運ぶのを手伝おうと思って。
ありがとう。
なんであんたが私にお礼を言うのよ……あんた自分もこのロボットたちの一員だと思ってるの?
そうだな。こんなにたくさんの良き友人ができるなんて、めったにないことだからな。
ズゥママ、ズゥママ、良キ友人!
それに、実を言うと私はLancet-2姉様にピッタリのお見合い相手がいないか、ずっと探しているんだ。
……私の記憶が正しければ、Lancet-2ってあの時一緒に来たロドスのロボットのことよね?
ああ、今は私の姉だ。
私の技術ではまだLancet-2姉様のようなAIロボットは作れない。だからこのロボットたちの中から見つけられればと思ったんだが。
結果は?
この子たちはとても優しい。だがどの子も姉様が好きなタイプではなさそうだな。
姉様はドクターのような知的なタイプが好みみたいだからな。そこが悩ましい点だ。
……
まあいいわ。ティアカウの変人はあんた一人しかないってわけじゃないし。
皆さんこんにちは、クロッケだよ。引き続き比較的安全な高い場所から中継をお届けしたいと思います。
ゴールまではあと、うーん……三百メートルくらいかな? まあ細かいことはどうでもいっか。
我らが都市建築デザイナーの中でも個性的な方に数えられるお人、そしてヴィンチ先生の唯一の弟子スディチ・ブランクキャンバス氏が、どこからか入手したボートで、レースに乱入してきました!
ん? 彼がこちらに向かって何か言っていますね。カメラをズームして口の動きを見てみましょう……
ふむふむ、えーと……恐らく「オレが一位を取ってやる!」と豪語しているものと思われます!
おぉっ、私に向かって怒りのジェスチャーをしています! まさかあのクールな建築デザイナーが、その仮面の下にこのような熱い心を隠していたなんて!
かなり出遅れたとはいえ、ボートはレースに相当有利なはずです。
私がこうして話している間も、かなりの距離を詰めています!
向こうはなかなか盛り上がってるわね。
ガヴィルが通った場所はいつもこう、と言いたいところだけど、ここの人たちの盛り上がりはちょっと異常ね。
慣れないか?
以前はね。でもアカフラに長くいたせいかしら、慣れないことにも慣れちゃったわ。
今や、誰も喧嘩やバカ騒ぎをしないなんて日があったら、逆に気持ちが悪いわよ。
お前も立派なティアカウになったな。
そうね。
ところで、ズゥママ。あんた二年前のあの時、もしガヴィルが帰ってきてなければ、アカフラの大族長になるつもりだったんでしょ?
正確に言えば、大族長になることが目的だったわけではない。私はただ、それによって自分自身を証明したかっただけだ。
私の理想は常にただ一つ。一番すごい機械を作り出すことだ。
そう、ならやっぱりその方面であんたに期待するのは無駄ね。
首長の件について考えているのか?
よかったわ、どうやらあんたとトミミは外で国家体制の知識をある程度は学んできたようね、ガヴィルと違って。
まったく、ガヴィルはここ数年、外で一体どういう暮らしをしてきたのかしらね。
私たちが当然必要だと思っているようなことも、あいつにとっては違うんだ。例えば、環境に合わせることとかな。
アハハ、確かにね。
それで、お前はガヴィルを首長にしたいのか? 彼女がふさわしいと本当に思っているのか?
正直言うと、サルゴンの大通りで適当に通行人に声を掛けた方が、彼女よりふさわしい首長を見つけられるでしょうね。
同意だな。
けど、アカフラを統率できる人材をティアカウの中から選ぶなら、彼女しかいないわ。
それはティアカウとしての考えか、サルゴンのトランスポーターとしての考えか、どっちだ?
……
レースはすでに後半戦に突入しています!
リードはだんだんと縮まっていますが、ガヴィル選手が依然トップを保っている模様。
ですが、彼女を追い抜こうとしているのは、アヴドーチャ選手ではありません!
アヴドーチャ選手もかなり健闘していますが、やはりあの服を着たまま試合を始めたことが、ここに来てじわじわと効いているようです!
水を吸った服の重みが動きに与える影響は軽視できません!!
つまりガヴィル選手の尻尾に食らいついているのはアヴドーチャ選手ではなく……そうです、エリジウム選手です!
前半で力を蓄えて、今、エリジウム選手がようやく真の実力を私たちに見せ始めました!
すでにアヴドーチャ選手を追い越し、まもなくガヴィル選手の横に並ぼうとしています!
ですが──
あの三人は誰一人気付いていません! 本当の脅威が背後から近づいていることを!
ガヴィルに追いつくなんて、エリジウムも結構やる奴だったのね。
彼はチャラチャラした態度で人の目を欺くのが好きなだけだ。それも一種のうぬぼれではあるが。
ふふっ、確かにここへ下りて来る時に気付いたわ。あいつは本当は有能だけど、それを隠したいだけだってね。
話をそらすな。
……ふぅん、あんたもロドスで色々学んだみたいね、ズゥママ。
別に望んだわけではない。だが、クロージャ師匠がいつも技術とは関係のない会議にも参加するよう言ってくるからな。聞きたくなくても耳に入ってくる。
その人は、あんたに大きな期待を寄せているんでしょうね。
で、あんたの質問についてだけど……
私がアカフラで暮らし始めて、もうずいぶん経ったわ。
都市での生活よりも、ジャングルであんたたちがどうでもいいことで毎日喧嘩してるのを見てた方がいいって思うくらいにね。
あんたは信じないかもしれないけど、さっき言ってた二つの立場、サルゴンのトランスポーターとアカフラの大族長は、実は私にとっては分かれていないの。
むしろサルゴンとしての視点を持っているからこそ、アカフラが今のままずっと放っておかれやしないってわかるし、あんたたちには先手を打ってほしいと思っているのよ。
お前を信じよう。
レースは徐々に佳境に近づいてまいりました!
皆さん! エリジウム選手の目を見張るような爆発力にご注目ください! ガヴィル選手との差は、ますます縮まっております!
そして、後れを取ったアヴドーチャ選手もまだ諦めてはいません。彼女も未だに前方の二人にしっかりと食らいついている〜!
アヴドーチャ選手、そんなに頑張らなくてもいいからね!
ところで、三人は背後から近づいてくる脅威にすでに気が付いています──そう、ボートを操縦するスディチ選手だー!!
そうです! 機械の力はかくも偉大なり! 彼はこの短時間で、前方の三人に追いついたのです!
ゴールまであとたった百メートルほどまで、近づいて参りました!
いよいよラストスパートです! ここから三人と一艘が最後の勝負に挑みます!
だが、イナム。
私は彼女を説得するのを手伝わないぞ。
ガヴィルは首長にふさわしくない、そのポジションにつくべきでもない。
これについては、トミミに訊いても同じ答えが返ってくるだろう。
どうして?
それは自分で考えてくれ、私は忙しい。
……わかったわ。
そうだ。もし暇だったら、考えながらで構わないから、ボート作りの手伝いをしてくれないか。
……あんたってやつは、人の使い方をよくわかってるじゃないの。
ゴールまであと八十メートル!
ボートによる激しい水しぶきで、アヴドーチャ選手がむせたぁ! ここで彼女は戦線離脱です! よっしゃ助かったぁ──!
ゴホゴホッ、今のは残念だと言ったんですよ。
残り五十メートル! 試合の中心はスディチ選手です! 船を持ち出した不届き者へエッジ先生が怒りの鉄拳を振りかざして――
おっと! ここでエッジ先生の拳が、なんと船に登ろうとしていたエリジウム選手の顔面にヒットしましたっ! もろに食らったエリジウム選手、水中に沈んでいく〜!
水中からブクブクと泡が立っていますが、彼は大丈夫でしょうか?
あと三十メートル!
エッジ先生、ガヴィル選手の背中から思い切ってビール号へと飛び移ると、スディチ選手の頭を思い切り殴りつけたぁ〜! 痛い! あれはとても痛そうです!
ちなみに「ビール号」とは、私がたった今思いついた、そのボートの名前です! 前回名付けた「どでかい水たまり」に続く、最高のネーミング!
どうやら、最終的な勝者はやはりガヴィ──
いや、待ってください!
なんとエッジ先生とスディチ選手がもみ合いになった拍子に、うっかりボートのリミッターを壊してしまったようです!
ビール号のエンジンが強烈な轟音を発しています、そして!
速い、速すぎる!
たとえガヴィル選手といえど、暴走するボートが相手では手も足も出ない!
轟音を鳴り響かせながら、ビール号! ビール号強い! ビール号が一番にゴーーール!
今回の水泳大会の優勝者は──
ビール号です!
……なんですって?
まだ終わってはいません!
ゴールに到達した後も、ビール号はまだ満足していない様子です!
止まらないビール号はそのまま岸に乗り上げ、そして崩れた洞窟に向かって突っ込んでいきます!
ドォーーーーーン!!!
あぁっ! エッジ先生とスディチ選手が吹っ飛ばされたぁ〜!
そしてビール号は、勇敢にもトンネルの出口を塞ぐ大岩に突撃! 大きな穴を開けて大破!
ビール号無念! 優勝者に贈られるクラフトビールをまだ味わっていないというのに!
ビール号への哀悼の意を表し、今回の優勝賞品の贈呈は自粛するということにいたします!
……この人たち、一体何やってるの?