勘違いを押し通して 幕間
勘違いを押し通して
本当にあいつか? 間違いねぇんだろうな? 違ってたらシャレになんねぇぞ。
仲間がここしばらく見張ってた。聞いてる話と全く一緒だ、間違いない。
ヒィ……確かに危ねぇ匂いがプンプンするぜ。
どうする? やるのか?
取られたブツはデカいんだ、四の五の言ってらんねぇよ……合言葉はなんだったっけ?
確か……
ほぅ、繁盛しとるな。正月でも休まんのか?
夜は通行人が多いでさぁ、商売時なんでい。
お姉さん、麻辣(マーラー)鱗獣団子スープ、お待たせ。
うわぁ、いい匂い! はい、お代。置いておきますね。
(モグモグ)……美味しい! さすがB級グルメおすすめ百選に入る鱗獣団子ですね。ごちそうさまでし──
ちょっと待った!
えっ!?
ど……どうかしましたか?
払いすぎでさぁ。はい、お釣りどうぞ。
あ……ありがとうございます……
もう……行っても大丈夫ですか?
あ? まだ何か入り用で?
ひっ……だ、大丈夫です! さよなら!
……また客を怖がらせちまったみてぇだな。
俺、何か変なこと言ったか……?
ホッホッ……ここ最近はずっとお主が屋台を出しとるようじゃな。董(ドン)はどうした?
最近は冷えるから、親父さんは脚が痛むんで、俺が代わりに。
爺さん、親父さんのこと知ってるんですかい?
もちろん知っておるさ。龍門で鱗獣団子といえば彼じゃよ。
一つくれ。通り掛かったついでに、ちょいと売上を足してやろう。それと、彼から学んだお主の腕前を拝見させてもらおうかの。
あいよ、ちょいとお待ちを。
おい、鱗獣団子スープ四つくれ。カレー味三つ、きのこ入り一つ。
あいよ、少々お待ちくだせぇ。前の方の分を作り終えたら、すぐに作りやすんで。
ゴホンッ……! だから、鱗獣団子スープ四つくれ、カレー味三つ、きのこ入り一つ!
へい、わかってやすよ。カレー味三つ、きのこ入り一つですね。
……
(小声)どういうことだ!? これが合言葉じゃなかったのか?
(小声)間違いねえって! あのフェリーンの女殺し屋は、いつもそう言ってたんだ!
爺さん、鱗獣団子スープお待たせ。
おお、いくらじゃったかの?
いいっすよ爺さん、親父さんの知り合いなら、お代は結構でやす。
そうはいかん。払うべき金は払う、やるべきこともやる。
そうじゃろう?
(小声)なんだ? あのジジイ、なんかこっちの方睨んでねぇか?
(小声)チッ、めんどくせぇ。
お客さん……?
鱗獣団子スープはどうしやす?
えっと……その……
何味がいいか悩んでんなら、試食もやってるんで──
何手ぇ出してんだ!? まだ早ぇよ!
油断してるとこ襲わなきゃ、やられんのが俺たちだっての!
つべこべ言ってんじゃねぇ、こいつ連れてさっさとずらかるぞ!
すぐ滷水幇(ルーシュイパン)んとこに知らせないとな。てめぇらのボスはこっちで預かった、今夜ブツを持って交換に来いってな!
おい若いの、手加減ってもんを知らんのか? 龍門の掟を破るな。
何だジジイ? 外野は引っこんでろ! 筋モンのやり方にカタギが余計な口を出すな!
……面白い。
……
ううっ……
頭が痛ぇ……
何があった……? ここはどこだ?
よぉ、目が覚めたか。まぁ水でも飲め。
ありが──誰……? 何だこりゃ……なんで俺は縛られてんだ?
アンタのような大物にゃ、こういう手を使うのも止むを得んだろ。今まで滷水幇を仕切ってるのがアンタだって知らなかったよ。失礼なことをしたな。
しっかし今回の件はよぉ、滷水幇が俺たちからブツを横取りしたのが悪いんじゃねぇのか? そこんトコどうなんっすか、えぇ?
ブツって何のことだ? 鱗獣か? 漁船はみんな埠頭に停まってるから、新鮮な鱗獣は早い者勝ちに決まってるじゃねぇか。横取りってどういうことでい?
(小声)あいつ「埠頭」って言ってるぞ。ブツを取られたのはまさに埠頭だったよな?
(小声)わかったぜ! 「鱗獣」は隠語だ。つまりあいつは、ブツは早い者勝ちだって言ってるんだ。
ゴホン……まぁ、確かに一理ある。
しかしこの界隈にはルールってもんがあってな……この手の商売は今までずっと我々叉焼幇(チャーシューパン)のシノギだった。新規参入をご希望なら、一度相談するのが筋なんじゃねぇっすか?
長ぇこと水産物屋やってっけど、アンタらのこたぁ知らないぜ?
(小声)「水産物屋」も隠語か?
(小声)つまり最初に始めたのはあいつで、後から入って来たのは俺たちの方だって言ってんだよ。
……ああ、そりゃもちろん分かってるさ。アンタが龍門じゃかなり名の知れた人物だってこともな……だからこそこうやって相談してるんじゃねぇか。
このシノギをやりたいってんなら話し合いには応じるぜ。しかし、アンタが奪ったブツは、我々叉焼幇にとって大切なんだ。富は和から生まれるもんだろ、まずはブツを返してくんねえか?
龍門で……名の知れた?
えーと……それ、人違いなんじゃ? 俺関係ないんで、もう放してくんねぇかな……
おい、こっちは歩み寄ってんだ、状況をわきまえろよ!
アンタの顔に免じて交渉してやってんだぜ? あんま叉焼幇をなめんなよ!
本当に何の話だかさっぱり……
まだシラを切るってのか? おい、アレを見せろ。
この写真に見覚えありますよね?
これは、ワイフーさん?
とぼけないでくださいよ。この女が滷水幇の殺し屋で、アンタの用心棒ってことぐらい、調べがついてるんだよ。
なっ……
先月末に、この女がアンタんところで鱗獣団子スープを買った。その翌日、滷水幇のライバルがボコボコにされた。やったのは妙な技を使うフェリーンだったってよ。
これがアンタの指図じゃねえって言うのかよ!
ワイフーさん……なんてタイミングで勧善懲悪すんだよ……
それとこいつに見覚えは?
近衛局の鬼の姉御?
我々だけじゃねえ……どうやら近衛局もアンタらに目を付けていたみてぇだな。
うちの連中が、何度もアンタの店で鬼の姉御の姿を見てるんだぞ!
近衛局特別督察隊のお役人さんが、どうして鱗獣団子屋なんぞに興味を持ってんのか、説明してみろや!
それも誤解だっつの……
フン、滷水幇の猿芝居に俺たちが騙されると思うなよ。
いい加減認めなって。アンタら滷水幇の名義上のボスはただの操り人形……本当のボスはアンタだ!
……
(もう黙ってた方がいいな。)
だんまりか? 話はここまでってことか?
いいぜ、それならアンタんとこのモンたちが、果たしてボスを助けに来てくれるのか、確かめてみるんだな。
同時刻──
兄貴、ボスの行方がわかった!
なにぃ!? どこだ?
さっき叉焼幇から連絡が来て、ボスを預かってるって。
住所も送られてきて、今夜ブツを持って交換に来いとよ。
クソッ! やっぱりあいつらだったか! うちのモンを集めろ! 全員で叉焼幇にカチ込むぞ!
じゃあブツは本当に持っていくのか……?
持ってくわけねーだろ! うちをなめやがって……行くぞ、やつらのタマぁ取ってやんよ!
考えはまとまったかい、「ボス」?
滷水幇に伝えといてやったぜ。今ならブツをよこせば、まだ穏便に済ませてやってもいいと。やり合いになっちゃお互いのメンツもかかってくることだし、色々と収拾つかねぇだろ?
伝えといたって、本当に乗り込んできたらどうすんだ……
てめぇ、そりゃ脅しか!?
いやそうじゃねぇって……はぁ、もういいや。
(小声)どうする? あいつの言うことにも一理あるぜ? 本当にやることになったら数では負けてんぞ。
(小声)なんでもっと連れて来なかったんだよ!?
(小声)今回は隠密行動だって言ったのはお前じゃねぇか!
(小声)マジで何も吐かないなんて思わねぇだろ!?
(小声)……まぁいい、こいつを見張っといてくれ。できればブツの場所を訊き出しとけ。もう何人か呼んでくっから。
オホン……
どうだい、「ボス」?
考えてもみなって、今ブツをよこせば無事に帰れるんですぜ? ヤクザ同士の抗争になってみろ、そんなの誰も得しねぇでしょう?
なぁ、「ブツ」って一体なんのことだ?
まだシラを切るつもりで? 埠頭でケンカ吹っかけてうちのモンを何人もボコったのは滷水幇でしょうが、あれはまさにブツを奪うため。知らねぇでやったは通用しねぇぞ。
フン、こんな危ねぇシノギに手ぇ出そうなんて考えるのは、確かにアンタら滷水幇ぐらいだな。
「危ねぇ」だって?
とぼけやがって……アレがどんだけ危ねぇモンかアンタが知らねぇわけねぇでしょう? 近衛局に捕まるリスクを冒してまで俺らのシノギを奪おうなんざ、アンタらも一攫千金を狙ってるんっすよね?
……そういや、ここはもう俺とアンタしかいねぇか。
もういいや、メンドくせぇから、ブツの場所を教えてやるよ。
おお? もー、最初っから素直にそうしてりゃ早く済んだのによ……
もうちょっとこっちに寄ってくれ。こっそり教えっから。
はいはい来たぞ、ちゃっちゃと言っちゃってくださいよ。
もうちょっと手前だ。
ったく、いちいち細けぇな──
――親父さんの言う通り、時にゃ拳より頭突きの方が効くな。
こんなにきつく縛りやがって……悪りぃが、ちょいとナイフを借りるぞ。いつか返すわ。
誰から何を取り戻そうとしてんのかさっぱりだが、本当に人違いなんだって。俺ぁボスなんかじゃねぇから。
まったく、言っても聞いてくんねぇし。さ、とっとと出よう……
くっ、頭が痛てぇ……
手紙の通りだとここだな……叉焼幇の連中は?
おい見ろ、ナイフを持ってるやつがビルから出てきたぞ。あいつがその叉焼幇の連絡係じゃねぇか?
待てよ……あいつどっかで見たことねぇか?
思い出した! 水産物屋に偽装した手練な殺し屋だ! こないだ刺身包丁で二十人も殺したのを見たぞ!
まさか叉焼幇の人間だったとは、マズいな……
焦るな、とりあえず話を聞いてみよう。
誰も追ってこないな、これで大丈夫か……
はぁ……正月早々、店もまだ畳んでねぇのに、何て目に合うんだ……
おい、そこのお前。
あ? 俺か?
ここは叉焼幇のシマか?
(さっきのやつら、叉焼幇とか言ってたな。)
ああそうだ、ここは叉焼幇の縄張りだ。
......
……
捕まえろ!
!?
うちのボスはどこだ!?
知るかよ!
フン、叉焼幇め、頭数そろってるからって、俺たち滷水幇をナメてんじゃねーぞ!
だから人違いだって──
いきなり二番手の兄貴を倒すとは、さすがチャーシューピカイチの殺し屋だな!
またとんでもない二つ名が出てきたぞ、おい……
イモ引くんじゃねぇぞ! こんだけの人数だ、負けるわけがねぇ!
ついて来いてめぇら! ボスを助け出すんだ!
うわ……こりゃ逃げた方がいいな……
逃がすな! 追え!
へえ、本当に増援を呼んで来るとはな。
てめぇら、やるぞ!
ほう、待ち伏せか。
ビビるな、かかれ!
ブツをよこせ!
ボスを返せ!
ちょっ、どうなってんだ? 話せばわかるって、ケンカすんなよ。
はぁ……とりあえず戻って店を畳んどこう。
にしても、「ブツ」って一体なんなんだ……?
王(ワン)のおじさん、どうもこんばんは。
おう、ジェイ坊じゃねぇか。どうした? こんな時間にゃ新鮮な鱗獣はねぇぜ。
違うんスよ、おじさんにちょいと訊きたいことがありやしてね。
ここんとこ、誰か埠頭でケンカとかしてやせんでした?
ケンカぁ? この埠頭でケンカしてる奴ぁ、鱗獣を買いに来る人よりも断然多いんだ、いちいち覚えてられっかよ。
いや普通のチンピラのケンカじゃなくて、こう……見た目からしてヤバそうな、二つのグループの奴らがドンパチ……
うーん、それもちょっとフワッとしてんな……とにかくおじさん、最近埠頭付近で知らねぇ顔を見やせんでしたか?
おいおい、だからいちいち覚えられねぇっつってんだよ。この広い埠頭で、毎日何人が行き来してると思ってやがんだ?
……いや、でも言われてみれば見たかもしんねぇな。
確か先月、何日か連続で、夕方になると箱に入ったものを埠頭まで運んでくる奴らがいたな。
普通の荷物だったら別に気にも留めねぇんだがよ、その箱は全部黒い布できっちり包まれてて、なんか妙だなぁって思ったんだ。
そいつらの顔を覚えてやすか? 箱はどこ行きのもので?
あんときゃ店じまいしてる最中だったからあんまり覚えてねぇな。誰もかれもおめぇさんみたく記憶力がいいわけじゃねぇぞ。
(おそらく叉焼幇が言ってたブツってのはそれだな。)
(一体何を企んでやがんだ……?)
おっと、いま気づいたが、その顔どうした? またケンカか?
ほれ、氷でも当てとけ。
すいやせん……
おめぇ、大人しそうに見えんのに、なんでいつも傷だらけなんだ?
はぁ……そりゃ俺が訊きてぇっすよ……
長年の付き合いだ、おめぇのことはよく分かってる。人がいいし、性格もまっすぐで、理不尽を見過ごせねぇからいつもあのチンピラどもと喧嘩沙汰になるんだろ?
いや、おじさん、そいつぁ全部誤解で──
正義の味方もかまわねぇが、自分のことはちゃんと守れよ。ここいらはどうせ始末付けてくれる人らがいるんだし、任せればいいさ。世の中にゃ首を突っ込まねぇ方がいいことだってある、分かるか?
ああ、ありがとうおじさん。だが、今夜はどうしてもやんなくちゃならねぇことがありやして……それに、どうやるべきかもわかった気がしやす……
そうだ、電話を貸してもらえやせんか?
叉焼幇め、やるじゃねぇか……
他の連中も……足が早ぇな。どこ行きやがった……?
こいつはいい、逃げ遅れがいるみてぇで助かったぜ。
お、お前は……!
ああ、俺だよ。
「チャーシューピカイチの殺し屋」だ。
ひぃっ!
い、命だけは……!
さっきまでのこたぁ、とりあえず忘れてやる。
だがよーく聞くんだな。これから質問をするが一度しか言わねぇ。そいつにちゃんと答えられなきゃ──
分かってるよなぁ?
言います! 知ってることなら必ず言います!
先週、滷水幇が俺らから奪ったブツは今どこだ?
分かりません!
滷水幇は何の目的で俺らからブツを奪ったんだ? 誰かに売るつもりか?
分かりません……
とぼけてんじゃねぇ!
本当に知らないんです!
お、俺は組織に入ってまだ二ヶ月……機密情報とか、本当に何も知らないんです!
じゃあ知ってることを吐け!
せ、先週のことですが、埠頭でうちの人間が叉焼幇から何かを奪ったみたいで、ボスは大喜びだったんです。けど数日も経たないうちにボスは失踪しました。
うちは大勢を使って探してるけど、まったく見つからなくて。
(滷水幇のボスが行方不明なのは本当だったんだな。)
それで?
そ、それで、今日叉焼幇から手紙が届いたみたいなんですが……よくわからないまま、ケンカだと思って他のやつについてここまで来ました。他は何も知りません……
(うーん……確かにこれ以上聞き出せそうにねぇな。)
おい、てめぇらのボスは今叉焼幇が預かってる。
だからてめぇらのボスに……違った、いま組織を仕切ってるやつにこう言え。
もう一度だけ示談のチャンスをやる。今夜零時に、叉焼幇から奪ったブツを持って、埠頭で待ってろってな。
てめぇら滷水幇の誠意が見えねぇ場合、ボスの命もねぇって思え!
行け。
はい!
ふぅ……
信じたみてぇだな。
悪役ってのは、難しいモンだな。
落ち着いて落ち着いて……次は……
クズが! この役立たずめ!
せっかく捕まえたのにみすみす逃しやがって! 人質がいなけりゃどうやって滷水幇と取引するってんだ!?
お前が言うな! あれだけの数連れて来といて捕まえられなかったくせに!
てめぇ──
俺に用があると聞いたから、来てやったぞ。
お前は!
ああ、そうだ。
フン、俺の正体に気付くとはなかなかいい目をしてやがる。褒めてやるぞ。
その通り、この俺が滷水幇のボスだ。
やっぱり……な、何をするつもりだ?
簡単さ、滷水幇が叉焼幇から奪ったブツは全部返す。その代わり、叉焼幇が俺を拉致したことについてのケジメはつけてもらう。
今夜零時、滷水幇は奪ったブツをすべて用意して埠頭で待つ。お前ら叉焼幇は、構成員全員で来てもらおうか。
返すべきものは返す。だが、潰れた面子も取り戻させてもらうぞ。
(小声)どうする? ブツを取りに行くか?
(小声)ま、待て……今はあいつ一人だ、一度は襲えたんだし、うまくいけば……
余計な真似はさせないよ!
あ、あの女は……例のフェリーンの殺し屋だ! 本人だ!
フン、さっきは油断して不意打ちを食らったが、二度目も成功すると思ってんのか!?
どうやら自分たちが誰を相手にしてんのか、まだわかってねぇようだな。
ゴホン!
(小声)次は何するんでしたっけ?
(小声)壁だ、壁!
(小声)あっ、そうだ!
ていっ!
壁を……一撃で打ち破った!?
二時間後、埠頭にて待つ。そん時に叉焼幇のモンがそろっていない場合……あとでどうなるか覚悟するこったな!
どうする……?
どうもこうも、どうせ逃げられねぇんだ、行くしかねぇだろ!
待って待って待って、なんでそんなに走るんですか!
あとそろそろ聞かせてくださいよ、なんだったんです? さっきの小芝居は。
ふぅ……ここならもう大丈夫か。
まぁ、正直俺もどういうことなのかよくわかっちゃいねぇんだ。
とにかく助かった、今度鱗獣団子をおごらせてくれ。
いいですよ、この程度ならお安い御用ですし。
でもさっきのジェイさんは、本当にヤクザのドンみたいでしたよ……一瞬リアルにそうなのかと思ってしまいました。
そんなに悪者に見えるってか?
実は、本当に裏の職業があるんじゃ?
からかわねぇでくんな……
はぁ、そろそろ埠頭に行くとするか。零時になりゃ、すべてがわかるはずだ。
よぉ、時間ぴったりじゃねぇか。
ふん、そっちもな。
ブツは?
俺らのボスは? ブツはその後だ。
ふざけんじゃねぇぞ、いつまでバカにするつもりだ?
黙ってブツをよこせや!
言ったろ、先にうちのボスと合わせろ!
ナメやがって、やんのかテメェ?
やってやんよ、ビビってんじゃねぇぞ!
そこまでだ、武器を捨てろ。詳細は局でゆっくり聞くとしよう。
クソッ、やられた!
全員、ご同行願おうか。
通報したのはあなたですね。
ええ、俺っす……
どうして今夜、埠頭で取引があることを知ってるんです?
ええと、説明するのは非常に難しいんですが……
俺もまだいろいろと分かってねぇような気がしやすが、大体のことはこんな感じです……信じてくれやせんか?
ハハッ、そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ。実はこの件については近衛局も前から探りを入れていたんです。
ここだけの話ですが……実はあの動乱の後、大量の武器が龍門の街のあちこちに取り残されていました。近衛局は回収に尽力しましたが、それでも一部は叉焼幇の者たちに拾われてしまいました。
た、大変じゃないっすか?
ええ、まぁ……でもさすがの彼らも、武器をそのまま密売するほどの度胸はなかったようです。
彼らは武器に付いているまだ使えそうな源石装置を取り外して売りさばくつもりでした。当然それも違法です。
数日前、近衛局は滷水幇の頭領の身柄を拘束しました。当時、彼は叉焼幇から奪った源石装置の買い手を探している最中でした。
ところが彼は口が固く、我々もなかなか情報を引き出せなかった。今夜一網打尽にできたのはあなたのおかげですよ。しかしよくこんなやり方を思いつきましたね。
ですが、次からはこんな危険な真似はしないでくださいよ。
そういうことだったのか、ようやく合点がいきやした……
ホシグマさん、他に何もなけりゃ、もう行ってもいいっすかね?
ちょっと待ってください。
実は……あなたのことは前から目をつけていたんですよ。これほどの能力を持つ者を、龍門でただの行商人にしておくのは実にもったいないと思いましてね。
もっといい仕事があるのですが、考えてみませんか?
あの……ありがとうございやす、ホシグマさん。
ですが、龍門にはアンタのような警官も必要なら、俺みたいな水産物屋も必要だと思いやす。もったいないってこたぁねぇでしょう。
えーと、うまく言えねぇが今のままでも別に悪かねぇっつーか……
ハハッ、わかりました。もちろん、あなたの考えは尊重しますよ。ただ、もしそのうち気が変わったのなら、いつでも小官のところに来てくださいね。
ご迷惑をおかけしやした。では帰りますんで。
あっ、そうだ……近衛局の正月休みが明けたら、表彰状を受け取りに来てください。
へい、そのうち行きやす。
さすが董のところの若い衆じゃ。ワシの目にも狂いはなかったな。
数ヶ月後
ねぇ、あそこの鱗獣団子スープの屋台、知ってる?
へぇ、人気ありそうじゃん、食べてみる?
おっと、あれはただの屋台じゃないぞ? あの店主の正体は、なななんと、龍門埠頭を張ってる大親分さ!
大晦日の夜、たった一人で、叉焼幇と滷水幇の二百人以上を相手にして、全員ぶっ倒したんだ! しかも──
しーっ! 声が大きい、聞こえてるみたいだよ!
そこのお客さん、鱗獣団子スープはいかが?