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「親愛なる友人たちへ。アタシは道の途中でこの手紙を書いてる……」

「何事もなければ、この手紙はアタシよりも先にサンクト・グリファーブルクに届くはずだ。とはいえ、年末までには街に戻り、皆で新年を祝うことを諦めたわけじゃない。」

「サンクト・グリファーブルクを離れたあと、ザモレスやトゥーリスカヤを渡り歩いた。そこで、首都の周辺に住む人々が、どうやって生きて、耐え忍んで、死んでいくのかを初めて知った。」

「集会にもいくらか顔を出したし、デモにも何度か参加した。手違いで何日かムショに入れられたりもしたが、心配しなくていい……」

キキーッ!

車夫

(無言でドアを叩く)

ズィマー

どうした?

車夫

送れるのはここまでだ。ペトロドヴォレツの手前まで来たが、前方で懐中電灯の光がちらついてるのが見えてな。警察が捜査してやがるんだろう。

出発前に約束した通り、俺はあんたのために危険を冒すつもりはない。

ズィマー

わかった。アンタの子供によろしくな。たしか「イヴァン」って名前だっただろ?

車夫

気遣いはいらねぇよ。金をもらった以上、あんたのことは誰にも漏らさん。

ズィマー

おい、アタシはそういうつもりじゃ――

……

ペトロドヴォレツは、比較的温暖なサンクト・グリファーブルクの航路付近に位置している。しかし冬が近づくこの時期は、骨を刺すような冷たい風の猛威から逃れられない。

枯れかけた木々は強風に抗う術もなく、枯れ枝が折れる音と、それに驚く羽獣の鳴き声が絶えず響き渡る。

ズィマーには、車夫が言っていた懐中電灯の光も見えなければ、風の音に紛れて警察が捜査をする音も聞き取れなかった。

ズィマー

まあそうだよな。酔っ払いすら凍死するような夜に、温室育ちの巡査どもがわざわざ街の外まで捜査に出るわけねぇ。

もうペトロドヴォレツの近くまで来たし、まずは寝泊まりできる場所を探すか。それからジュナー教官と連絡を取って、サンクト・グリファーブルクに戻る手段を考えよう……

ズィマーは書きかけの手紙を折りたたみ、懐にしまいこんだ。そして道沿いの枯れ木の幹を支えにしながら、少し先で光がまばらに灯る町へと歩き出した。


ズィマー

アンタが泊めてくれて助かったぜ。

盲目の老人

お前さんが勝手に上がり込んできたんじゃろう。

ズィマー

でもアンタはアタシを追い出さなかっただろ。おまけに温かいオーツ麦の粥までくれたしな。

盲目の老人

他にどうしろと言うんじゃ。私が腕力でお前さんに敵うとでも?

ズィマー

スラグ通り51番地、ここの住所は覚えた。サンクト・グリファーブルクに戻ったら、ちゃんと宿代を送る。

盲目の老人

サンクト・グリファーブルク? お前さん、あの街から来たのか?

若々しい声をしとるし、言葉遣いからして大学生あたりじゃろう。なぜわざわざこんな場所まで来て凍えておる?

ズィマー

勉強のため……チッ、少なくとも最初はそのつもりだったんだ! でも、鎌の握り方とか、小麦の収穫方法とか、講義室じゃ教えてもらえないことばっかりでよ。

盲目の老人

どうやら、満足に勉強できとらんようじゃな? でなければ、そうして尻尾を巻いて逃げ帰ることもあるまい。

ズィマー

ちょっとした面倒事に巻き込まれてな。仲間ともはぐれちまった。

ズィマーは空になった器を置き、口元を拭った。

ズィマー

アタシの名前は、トゥーリスカヤの「危険分子リスト」にまで載っちまった。もしアンタが気にするなら、すぐに出ていこう。

盲目の老人

くだらんことを。私は三十年も目が見えとらんのじゃ。お前さんの顔などわかるはずもなかろう。

仮に見えたとして、このやつれた足でトゥーリスカヤの尖ったコンクリートビルまで行って、壁に貼り出された指名手配とお前さんの顔を見比べろとでも言うのか?

ズィマー

なんでその建物を……いや、アンタの若い頃は、ちょうどトゥーリスカヤが拡張工事をしてた時期か。そりゃ行ったことがあって当然だ。

盲目の老人

食べ終わったか? なら、さっさと器を洗うんじゃ。

ズィマーは外に出て、慣れた手つきで雪をかき集めてくると、器の汚れをこすり取った。水より少しばかりとろみのついた粥だったため、洗い落とすことは簡単だった。

盲目の老人

……

お前さん、何をやらかしたんじゃ?

ズィマー

トゥーリスカヤでか?

盲目の老人

まさか常習犯なのか?

ズィマー

いや、アタシは……普通の学生だ。


最初は、アタシもただ呼ばれただけの客だった。

若いヤツらの指導者が、集会で外国から持ち帰った最先端の理論を力説してきてな。そいつらの「ちょっとした団体」に入るよう誘ってきたんだ。

そいつらは、ひたすら討論を交わしてた。この大地のあらゆる国家の優位性と問題について、知らないことなんてないみたいに雄弁に語ってた。

サンクト・グリファーブルクから来た学生が、票と支援を集めるのに役立ってくれると本気で期待してたんだろうな。


後になって、そいつらはアタシが政治の駆け引きなんて何も知らないってことに気づくと、急に距離を置き始めた。

その頃、アタシは労働者、医者、教師の家を訪ね回ってた。彼らの暮らしを知って、客観的な事実に基づいた記事と報告書を書くためにな。

でもその人たちが食卓で交わすのは、天気とか、交通事情とか、缶詰に入った豆の数の話ばかりだった。ある種の話題になると、わざとらしく話を逸らし始める。まるで長年染みついた習慣みたいに。

だがアタシには、はっきり見て取れた。その人たちが苦しみ、自分を麻痺させてることが。


アタシは荷物を差し押さえられて、ノートも隅々まで調べられた。ここにはもういられないんだと悟ったよ。

だからアタシは農村に向かった。そこでは農民たちと雪害に見舞われた小麦を収穫することになったが、ケンカに明け暮れてきたこの手じゃ、麦をこぼしてばかりでほとんど役に立てなかった。

その場所では、もっと多くの人が苦しんでた。その人たちは忍耐力こそあったが、自分の苦痛を言葉で表現できなかった……

どうして自分たちは幸せになれないのか。どこから生活の不幸が来てるのか。それに、そういうことを誰に聞けばいいかすらも知らなかった。

あの若いヤツらのリーダー気取りが主張してた、数えきれないほどの理論、政治体制、戦略、方針が頭をよぎった……でも、現実って名前の土壌に根づくものは一つもなかった。


ズィマー

もう少し後になって、街の学生と商人がストライキやデモを呼びかけてるって話を聞いた。だが、それも外国から密輸した武器を売りつけるためだった……その理由が、アタシには理解できなかった。

もっと理解できねぇのは、その件で捕まった連中がアタシの名前を出したことだ。あの時、アタシは街にすらいなかったのにな!

盲目の老人

なら、お前さんはその時何をしとったんじゃ?

ズィマー

……

良心ってもんが抜け落ちた徴税官をとっ捕まえてた。

盲目の老人

ふん、くだらんことを!

出まかせばかりの政治家だとか、真理を見つけたと思い込んだ学生だとか、四六時中とぼけてばかりの役人だとか、そういう話はもういい。黙っとれ!

ズィマー

……

盲目の老人

その理論や戦略とやらが、作物のように勝手に土から生えてくるとでも思っておるのか?

外国の情報がそう簡単に手に入ると思うか? その学生どもが、本当に自力でその「理論」とやらを見つけたとでも?

お前さんが知識に触れるための経路は、全てそやつらに握られておる。つまり、そやつらが知るのを許したことだけしか知らんということじゃ!

滅茶苦茶に荒らされた荷物のことを忘れるな。あれこそが、そやつらが私たちに長年繰り返してきた所業じゃ!

わかったら、二度と喋るでない!

ズィマー

ずっと喋ってんのはそっちじゃねぇか。アンタには道理ってもんがねぇのか!?

盲目の老人

ウルサスで道理が通るなら、お前さんはここにおらんじゃろう? 理屈をこねたいなら、出まかせばかり抜かす小僧どもと話してくるんじゃな!

ズィマー

アイツらは、少なくともこの国の活路を見出そうとしてる。誰かさんみたいに部屋であぐらをかいてぼーっとしてるわけじゃねぇ。

盲目の老人

なんじゃと! 追い出されたいのか!?

ズィマー

アンタじゃアタシには敵わねぇ。自分でそう言ってたよな? それに金は払うんだから、悪くはねぇだろ。

盲目の老人

ふん、口約束を真に受ける趣味はない。泊まった分だけ働いてもらうぞ。

ズィマー

何すりゃいいんだ?

盲目の老人

玄関に新聞が積まれとるじゃろ? 前に新聞を読み聞かせてくれた奴は死んでしまってな。やる気があるなら残るといい。

ズィマー

そんなことなら……

お安いご用だ。


「アタシは今、一時的にペトロドヴォレツの盲目の老人の家に身を寄せてる。」

「老人の言葉の端々には、ただならない過去が見え隠れしてる。それに、あの話し方にもどこか聞き覚えがある。もしかしたらサンクト・グリファーブルクから来たんじゃないか?」

「今のウルサスでは、才能や志を持った人がどれだけ荒野で朽ちていくんだ? そう考えるとやるせなさを感じてくる。」

「アタシがサンクト・グリファーブルクを離れる時、皆に約束したよな。この国を見つめ直して、入り乱れた声の中からただ一つの正しい道を見つけ出すって。」

「でも今は……」

ズィマー

今日の新聞が届いたぜ。最初から最後まで読んでやろうか?

盲目の老人

いや、少し待て。

お前さん、納得できとらんようじゃな。

ズィマー

……?

盲目の老人

私が昨晩話したことは、全てがただ怒り任せに放った言葉というわけではない。

ズィマー

なんとなくだが、アンタがいろんな経験をしてきたのはわかる。でも、別にアンタの過去を詮索するつもりはねぇ。

盲目の老人

もしお前さんが、私の経験してきたことを知れば――

ズィマー

「詮索するつもりはねぇ」って言っただろ。

サンクト・グリファーブルク周辺の街を回って、去年のアタシが一生のうちに出会うだろうと想像してた何十倍もの人と出会った。どいつも腹の底に言いたいことを山ほど溜め込んでやがる。

そこから学んだのは……人伝てに話を聞くんじゃなくて、自分の目で見るべきだってことだ。それにアタシは前を向く方が好きでな。古いもんより新しいもんの方がいいと信じてる。

盲目の老人

ふん、話すつもりなどなかったわ!

新しいものか……この太陽の下にもう新しいものなどない。さっさと新聞を読み上げるんじゃ!

ズィマー

一面トップ記事は、帝国議会第七十……

盲目の老人

待て。『朝刊サンクト・グリファーブルク』のようなゴミは読まんでいい。

ズィマー

他には『首都新聞』と『学報』もあるが……文句がねぇなら、適当に選んで読むぜ。

「ロンディニウムが我々に示した警告とは? 帰国した学者が立憲君主制の成功と失敗について公開演説を行う予定。」

「異国の奇跡、都市はまもなく空へ! 空こそがウルサスの未来である。」

「富はどのようにして力を形作るのか? 富による戦争は、常に砲火による戦争を上回る!」

……

「帝国理工大学の名誉を汚すべからず。風説の流布には然るべき処罰を。」

「暴徒の蛮行――抗議デモを装い、街中で無実の市民を暴行。首謀者はすでに処刑された。」

「トゥーリスカヤの殺人犯、他の街へ逃亡。情報提供者に……」

ズィマー

アンタ、ただ聞いてるだけなのか?

盲目の老人

何か意見する必要があるかね? 評論家どもが記事に並べた御託で十分じゃろう。

ズィマー

こういう記事を読み上げられて、何も感じねぇのか? ウルサスの未来を見出そうってヤツらの情熱に、少しも心を動かされねぇのかよ。

たとえばこの記事だ――

「クライニ・セーヴェルの坑夫が受けている不当な扱いが、民衆の憤りを呼んでいる。同様に劣悪な環境にある鉱区でも、生き残りと自由を求める反乱が相次いで発生している。」

この記事、この民衆、この坑夫たちは……アンタにとってどんな意味を持つんだ?

盲目の老人

誰かが死に、誰かが生き残る。それだけのことじゃ。

取るに足らんことを大げさに言うでない。

ズィマー

じゃあ、なんで新聞なんか気にしてんだ? 何が書かれてようが、どうせアンタとは関係ねぇのに。

盲目の老人

私が新聞を気にしとるのは、この大地にどんな変化が起きているかを知りたいからじゃ。もっとも毎日失望させられてばかりだがね。

毎日が同じことの繰り返し……ウルサスで発行されておる新聞を全て買ったところで、新しいことなど一つも見つからん。

ズィマー

……それはあり得ねぇだろ。

盲目の老人

あり得るとも。言ったじゃろう、お前さんは大げさだと。

ズィマー

「1101年7月、ヴィクトリアから帰国した学者が、ロンディニウムの戦争から立憲君主制と議会制度についての新たな見解を提唱して……」

盲目の老人

1032年1月、ガリアに滞在していた生存者が、有名な「四皇会戦」から立憲君主制と議会制度についての新たな視点を提唱し、帝国議会で公開演説を行った。

ズィマー

「……帝国議会で公開演説を行った……」

盲目の老人

その学者も、一ヶ月後に事故を装って秘密裏に処刑されるだろう。

ズィマー

「……本日早朝、自宅で死亡しているのが発見された。死因は……花粉によるアナフィラキシーショック。」

盲目の老人

そやつの教え子や家族もまた逃亡を試みて、国境付近で死ぬじゃろう。もちろん、死因は駄獣車の事故から源石動力車の事故に書き換えられるだろうがね。なにせ時代は進歩しておるんじゃ。

薪の横に古い新聞が積んである。好きなだけ漁るといい。

私はもう聞き飽きた。

ズィマー

……


「一度封をしたはずの手紙をまた開けた。今夜の出来事は、絶対に書き留めないといけないと思ってな……」

「例の老人はまさかの新聞コレクターで、いろんな新聞を百年分近く集めてた。でも、一番驚いたのはそこじゃない。」

「前に話した、アタシらが他の都市でやってきたことを覚えてるか? 思い上がってたよ。あんなことをしたのは、アタシが初めてじゃなかったんだ。」

「何十年も前の新聞にも同じ志を持ったヤツが載ってたが、そいつですら最初じゃなかった。」

「アタシらが叫んだスローガンは、とっくに何千回も何万回も叫ばれてた。アタシらが自分で切り拓いたと思ってた道は、実は何百年も前から存在してて、誰も最後まで走り切れなかった道なんだ!」

「……でもそれ以上に恐ろしいのは、その全部が何度も何度も繰り返されてきたのに、ほとんどのヤツが気づいてねぇことだ。」

「なんとなく思うんだ。あの老人も昔はアタシらと同じだったんじゃねぇかってな……」

ズィマー

「本日、十七の移動都市の大学生が連名で陛下に陳情を直訴した。感染者の待遇改善と鉱物資源の備蓄状況の公開を要求している。」

盲目の老人

感染者の待遇問題は、十年ごとに大規模に取り上げられる。その気になれば、新聞の切り抜きだけで辞書より分厚い本が作れるじゃろう。だが、実を結ぶことは決してない。

全てもう起きたことじゃ。明日を待とう。


ズィマー

「本日、反逆者が国境付近の町を占拠し、ウルサスからの独立を宣言した。彼らは自給自足と全ての人の平等を掲げている。」

盲目の老人

それももう起きたことじゃ。半数は死に、残った奴らは降伏する。明日を待とう。


ズィマー

「本日、反逆者は実の息子に首を切られ、残党は正式に降伏を宣言した。」その次は「何者かがトリマウンツから資料を持ち帰り、貴族に空の開拓計画を売り込んでいる模様。」

盲目の老人

どれももう起きたことじゃ……信じられんのか? 三十年前の新聞を見てみるといい。北原で起きた謎の爆発事故は、何が原因で起きたと思っておる?

明日を待とう。


ズィマー

「ある地域が天災の洪水に見舞われ……」、いや、何も言わなくていい。これも「もう起きたこと」なんだろ。

クソッ、アンタに反論できる記事が一つも見つからねぇ!

……

ズィマーは手にしていた新聞を畳み、複雑な表情を浮かべた。そしてしばらくの沈黙の後、ようやく切り出した――

ズィマー

新聞の話はもうやめだ。アタシが体験したことを話してやる。あんなことまで何度も繰り返されてるはずがねぇ……

盲目の老人

どうやら、よほど尋常でない出来事のようじゃな。話したいなら話すといい。

ズィマー

アンタは……以前チェルノボーグで起きた出来事を知ってるか?

盲目の老人

いつの出来事じゃ?

ズィマー

五年前だ。

あれも今と同じ冬だった。子供たちは親と離れた場所で、同じ学校に閉じ込められて、生きるために必死で足掻いた。食べ物も、説明も、約束もないまま……

それどころか、あの状況を「仕組んだ」連中が何を考えてたかすら理解できねぇんだ!

あんな出来事まで……アンタの言う「繰り返し」とか、「循環」みたいなことの一つだなんて、アタシは信じねぇ。

ズィマーはわざとらしく笑った。

ズィマー

ははっ、言い返せねぇみたいだな。アタシの勝ちだ。

盲目の老人

……確かに。

似た話は聞いたことがない。

だが、お前さんは生き残った。そうじゃろう?

ズィマー

は? いや、論点はそこじゃ……

盲目の老人

誰かが死に、誰かが生き残る。

多くの出来事をそう単純に分類すべきではないとわかってはおる。しかし何より悲惨な記憶に直面すると、人はもう逃げ出すことができん。ただ自分にそう言い聞かせるしかないんじゃ。

ズィマー

……それ、どういう意味だ?

盲目の老人

明日を待とう。

ズィマー

おい、ちゃんと説明しろ――


ズィマー

今日の新聞はまだ届いてねぇな。

盲目の老人

なら昨日の続きを読んでくれ。

大雪で道が通れんのじゃ。雪が溶けたら、配達員がまとめて届けに来るじゃろう。

ズィマー

配達員はどこに住んでんだ?

盲目の老人

私よりお前さんの方が新聞を読みたがっているようじゃな。どうした? 昨日の新聞に何か気になることでもあったかね?

ズィマー

言ってなかったが、昨日の新聞にアタシの顔写真が載ってた。だが名前は別人のでな。どうやらトゥーリスカヤで貴族の将校を殺した学生集団が、ペトロドヴォレツの近くに逃げ込んできたらしい。

盲目の老人

そやつらとは知り合いなのか?

ズィマー

いや、知らねぇヤツだ。それにヤツらは道中で……民間人まで惨殺し続けてるそうだ。

盲目の老人

……

ズィマー

そいつらの行方を把握しねぇと……アタシの仲間たちが新聞でその顔写真を見たら……

盲目の老人

……そうか。

粥を食べ終わったら、ちゃんと器を洗わんか。

出る時は戸締りを忘れるでない。風が吹き込んでこんようにな。

ズィマー

え……?

盲目の老人

私は目が見えんだけで、耳が聞こえんわけではない! お前さんの生死など知ったことじゃないが、雪には埋もれんようにな……まったく、器を置きっぱなしにしおって。帰ったら洗うんじゃよ!

新聞に目新しい記事がないなら、わざわざ持ち帰る必要はない!

老人は返事を待つこともなく、玄関近くの椅子に腰を下ろした。


ズィマー

ひどい吹雪だ……!

早く雪と風を凌げる場所を見つけねぇと!

なんだ……? 向こうから誰か来てねぇか!?


逃走中の学生

あのクソ警官どもは、俺たちに気づいていないみたいだ……よし、先を急ごう。

負傷した学生

ボス、ちょっと休ませてくれよ!

逃走中の学生

歩けないなら置いていく。おい、そっちのお前はまだ歩けるのか?

不安げな学生

いや! 歩けるから置いていかないで! 連れ出してくれるって約束したじゃない!

逃走中の学生

「連れ出す」? どこにだ? トゥーリスカヤから連れ出して、道中の見張りも全部迂回してやったんだぞ。まだ足りんのか?

ナイフすらまともに握れないくせに喚きやがって! お前らが夜に焚き火をしたせいで、警官に気づかれたんだ。そのお陰で吹雪の中を逃げ回る羽目になったんだぞ!

よく覚えておけ、俺たちが殺したのは全て罪人だ。俺たちこそが正義なんだ!

負傷した学生

(袖を引っ張る)ボス……

逃走中の学生

黙ってろ!

負傷した学生

でも、そこに……誰かいて……

手が血で染まった学生は、はっとして振り返る。全身雪まみれの人物が、杖をつきながら必死で岩壁の影に身を隠そうとしていた。

退避した通行人

すみません……僕はただ風を凌げる場所を探してるだけで、邪魔をするつもりは……

本当にただ新聞を届けにきただけなんです――ほら、鞄には新聞しか入ってないでしょう。

負傷した学生

(小声)ボス、今日の新聞に俺たちの指名手配が……

不安げな学生

ダメ、もう人を殺すのはやめて!!

退避した通行人

殺す? 一体何をするつもりなんですか!?

遠くの警官

あっちで物音がしたぞ! ついてこい!

通行人は、何かを叫ぼうと口を開いた――その瞬間、学生は血まみれの手を相手の首元に伸ばし、力づくで締め上げていた。

もう一人の男子学生もすぐに反応し、相手の腕を押さえつけて杖を奪い取る。

不安げな学生

お願いだから……声を出さないで!

通行人の抵抗は、次第に弱まっていった。

逃走中の学生

警官は行ったか?

負傷した学生

あ、ああ……

不安げな学生

この人……死んじゃったみたい。

負傷した学生

俺が……殺したのか? いやまさか……

逃走中の学生

黙れ! この間抜けが!

次はお前たち二人でやれ。わかったか? 俺一人に全ての罪を背負わせるな!


盲目の老人

粥がもうすぐできると言うのに、なぜまだ新聞を持って帰ってこんのだ?

本当に雪に埋もれたんじゃないだろうな……まったく、世話の焼ける子じゃ。

ドアの外の声

ボス、もう無理だ。これ以上歩けないよ!

役立たずが! 仕方ない、このボロ小屋で休むか……ん? 待て、煙突から煙が出てるな。

中に誰かいるぞ!

盲目の老人

誰じゃ? 静かにしてくれ。警官が寄ってきたら、私の貯め込んだ食料を全部没収されかねん!

逃走中の学生

悪いが、俺たちもあのクソったれの警官どもから逃げてるんだ。少し中で休ませてくれないか?

盲目の老人

そう言いながら、もう勝手に入ってきとるじゃないか。

逃走中の学生

おい、はやく扉を閉めろ。

机に食器が二人分か……家族はどこにいる?

盲目の老人

ああ、あやつは新聞を取りに行っとるよ。

ここに来る途中で、うちの子を見んかったかね?

逃走中の学生

生きてる人間は見てないな。

不安げな学生

お爺さん……この家の中、新聞だらけね……

盲目の老人

見ての通り、私は目が見えん。誰かに読んでもらうしかない。

不安げな学生

(小声)この人、私たちの顔が見えてないんだ……だったら殺さなくても――

逃走中の学生

爺さん、はっきり言わせてもらう。こんなに新聞を集めて何になるんだ? どれもこれも平穏を装った嘘ばかりじゃないか!

盲目の老人

私はただ変化が訪れるのを待っているだけじゃ。その辺りの新聞は好きに読めばいい……そうすればすぐに気づくじゃろう、この世に新しい出来事などありはせんと。

逃走中の学生

そんなはずがない! 今まさに偉業を成し遂げようとしている者たちを知っている!

悪徳貴族も汚職官僚も殺してきたんだ! 学生は虚弱で無力だなんて、もう誰にも言わせないぞ!

盲目の老人

そのようなことは珍しくもない。もう何度も起きたことじゃ。お前さんたちは忘れとるかもしれんが、その殺された官僚や貴族もかつては学生だった。

逃走中の学生

違う! 時代は変わったんだ。今はまさに激動の時代で……

盲目の老人

どの時代も、激動の時代だと言えるものじゃ。

逃走中の学生

このジジイ!

不安げな学生

お爺さん、お願い……あまり喋らないで。

盲目の老人

ハハ、構わんよ……

迷える若者たちよ、安心するといい。あの子がもうじき帰ってくるはずだ。そうしたら、町の保安官に頼んでお前さんたちを安全な場所まで送らせよう。

こんな雪に閉ざされた山村にいたら、慣れん環境で体調を崩してしまうだろう。

ひとまず、粥をよそって食べるといい。少しは温まるはずだ。

ボスと呼ばれた学生は、ますます顔を曇らせていった。もう一人の男子学生は、袖で何度も額の冷や汗を拭っている。

負傷した学生

(小声)どうしよう……俺たちがさっき殺したのって……

逃走中の学生

(小声)その杖をよこせ。

負傷した学生

(小声)正気か? 爺さんに自分の息子の持ち物だって気づかれたら、どう言い訳するんだ?

逃走中の学生

(小声)なぜ……言い訳をする必要がある?

不安げな学生

……

(小声)でも……相手はただの目の見えないお年寄りよ……

逃走中の学生

(小声)食べ物を持ち帰ったり、世話してくれる息子がいなくなった今、この老いぼれが吹雪の中で何日生きられると思う? 半日、いや一日ってところか?

(小声)なぜこんなに善良な魂を、無駄に苦しませる必要がある?

負傷した学生

……

盲目の老人

ゴホッ、ゴホゴホッ……早く食べろ、粥が冷めてしまうだろう。

ボスと呼ばれた学生は、女子学生の手に杖を押しつけると、彼女をきつく睨みつけた。

逃走中の学生

やれ!


ドアの外の声

帰ったぞ。

あの配達員、なかなかいいヤツだったぜ。吹雪で帰れないだろうって、郵便局の小屋で一晩温まらせてくれてな。おまけに、今日首都に行くトレーラーの運転手に話をつけてくれた。

何もなければ、すぐにサンクト・グリファーブルクまで戻れるぜ!

最初は新聞に載ってた指名手配の写真を見られてねぇか心配だったんだけどな。そいつはなんて言ってたと思う?

ズィマー

「今どき、誰が新聞なんか読むんだ? 仮に読んでたとして、誰が真に受けるんだ?」だってよ。

……あれ?

床に散乱した新聞が、吹き込んできた風に煽られ、まるで悪戯好きの子供のように纏わりつく。ズィマーは辺りを見回したが、盲目の老人の姿はどこにもない。

彼女が呆然としていると、手にしていた新しい日付の新聞が突風に吹き飛ばされた。それは部屋じゅうに散らかった古い新聞に入り混じり、共に踊り狂う。

ズィマー

そんな……


配達員

あれ、どうして戻ってきたんだ? トレーラーが来るまでまだ少し時間があるぞ。

ズィマー

あの老人が家にいなくてな。ったく、手間かけさせやがって。ここを誰か通らなかったか?

配達員は首を振り、ズィマーが握りしめているくしゃくしゃの新聞に視線を移した。

配達員

今日の新聞もどうせつまらないんだろうって、散歩にでも出かけてるんじゃないか?

ズィマー

こんな吹雪の中で、目の見えない老人がか!?

ズィマーはため息をつき、くしゃくしゃの新聞を配達員の前の机に投げつけた。

ズィマー

とにかく、アタシは探し続けねぇと。もし見かけたら……ん、こいつは何だ?

くしゃくしゃの新聞が、命を得たように机の上でゆっくり開いていく。すると一面のトップ記事が露わになった。

ズィマーはその新聞を持ってあちこち駆け回っていたが、記事を目にするのはこれが初めてのことだった。

『ペトロドヴォレツ・エクスプレス』――独居老人、惨殺される。犯人は目下逃亡中の……

ズィマー

……

……バカな!

ズィマーは反射的にドアへと走り出そうとした。しかし一歩を踏み出した瞬間、背後から見えない縄で繋がれているかのようにぴたりと足を止める。

彼女はゆっくり振り返ると、平然とした表情の配達員をじっと見つめた。

ズィマー

……もしこれがついさっき起きたことなら、なんでもう新聞に載ってんだ?

答えろ!!

配達員はようやく梱包する手を止め、ズィマーに向かって肩をすくめてみせる。そして、聞き覚えのある言葉で答えた――

配達員

もう起きたことだからさ。

この辺りに住んでる人はみんな知ってる。誰も口に出さないからって、忘れたわけじゃない。

机の上の新聞は、弱々しい反発力で少しずつ開き続ける。これまでは見えなかった日付が、ついにズィマーの目に入った。

ズィマー

三十年前の……今日。

コイツは……昔の新聞だったのか。

配達員が、ポケットから一通の手紙を取り出す。それはズィマーがまだ投函していないあの手紙とよく似ていた。

配達員

あんたが落としていったものだ。

彼が今ポケットから取り出したばかりなのに、なぜ自分が「落とした」ことになっているのだろうか?

ズィマー

どれ、手紙にはなんて……


「みんな、私はもうサンクト・グリファーブルクに戻れないかもしれない。」

「私の手は血で染まってしまった。罪のない人から奪った杖で、善意で受け入れてくれた盲目の老人を殴り殺したの。」

「何度も何度も自分に言い聞かせようとした。仲間の言葉を借りるなら、老人の息子を殺したのは生きるために仕方ないことだったんだって。」

「お世話をしてくれる息子を失った盲目の老人なんて、一人じゃもう長くは生きられない。だから私は老人の苦痛を減らしてあげたんだ――そう自分を騙すしかなかった。」

「あと少しで、自分を騙しきれるところだった……」

「あのお爺さんの本当の息子が、皮を剥いだ獲物とクロスボウを持って、玄関のドアを開けるまでは……」

「その時になってやっと気づいた。私たちは無実の配達員を殺して、思い上がったまま善良なお爺さんまで殺してしまったんだって。」

「私はその場を逃げ出した……戻った時には、床には四つの死体が転がってたわ。」

「私にはわからなかった。誰が誰で、誰が善で誰が悪なのか。何もかもわからなかった……」

「だから私は、木炭で自分の両目を焼き潰した。」

「みんな、私はもうサンクト・グリファーブルクには戻れない。ここに留まることにするわ。運命がどれだけ時間を残してくれても、私はずっと……」

「誰かが死に、誰かが生き残る。」

「多くの出来事をそう単純に分類すべきではないとわかってはおる。しかし何より悲惨な記憶に直面すると、人はもう逃げ出すことができん。ただ自分にそう言い聞かせるしかないんじゃ。」


盲目の老人

お前さん、ここにいたのか。

道中で行き違いになったようじゃな。お前さんが一晩中戻ってこないから、仕方なく探しに出ておったんじゃ。

ズィマー

……

盲目の老人

だが、無事なら安心じゃ。私は帰るとしようかね。

ズィマー

待ってくれ。

ここまでの道はかなり険しいはずだが、怪我をしなかったのか? だとしたら……この道、何度も歩いてきたんじゃないか?

盲目の老人

過去を思い出すたびに、この道を歩き直す。

目が見えんことで転んでも構わん。次からは石やくぼみを避けられるようになる。

何度も転び、何度も痛い目を見れば、自ずと正しい道をしっかり歩けるようになるものじゃ。

ズィマー

アンタの言う通りみてぇだな。全部、もう起きたことだ。

盲目の老人

最初からそう言っとるじゃろう。

ズィマー

でも、アタシが間違ってるってことにはならねぇ。

天気は変わるし、道も変わる。そもそも道だって、人が一歩一歩踏み固めてできたもんだ。

アンタの膝に泥がついてるぜ。ずっとこの道を歩いてきたのに、今日も転んだんだろ?

盲目の老人

私には見えん。好きに言うといい。

配達員

コホン、一応自分からも……泥がついてるのは本当だ。

ズィマー

アタシはやっぱり信じてんだ。毎日、昨日とはちょっとずつ変わってるってな。たとえほんの少しの変化だとしても、祝う価値は十分にある勝利だ。

その変化は、まだ道を形作るには足りないかもしれねぇ。外国の経験や理論が、ウルサスの土壌に根づくのは難しいのかもしれねぇ。だが、アンタの言葉を借りるなら――

真にウルサスの未来にある道は、ウルサスの土壌から芽吹く。それは今日かもしれねぇし、明日かもしれねぇ……

でも、絶対に昨日なんかじゃねぇ!

盲目の老人

そんな言い方はしとらんはずだが……まあいい、また私が正しかったということにしておこうかね。

ズィマーは外に出て雪を掴んでくると、念入りに凍え切った老人の手にこすり合わせた。

ズィマー

アタシはもうサンクト・グリファーブルクに戻らねぇと。わりぃけど、使った器を洗う時間はなさそうだ。

サンクト・グリファーブルクの人に伝えたいことはあるか?

盲目の老人は首を横に振り、ズィマーの質問に答える代わりに、これまでより優しい口調で言った。

盲目の老人

チョークで描かれた円に閉じ込められたアリには、外の道など見えはせん。だが、もしお前さんには見えているなら――

郵便局の小屋の外で、トレーラーが急かすようにクラクションを鳴らす。老人は言いかけた言葉を飲み込み、別れの挨拶を口にするしかなかった。

盲目の老人

お前さんが、過去にない道を本当に切り拓けることを祈っている。

配達員

出発の時間だ!

そうだ、一つ面白い記事を見つけたんだ。もしあんたらがまだ今日の新聞を読んでないなら……

殺人事件を起こして逃亡してた学生たちは、空腹のあまり毒のある木の実を食べてしまったみたいだ。それで親切な人に病院へ運ばれて、すぐに逮捕されたらしい。

どうやら、過去と全く同じってわけでもないみたいだな?


ズィマー

イースチナ、リェータ、グム、ナターリア、ゾーヤ。アタシはもうすぐサンクト・グリファーブルクに戻る。

アタシが年越しまでに帰れない方に賭けたヤツは、ちゃんとカップケーキを用意しとけよ。アタシは死ぬほど腹が減ってんだ!

そっちを出る時、ジュナー教官に言ったんだ。この旅で、ちゃんと理解したことのなかった祖国の姿をはっきり見ることができたら、どんなに険しい道でも進む価値はあるって。


ズィマー

振り返ってみたら、確かに価値ある旅だったと思う。大学の講義で習ったような気取った言い回しで書くなら――

我々の祖国は、ある循環に囚われている。苦痛、愚かさ、罪が互いに増長し合う中で、希望と呼ばれるものはただ虚しい報酬と化す。耐え忍び続けることでしか、この構造は正常に機能しない。

他国の道を模倣しようとする、あるいはその時代の流行に賭けようとする無数の人々を見てきた。以前は、そういった方法が最も確実だと思っていた。

だが多くの出来事を経て、それもまた循環の一部でしかないと気づかされた。歴史の深淵には、失敗した者たちの死体が累々と積み上がっている。

だが失敗こそ、答えを育むための土壌だ。アタシは信じてる、真にウルサスの未来にある道は、ウルサスの土壌から芽吹くって……

ズィマーはふとペンを止めた。すぐ近くからサンクト・グリファーブルクの鐘の音が聞こえてきた気がしたのだ。首都の輪郭は、もう目の前まで迫っていた。

数日後には、盛大な冬季舞踏会が開催される。そして学生連合大会の会議は、もう始まっているはずだ。

だから彼女は、その手紙を破って吹雪の中へと投げ捨てた。気取った詩のような文章に耐えきれなくなったこともあるが、それが一番の理由ではない。

この話を、仲間たちに直接伝えようと決めたのだ。いや、もはや言葉で語る必要すらないのかもしれない。

ズィマー

アタシの手で、この循環をぶっ壊してやる。