険しき道を征く 幕間
険しき道を征く
スーホ! 測定器に反応が! この先にもう一人いるって!
君、大丈夫? まだいける?
はぁ……はぁ……なんとか。行きましょう……
この辺りは結構離れてるから、赤外線センサーの探索範囲に入ってなかったんだ……
一キロほどこちら側に範囲を拡大するよう申請したんだけど、それでやっとこの近くに生存者がいることが分かったんだ。でも具体的な位置はまだわからないから早く探さなきゃ、急ごう……
この町は天災トランスポーターの探測範囲内だっていうのに、あーどうしてこんなことになっちゃうの!
この規模の地震ならはっきりとした兆候が出るだろうし、町に駐在してた天災トランスポーターが気付かないはずないのに……
もう四日と半日が経過しました。もしかしたら、もう……
それにロドスは通りがかっただけで、事前の準備もありませんし、この程度の活動では……
そんな風に思わないの!
僕たちが行けば、希望はきっとあるよ。
ここだ! きっとこの廃墟の下よ、早く!
こんにちは、救援隊の者です! 聞こえますか? 救援隊が来ましたよ!
聞こえますか? 聞こえたら返事を!
……
反応がないわ、スーホ、鉄パイプを叩いてみて!
分かりました。
カンカンカン、カンカンカン……
……
カンカンカン、カンカンカン……
返事はある?
いいえ……生命探知機の配給が間に合わなかった以上、位置確認はこうして行うしかないでしょうか。さっきもまだ生きているのに、もう返事をする気力がない方も……やっぱり申請してきた方が……
いや、届くまで待てないよ。それにこんな状況だし、余りがあるとも限らないから……とりあえず地道なやり方で探していこう。爪で引っ掻いたって音はするんだから、注意して聞けばきっと分かる。
僕はもう一度あっちの鉄パイプを叩いてみるよ。そうだ、君は何か場所を特定できるアーツを持ってたりする?
はは……そんなの出来たら、さっきみたいに素手で家を掘り返したりしませんよ……
カンカンカン、カンカンカン……
……
…………
この辺り一帯は全て叩いてみましたが、反応はありません。
もうかなりの時間が経ちました、それにここまでの距離も考えれば……もしかして、また……間に合わなかったんでしょうか?
……そんなことないよ。この先にも探索してない場所がある。行ってみよう。
カンカンカン、カンカンカン……
カリ……カリ……
カリ……カリ……
!
爪で鉄パイプを引っ掻く音だ!
ここ、こっちだよ! スーホ、早く来て!
今行きます! ……あっ! 痛っ――
気を付けて! きつかったら、少し休んでもいいから!
大丈夫です、いけます! 救助にかかりましょう!
聞こえますか? あと少しの辛抱ですよ! こちら救援隊、あなたを救助しに来ました!
さあ、この屋根をどけよう。ケガしないようにね。3、2、1!
うおぉっ!
生理食塩水はまだ足りているはずです、ホースで下に送りますね。
届きますか? 食塩水です、少し飲んでください。今から救助を開始しますね!
ゴホッ……ゴホッ……
ご年配の方でしょうか?
おばあさん?
ハァ……もう……誰も来ないかと……
そんなことありません、僕たちが来ましたよ!
安心……したわ……
今、レーダーでここの構造をスキャンしています。もう少し頑張ってください!
……
おばあさん? おばあさん?
…………
安心して気が抜けちゃったのかな……でもこのまま寝ちゃったら危ないよ!
俺がスキャンします。プロヴァンスさんはおばあさんに話しかけ続けてください、絶対に眠らせないように!
おばあさん? おばあさん? 今はまだ寝ないでくださいね。お話しましょうよ。
……
眠ってしまったら危ないんですよ、起きていてください。僕たちとお話しませんか?
……
……もう、何日経ったかね?
……ああ、えっと二日、二日です! 僕たちは近くにいたから、駆けつけてきたんです。もう大丈夫ですよ!
ええ……
孫を……私の孫を見なかった?
(君は見た? 孫らしき人とか?)
(見てませんね……)
おばあさん、僕たちは区域でチームを分けて活動しています。きっと別のチームがお孫さんを保護していますから、ここを出たら会えますよ!
孫は……いたずらっ子で……
……どこへ行っちゃったのかしら……
心配しないで、きっと大丈夫ですよ!
(おばあさんは羽獣を飼ってたみたいですね。でも羽獣の小屋は完全に崩れて、何も残っていません。)
(あぁ……)
おばあさん、お孫さんはご馳走が食べられて幸せですね。あそこに羽獣の小屋があるのを見ましたよ。僕も卵は大好きなんです。
そうかい……あぁ……かわいい雛たち……黄色くて、ツヤツヤした……
……きっと卵も……全部つぶれちゃったでしょう……
まだあったら、食べてみてちょうだいねぇ……
おばあさん、大丈夫ですよ! これから機会はいくらでもありますからね、その時に食べても遅くはありません!
今日救助したのは、あなたで三十人目なんですよ。さっきは別の場所で家を丸々掘り起こして、大家族を救出したんです……
ええ……ええ……
(スキャン完了?)
(どうぞ。)
(陥没は深刻ですか?)
(……ぐちゃぐちゃだよ。)
(ここからだと全部陥没して見えるけど、家の反対側は倒壊を免れてる。たぶん地層が違うんだ。ここの地盤は……だいぶ複雑だ。地震波が伝わってきた時、地盤の構造で再び反射したんだと思う。)
(家全体がねじれてる。こっちを取り壊せば、反対側が支えを失くして崩れちゃうね。それだけは避けないと。)
(先に反対側の安定を確保した上で取り壊して、それからこっちを片付けるのはどう?)
(……それだと時間が……)
(きっと間に合わないよね。それに僕たち二人だけでは、できっこない。)
(先におばあさんを落ち着かせよう……やり方を考えながら、動かしてもいい箇所から片付けるんだ。そのうちいい方法を思いつくかもしれない。)
ふぅ……ふぅ……よっと……
おばあさん、ループスって見たことありますか?
上の瓦礫を片付けたら、出て来て見られますからね!
紫色のループスですよ、長くて大きなしっぽを持ってるんです。
そうですよ! 出てきたら、僕のしっぽを触ってみません? きっとこんなに大きなしっぽは見たことないんじゃないかな!
うん……うん……
……
急ごう、長くは持ちそうにない。
まだ寝ちゃだめですよ! 俺の祖母もあなたと同じくらいの年なんです……あとであなたの作った卵料理を食べさせてくださいね!
動かせる瓦礫はすべて取り除きました。今からこの梁をテコで持ち上げます。大丈夫か見ててくださいね。
3、2、1、ふんっ!
だめ! こっち側が緩んできた!
じゃあ別のを試してみます!
俺が真ん中を支えますから、そっち側をたたき切ってください。半分は俺一人で持てます!
分かった。耐えきれなくなったらすぐ言ってね。
おばあさん、焦らなくて大丈夫ですよ。俺たちが……俺たちが絶対助けますから!
……
最後だね、こいつをたたき切るよ!
……ふんっ!! ……もう少しの辛抱ですよ。そこを出たら、お孫さんに会いに行きましょうね!
持ちこたえて!
おばあさん、梁を一本どかしました。あとちょっとだけ頑張ってくださいね!
……
あと少し、あと少しの辛抱です。こっちの梁を……こっちの梁をどかしたら……
……
おばあさん……?
……
寝ないで!
……
……無理よ……
二日……いいえ、もっと……経ったはず……
……
……私はもう……だめ……よ……
あきらめないで!! プロヴァンスさん、続けてください!
……
私は……
……
…………
……まだ呼吸音は聞こえる? 返事がなくなってかなり経つけど……
……
時間切れだ。終わりにしよう。
きっと、もう……
そんな、だめだ! そんなわけない!!
プロヴァンス小隊? 位置28、575付近に生存者を発見。速やかに救援に向かってください。
……新しい位置、確認しました。位置1673、589に遭難者一名あり、深さ約2.7メートル、重機による廃墟の撤去作業が必要です……
……すぐに向かいます……はい、大丈夫です。
……
ごめんなさい、ごめんなさい。僕たちは……他の人を助けに行かないと……
……
行こう、スーホ。まだ他にも助けを待つ被災者がいる……この現場には、後で遭難者の捜索チームが来てくれるよ。
……大丈夫?
うおぉ!!
あぁー!!
やめなよ! 君の体力が――
うぉぁー!!
……絶対に! 掘り出すんだ!
はぁっ……はぁっ……
ううっ……
やめてよ、スーホ! そんなの自分を傷つけるだけで、何にもならないよ。僕らはまだたくさんの人を助けなきゃいけないんだから!
……いやだ! 俺はまだ――
うおー!!
止めてって言ってるでしょ!
何がしたいの? 君もここで死ぬつもり? だけど君が今何をやっても、現状は変えられない。すでに命を落とした人のために、自分を消耗させる意味はないんだよ!
僕たちには、助けなきゃならない人たちがまだまだいるんだ。でもその前に、君は自分のコンディションを整えること!
……
行こうか、また間に合わなかった、なんてことにならないために。
……
おばあさんのことは、後で遭難者捜索小隊に詳細を聞こう、ね? 僕たちには、次に待ってる人がいるから。
前に、ある人が教えてくれたんだ。多くの命を救うために、まずは自分の命を確保することだって。
何をするにしても、まずは君自身を大切にしなきゃいけない……命の価値はみんな一緒、それは君も同じなんだよ。
さぁ、行こう。
……
……分かりました……
ここだ! ここにもう一人いるよ!
もう少し頑張って! すぐ出られますから、僕の手を握って!
よし、もう大丈夫だからね!
……ご家族ですか? 大丈夫、慌てないで。この先にテントが見えますよね? あちらに皆さんが集まっていますので、行ってみてください!
何かあればその場のオペレーターへどうぞ。彼らが対応しますよ!
心配いりませんからね!
大丈夫です、安心して。支払いは不要ですから……
ええ、ええ、そうですよ。だからここに座ってくださってて大丈夫ですよ。逃げなくてもいいんですからね……
緊張することはありません、落ち着いて……
……
……
……
……
もうヘトヘトー、話す気力もないくらい……
俺もです……
……ここは静かだし、ちょっと横になろうか。石を避けて……と。
うあ……あ……こ、腰が……あぁ……
今日は……何人救えましたかね……?
……どうだろう……なんだかもう動けない気がするよ……
……でもさ、やっぱり変だと思うんだ。
何がです……?
なんていうかさ……ここはヴィクトリア領内で、辺鄙な町とはいっても、決して小さくはないし、天災トランスポーターだっている。
ええ。
なのに、どうしてこんなになっちゃったんだろう? この規模の天災だよ? 兆候が分かりにくかったって、天災トランスポーターが見落とすはずないよ。
……避難対策が不十分だったんですかね……分かりませんが……
というより……この被災の様子じゃ、対策が不十分だったんじゃなくて、むしろ……全く無防備だったと言ってもいいくらい。
ほとんどの人が倒壊した家屋の下敷きになってたけど、天災が来ると知ってたら、家の中にいるはずないもの。
もしかして、ここには天災を避けてはならないっていう奇妙な信仰があったとか……? 無理がありすぎるか。
単純に天災トランスポーターの言うことを信じてなかった可能性も……そういうケースってありますよね?
……あるある。そういうのは僕も何度も経験したことがあるけど、さすがにひとつの町ごと、誰も聞き入れてくれないっていうのはありえないかな……
はぁ……さすがにこれは死者を出し過ぎてるよ……
……俺が……知ってるわけ……誰が……
……今……あいつらは……
……なんだ……お前は……はずじゃ……?
あっちの方にまだ残ってる人がいるみたいですね。こちらに呼んで一緒に休憩とります?
?
(ロドスの人じゃない?)
(町の人?)
(分かりませんが、変ですね。町民はみんなテントで休んでるはずですし、こんな遠くまで来て何をしてるんでしょう?)
(こっそり近づいて見てみる?)
これで金は手に入るな、これからどうする?
何が「避難に尽力しましたが力及ばず」だ、言う通りに演じたところでどうだ! 天災時に天災トランスポーターが現地にいたかどうか気付くかよ! *ヴィクトリアスラング*おかげで埃まみれだ!
しかも面倒なことになっちまった。箱ごと家の下敷きになったぜ、お前の言う金だよ金! 埋まっちまった! どうすんだ、お前が掘るのか!?
それは……
……ていうかさ、こんなに派手な事になって、本当に大丈夫なのか……?
ちっ、今頃何を言ってやがる? 今こそ逃げるのに絶好のチャンスだろうが! この混乱ぶりが見えないのか? とっとと掛れ、金を掘り出したら今晩中に逃げるぞ!
国を変えて名前を隠せば、その金でしばらく遊べる。今は天災も多いし、金儲けの道は減りゃしねぇって!
分かった……
グズグズするな、箱を掘り出してこい! てめえのせいでこんなボロボロな羽目になったんだぞ、その上まだ俺にやらせるつもりか?
(あいつら……!)
(誰も信じなかったどころの騒ぎじゃない。あいつら、町の人に一切知らせなかったんだ!)
(あいつら……どれだけの人命を奪ったんだ!)
(待って、軽はずみに動いちゃだめ……!)
そこを動くな!
何者だ!?
その制服……あの救助組織かなんかの……
俺が誰かは関係ない。だがお前らは逃がさないぞ!
職務を放棄して、それでも天災トランスポーターか!?
……
こいつ! まさかさっきのを聞いて……? だったら口封じするしか……!
……はぁ。
こちらプロヴァンス小隊、ロドス本艦応答願います。位置683、447にて、外勤小隊の支援を要請します。
僕たちの目的は単にこいつらを足止めすることだよ……やりすぎないでね。
プロヴァンスさん、調査班から結論が出ました……
……
どうしたの? 浮かない顔して。
つまり、こういうことだ。発生した事件については、すでにご存知だな?
問題はこうだ。事実上、この天災トランスポーターは天災を事前に通知している。ただしその相手は貴族だけだがな。奴の過ちと言えば、本来なら避難できたはずの多くの人を見殺しにしたことだけ。
だが知っての通り、貴族というのは……領地に税金を納められる人さえ居れば、いくら人死にが出ようが気にしないものさ……
あの二人は貴族側についている。コネと金を駆使すれば起訴すら難しいかもしれない。
俺たちは明後日にはここを離れる。今回の停泊は救援活動のためであり、あの天災トランスポーターの裁判に介入する時間はない。
……つまり、この件はうやむやになるってこと? 手出しをしてもいい結果にならないからって、遠まわしに諦めろと?
いや……諦めさせたいわけじゃないが……
待った、まるで俺が悪者みたいじゃないか……
そんな話、聞きたくありません……
あの人たちは死ななくてよかったんです。一人も死ななくてよかったんですよ! お、俺は……
……
奴を起訴するかは別にして、俺はこの目であの人たちのことを見たんです……一切死ぬ必要がなかったあの人たちを見たんですよ……
それでも俺たちは黙って去るしかできないんですか? 奴らに償わせる手立てはないって言うのですか?
そうだ……だが、訴訟はあとできちんと起こすさ。
資料の準備は整っている。ただ最終的にどうなるかは、本当になんとも言えない。結果が思わしくないと分かっていながら、干渉するためだけに、それほど長く待つことはできない。
……あまり期待して欲しくないから、前もって説明をしてるのですね……
……俺が簡単に考えすぎていました。
……
だったら、訴えを起こして何になるんですか? 奴らが命で償う事はありませんし、金を払えばすぐに逃げられる。連中にとっては痛くも痒くもありません。かえって俺たちが馬鹿みたいだ。
*スラング*、それじゃ全員無駄死にじゃないか、クソッ。
はぁ……
……確かに、やりきれないな。
……考えすぎはやめよう。自分のできることをするまでだよ。
資料を貸して。明後日の朝出発なんだよね?
10時頃の予定だ。
分かった。
明後日だけど、とりあえず本艦と一緒には出発しないことにする。
……何をされるおつもりで?
僕がやるべきことを……僕にできることをやるだけだよ。
こんにちは。失礼します、この地方の裁判官さんですよね? 僕はロドスのオペレーター、プロヴァンスと――
――邪魔だ、あっちへ行け!
ワシが家を修理してるのが見えないのか!
お忙しいところすみません、ちょっと聞きたいことが――
邪魔するなと言っただろう!
僕はただ……あ……
すみません、どなたかいませんか? 僕はロドスのオペレーター、プロヴァンスと申します。
すみませーん!
誰もいないのかな……
よし、行ったぞ。こういう時はむやみにドアを開けるな! ろくなことなんてありゃしないぜ……全く、縁起でもない。
わざわざ出てきてくださりありがとうございます! こちら、今回の天災に関する資料を持ってきたんですが、ロドスはあなたに天災トランスポーター・ビニロンの裁判を……
あ!
……
訴訟だと? 私が? 天災トランスポーターの件なら高等裁判所に報告して、そちらで扱わないと……
分かっています。ですが、まずは聞いてください! どうかこの資料を見てもらえませんか?
……ひとまず見てみよう。
……つまり、ですね。現在彼ら二人はロドスにいますが、僕たちには彼らを長く拘束する権利がありません。それに、明後日にはここを離れます……
もし高等裁判所に任せれば、恐らく貴族は訴えを起こさないでしょうね。この資料にも書いてありますが、事件はうやむやのまま、葬り去られると思います。
天災を利用してお金を儲け、人命を軽視して、天災の怖さを知っていながらわざと人々に通知しないなんて、並みの悪意でできることではありません!
あんな災難も、彼にとっては金儲けの手段に過ぎないんです。法の支配の下で裁きを受けさせなければ、またどこか行く先で、さらに多くの人命を奪うことになる。そうならないと誰が言えますか……
分かった……
ただ……私が現地で立案したとしても、上級機関へ渡した後に、何らかの原因に迫られて最終的には水に流されることもあり得るが……
僕が町の人たちに働きかけてみます! 現地の人たち、それから他の町の人たちとも連携をとって、うまくやってみせますよ!
いいだろう……
ならば、私も努力してみよう。現状を鑑みるに……おおよそ半月後には、上級裁判所への申請が受理されるだろう。
分かりました。タルさん、本当にありがとうございます! 戻ったらすぐあの二人を当局に引き渡しますね、後のことはよろしくお願いします。何か進展があれば、ぜひお知らせください!
ここが生き残った町民たちの臨時避難場所か……
みなさん、お邪魔します。聞いてほしいことがあるんです!
なんだなんだ?
お、紫色の娘さんじゃないか! 彼女ともう一人の青年が私を助けてくれたんだよ!
僕は天災トランスポーターで、今回の救援活動に参加したロドスのオペレーターです。先ごろの地震は天災でしたが、この地区の天災トランスポーターは、皆さんに通知をしていませんでした!
なんですって?
彼は天災を利用して、皆さんの命をお金に換えました。昨日、そのお金を持って逃げようとしていたんです!
なんだとぉ!?
そいつは今どこにいる!
絶対にブッ殺してやる!
今回の案件は、タル裁判官が審議してくださることになりました。ただ、貴族たちはこれをうやむやにして、あの二人を法の裁きから逃がすでしょう。そこで、皆さんにお願いがあります――
みんなで一致団結して、貴族がこの件に手出しできないようにしませんか?
ああ! 嬢ちゃん、あんたたちは命の恩人だ。何であれ、俺たちはついていくぜ!
でも、一体どうやって……私たちの言うことなんて、貴族が聞くわけないだろう?
嬢ちゃん! 俺たちじゃ頭数が足りないぞ!
そこに、近隣の町の人たちも加わったらどうです?
お嬢さん……それだとありがたいけどね、隣町の人らを説得するのは難しいと思うよ。
そうだな、俺たちを助ける理由がないもんな!
それは……僕が何とかするよ!
ここが町の中心だね。
こんにちは。すみません、僕は隣の町から……
誰だ? こっちは忙しいんだ、どいたどいた!
隣の町は天災で……
天災がどうしたって? 俺たちの町もやられたよ。町の半分が崩れちまった。こっちは無事だとでも思ったか?
ですから本来なら避けられたのに、隣町の天災トランスポーターが――
ああもういいから、忙しいって言ってるだろ!
……
こんにちは。隣の町は天災トランスポーターが報告を隠蔽したせいで深刻な被害が出ています。僕たちはあなた方の支援を得て、貴族たちがこの案件に手出しをしないように……
お嬢さん、冗談を言っているのかしら?
いいえ、本気です! 僕たちはこの案件を上へ提出する予定で、もしよければ……
寝言は寝てからにしてしてちょうだいな。
はい、つまりそういうことで……あの、よろしければ僕たちを支援していただけませんか? 本当に、あなたの助けが必要なんです……
いいんですか? 本当にありがとうございます! これが僕の連絡先です。おおよそ半月後に、もう一度連絡をしますね!
お願いします!
こんにちは、よろしければ……
お邪魔してすみません……
本当にありがとうございます。おおよそ半月後に、再度連絡をしますね!
四ヶ月後
プロヴァンス! 君宛ての手紙だよ――
今行くよ~!
誰からの手紙だろう……
……
これ見て。
なんです?
あの地震があった村のこと覚えてる? 彼らからの手紙だよ。
……
あの人たち……彼らは本当に……
本当にやり遂げたんですね?
……うん、やり遂げたよ。
本当に……本当に裁きが下ったのか……
俺っ、うぅっ……
全然予想してませんでした。俺、絶対に無理だと思ってたのに、プロヴァンスさん……
涙で顔がグチャグチャだよ~。ほら、早く拭いて。
うっ……う、あ、ありがとうございます。
プロヴァンスさん、しばらく艦に帰ってきませんでしたが、このために走り回ってたんですか?
まぁーそんなところ? ちょっとだけ根回しをね……
知りませんでした……俺は、俺はただ落ち込んでいただけなのに、あなたは……
……自分が不甲斐ないです。
そんなこと言わないで! 本当なら、その後のことは僕らが手出ししちゃいけないところだしね。
あれは僕のワガママ。ことをうやむやにされるのは、黙って見ていられなかったんだよ。
それに……いい結果が出たところで、天災で命を落とした人たちはもう帰ってこない。どうしたって手遅れなんだ……
……
ああもう、この話はやめ! 今度暇ができたら、またあのおばあさんのお墓参りをしようよ。
……俺、おばあさんの墓前に、黄色い石をお供えします。飼っていた羽獣に見立てて……
うん、そうしよう。きっと喜んでくれるよ!