アルコールの名のもとに!幕間アルコールの名のもとに!
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アルコールの名のもとに! 幕間

アルコールの名のもとに!

イナム

……アカフラとゼルウェルツァのドゥリンたちのことは任せたわ。

ガヴィル

本当に行かなきゃダメなのか、イナム?

トミミ

イナム、どうか行かないでください!

イナム

あのねぇ、私が行かなきゃしょうがないでしょう?

トミミ

うぅ……イナムのこと、絶対忘れませんから……


イナム

何よそれ、まるで私が二度と帰って来ないみたいじゃない!

トミミ

だって今回は時間がかかりそうって……

イナム

首長選びに関わる件だもの。面倒事を積み上げたら、きっとズゥママのビッグ・アグリーよりも高くなるわ。その状況で明日には帰れるなんて約束できるわけがないでしょ!

トミミ

うう……

イナム

はぁ。

いっそのこと自分が首長になったほうがマシって、ますます思えてきたわ。

とにかくアカフラとドゥリンたちのことは任せたわよ、ガヴィル。私が留守にしてる間はあんたが彼らのリーダーをやるのよ。

ガヴィル

具体的に何すりゃいいんだ?

イナム

何もしないで。

ガヴィル

それって、現状維持ってことか?

イナム

そう。

アカフラはこのままで問題なし。あとはゼルウェルツァのドゥリンたちだけど、今集落の建設を進めているの。作業のスピードを上げるために、しばらく禁酒をすることまで決めたそうよ。

トミミ

禁酒!? あのドゥリンたちがですか!?

イナム

ええ、私もビックリしたわ。

でも多数決でそう決まったのよ。どうやら彼らも事の重大さをきちんと理解してるようね。

まあそんな調子ならば、私が帰ってくる前に集落を完成させられるでしょう。

だからあんたの仕事は、ここを私がいる時と同じように維持し続けること。大事なことなんだから、しっかりやってちょうだいね。

ガヴィル

おう、つまりドゥリンたちの集落をしっかり見とけってことでいいんだな?

イナム

その通りよ。

ガヴィル

よっしゃ、後はアタシに任せてくれ!

イナム

(心配そうな目つき)

ついでに、ドゥリンたちのお酒の醸造設備は全部隠しておいたわ。その隠し場所はね……(ヒソヒソ)

……覚えた? 絶対に見つけられてはダメよ。いい?

ガヴィル

まさかそんなところに隠したとはな。

トミミ

え? どこに隠したんですか? 私も知りたいです!

イナム

あのドゥリンたちはお酒の話になると、いくらでも悪知恵を働かせるの。あんたはすぐに口を割っちゃうからダメ。

トミミ

ううう……

ガヴィル

じゃあアタシにも伝えないほうがよかったんじゃねぇのか?

イナム

……今回はサルゴン宮廷の連中と会わなきゃならないから、それなりの準備をしなくちゃいけないの。

それで万が一、私の帰りが半年や一年も先になって、その間ドゥリンたちがずっと故郷の味を口にできなかったら、さすがにかわいそうでしょう?

とまあ、そんなとこね。あとは他の注意事項を説明しておくわ……


トミミ

ガヴィルさん、本当にこんなことしていいんですか?

ガヴィル

あん? ドゥリンたちのために木材を探してやるだけだろ、それの何が悪いってんだ?

トミミ

でもイナムは「何もしないで」って……

ガヴィル

ハッ、何を言い出すかと思えば。

あれはイナムが作った決まり事を変えるなって意味なんだよ。アタシらが何もするなってことじゃねぇ。

それに、ドゥリンたちの熱い感じを見てると、どうも何かしてやらないと気が済まなくて――

鋭いドゥリン

あんた、ガヴィルか?

ガヴィル

おう、そういうお前はゼルウェルツァのドゥリンだな?

鋭いドゥリン

そうだ。

トミミ

あなたもスディチさんみたいに迷子になったんですか? 集落まで案内しますよ。

鋭いドゥリン

それはいい。

実は、あんたにちょっと相談があって来たんだよ、ガヴィル。

ガヴィル

話なら帰ってからにしてくれ、ジャングルの中じゃ危険だ。

鋭いドゥリン

いや、ここが一番安全なんだよ。

トミミ

?

鋭いドゥリン

実は俺、ミード愛好家協会の者でな……

ガヴィル

なんだ禁酒の話かよ。

鋭いドゥリン

おお、話が早くて助かる! そこでお願いがあるんだが――

ガヴィル

待った、その話はナシだ。聞くまでもない。

鋭いドゥリン

おいおい、そんなあっさり断るなよ。

ガヴィル

禁酒令はお前らが投票して決めたことだろ? 文句があんなら、お前んとこの仲間に言いな。

鋭いドゥリン

でも醸造用の設備は全部イナムに預かってもらったんだ。

ガヴィル

んなこと言われても、アタシは設備の場所なんて知らないし――

鋭いドゥリン

本当か? 彼女しか知らないということか?

ガヴィル

……

鋭いドゥリン

そんな……もしイナムが隠し場所を忘れてしまったら、もう二度とゼルウェルツァのミードが飲めなくなってしまうじゃないか! そんな無責任な……

トミミ

無責任なんかじゃありません! イナムは離れる前に、ちゃんと隠し場所をガヴィルさんに教えましたから!

ガヴィル

はっ! 終わった。

鋭いドゥリン

やっぱりそうだったのか! イナムがそんな無責任なことをするわけがないもんな!

トミミ

そうですよ――

痛っ!

ガヴィル

とにかくお前らに教えるわけねぇから、観念しな。

鋭いドゥリン

そうか、どうやら今日はダメみたいだな。

だが俺たちは諦めないからな!

都市はレンガを積み上げて作っていくものだ。設備の隠し場所も少しずつあんたの口から引き出してやるからな!


冴えてるドゥリン

こんにちは、ガヴィルさん。

ガヴィル

おう、なんか用か?

冴えてるドゥリン

ちょっと急を要するものだから、お邪魔してごめんなさいね。

実は、私たちとても困っているの。ちょっとした……生活必需品がなくてね。みんながやる気を失くして夜も眠れず、まるで幽霊に憑りつかれたみたいに、苦しんでいるのよ。

トミミ

そんな、可哀そうに……

冴えてるドゥリン

だからね、みんなの苦痛を少しでも和らげたいと思って相談にきたのよ、尊敬すべきお方ガヴィルさん。

トミミ

ガヴィルさん、助けてあげましょう!

ガヴィル

まず、アタシの名前の前に、わけの分かんないもったいぶったお世辞を付け足すんじゃねぇ。

それと、当ててやろうか。その生活必需品ってのはどうせミードなんだろ?

冴えてるドゥリン

なんてこと言うのよ!

ガヴィル

なんだ、違ったか?

冴えてるドゥリン

あんな幼稚なお子様用のドリンクと、高貴なセブンススピリッツを同列みたいに言わないで!

ガヴィル

どうせ飲めねぇんだから、変わんねぇだろ。

冴えてるドゥリン

あぁ、ガヴィルさん、無慈悲なガヴィルさん、あなたはどうしてそれほど冷酷無情でいられるの?

ガヴィル

……アタシのことを非難する前に、その妙ちきりんな口調を何とかしてくれねぇか?

冴えてるドゥリン

あら、そんなに変かしら?

アヴドーチャが書いたお話に出てくる人の話し方を真似すれば、地上の人たちともスムーズに会話ができると思ったのに。

ガヴィル

そんなことはねぇよ、普通に喋ってくれ。

冴えてるドゥリン

お願いよ、ガヴィル~!! スピリッツが飲めないと、私死んじゃうのォ!!!

ガヴィル

我慢しとけ!!


礼儀正しいドゥリン

あのガヴィルさん、イナムさんが醸造設備をどこに隠したか教えてくれませんか?


しつこいドゥリン

ねえガヴィル、設備はどこに隠したの?


うるさいドゥリン

なあガヴィル、醸造設備についてなんだが……


ユーネクテス

ここに居たのか、ガヴィル。

ガヴィル

ズゥママか、お前でよかったぜ。やっと酒以外の話できる奴が来てくれた。

ユーネクテス

(固まる)

ガヴィル

おい、なんだよその顔は……

……まさかお前……

ユーネクテス

すぅ……ハァ……

あのなガヴィル、ドゥリンたちの醸造設備のことなんだが……


ガヴィル

なんでお前まであいつらと同じこと言い出すんだよ!

ユーネクテス

向こうが約束をしてくれたんだ。設備を渡せば、彼らの優秀な技術者を呼んで、ドゥリンのテクノロジーで私のロボットを整備してくれると……

ガヴィル

諦めろ。

ユーネクテス

うっ……

ガヴィル

けどあいつらがお前までも動かすとは予想外だぜ。

ほかに誰を巻き込んでるんだ?

ユーネクテス

そうだな……

トミミのところからは、すぐに追い返されていた。

それから、エッジ先生と、ゼルウェルツァの他の住民たちにも訴えに行ったらしい。

彼らに聞いた限りでは、アヴドーチャ以外の決心が揺らいできているみたいだ。少なくとも……曖昧な態度を取っているらしい。

ガヴィル

曖昧な態度?

ユーネクテス

噂じゃ、最初は率先して禁酒令に賛成していたエッジ先生もかなり危ういそうだぞ。ゼルウェルツァで酒がどれだけ人気があるのかはお前も見ただろう。

ガヴィル

チッ、このままじゃまずいぞ!

来たやつらを適当に追っ払ってるだけじゃ、大変なことになる。自分たちで決めた禁酒令だからな。なかったことにするのだって一瞬だ。

こんな調子だと、集落の完成なんざ夢のまた夢だぜ。イナムが戻ってきたとき、アカフラで一番ドでかい未完成建築を見せることになるなんてごめんだぞ!

ユーネクテス

……あぁ。

ガヴィル

お前もそんなこと望んでないだろ?

ユーネクテス

それはそれで別に構わないが……お前には従うよ。

ガヴィル

ならトミミを呼んできてくれ、ひとまず作戦会議やるぞ。


トミミ

え――ッ!?!?

どうするんですかガヴィルさん!

ガヴィル

落ち着け、トミミ。

トミミ

今すぐにエッジ先生に会いに行って、約束は守りなさいってしっかり言ってきます!

ガヴィル

ちょいちょい、こら待て!

ユーネクテス

もうガヴィルとその話はした。エッジ先生自身も大の酒好きだ、今さら彼を説得しても効果はないだろう。

ガヴィル

禁酒のことでまともに話が通じそうなのは、アヴドーチャだけだろうな。だが、ドゥリンにとっちゃ酒は命みたいなもんだから、あいつでもどうにかすんのは難しいだろう……

トミミ

うぅ……

ガヴィル

実は一つ考えがあるんだ。

トミミ

さすがガヴィルさん! 絶対にいい手を思いついてくれると思っていました!

ガヴィル

喜ぶのは早いぞ。アタシ一人だけじゃきっと無理だろうからな、お前たちにも力を貸してほしいんだ。

トミミ、お前は他の部族の奴らに、ドゥリンたちを見張っておくように伝えてくれ。

トミミ

え? 伝えてどうするんですか?

ガヴィル

まあ、その先はズゥママの仕事さ……


冴えてるドゥリン

はあ……もう何日お酒を飲んでいないかしら?

鋭いドゥリン

俺はもう数えるのも嫌だね。このスピリッツ狂が。それより、お前らがガヴィルの説得に行かせた連中は全滅だったようだな、オリジムシよりも情けないぜ。

冴えてるドゥリン

なんですって、このミード野郎!?

鋭いドゥリン

……おい、俺たちのことをどう言おうと構わねえが、ミードのことも侮辱するつもりなら絶対に許さねえぞ!

どうやら、お前はスピリッツの臭い足みたいな匂いで脳みそがやられちまったみたいだな!

礼儀正しいドゥリン

あのー……

鋭いドゥリン

なんだよ?

礼儀正しいドゥリン

実は私、ずっとあなたたちミードとスピリッツは上手くやれると主張し続けてきたのですが……

冴えてるドゥリン

言いたいことがあるのならさっさと言いな、ベリートマト酒好きの変人。

礼儀正しいドゥリン

そのですね、エッジ先生はもうすぐ我々の仲間の説得に応じてくれそうなんです。あと二三日、ほんのちょっとだけ我慢していただければ――

ガヴィル

よぉ、酒飲みドゥリンども、また会ったな。

酒好きのドゥリンたち

ガヴィル!?

ガヴィル

直談判しに来たぜ。

冴えてるドゥリン

直談判?

ガヴィル

お前らは、醸造設備を返してもらいたくてしょうがないんだろ?

鋭いドゥリン

……そうだ。

ガヴィル

じゃあ一ついいことを教えてやろう。

アタシと勝負して勝てたら、設備は全部返してやる。

鋭いドゥリン

本当か? では早速――

ガヴィル

本気で今から始めていいんだな?

鋭いドゥリン

えっと……やっぱりちょっと準備してくるわ。

ガヴィル

賢明な判断だな。

もう一度言うが、お前らのうち一人でもアタシを倒せたら、醸造設備はすぐその場で返してやるよ。

そっちにいるお前。そう、お前だ。

冴えてるドゥリン

――!?

ガヴィル

不意打ちはなしだぞ。

アタシに不意打ちしようと思ってるやつは一生禁酒を覚悟しとけ。

冴えてるドゥリン

ヒィッ!

ガヴィル

そもそも不意打ちなんてフェアじゃないんだ。そう思わねぇか?

礼儀正しいドゥリン

で、でも、私たちは諦めませんよ!

ガヴィル

いい心がけじゃねぇか。さすがはアカフラの新しい住民だぜ。

よし、さっさと準備して来いよ! 殴り合いたいっていうなら、いつでも付き合うぜ!


ガヴィル

ズゥママ、そっちはどうだ?

ユーネクテス

順調だ。

最初は少しばかり装備を揃えて頑張れば、お前に勝てると思っていたようだな。甘く見すぎだ。

ここ何日かお前に負け続けたので、彼らは別の作戦を模索しているんだ。おかげで簡単に興味を機械に向けることができた。

ビッグ・アグリーの設計図を貸して、意見交換を行ってみたのだが……さすがはドゥリン、まったく興味深い技術ばかりだったよ。

彼らのセルカーは見た目こそ不格好だが、中身の技術は本物だ。これからビッグ・アグリーに応用したらすごいことになるだろう。

ガヴィル

それは良いことなんだが……あいつら、自分たちの技術をふんだんに盛り込んだ自走式ビッグ・アグリーなんて作り出したりしねぇだろうな?

ユーネクテス

それは……

確かにそれも考えているみたいだ。

ガヴィル

(肩をすくめる)

まあいい、そもそもアタシたちの狙いはそこだからな。これをきっかけにドゥリンの連中が建設に使える機械を開発できるかお手並み拝見だ。

ここのところ連中とのあれこれは、喧嘩とも呼べやしないおままごとだからな。あいつらがビッグ・アグリーみたいな相手を用意できるっていうなら、悪くねぇ話かもしれない。

トミミ

ガヴィルさん、大変です!

ガヴィル

あ? どうした? 酒のことでまた揉め事でも起こしたのか?

トミミ

そうなんですよ、ミード愛好家協会とスピリッツ派の人たちがケンカを――

ってそっちじゃなくて!

あの人たち、ビッグ・アグリーにも負けないような巨大な機械を作り出して、武器の発射テストを始めましたよ!

ガヴィル

フン。

忘れたのか? そうなるようにズゥママが動いてたろ。

トミミ

うぅ……そういえばそうでした。

じゃあ、私はその発射テストを見に行ってきます! ドッカンドッカンって本当にすごいんですから!

ガヴィル

おう、行ってきな。もしなんかあったらすぐアタシに――

待て、あいつらどこでテストしてるんだ?

トミミ

ユーネクテス族の集落の北にある洞窟近くですよ、あそこなら木の他に何もありませんから。

ガヴィル

ズゥママんとこの北……洞窟――

しまった!

トミミ

え?

ガヴィル

トミミ、はやくそいつらを止めに行ってこい! アタシとズゥママは後で向かう!

ユーネクテス

ただの発射テストだぞ。何をそんな慌ててるんだ?

ガヴィル

その洞窟にあいつらの醸造設備が隠されてるんだよ!


ぼんやりしたドゥリン

ふわぁ~。

鈍いドゥリン

ガ、ガヴィル!?

ガヴィル

よぉお前ら、武器の発射テストをやってるって聞いたが、ちょっと場所を変えてくんねぇか?

ぼんやりしたドゥリン

なんでよ?

ガヴィル

それは……

ぼんやりしたドゥリン

言ってたわよね、あなたに勝てたら設備は返してくれるって!

ガヴィル

言ったな。間違いない。

鈍いドゥリン

じゃあなんで今さら俺たちを止めに来たんだ?

ガヴィル

やめろなんて言ってないだろ。場所を変えてほしいだけなんだ。この……なんとかってヤツを……

少し丁寧なドゥリン

ジャイアントアルティメットアグリーMkⅢだ!

ガヴィル

そう、そのジャイアントアルティメットアグリーMkⅢの発射テストの場所を変えてくれ。それだけだ。

ぼんやりしたドゥリン

でもここは、テストのロケーションとして私たちが探しうる一番いい場所なのよ!

それに、あなたを倒すために、こっちはもうとても重い代償を払っているの!

ガヴィル

重い代償?

ぼんやりしたドゥリン

もう三日三晩寝てないのよ。でもそれはまだいいわ。

一番の代償はね、そこのミード野郎たちと手を組むハメになったことよ!

鈍いドゥリン

そうだ! 俺たちはよりにもよってスピリッツ狂の連中と手を組んだんだ!

ガヴィル

あ~……一番重い代償ってのはそれだったんだな?

鈍いドゥリン

ともかく、こんな屈辱的な思いをした以上、あんたの一言くらいで諦めるわけにはいかないんだ!

ガヴィル

いや、アタシはただ場所を変えろって……

鈍いドゥリン

ダメだ、絶対にお断りだ!

ガヴィル

なんでだよ?

トミミ

(小声)ガヴィルさん、仕方ないですよ。

(小声)アヴドーチャさんが、誰の邪魔にもならない場所でやりなさいって言って、聞かないのならもう二度とお酒のキャッチコピーを書いてあげませんって脅しまでかけちゃったので……

(小声)みんな、頑張ってやっとここを見つけたんですよ。

(小声)それに固定式の機械や設備も設置されちゃってて、今からもう移動なんてできませんよ。

ガヴィル

(小声)そうなのか。参ったな……

トミミ

(小声)ならこうしましょう。武器を発射する時には、あの洞窟に当たらないようにしてって私から注意を……

ガヴィル

それじゃあ、洞窟の中に何かあるって、わざわざ教えるようなもんだろ!

トミミ

うぅ……

少し丁寧なドゥリン

ガヴィルさん、もう帰ってください。これ以上私たちの邪魔をしないで!

もしかして、このジャイアントアルティメットアグリーMkⅢに敵わないと思って、邪魔しに来たんですか?

ガヴィル

今のは聞き捨てならねぇな。

少し丁寧なドゥリン

……と、とにかくお帰りください!

ガヴィル

最後にもう一度だけな。お前らのために言ってやってるんだ、場所を変えたほうがいいぜ。

少し丁寧なドゥリン

何を言われても私たちはここでテストしますからね!

ガヴィル

ああ――もう面倒臭ぇ。

いっそのこと、対決を前倒しして今ここでやるってのはどうだ?

トミミ

(小声)ガヴィルさん、どういう意味ですか?

ガヴィル

(小声)こんなとこで好き勝手に暴れられて洞窟がぶっ壊れるよりもアタシが誘導した方がマシだろ。安心しな。

少し丁寧なドゥリン

しかし、こっちはまだ武器の準備中で……

ガヴィル

もしアタシが負けたら今すぐ設備を返してやるし、勝っても次に挑戦できるチャンスはあるじゃねぇか。どっちに転んでもお前たちは損しないだろ?

少し丁寧なドゥリン

うーん……それは確かにそうかも。

ガヴィルは巨大なロボットの南側へと素早く移動した。

少し丁寧なドゥリン

ちょっと、なんでこっちに来るんですか!

ガヴィル

あっちは洞窟と岩壁しかないだろ。少しは体を動かせるスペースを確保しなきゃな?

少し丁寧なドゥリン

うっ、確かに一理あります。

ガヴィル

そんじゃあ、始めようぜ。

少し丁寧なドゥリン

で、では失礼しますよ!

ガヴィル

すごい火力だな。近づけやしねぇ……

少し丁寧なドゥリン

まだまだこれからですよ! ドゥリン式斬木丸ノコ、起動!

ガヴィル

はは、いいねぇ!

だが、まだまだだな!

少し丁寧なドゥリン

なっ、超高出力のエンジンを素手で止めただと!?

しまった。避けろ、はやく避けるんだ!

ガヴィル

おー、避けたか。

結構うまく動けるように作ってんな。そいつを集落の建設に使うつもりはねぇのか?

少し丁寧なドゥリン

そういう話は終わってからにしてください!

これでも食らえ!

ガヴィル

おっと!

少し丁寧なドゥリン

なにぃ!? 斧で砲弾を止めた!?

ガヴィル

こいつはズゥママが作ってくれた斧なんだぜ。砲弾なんて小石みたいなもんだ!

今度はこっちの番だぞ!

少し丁寧なドゥリン

まずい! 後退だ、はやく後退しろ!

ガヴィル

させるか! アタシのチェーンソーでも食らえ!

ぼんやりしたドゥリン

退いちゃダメ、ここは横に避けるのよ!

鈍いドゥリン

なにバカなことを、前進に決まってるだろ! 距離を縮めないとあのチェーンソーを避けられないだろうが!

少し丁寧なドゥリン

ちょっ、リモコンを奪い合わないで――

ガヴィル

??

何だこの妙ちくりんな動き――後ろに回り込みやがった!?

少し丁寧なドゥリン

二人とも落ち着いてください! そんなんじゃ勝てませんよ!

ガヴィルさん、これでもう逃げ場はなくなりましたよ! さあ覚悟してください、この究極の一撃を――

ドゥリン式無力化ミサイル全方位チャージ攻撃!!!

ガヴィル

まずい、洞窟が!

よりにもよってこんなところで全方位攻撃かよ!!!

ガヴィルはひとつ深呼吸をして、尻尾の力を抜くと、チェーンソーはジャラっと音を立てて地面に落ちた。

そして彼女は両手にありったけの力を込めて大斧を握りしめた。

ガヴィル

ハァッ――!

ぼんやりしたドゥリン

なっ、ど、ど、どこまで飛び上がったのよ!?

大きくジャンプしたガヴィルは、巨大ロボットの足に着地すると、そこから機体の腹部へ駆け上がっていく。

少し平らな場所に差し掛かると、彼女は機体を蹴りつけて再びジャンプした。ロボットが高く掲げていたアームに尻尾を大胆に巻きつけると、勢いのまま洞窟の方へと身を躍らせた。

ヒュウウウウ――

空を覆い尽くす無数のミサイルを見て、ガヴィルは手にした大斧を持ち上げた。

ガヴィル

ハァ、ハァ、ハァ……

こっちにちょっとしか弾が来なかったな。全方位攻撃でよかったぜ……

それに弾頭に爆薬が仕込まれてなくて助かった……少しは手加減ってもんを分かってたようだ……

ヒック。

ん?

少し丁寧なドゥリン

どうしてその洞窟を守ろうとしたのか知りませんが、私たちの無力化ミサイルを食らったからには、もう手遅れですよ!

弾頭の中にアダクリス製のお酒をたっぷりと入れたんです。ドゥリン一番の酒豪でも、立ってることはできないですよ!

ガヴィル

あー……

それで、お前らはアタシが酔っ払って寝っ転がってるように見えんのか?

少し丁寧なドゥリン

そんなバカな!?

なぜミサイルが効いていない!?

ガヴィル

あのさ、ミサイルに入れられる酒なんてたかが知れてるだろ。経口摂取するわけでもねぇし、少しくらい吸い込んだとしても、ほろ酔いになるくらいで、立ってられねぇほど酔っ払うかよ。

少し丁寧なドゥリン

でも私たちには……

ガヴィル

だったら、お前らの酒の強さもその程度ってことだな。

少し丁寧なドゥリン

(激しく顔をこする)

そ、そんなことより! ガヴィルさん、なぜその洞窟のことをそんなに気にするのです? もしや、その奥には醸造設備の奪還を妨害するための秘密が隠されているとか!?

ガヴィル

……

まあいいや。ここまで来たんなら、教えてやるか。

お前らの醸造設備は、この洞窟の中に隠されてるんだ。

酒好きドゥリンたち

な、なんだってェ!?!?

ガヴィル

信じられねぇなら自分の目で確かめてもいいぞ――まあ当然、アタシを倒さない限りは返してやらないけどな。

礼儀正しくなったドゥリン

つまり……さっき上に向かって飛んでいったのは、ミサイルから私たちの醸造設備を守るためだったと……?

鋭くなったドゥリン

それに、最初にジャイアントアルティメットアグリーMkⅢの後ろに回ったのは、戦いの影響を洞窟に及ぼさないため……?

冴え始めたドゥリン

テストの場所を移せと言ってきたのは、私たちが醸造設備を破壊してしまうかもしれなかったから……?

ガヴィル

だから言ったろ、お前らのためだって。

酒好きドゥリンたち

……

礼儀正しいドゥリン

ガヴィルさん……尻尾から血が出ていますよ。

ガヴィル

こんぐらいどうってことねぇよ。

さっき、このロボットに尻尾を巻きつけた時、そこの尖がりかなんかで引っ掻いちまったみたいんだ。

鋭いドゥリン

顔にも傷がついてるぞ。

ガヴィル

そりゃこんなドンパチやってたら、傷の一つや二つぐらいはな。

冴えてるドゥリン

……まだやる気なの?

ガヴィル

お前ら次第だ。

続けたいのなら、付き合ってやるよ。

礼儀正しいドゥリン

えっと……やっぱりまた後にしましょう。

ガヴィル

ああ、アタシもそうしたほうがいいと思うぜ。結局、お前らの究極の一撃とやらはアタシには全然通用しなかったからな。

もちろん洞窟もしっかり人をやって見張ってもらうからな。アタシを倒さずに設備を取り返そうなんて考えるなよ!


ガヴィル

来たか。

おっ、ジャイアントアルティメットアグリーMkⅢも一緒か。

礼儀正しいドゥリン

今はもうMkⅣですよ。

ガヴィル

アップグレードも早いじゃねぇか、悪くねぇ。

それじゃ今から始めるか?

礼儀正しいドゥリン

少々お待ちを。

ドゥリンはリモコンを手に、ガヴィルにも巨大ロボットにも目をくれず、ただ空を見上げて、ブツブツと何かをつぶやいていた。

礼儀正しいドゥリン

ガヴィルさんがこう来たら、こっちはこうして……

で、こっちがこうすると、ガヴィルさんはこうするから……

それでガヴィルさんがああした後に、こっちはこうしておけば――

あとは……

しばし何かを考えた後、ドゥリンは再び前を向いた。

礼儀正しいドゥリン

よし、では始めてもよろしいですか?

ガヴィル

よし、かかってこい!

ガヴィルは姿勢を低くして、巨大ロボットの攻撃を待ち構えた。

ドゥリン人が手にしていたリモコンのボタンを、ぐっと押し込む。

巨大な爆発が起きた。だが……ガヴィルはまったくの無傷だった。

彼女はポカンとした顔で、爆発してガラクタの山になったロボットを見た。

ガヴィル

ど――どういうことだよ?

礼儀正しいドゥリン

前回一戦を交えた後、私たちは多くの改造を施しました。ただテストの結果、いくら改造をしても、この機体ではあなたに勝てないのは明らかだったんです。

そして、私は最後の技を思いつきました。即ち自爆です!

ガヴィル

だからって、こんなに早く自爆する必要はねぇだろ?

礼儀正しいドゥリン

……私はさっきまで、あなたがどういう動きをするか予想を立てていたんです。

そして、一つの結論に至ったのです。たとえ自爆をしても、あなたに勝てる見込みはありません!

だからこそ、潔く負けを認めたことの証として、あえてこうしたのです!

ガヴィル

マジかよ。ズゥママに、そいつを工業用ロボットに改造させるつもりだったのに!!


ガヴィル

お帰り、イナム。

トミミ

お帰りなさい!

イナム

みんな元気そうね。

トミミ

こんなに早く帰って来たってことは、順調だったんですね!

イナム

まあ順調だったわよ。事前に色々と仕掛けをしておいたおかげで、宮廷はまったくアカフラに興味を示さなくなったわ。

そっちはどうだったの? いつも通り?

トミミ

はい、いつも通りです! ドゥリンたちもガヴィルさんの指導のおかげで、しっかりと禁酒を守っていますよ!

イナム

なによガヴィル、上手くやってるじゃない。

それで、ドゥリンたちと付き合ってみて、どうだった?

ガヴィル

悪くなかったぜ。

ぱっと見は頑固だしふざけてるけど、根はいい奴らだ。

イナム

じゃあ、どうやってお酒を飲みたがる人たちを宥めていたの?

ガヴィル

まあ、主に拳でな。

イナム

殴ったってこと???

トミミ

そんなことはしてませんよ! ガヴィルさんに勝てたら醸造設備を返すって、彼らと約束したんですよ! でもみんなガヴィルさんに負けちゃったんです!

イナム

そ、そうなのね。

いや、でもそれって一通りぶちのめしたのとあんまり変わらないような気がするんだけど。

とりあえずちょっと様子を見に行きましょう。


冴えてるドゥリン

あらイナム、帰ってきたのね!

イナム

こんにちは。

冴えてるドゥリン

はいこれ、私たちの試合のビラよ!

イナム

試合?

冴えてるドゥリン

そう、試合!

それじゃあ、私はまだミード愛好家協会の仲間たちとの打ち合わせがあるから、ここで失礼させてもらうね!

イナム

試合って……第三回ギガンティックアルティメットアグリー杯……自走ロボット対戦選抜競技会ですって?

優勝したロボットはガヴィルと勝負する権利がもらえて……ガヴィルに勝てたら、醸造設備を取り戻すことができる……

トミミ

イナム、顔色は良くないですよ。もしかして頭痛ですか?

イナム

はっきり言って、その通りよ。

……

まあいいわ。今回ガヴィルに任せっきりにしたことについては、それなりの覚悟はしてきたんだし。

ドゥリンの集落に行ってみましょう。こんな大会が盛り上がっているくらいなら、きっと集落の建設も終わってることでしょうね――

あら、あれってエッジ先生じゃないの。彼も大会に参加しているのかしら?

エッジ

だからなぁアヴドーチャよ。私はもう準決勝まで進んどるんだ! あと一戦、あと一戦だけ、頼む!

アヴドーチャ

イナムさん? そちらにいらっしゃるのはイナムさんですわよね!

ようやく戻ってきてくださいましたのね! 急ぎエッジ先生を説得してくださいまし! この自走ロボット対決とやらを中止させてください!

イナム

ねえガヴィル。

ガヴィル

なんだ?

イナム

あんた、ドゥリンに禁酒を続けさせるためにこんな試合を企画したんじゃないでしょうね?

ガヴィル

そう言われると……そんなとこかな?

イナム

じゃあドゥリンたちの集落は一体どうなってるのよ!?

ガヴィル

あっちを見ろ。

ガヴィルの示す方に目を向けると、巨大なロボットがこちらに迫ってきているところだった。

何人かのドゥリンがロボットとの間に安全な距離を保ちながら操縦して、二人の前を悠々と通り過ぎていった。

イナム

あのセルカーとビッグ・アグリーを融合させたような変な機械は一体なんなの……?

ガヴィル

確か「ジャイアントアルティメットアグリーMkⅤ」ってドゥリンたちが呼んでるな。

イナム

……

ガヴィル

まだまだアタシにゃ敵わねぇが、ズゥママとダイコークたちの頑張りもあって、工業用ロボットとしてはまずまずの及第点ってとこかな。

お前がもうちょっと遅く戻ってきてたら、ドゥリンの集落はきっと完成してたはずだ。

イナム

……

私、夢でも見てるのかしら。

ガヴィル、一発殴ってちょうだい。

痛っ!

……

これは現実だわ。

トミミ

ガヴィルさん、ガヴィルさん!

ガヴィル

どうした?

トミミ

今回の選抜競技会の優勝者が決まりました。それで、ドゥリンたちが早くガヴィルさんと勝負しろって、騒ぎ始めてるんです!

ガヴィル

というわけだ。どうだイナム、久しぶりにアカフラ流の勝負を見に来ねぇか?

イナム

……

喜んで。