登臨意WB-4・戦闘前往昔を念はず
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ウルサス極東炎カジミエーシュリターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトン
ウルサス極東炎リターニアカズデルシラクーザレム・ビリトン

名前

登臨意 WB-4・戦闘前

往昔を念はず

ドゥ

モンおじさん! モンおじさん、中にいないの? 聞きたいことがあるのよ!

あたしよ。ドゥ・ヤオイェよ!

付近の遊侠

嬢ちゃん、扉を叩いても無駄だよ。入り口に掛かってる札が見えないのかい。

夕飯の時にはもう閉まってたぞ、用があるなら明日また来な。

おい、なんで無視するんだ……

ドゥ

モンおじさん! あたしに何か隠し事してるんじゃないの?

これ以上反応がなかったら、勝手に入るからね。

ズオ・ラウ

……

付近の遊侠

おいおい、まだいるのかよ……

どうして今時の若いもんは、みんな夜中に鍛冶屋へ駆け込むんだ。

ズオ・ラウ

あれ? あなたは行裕客桟のテイ番頭の……

ドゥ

あんた、前に父さんを訪ねてた若い役人ね?

ズオ・ラウ

いつ玉門に? こんな時間になぜ鋳剣坊に?

ドゥ

人探しよ。

あんたの方こそ何しに来たのよ?

ズオ・ラウ

捜査です。

ドゥ

役人が鋳剣坊まで捜査に来るなんて、まさかモンおじさんは本当に何かしたの?

ズオ・ラウ

あなたの言い方からするに、ここには本当に問題があるようですね……

ドゥ

質問してるのはあたしよ。

ズオ・ラウ

……

もしもドゥさんがこの件と無関係であるなら、捜査の邪魔はしないでいただけますか。

ドゥ

どっちが邪魔してるだか……

一閃。月光と見まがう軌跡が、ドゥ・ヤオイェの言葉を遮った。

鋳剣坊の門を閉じていた錠が地に落ち、「一時休業」の札は二つに割れているのを確認したときには、ズオ・ラウはすでに中に飛び込んでいた。

付近の遊侠

(モンの兄貴に見張るよう言われたが、まさか本当に騒ぎを起こしに来る奴がいるとは。)

(ダメだ、助けを呼びに行かないと。)


ドゥ

何してるのよ!

ズオ・ラウ

……

ドゥ

ね、聞いてるの!

ズオ・ラウ

あなた――

ドゥ

殴ったからってなに! これが役人の捜査のやり方ってわけ?

ズオ・ラウ

出てきなさい!

ドゥ

……


ユーシャ

どうぞ。

リーさん。

リー

いやぁちょうどワイフーが出て行くのを見ましてね。ものすごい勢いで、おれが呼んでも気付かない始末でした。

ユーシャ

……

リー

大学を卒業したばかりで、血気盛んな年頃ですからねぇ。あの時分は何事も単純に考えて突っ走りがちだ。できれば、ユーシャ嬢ちゃんから色々教えてやってほしいもんです。

ユーシャ

リーさんの部下に指図する資格なんて、私にはありませんよ。

リー

なんのなんの、水臭いことは言いっこなしにしましょうや。若者ですからね、見識を広めておくのもいいことですよ。

まああの子の腕なら、多少の悪人に出くわしたところで、心配は無用でしょうけどね。

ユーシャ

昨日の夜、お父さんがリーさんを訪ねましたよね。何か頼み事でもされたんですか?

リー

頼み事とまではいきません……人探しのついでに、色々小耳に挟みましてね。探偵の耳っつーのは良く音を拾うもんですから。

もし何かユーシャ嬢ちゃんの捜査の役に立てば、それに越したことはありません。

ユーシャ

どうぞお座りになって。話をするなら立ってるのは大変でしょう。


リー

どこから話すとしますかねぇ……

例えばですよ。もしウェイさんと、あなたの親父さんの気が合わないとしたら、龍門はどうなります?

ユーシャ

……


「天災が目前に迫っているこの状況で、しかも都市内じゃ山海衆が騒ぎを起こしてて、将軍自ら兵を率いて城門を守ってるんだぞ。こんな時に民間人と会う時間なんてあるはずないだろう?」

「だが、この人は将軍の知り合いだと聞いたぞ。」

「やはり将軍に知らせておこう。万が一本当に何か重要な話があるとしたら困るだろ?」

......

「上がっていいぞ。将軍の許可が下りた。」

「将軍は城楼におられる。」

夜はすでに深かった。

城壁には軍用源石式サーチライトが埋め込まれており、階段に沿って敷かれた明かりは、周囲を昼間のように照らした。

城楼を目指すモン・ティエイーの歩みは遅く、背後にいる兵士も催促しなかった。

彼はもう十年以上玉門の城楼に登っていなかった。

モン・ティエイー

……

ズオ将軍

……

モン・ティエイー

平祟侯に、ご挨拶申し上げる。

ズオ将軍

……来意を申せ。

モン・ティエイー

都市から出ることを許可してほしい。

信使部隊が襲撃に遭い、遺体すら残ってないと聞いた。

部隊の中には鋳剣坊の人間も何人かいた。誰かが迎えに行かにゃならん。せめてあいつらが死んだ場所に酒をまいて、砂を持って帰るべきだ。

ズオ将軍

誰かある。

巡防営守備軍

はっ。

ズオ将軍

都市封鎖の命は、既に都市全体に伝達したか?

巡防営守備軍

……はい。

モン・ティエイー

……

ズオ将軍

聞こえたな?

モン・ティエイー

だから平祟侯を訪ねて来たんだ。

ズオ将軍

門が開かれることはない。

巡防営守備軍

客人、玉門は現在一日数十里の高速で砂漠の只中を移動している。今あなたを出したところで、何の意味もありませんよ……

ズオ将軍

誰が発言を許した。

モン・ティエイー

そうだな。玉門は現場からもう相当遠くまで離れた。砂漠は風も強いし、あいつらをどうやって連れ戻すってんだろうな。

ズオ将軍

死者の時は止まったままだ。だが玉門は前進し続けるのだ、遅れは許されん。

信使部隊を殺害した賊は、すでに都市内に潜入している。戒厳令を敷き、一刻も早く奴らを一網打尽にすることこそ、亡くなった者たちへの手向けとなろう。

モン・ティエイー

なら、俺たちにも犯人の調査をさせてほしい。

ここしばらくは街もごたついている、俺たち江湖の渡世人なら、力になれる。

ズオ将軍

犯罪者を捕らえ、そして玉門の安寧を守ることは、我ら玉門の軍人たる者の責務だ。

かようなことで民の手を煩わせれば、このズオが無能というもの。

モン・ティエイー

……

ズオ将軍

用件はこれだけか?


録武官

あれほどの力を込めて空中で剣を繰り出し、なお当を失することなく自在に収めるとは。

羽獣が川面へと舞い降り鱗獣をくわえて空へと反転する様とは、このこと。水面にただ細波を残すのみの絶技です。姉弟子の力の制御は、また新たな境地に達しましたね。

姉弟子、もう一度見せていただけませんか?

チュー・バイ

……

さっき驚いて隠れてしまった小さな砂地獣を、もう一度地面から出すことができるならいいですよ。

録武官

……それはできません。

チュー・バイ

いわゆる技や型というのは、人の反応を理解しやすいよう整理したというだけのものです。そして、本来人の反応に決まったものはありません。武術の真髄とは、その場の変化の中にあります。

遍く天下の武術を記録するからには、些細な型の動きばかりにこだわらない方がいい。

録武官

「形」は型、「意」は精神、先生も以前にそう教えてくれました。

チュー・バイ

人というのは、頭ではわかっていながらも、変えられないものがあるのです。

あなたも本当に不器用ですよね。

あれは?

録武官

千人隊長が部隊を集結させているようです。

チュー・バイ

優に百人は超えていそうですね。随分と大きな部隊……


巡防営守備軍

千人隊長、部隊の集結が完了しました。

千人隊長

装備の確認をしたら、街の南にある鋳剣坊まで向かうぞ。総員、俺に続け。

巡防営守備軍

はい。

千人隊長

チューさんと録武官の方だったか。

チュー・バイ

隊を整えているということは、もしや山海衆の行方を突き止めたのですか?

千人隊長

タイホー御史が鋳剣坊近くで重傷を負ったため、兵を率いて調査するようズオ・ラウ公子に命じられたんだ。

チュー・バイ

あなた方が動くことを平祟侯はご存じですか?

千人隊長

将軍は外城楼を守っておられてな、昨日すでに、三日の間将軍直属の兵を動かす権限を、公子に与えたのだ。

チュー・バイ

鋳剣坊の所業であるという、証拠はあるのですか?

千人隊長

具体的なことはまだわからないんだ。

チュー・バイ

ズオ・ラウはどこに?

千人隊長

公子はすでに一足先に向かった。

タイホー御史が負傷して、公子も焦っているんだ。

チュー・バイ

……


ズオ・ラウ

――

門戸を閉じ、悪党がたむろしていながら鋳剣坊だと? 笑わせる。

陰険な山海衆メンバー

目当ての人物はいませんでした。

持燭人と裏でやり取りしていたとは、あのモンという奴はやはり信用なりません。

山海衆頭目

天災データはまだモンが持っている。あいつを探し出すぞ。

まずはこのガキどもを片づけろ。

ドゥ

あんたたち、一体何者よ! モンおじさんは? あんたたちの手にかかったの、それともあんたたちとグルなの?

山海衆頭目

……

ドゥ

ダーチーとシャオチーはどこにいるのよ?

山海衆頭目

……

ドゥ

だんまりを決め込む気?

なら、口を割せてやるだけ――

――刀身がドゥ・ヤオイェの側をかすめる。ズオ・ラウが前へと踏み込んでいた。

彼は何も言わず、険しい顔で、刀を相手に向ける。

ドゥ・ヤオイェが言葉を遮られたのは本日二度目だ。

ドゥ

ちょっと――


年老いた刀匠は言っていた。自分が帰るまで、部屋に隠れて、安静にしておけと。

何者かが中庭に侵入し、混乱が起きているようだ。役人が自分の居場所を突き止めたのだろうか?

ジエユンが剣をきつく抱きしめた。

師匠は、この鋳剣坊は見つけやすいと言っていた。

玉門には客桟と同じ数だけ鋳剣坊も存在している。しかし具体的な名を告げずに、ただ「鋳剣坊」へはどう行けばいいかと尋ねたなら人々が指すのはそこしかない。

師匠の言っていた通りだ。

鋳剣坊は大きくない。炉がいくつかあり、老木が一本あって、決して派手ではないと。

しかし顔見知りが常に出入りし、酒を飲み歌を歌い、武芸を磨く。彼らの身分は異なれど、肩を並べて戦場で戦い、様々な場所に赴いた。

彼らは交代で炉の火を継ぎ、刀匠のハンマーをひったくって鉄を打つ者もいた。炉の火は激しく燃え、闇夜でさえ近づくことはできない。

師匠は、どの都市にもこのような場所があると言っていた。

決して派手ではないが、かけがえのない場所だ。

師匠が死ぬ間際になると、昔のことをぽつぽつと語るときだけ……そこにいた人々と、思い出の場所について話すときだけ、目が少し生き生きとした。

陰険な山海衆メンバー

何者だ!

ここを壊させてはいけない。

ジエユン

やめて。

庭がぐちゃぐちゃになってる。やるなら外でやって!

ズオ・ラウ

……

陰険な山海衆メンバー

まだ仲間が隠れていたか。

ジエユン

(くっ――)

山海衆頭目

どうしてあの剣がこいつの手元に……?

陰険な山海衆メンバー

お頭、このガキは手傷を負ってます!

山海衆頭目

まずはガキを片づけろ。

急に風が吹いたかのように、中庭に細かな砂が舞った。人影がいつの間にか交錯する。

負傷した異族の少女は、傷口を押さえつつ後退し、槐樹の老木にもたれて息を切らす。ドゥ・ヤオイェが近づいていることに彼女は気付かなかった。

覆面をした賊は、再び軒下の影に潜んだ。

年若い持燭人が中庭の中央まで進み、二人の少女の前に立つ。彼の腰にはいつの間にか剣が一本あり、しっかりと固定されている。

ジエユン

私の剣!

いつの間に持っていかれたの? さっきの衝撃……

切断された革が地面に落ちていた。獲物の毛皮で部族の人が作ってくれたベルトだ。しなやかで頑丈であり、剣を縛っておくのに最適だった。

彼女にとって命よりも大事な剣を縛っておくのに。

ズオ・ラウ

これは宗師の剣です。

あなたが山海衆と無関係であるというなら、実物が私の手元に戻ってきたことですし、ひとまず剣の件は不問とします。軍営に侵入した罪は、後ほど追及します。

ジエユン

……お前!

返せ!

誰? 止めないで!

ドゥ

あんたの傷は軽くないわ、むやみに動かない方がいいわよ。

あたしは剣とかどうでもいいの。でも、あんたずっと鋳剣坊の中に隠れてたってことは、モン・ティエイーを知ってるわよね。

教えてちょうだい。モンおじさんはどこへ行ったの? 鋳剣坊の中で二人の尚蜀の若者を見なかった?

黙ってるつもりなら、あんたの傷口にもう一発お見舞いするわよ。

ジエユン

……

陰険な山海衆メンバー

どうやらこいつらは仲間じゃないようだな。

外にいる者たちは出口を塞ぎ、奴らが逃げないようにしろ。

???

......

陰険な山海衆メンバー

聞こえないか? 返事をしろ!

???

ふんっ。

その声はすぐ近くにあった。彼が慌てて振り返る。

痛みは遅れてきた。動くにつれて痛みが増し、真っ二つになった通信機器を目にして、ようやっと脳がはっきり斬られたことを理解する。

彼は後悔する間もなかった。

ズオ・ラウ

チューお姉さん。

チュー・バイ

外は片付けました。

山海衆頭目

!!!

チュー・バイ

以前市場であなたを襲撃した者の仲間ですね。山海衆ですか?

ズオ・ラウ

はい。

チュー・バイ

軽率が過ぎます。

どうやら、あなたは武術に進歩が見られないだけでなく……

ズオ・ラウ

この者たちを捕まえてから、チューお姉さんのお説教を聞きます!

チュー・バイ

……待って。

先ほどは気付かなかったが、剣を数回しか振っていないのに、手の平には汗がにじんでいた。

チュー・バイ

……

この庭……この温度……

ズオ・ラウ

暑くなってきているようです。

まだ三月で、今は太陽も出ていません。暑くなるわけが……

まさか鋳剣坊の源石鍛造炉……

チュー・バイ

炉の火はとっくに消えています。

憤慨する山海衆メンバー

お頭、あの女にうちの者が何人もやられました。

山海衆頭目

これ以上時間を無駄にするな。

???

徒に時を費やした自覚があるとは。

三月半ばのこの時期に、季節外れの蝉の声が響く。

空気中の湿気がずんと圧力を増して、衣服がべったりと張り付く。決して早春の露などではない。

その場にいた者たちは皆等しく異常を感じ取った。

一粒の水滴が、チューバイの顔に滴った。

北地の春は訪れが遅く、槐樹の老木に若葉は未だ生えていない――

これは刃に凝結した水滴だ!

チュー・バイ

――

山海衆頭目

先生。

山海衆首領

モン・ティエイーは?

山海衆頭目

鋳剣坊にはいません。

……

ちょうど去ろうとしたところに、こいつらに遭遇しました。

ズオ・ラウ

その刀……

タイホーさんを傷つけたのはあなたですね!