太陽すらも追い越して AS-9・戦闘前
過去に別れを
ようこそ、ペペ殿。
ここがシャアの残した宝物庫なのか? 博物館とよく似ているね……
そなたの感覚は正しい。記憶が戻る前、街のいくつかの場所について見知った感覚を覚えた。
都市を建設する過程で、人々は陵墓の建築様式を参考にしたのやもしれぬな。
ここは一体何があるんだ。
壁のランプが灯り、光は鏡のように滑らかな壁と支柱の間を走り、暗いホールが明るくなった。
一瞬の間に、無数の亡霊のような虚影が一斉にホールに現れ、あるいは歩きあるいは立っている。
シャアの宝物庫に隠されたお宝というのは……全部シャア自身だったのか。
彼はそんなにナルシストだったの……?
もちろんそうではない。これらの映像は姉様が余に保存させたのだ。父様が去ってから、姉様はずっと父を恋しく思っていた。
千年前、史官たちは発掘した古代科学技術を用いて父様の言動をすべて保存した。それは真に迫るものだった。
アルサラン地区でも似たようなものを見つけたよ。晶洞の中で、シャアの映像を見せてくれた。
それは余が残したものだ。ナイツモラの末裔がその映像を見つけ、手がかりをたどって訪ねてくるであろうと思っていたのでな。
わかりにくい場所に隠しすぎだよ、ズバイル。ほかの人じゃ見つけられないって。
わかりにくい? 外に巨大な霊殿を建設したはずだが。
どうやら霊殿は歳月の侵食に抗えなかったようだね。私がたどり着いた時、そこはもう崩れ落ちた廃墟だったよ。
されどそれは依然としてそなたをここへ導き、余を呼び起こした。
これぞまさに歳月の変遷の妙である。当時は役に立たぬと思えた計らいも、因果が重なり合い、素晴らしい偶然を生む。
ここにはシャアがマスクを外した姿まであるのか……
このような映像はアルサランで見たことがあるだけじゃないよ。子供の頃、弟とかくれんぼをしていて、棺と亡者が保管された秘密の部屋に誤って入ったんだ。
一族の伝統があって、自分はいずれそうしたものに触れることになるだろうと知っていたけど、子供が一人でそんなものを目の当たりにするのはさすがに耐えられなかったね。
当時は慌てふためいたものさ。何かの仕掛けに誤って触れてしまったのか、シャアの映像を見たんだ。けどあの時は彼を全く知らなかったし、ただ私との意思疎通を試みる亡霊だと思ったものだよ。
彼は私に言ったんだ。これらの棺は砂に埋もれた歴史の一部にすぎないと。
後世の者はそれを発掘した時、時を越えた橋を架け、私たちは長い歴史の川を越えて互いに知り合うことになるだろうってね。
その言葉は覚えている……当時母様がこの世を去り、姉様は棺にもたれかかって泣き続けた。それは父様がかがんで姉様を慰めたときにかけた言葉だ。
姉様が史官になった後、父様は常々姉様に言い聞かせていた。英雄を……
英雄を英雄たらしめるもの――すなわち、歴史の背後にこそ目を向けるべきだ。
……そなたはすでに聞いていたか。
これはあの映像に残された最後の言葉だからね。忘れやしない。
ルガサルグスの映像を見て、ペペはふと少しバカバカしく感じた。
これまでに追い求める中で、シャアの宝物庫には一体何が保存されているのか彼女は無数に想像した。
しかしこの瞬間突然気づいた。自らの執着と追求とは、一つの虚影からまた別の虚影にすぎなかったのだと。
彼女はハンマーを握り締め、目の前の影をそれで薙ぎ払いたい衝動を力の限り抑え込む。
彼女をより恐れさせるのは、自らの一族の責務と伝承もまた、同じく虚影にすぎなかったということだった。
メジェティクティさん、イエローページに基づいてほかの職員全員に連絡しました。
死を恐れずに手伝いに来てくれる人なんてまだいるの?
どうでしょう。返ってきた答えはどれも複雑な話でしたので……
……ありがとう。アナトのためにもう少し水を探してきてくれる?
わかりました、メジェティクティさん。
……ジヤアとニヤアみたいに恐れ知らずの人はやっぱり少ないわ。
アナト、私たちにはあと二時間しかないかもしれないわよ。
正直、今すぐ都市の外に逃げるのが最良の選択ね。
ごめんなさい、ティティ。今は都市の測量記録を見比べているから、そこまで考えている余裕がありません……
ですがあなたならわかっているはずです。今わたしがここに残る理由はあなたと同じということを。
……職責ってやつ。
だけどあの二人の観光客は? 彼女たちはズバイルの復活とは何の関係もないわよ。
彼女たちはこの都市と何の関係もない……なのに二人に地下水路に入らせ、流れ込む砂を止めるため最も危険な調査に行かせてしまった。
だからわたしは彼女たちの勇気を無駄にしないよう、最大限の努力をするしかないんです。
……おいで、耳を揉んであげるわ。
ありがとう、ティティ。
あっ、見て、ここの工事日報に異常な地質構造について言及されているわ。
――わかりました。すぐに記録します。
ティティ、もしズバイルさんについての研究が最終的に発表されず、わたしたちが死ぬ前に実施した都市地下構造の探索も人に知られなくて……
このまま自分の「名」も残せずに死んでいったら、お父様は失望するのでしょうか?
その時はペペを責めることね。何せ今の状況に至ったのは全部私たちの尊敬すべきパーディシャーのお嬢さんが有能すぎたおかげだから――
――ラズバールさん?
申し訳ございません、支配人様。博物館は現在緊急事態で、おもてなししている余裕がありません……
敬語は使わないでくれ。私はもう支配人ではない。今はただの自由民の身分を取り戻し、赦免された職人にすぎない。
ですが現在博物館は安全を保障することができません。わたしたちにできる最も誠実なアドバイスは、あらゆる手段を尽くしてできるだけ早く都市の中心部から離れることです……
……今あるすべてを差し出した後、私はズバイルさんと一緒にゆっくりと流れる砂の前でしばらく立っていた。
ズバイルさんに会ったんですか!?
彼はアーツで陶製彫刻を一つ一つ修復しようとしていたが、最終的に手を止め私に言った。「これが我々の責務だ」と。
責務とは、揺るぎなく背負い抜き、それでもなお最後まで決して理由を問うものではないと理解している……
たとえ結果が期待通りでなかったとしても。
教えてくれ。この都市を破滅させないために、私に何ができる?
よく見ておくんだ。今回はお頭としての指揮能力を見せてやる時だよ。あなたはすぐにでもわかることだろう。あたしの言うことを聞いて、博物館に残ってほかの人を守るべきだってね――
ここから左に曲がれば、さっき通った道にぐるっと戻ることになる。
……地下水路の中をここ何日も回ってたけど、こんなに堂々巡りになったのは初めてよ?
先に言っておくけど、これまで手下を率いている時に道に迷ったことがないんだ。これは決してあたしの能力の問題じゃないよ。
私もこれがあなたの能力の問題だとは思っていない。人を迷わせるのがこの複雑な通路の本来の役割なのかもしれない。
博物館の館長と副館長が例年の測量記録をあさっている時、話し合っている内容が少し聞こえた。
彼女たちは、私たちのいる古い地下水路はこの都市の地下構造の一部にすぎないと考えているようだった。歴史的資料に基づいて、彼女たちは更なる深層への通路を推測できるかもしれない。
彼女たちは近頃ずっとある考古学者の手がかり探しを手伝っている。そしてそれらの手がかりが指し示すのは古代の書物の中で「宝物庫」と呼ばれている建物の遺跡である可能性が高い。
もしこの都市の奥深くにまた別の壮大な建物の遺跡が本当に隠されているとしたら……
宝物庫があるの?
……いや何でもない。聞かなかったことにしてくれ。
あなたは恐れていないようだな。
何を?
あたしたちの任務は砂が漏れているエリアを見つけて、そこの水門を閉じることでしょ? もし水門が壊れてたら、運んできたこの材料で塞いでやればいい。
しかし見つからない可能性が高い。
まあ、それは確かに……ちょっと残念だね。もしあたしたちが失敗したら、都市は砂に埋もれてしまうね。
だけど地下にいるあたしたちは砂があふれるのを一番初めに見るはずだよ。博物館にいる人に逃げるよう通信機で知らせる時間があるかもね。あたしたちは逃げられないでしょうけど。
……待って。だからこそあなたはどうしても地下水路に来ようとしたの?
この任務は命懸けであり、こういう時こそ自分が先頭に立つ必要があるからって?
ナラントゥヤさん、アスパシアさん、聞こえますか?
……聞こえる。二人ともいるよ。
いくつか糸口を見つけました。
周囲の音に注意してください。ラズバールさんのカラクリ羽獣が見つかるはずです……青くて、羽獣の形をした機械です。
深層構造が存在する可能性のある場所をいくつか推測しました。お二人が壁に隙間を開いてくだされば、羽獣たちが飛んでいって情報を集めることができます。
十分な情報が集まれば、砂が流れ込む正確な位置を特定できるはずです。ですが……
カラクリ羽獣は仕掛けを止めたり、亀裂を埋めたりといった作業はできません……申し訳ありませんが、お二人には危険を冒していだだくことになるかもしれません。
きっと余が見せた記憶の中で気づいたであろう。そなたの額飾りは、余の姉様の頭にあったものとそっくりであることに。
この額飾りは我が一族に代々伝わるものだよ。
昔は疑問に思ったものだよ。どうして我が一族は諸王の王のために記述する職務を代々頑なに継いできたのかとね。父様に聞いても、いつから始まったのか知らず、責務だからと言うだけだった。
答えがこんなに単純だったとはね。始まりは父親を恋しく思う子供の気持ちだ。
姉様はずっと、父様はいつの日か戻ってくると信じていた。
されど残念なことに、世を去るまで戻ることはなかった。そして余もまた、姉様の最期に一目会うことは叶わなかった。
姉様の死後、父様の虚影のみが余と共に歩み続けたのだ。
……
ペペ殿、黄金都市に行くという執念は手放すがよい。いかにして意識を貴石に封じるか、いかにして不朽の肉体を作るかを余は知っている。
そなたは永遠の命をもって経験し、発見し、記述するのだ……
ごめん……ズバイル……私は君のお姉さん代わりとして君に付き添ってはあげられないよ。
私にも弟がいて、あいつは黄金都市で史官を務めてるんだ。
誠に遺憾に思う。あれは良い職位ではない。あの者たちは紙面に呈してはならぬ物事を知っているのだ。あまりにも多くな。
余のあの愚かな兄は史官に自身の望み通りの歴史を記述させるため、双子の子のうちの一人を王宮に送り込むよう姉様に無理やり要求した。
まさか千年後、その脅迫が栄光に変わっているなんてね。
あの獣主が言っていたよ、史官は全員舌を切り落とされるって。それってほんとなの?
現在の諸王の王がいかなる扱いをするかはわからぬ。されど、それは確かに秘密保持に有効な方法だ。
……いずれにしても、私は黄金の都市へあいつを探しに行かないと。
……
やはりこうなったか……
ならば行くがよい、ペペ殿。
いや……まだ行けないよ。
この都市を放ってはおけない。
使いがこのまま街で騒ぎを起こすのを見過ごすわけにはいかない。
この街を見逃してよ。君が言ったように、あの最も貴重な宝はまだ汚されてないでしょ?
いいや、ペペ殿。たとえ余が止めたくても、もう不可能だ。
人の一生は様々な選択によりなる。それらは互いに入れ子になり、際限のない分岐路の中で、それぞれ唯一無二の回路を描く。
余の父様への誓い、そして姉様への誓いは、すでに回路に刻まれ、永遠にこれらの貴石に残っているのだ。
それに逆らうことは決してできぬ。
一筋の可能性もない。
ならば教えてくれ。どうやってあの使いたちを止めればいい?
すでに答えは教えた、ペペ殿。次はそなた自身の努力に頼らねばならぬ。
当時侵略しに来た軍隊のように、全力で余を捕らえよ。
実はあの日アジャジとアジャニと話してから、ずっとあなたに伝えなければならないと思っていたことがある。
この石はほんと硬いね。まだ時間があればいいんだけど……あの二人は何て言ってたの?
青いカラクリ羽獣が二人の頭上で旋回し、目の前の石レンガを掘るよう促す。
アスパシアはすべてが順調に進んでいることを幸運に思う。存在するかもしれない通路に足を踏み入れる前に、自分がやるべきことは一つだけだった。
あなたが富を求める理由を知った。あなたは過去の手下に借りがあると感じているのだな。
へぇ。どの辺りを聞いたの? あたしたちが命からがら逃げたあの夜? それとも財宝を全部差し出した時?
あなたが故郷を去ってからだ。
アジャジとアジャニからたくさんの話を聞いた。彼女たちは伐採場で仕事をしてもいつも力を入れすぎてノコギリを壊したり、店番をしても帳簿の記録をめちゃくちゃにしたりとか。
あなたがいない隙に、自分の最後の駄獣を殺し、刀を売って鍋に換え、宴を開いた者もいた。
……その後彼の料理の腕は町中で評判になり、市場で小さな店を開いて、毎日客が絶えないそうだ。
砂漠の盗賊の経験を物語にして、タブロイド紙で連載し、大好評になっている者もいる。今はもうあなたたちは千年の時を越えて、シャアの王座を奪いに行くところまで書き上げていたそうだ。
ほとんどの人が家を持ち、季節に合わせて移動することもなく、雨季の前に屋根を修理できて、雨漏りなど起こらない。あなたの手下たちは、今でも悪くない生活をしている。
……そんなの当然知ってるさ。
私はあなたを尊敬している。しかしあなたが彼らに対して何か借りがあるとは思わない。
ただ二人を救うためだけに、一都市を救う必要なんてないようにな。
ここから逃げ出し、そして来た場所に戻って……それから、あなたが背負っているもの、あなたの「責務」を下ろして、前へ歩むべきだ。
……
巨大な岩がゆっくりと滑るゴロゴロという音がアスパシアの話を遮った。
二人の掘削作業が古の仕掛けに触れたらしく劇的な変化が訪れた。風化した彫刻の施された石レンガが勢いよく壁の中に入り込み、その数秒後、二人は石の落ちる音を聞いた。
続けて、壁全体が崩れ始める。アナトが言ったように、壁の外は砂ではなかった。
空っぽな暗闇は二人が何か巨大な建物の内部に向かい合っていることを示している。
彼女たちの目の前には道がない。流砂の音が奥からこれ以上ないほどはっきりと聞こえ、まるで深淵の下に増水期の逆巻く川があるかのようだった。
一度足を踏み入れればもう戻れない川が。
その瞬間、二人は示し合わせたかのように握っていたつるはしを同時に捨て、武器を抜いた。
砂埃が舞う。二人は離れ、十歩に満たない距離を取った。
何がしたいの?
あなたが飛び降りるのを止める。
違うでしょ。今のはあたしがあなたを止めたんじゃない?
ずっと言いたかったけど、もしあなたが無駄死にしに来たのなら、先に進ませることはできないからね。
あの二人よりは頼りになると思ってたけど、まさかあなたもあたしの助けが必要な手下だったなんてね。
……言ったはずだ。あなたがそんな責務を負う必要はないと。
誤解してるね。あたしはただ自分で確認しに行きたいのさ。あたしが誰よりもそれをやるのに適していると思っている。それだけ。
たとえ手下に良い暮らしをさせるためじゃなくても、金がほしいのは変わらないよ。仕方ないでしょ、あたしは欲深いんだ。
「人の一生は様々な選択によりなる。」
あなたはこれを責務と呼ぶけど、あたしは自分の選択と呼ぶ方が好きだね。これがあたしさ。
さて、あなたはよく訓練された格闘家だから、そう簡単にやられてくれないでしょうね。なら本気で行かせてもらうけど、怒らないでほしいね。
……あなたに心からの感謝しかない、ナラントゥヤ。
今、あなたとの本当の対決を恐れる必要はない。
私はかつて自分の心を信じることができなかった。なぜなら一族が立てた誓いに従っていたからだ……それは鮮血と暴力に関するもの。戦争こそ最も公正な蹂躙であると見なしている。
しかし今、私はすでに確固たる意志を持つ者を見た。
サルゴン人の信念にも見習うべき点があるのかもしれない。私は私の出した選択によって成されている。ゆえに今後は――
――おい! なぜ話し終えるのを待ってくれない――!
彼女の視界が突然暗くなる。
開かれた黒い刀の扇が目の前をかすめる。まばたきした瞬間、地下水路の唯一の光が完全に呑み込まれた。
ナラントゥヤにはまだ黒いシャムシールが二本あることを彼女は確かに覚えていた。仕掛けがあり、直接鞘から抜くことはできない。
しかしその瞬間彼女が思い出したのは、歴史上ある神民のクランタがいて、彼らは昼夜を分かたず行軍し、正午に太陽を呑み込むがゆえにナイツモラと呼ばれていたことだった。
彼女は記憶を頼りに相手の位置へと突っ込む――
――そしてそれは不発に終わった。
砂を使ったちょっとした目くらまし、アーツで作ったちょっとした幻覚さ。
勝つか負けるかしかないなんて誰が言ったの? 先に飛び降りちまえばいいのよ。
暗闇と幻影に囲まれる中、ナラントゥヤは一歩後ろへ引いた。
待て、ナラントゥヤ! これは公平な対決ではない!
ほら、あなたはまた銀メダルだったね。
ズバイル、本気なの?
私が攻撃するよう誘導しておきながら、凄い速さで避けるなんてさ。
早々に諦めた方がよい、ペペ殿。言ったであろう。いかなる試みも無駄だ。
そなたがどれだけ力を込めてハンマーを振るおうが、余には触れられぬ。
フンッ、ずいぶんと見下されてるみたいだね。
はぁ……このホールの支点を壊すことで余の動ける範囲を狭めるつもりか?
それは良い方法ではない。
そう話すうちに、流砂が押し寄せ、砕けた石柱と地面が元の状態に戻る。
ペペは虚影の間を一つ一つ抜け、ズバイルの姿を探す。
しかし視界の端に彼のローブの一端を捉えたかと思うたびに、次の瞬間に彼はまた多くの虚影の後ろに隠れ、視認できなくなる。
もっと集中する必要があるな、ペペ殿。
知っているかい、ズバイル?
十四歳になる前、私はお医者さんから虚弱体質だと診断されたんだ。本来ならこんな重いハンマーは一生持ち上げられるはずがなかったんだよ。
しかし今、そなたはその小柄の身体で風が立つほどにハンマーを振り回せているな。
そうさ。砂漠やジャングルの奥深くに入って、失われた古跡を探して考察するために、サルゴンの有名な戦士に訓練をお願いしたんだ。
そして十七歳になる頃には、広大な砂漠を一人で越え、数十人の砂漠の盗賊を相手にできていた。
ペペ殿、それだけでは余を打ち倒すには足らぬ。
いや、これは自分の力を誇示しているわけじゃないよ。
ただ小さい頃から、私はやると決めたら、できなかったことはないって君に言いたいだけだ。
目標がどれだけ困難であろうと、どんなに苦しくても……この私がやると決めたなら……
絶対に成し遂げられるんだ!
いいや、ペペ殿。そなたがそんな錯覚を抱いているのは、まだ二十二年しか生きていないからだ。
当時、余は父様の下に仕え、襲い来る無数の敵を斬り倒した。
奴らの悲鳴は余に自信を与え、時が経てば世に得られぬものはなく、成せぬものはないと思っていた。
だが、余のこの一生の最大の敵はまさに時であることを予想できなかった!
金色の影がかすめ通る。振り返ることすらままならず、ペペは足首の辺りに激痛を感じた。
その杖は想像よりも重かった。
そろそろ急がねばならないぞ、ペペ殿。
父様の陵墓を侵す者を殺すことは余の貴石回路に書かれている。
そなたの絶え間ない攻撃に、すでに回路が怒りを覚えている。
すでに余に囁きかけているのだ。急ぎこのすべてを終わらせよと。
君は私とこんなお遊びをすべきではなかったよ、ズバイル。
この戦闘はお遊びではない、ペペ殿。
いいや、お遊びだね……
フッ、目を閉じたか。
目の前は漆黒。ペペは知っていた。自分の目の鋭さは十分ではなく、ただ邪魔にしかならないと。
幼い頃、庭園で鬼ごっこをしている時、どんなに頑張っても俊敏な弟を捕まえることができなかった。彼はまるで鱗獣のようにするすると逃げた。
ある日、彼女は偶然にも目を閉じてみると、石板を踏む弟の足音がかほど鮮明に聞こえることに気づいた。
あいつはすぐ後ろにいる……
素早く振り返れば……
捕まえられる!
両眼を閉じ、ペペは全力でハンマーを前方に振り下ろす。予想した通り、彼女は何かが砕け散る澄んだ音を聞いた。