喧騒の掟 CB-8・戦闘前
11:41P.M.
みんな大丈夫?
だ、大丈夫ですけど、建物が丸ごと消えちゃいましたよ……あれはいったい何なんですか……
君は? さっきアーツのど真ん中を突き抜けて来たでしょ、いつも無茶するんだから。
ふっ、いま気付いたんだけど、あの長い髪を切ったの?
ちょっと! 笑うことないでしょ!
もう頭は砂まみれだね。ショートでもちゃんとお手入れしてあげないとね。
あたしは大丈夫。ありがとう。
……ありがとう? 私たちって、もうそんなに他人行儀な仲になったの?
あたしは誰に対してもお行儀が良いの。
フフ、そうかもしれないね。
ただ君がいつも業務時間中に昼寝をしたり、教会の外でロックのライブをしたり、何かやらかすと公証人役場の人に三つ先の街まで追いかけられたりしてなければね。
君にうっかり爆破された母校なんて、君がラテラーノを離れた日には横断幕まで掲げてたんだよ?「エクシア、龍門にいってらっしゃい」というね。
な、何これ? 旧友との集まりって黒歴史の暴露し合いが必須項目なわけ? い、いいよぉ、じゃあ次はあたしの番ね!
ああ、構わないよ。
……だ、ダメだ、そういえば、あたしってばキミの黒歴史をあんまり知らないっぽい!
良い子は、あまり知りすぎるのはよくないからね。
キミはあたしのお姉ちゃんか!?
まぁ、そんなもんでしょ。
……
(この二人、仲がいいな。同じラテラーノ人だから?)
(それにエクシアさんが手綱を握られてるなんて……)
あのさ……モスティマ。ちょっと気になることがあるんだ。ちょっとだけ。
ん?
どうしてこのタイミングで戻ってきたの?
んー、うーん、色々あるからね、どう言ったものかな。
第一に、仕事だから。
第二に、龍門の安魂祭って、いつもセールをやってるからね。それを逃したくないというか。
ここ何年もの安魂夜はずっと行方知れずだったのに、よりによって今年に戻ってきたの?
本当に聞きたいのはそれじゃないでしょ?
もう……察してるなら直接教えてくれてもいいじゃない!
ふふ、珍しく君がモゴモゴしてるのが見れた。懐かしいな。
いずれにせよ、体験学習に来た子の前でそんな込み入った話はできないからね。
あっ……ぼくのことは気にしないでください。ええ、ぼくは後ろの方にいますので、どうぞ気兼ねなく。
それはダメだよ。まだ追われてる可能性があるからね。
あ! バイソンくんを言い訳にするのはズルすぎでしょ!
まずはテキサスたちと落ち合おうよ。怖いマフィアたちがまだこちらを狙ってるんだしさ。
私がいない間、君たちはいつもこんな面倒事を?
よくあるってほどじゃないと思うけど? 週に四五六七八回くらいある感じ?
……うん、そうか……それは確かによくあるという程ではないのかもね。
ところでキミは、どこに行っていたの?
ボスに初めて会えたあの時、キミがもう龍門を離れたって聞かされたの。マラソンのゴールライン目前でズッコケたみたいな、あの時のあたしの気持ち、わかる?
まぁ、色んなところに行ったよ、数えきれないほどにね。
旅人すら寄りつかない村に行って、手紙を受け取って、山々の向こう側に行って、移動都市を追いかけて、って感じかな。
なんか、聞いてるだけで孤独感がすごいね。
でもこれで旅行記でも書いたら大ヒットするかもしれないよ?
モスティマさんは、この大地にある全ての国に行ったことがあるんですか?
まぁ、大体はね。羨ましい?
……少しはね。普通のトランスポーターなら、そういう機会は滅多にありませんから。
いずれ機会はくるさ。でもペンギン急便には期待しない方がいいかもね。私たちは常識で判断してはいけないから。
その点に関しては、もう痛感してます……
広い砂漠でトラックに乗って、黄砂越しに沈む夕日を眺める。ロマンチックに聞こえるだけど、そのロマンが百時間も続けば、ほとんど擦り減って消え去るからね。
黄砂と夕日の組み合わせはあんまり見たことないけどさ、それより今日の砂嵐はひどいと思わない?
ここ数年で龍門の空気はかなり悪くなってるんだよ。空気清浄機を増やすべきだよね!
空気の質か……そうかもね。
エクシア、バイソン、申し訳ないんだけど、君たちは先に——。
また?
やれやれ、私はね、自分の行方をくらますタイミングをよく把握できてると思うけど?
……それ真面目に言ってる?
キミにとっては、まぁ、ただの数時間だったかもしれないけど、あたしにとっては——。
まぁいいや。モスティマ! 帰ったらご飯おごって! 絶対だよ!
——はいはい。
……本当に、今夜は賑やかだね。
本当にモスティマさんを一人置いていくんですか?
誰が誰を置いてくって? どうせ今止めても、次の瞬間急にいなくなるんだから。
……怒ってます?
あーもう――! まずはテキサスを探しに行こ! 残りは後でっ!
エクシアの奴、こんな時に限っていないのか。
なぁ、ウチらこれ、ヤバいことになってるんとちゃう?
囲まれてるな。突然現れたように見えるが、最初からスラムに潜伏していたんだろうな。
コイツら、あのマフィアの仲間なんかいな? そないな感じには見えへんけど。
いや、知ってる顔が何人かいる。みんな龍門の地元の人だね……
——。
ボスの言いつけ通り、奴らに痛い目を見てもらおう。
あ、あれ?あたしたち、テキサスを探してるんじゃなかったっけ?
なんで急に飛び出してきたこの人たちに囲まれちゃってるの?
……そっちが勝手に荒らしに来たんだろうが。
ああっ、やっぱり! エクシアさんの無茶な道案内のせいで、変なところに来ちゃったんですよ。
悪いが、簡単にここから逃がすわけにはいかない。
どうしましょう?
キミはフォルテだし、盾も持ってるし——。
えっ?
じゃあ、クロワッサンとあたしの普段のやり方で行くよ!キミが道を開いて、あたしはシンガリ。でも今回はボーナスはないかもね。さぁ行くよ!