安らかな譫言SS-7・戦闘前永遠に輝くアルバム
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安らかな譫言 SS-7・戦闘前

永遠に輝くアルバム

母

上手になったわね、祥子ちゃん。

豊川祥子

そうかしら……

母

祥子ちゃんが成長したことくらいわかるわ。お母さんだもの。

お仕事がどんなに大変でも、ピアノだけはずっと頑張ってきたんでしょう?

豊川祥子

お母様……

母

祥子ちゃん、外で色んな経験をしてきたのよね……

父

練習の邪魔して悪いけど、ご飯ができたよ。


豊川祥子

美味しい……!

父

どうだ、お父さんなかなか上手だろう?

母

祥子ちゃんは知らないでしょうけど……この味になるまで、何度も試食させられたのよ。

父

このサラダ、味見してみてほしい。

豊川祥子

ん――美味しいですわ!

父

なかなか上手だろう? 祥子が美味しいって言ってくれるように、何度もレシピを研究したんだぞ。

祥子の好きなご飯、まだまだ作ってあるからな。さあ、どんどん食べてくれ!

豊川祥子

ええ!


豊川祥子

う……うぅ……

母

祥子ちゃん……? 祥子ちゃん!?

父

ど、どうしたんだ?

豊川祥子

少し、食べすぎましたわ……


母

祥子ちゃん、少しは良くなった……?

父

ごめんな、祥子。お父さんつい作りすぎちゃって……

母

ほんと、清告さんったらいつもああなんだから……

でもそれがあの人らしくて、可愛いところでもあるし……

祥子ちゃん、お父さんのこと許してあげてね?

豊川祥子

それは……

わたくしは……本当にお父様を許せるの?

あの人とそっくりな顔をした人に、わたくしは何度も心を深く傷つけられた。

母

お父さんはね、祥子ちゃんのことを愛してるのよ。

豊川祥子

――!

母

もちろん、お母さんも。

二人のことを、心から愛してるわ。

豊川祥子

お母様、どうして急にそのようなことを……

母

あなたが家を離れてから、昔のアルバムを見返すようになってね。

生まれた時から、一歳、二歳、三歳……って。

豊川祥子

そのような時のこと、もう覚えていませんわ……

母

そうかもしれないわね。でも親にとっては、子供はずっと変わらずに、一番大切で、一番特別な存在なのよ。

生まれたばかりのあなたは、手のひらが私の半分もなかったの。

でも……ほら、今は私よりも大きくなったのね。

母は祥子の手を取り、二人の手のひらをゆっくりと重ね合わせる。

ひとりでに、祥子の指は母の手を強く握り締めていた。

豊川祥子

お母様の手、すごく温かい……

これは本当にお母様の温もりなの?

わたくしがいま感じているものは、嘘なんかじゃなくて――全て本物なの?

どうしてこんなに温かいのに、こんなにも悲しいの?

母

ええ、お母さんはここにいるわ。

豊川祥子

お母様……

母

泣いていいのよ、祥子ちゃん。昔あなたが泣いてた時、こうやって慰めていたの。

豊川祥子

……昔のわたくし、そんなに泣き虫でしたの?

母

小さい頃はね。あの頃の祥子ちゃんは、よくキャンディひとつで泣いていたわ。

今はとても強い子になったけど、あの頃の祥子ちゃんは本当に泣き虫だったのよ。

豊川祥子

そ、そうだったかしら。そんな記憶、全くありませんわ……

母

うふふ、お母さんは嘘ついたりしないわ。

豊川祥子

では……お母様は、わたくしの高校の入学式を覚えてます?

中学三年生の時、母は病で亡くなった。

存在しない記憶でも、起こっていない出来事でもいい。

それでも今は、美しい答えを聞きたかった。

自分に嘘をついてでも、美しい思い出を作り、美しい夢を見ていたかった。

母

ええ、もちろん覚えているわ。あの日は清告さんと祥子ちゃんの三人で、校門の前で記念写真を撮ったわね。

豊川祥子

そうでしたわね……懐かしいですわ。

ふふっ、ねえお母様、もっとお話を聞かせてくださる?

母

祥子ちゃん、今日はとても甘えん坊さんね。……それもそうね、久しぶりにお家に帰ってきてくれたんだもの。

豊川祥子

お家……

「家」という言葉は、一体いつからこんなにも馴染みのないものになってしまったの?

母

ふふっ。それならもっとお話ししちゃおうかしら。

ええと、どこから話そうかしら……

豊川祥子

でしたら、わたくしが生まれたときから、ずっと……

母

ええ、はじめから話すわね。

そうして、母と娘は肩を並べ、一歩ずつ歩調を合わせるように農地の間を歩いていた。まるで、いつまでもそのまま二人で歩いていけるかのように。

過去の美しかった時と変わらず、ゆったりと歩き、どこかで立ち止まることもない。

二人の手は、まるでお腹の中にいた頃のへその緒のように親子を繋いでいた。

???

祥子――

ヴィグナ

よかった。祥子、ちゃんと家に帰れてたんだね!

アイリス

ヴィグナさん、車の調子が何やらおかしいですわ! いったん止めていただけませんこと?

ヴィグナ

えっと……な、何これ!? ロドスで習った操作方法と違うんだけど!?

ダメ! 止められない!

アイリス

ぶつかってしまいますわ――

ベナ

祥子さんたち、早く避けて――!