一緒に踊ろう幕間一緒に踊ろう
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一緒に踊ろう 幕間

一緒に踊ろう

ダンスホールのオーナー

……エクスペリメンタル・ロック、一票……アシッドジャズ、一票……

……デスメタル、一票。

昨日の再現だな。今週のダンスホールの音楽ジャンルはまた決まらなかったか。

じゃ、好きに議論をしててくれ。

テクノ

サリバン! 前にブラックボックスシアターでライブを見た後、次はデスメタルに投票するって約束したじゃん!

サリバン

やっぱり俺は何にも縛られない電子音楽が好きなんだ。まさに未来の音さ!

仕方ない、あの時のチケット代は返そう――

俺の新作が売れたらな。

テクノ

あの心を揺さぶるライブ、アンタの魂にも刻みこまれてるでしょ。それがたかだかチケット代程度の価値しかなかったって言いたいわけ?

投票し直して。

サリバン

それは――

街の彫刻家

無理だろうね。

不正に票数を増やすことを防ぐために、今回は金属のスコアボードを用意しろってオーナーから指示を受けたのさ。

だけどコストを考えた結果、硬い金属板を使うことになってね。票数の記録に電動ドリルを使うしかなくて、点数を変えるのが手間なんだ。

*電動ドリルの騒音*

サリバン

もう投票なんてやめた方がいいんじゃないか?

機械式投票箱、音声認識スコアボード、臨時の外付け音響設備まで使っての作品アピール……挙げ句の果てには集団催眠をやろうとした奴までいた。どんどん手段が多様化して、正直怖いくらいだ。

前回なんか「マスター」がリターニアのカントリーミュージックを勝たせるために、片手で純正源石を十個もジャグリングして俺たちの注意を引いて、その隙にこっそりスコアボードを細工してた。

ダンスホールのオーナー

何より怖いのは、それが上手くいっちまったことだ。

街の彫刻家

それで「マスター」の投票権は取り消されたんだってね!

*電動ドリルの騒音*

サリバン

テクノ、何か言ったか?

テクノ

……一票……また一票だけ。

地下都市にいた時も、ここに来ても同じだった。

誰もアタシのセンスを理解してくれない。もうやってらんない!

ダンスホールのオーナー

まあ、そう怒るなよ。お前はうちのダンスホールで一番歓迎されてる客なんだ。

だがコミュニティにはルールが必要だ。人の話を聞かない前衛アーティストどもをまとめるため、俺たちはあらゆる手段を考えてきたんだ。

推薦曲が選ばれなかったとしても、芸術作品は何であれダンスホールにタダで展示できる。実際、お前の人形も飾ってあるだろ。

テクノ

それは分かってるけど……

ダンスホールのオーナー

それにな、あー……デスメタルはちょっと――

テクノ

ちょっと何!?

*電動ドリルの騒音*

テクノ

アンタ、うるさい! 集計は後にして!

*電動ドリルの騒音*……クノ……テクノ……目を覚ませ……

テクノ

よっぽどアタシの推薦曲を勝たせたくないみたいね。今回は誰の仕業?

……複数の発火場所を消化完了……梁を撤去……煙を吸い過ぎたためか、一時的に昏倒中……

サリバン

ん? 変な匂いがしないか?


消防士

……テクノ! 聞こえるか、テクノ!

クソッ、だから言ったろうが。ダンスホールは電気配線が乱雑すぎるし、燃えやすい物を積み過ぎだって。

いや……俺のせいだな。俺が代わりにこいつらを処分すればよかった。お前たちみたいないい奴らが、自分の作品を捨てるなんてできるわけがないよな。

テクノ

ディアスの……おっちゃん……?

ディアス

よし、目覚めたか! 軽傷で済んだのは幸運だったな。医療スタッフがすぐに駆けつけてくる。

テクノ

デスメタル……テーマ……

ディアス

喋るな、今は休んでおけ。

テクノ

サリバン……オーナー……みんな……


リポーター

……こちら火災現場です。

消防局にはすでに通報が入っているようですが、コミュニティは入り組んだ場所にあり、すぐには救助隊が到着できない模様です。

火はいまだ延焼を続けており、コミュニティの住民が自ら消火活動を行っています。では、被害者の方にお話を訊いてみましょう。

こんにちは。非常に痛ましい火災ですが、原因についてはどうお考えでしょうか?

サリバン

本当に痛ましいと思ってんなら、くだらないこと言ってないで少しは手伝ったらどうだ!

前の火事の時は誰も気にも留めなかった。あんたらみたいなリポーターでさえ取材には来なかったんだ。

リポーター

どうやらこのコミュニティには長期に渡って消防上の欠陥があるようです。頻発する火災、溜まった廃材……どれも周辺区域に多くの影響を与えています。

サリバン

どういう意味だ。

火事と俺たちの作品は関係ねえだろ!

確かに俺たちの資金は多くないから、端材を使った作品くらいしか作れない。だけど作品には、俺たちの満ち溢れる芸術的衝動が込められているんだ。

リポーター

ストリートアーティストたちは地域の住民を顧みず、自らの作品が無価値であることを理解しながらも自己中心的な活動を続けています。その結果がこの火災を――

サリバン

もういっぺん言ってみろ!

リポーター

ぐっ……こうして最後は暴力に訴えるのが彼らのやり方です……これほど粗暴な流れ者が、高尚で純粋な「芸術家」を自称するなど信じられません……

テクノ

サリバン、やめなって! そいつは撮れ高が欲しくてアンタの感情を逆なでしてるだけ。これは生放送なんだよ。

忘れたの? 最近の世論のせいで、唯一好意的だったスポンサーもいなくなっちゃったでしょ。

サリバン

分かってる……けど、こんな時にまで皮肉を言ってくるこいつらにもう我慢できねえんだよ!

ダンスホールは改装したばかりだし、壁のグラフィティだって俺たちが一筆ずつ本気で描いたものなんだぞ。

それとカウンターの上の源石動力装置は、彫刻家が二年も貯めた金を全部注ぎこんだやつだ。来月には出品されて『アートレビュー』にも載ったかもしれないのに……今はどうだ?


リポーター

ごほっ、ごほっ……この街の暴徒たちは、紙や木材、源石製品など燃えやすい物を故意に老朽化した電線の下に置いています。彼らにとっては、これが「芸術」のつもりなのでしょう。

しかし適切な管理をされていない以上、こういった災害は今後も増加の一途を辿ることでしょう。


サリバン

この土地の買収計画が商人や軍部の間で持ち上がってから、俺たちが「事故」に遭うことがますます増えてきた。

あの正義面した「リポーター」が誰の差し金か、本当に分からないのか?

テクノ

……


レポーターの声

……ご覧の通り、借主たちが「芸術の揺りかご」と自称しているこのコミュニティが、実際には消防リスクだらけの不完全な建築群であることがお分かりいただけたと思います。

現在、ドッソレスの都市景観建築に貢献すべく、こちらのストリートアートコミュニティの刷新を引き受けたいという声が様々な方面から上がっています。

その中でも、軍部は強い意欲を見せています……

媚びへつらう兵士

マッテオ大尉、実に見事な作戦でした。テレビの生放送という圧力の前では、あのチンピラどもも無茶はできないでしょうな。

マッテオ

ふん。商人の奴ら、頭に銃弾が詰まった軍人など、買収競争で簡単に出し抜けると思い込んでただろうな。

だがコミュニティの厄介者が相手なら、奴らより俺の方が経験豊富だ。

媚びへつらう兵士

まさに仰る通りです。

マッテオ

あのリポーターがしっかり仕事をしてくれれば、俺たちは補償金すら支払うことなく、あの役立たずの流れ者どもをコミュニティから追い出せるだろう。

コミュニティの奴らは一見強気だが、心の底では認められることを何よりも欲している。居場所を焼き払われて、あの連中がどんな手を使ってくるか見ものだな。

媚びへつらう兵士

大尉の大胆さには恐れ入ります。我々があの土地を手に入れる日は近いでしょう。

レポーターの声

……このように身勝手で非道徳的な行いが続けば、より多くの無実の住民が路頭に迷うことでしょう。

あっ、火事から救出されたばかりの子供がいます。彼女に話を聞いてみましょう。

お嬢ちゃん、ケガはまだ痛むかい? パパとママはどこかな?

こらえる声

……誰が……お嬢ちゃんよ……

レポーターの声

お嬢ちゃん、強がらなくても大丈夫。お兄さんはあの怖い不良どもを叱ってやってるんだ。さあ、おうちに……痛っ!

怒る声

「お嬢ちゃん」? ドゥリンを見たこともないくせに、リポーターなんて名乗んな!

レポーターの声

痛っ! 何する、このクソガキ!

バカ野郎! 早くカメラを止めてこのイカれたガキを引き剥がせ!

カメラマンの声

はっ、はい!

マッテオ

……

媚びへつらう兵士

……

マッテオ

ふん……まるで邪魔なガラクタだな。なかなか処理もできん。

媚びへつらう兵士

お、仰る通りです。


リポーター

クソッ。チビのくせに、なんて力だ……

見習いカメラマン

すみません、この角度ではダンスホールの内部が映らないのですが……

リポーター

石頭が。外から撮影できないなら、中に入ればいいだろう。

放送が始まってから今まで、もう数時間は燃え続けている。ダンスホールは鎮火したが、隣のアパート二棟は運がなかったな。

ふん、だが私たちには関係ないことだ。どうせ映像さえ押さえてしまえば、トップニュースを掴む絶好のチャンスになる。

テクノ

待って。

リポーター

先ほどは申し訳ありませんでした。『社会新聞』特集の現場写真を何枚か撮らせていただければ、すぐに出ていきますので。

テクノ

アタシらの焼けた作品をネタにして、不安で世論を煽ってみんなを追い出そうってわけ?

リポーター

そう聞こえの悪い言い方はなさらず。これは皆さんにとっても、作品が新聞やテレビで取り上げられる貴重な機会でしょう?

まさに宣伝のチャンスです。運が良ければ、一躍有名になれるかもしれませんよ。

テクノ

「宣伝」? アタシらが魂を込めた作品が燃えて灰になったのを、メディアに何度も見せつけられるのが? そんな残酷なこと、許せるクリエイターなんているわけない!

リポーター

魂? お言葉ですが、火事が起きる前ですらあなた方の「作品」はどこからどう見ても災いの――

サリバン

お前は芸術を何も分かってねえ!

リポーター

ええ、その通りです。私は一般の観客に過ぎません。ですがそんな一般人に評価をする権利はないのでしょうか?

稚拙なタッチ、お粗末な合成効果……こんなガラクタ、遊園地のお化け屋敷に置いても誰一人賞賛しないでしょう。

しかし、今は少し「価値」も出てきたかもしれませんね。

「灰もまた美しい」。あなたたちアーティストが言いそうなことでしょう。

テクノ

こいつ――!

リポーター

あなたに私の取材を止める権利はありません。大人しく下がってください。

ディアス

なら俺には権利があるのか?

リポーター

あなたが単身で消火に駆けつけたという消防士の方ですか?

実に立派な行動でした。こちら私の名刺です。もしインタビューを受けていただけるのであれば、ぜひご連絡ください。

では、通らせていただきます。

ディアス

駄目だ。まだ現場の安全が保証できん。

リポーター

どういうことですか?

ディアス

火災後は二次災害の発生を防ぐためにも、全面的な消防点検を行う必要がある。消防局の仕事に協力してもらおうか。

リポーター

……私の知る限り、消防局はコミュニティ付近への配備を行っていないはずです。消防士さん、勝手に持ち場を離れたとなれば、これは職務放棄となりますよ。

ディアス

確かにダンスホールの電線はかなり老朽化しちゃいるが、スパークで焼けたんならこうも綺麗な切り口にはならん。あんたらが来たタイミングも出来すぎだな、リポーターさんよ。

リポーター

チッ……

今に見ていろ。


見習いカメラマン

な、なんで街灯が点いてないんでしょう……真っ暗で気味が悪いです……

リポーター

クソッ、全部あの目障りな消防士のせいだ。現場の写真を撮ったらすぐずらかるぞ。

あのくだらん「芸術」の写真がばら撒かれた後も、あのチンピラどもがまだ気取っていられるか見ものだな。

しかしダンスホールはどこだ。道を間違えてないか?

暗い路地裏で、鼷獣が二人の足元を横切った。

新人カメラマンは驚いて跳び上がり、慌ててカメラのライトを塗装の剥がれたコンクリート壁に向けた。

見習いカメラマン

赤くてどろっとした液体が……滴り落ちて……ま、まさか……

リポーター

ふん、赤い絵の具で幾何学模様を描いたくらいで前衛芸術のつもりか? あのチンピラども、私に向かって芸術を知らないなどとよくも言えたものだな。

芸術とは形に囚われず、人の感情を呼び起こすものだろう。

喜び、悲しみ、怒り、恐怖……芸術を鑑賞する時、人は知らない内にあらゆる仮面を脱ぎ捨て、大きな力に引き込まれるようにその作品へ没頭する。

だが奴らのセンスでは、そのような域に到達するのは難しいだろうな。

見習いカメラマン

芸術にもお詳しいとは。勉強になります。

リポーター

昼間のザマをお前も見ただろう。あの芸術家気取りどもの無茶な言いがかりは、もはやちょっとした天災だ。万一奴らに捕まったら、後の事は目に見えている。

局の人間にはもう話をつけてあるから、録画データさえ送ればすぐに放送できる。それをマッテオ大尉が見れば、私たちも「恩恵」に与れるだろう。

見習いカメラマン

はい!

な、何の音だ!?

左の窓から聞こえる声

この子はどうして寝てくれないんだ……もう夜も遅いし、まぶたがくっつきそうだよ。

あなた、もう少しの辛抱よ。この子は前の火事で怖い思いをしたんだから。

リポーター

驚きすぎだ。親が子供をあやしてるだけじゃないか。

左の窓から聞こえる声

ダンスホールのオーナーから聞いたが、今回の火事は人為的な放火だそうだ。

そうなの? 許せないわね……見て、この子。火傷しちゃってるのよ……

見習いカメラマン

子供……

リポーター

おい、まさか子供にまで怖気付いてるのか?

見習いカメラマン

いえ……その、街角に子供が立ってるような気がしまして……しかも……光ってる!?

どうして光ってるんですか!? 今日は月も出てないのに……!

あの子は、一体……何なんですか。どうしてこっちを見てるんですか!?

リポーター

な、なにをビビっている。突っ立ってるだけじゃないか! どうせあのチンピラどもが捨てたゴミか何かだろう。

リポーターがそう言うと同時に、「子供」は無邪気な表情で首を傾げた。首はそのまま大きく折れ曲がり、人間とは思えない角度で止まる。

一歩、二歩……ふらふらと駆け出した「子供」の顔には、不気味な笑みが浮かんでいる。

見習いカメラマン

子供が……あんなに早く……走れるんですか……?

リポーター

お、おい! ひとまずここを離れるぞ……

……って、あの見習いはどこ行きやがった?

見習いカメラマン

ああ――なんで初仕事でこんな目に遭うんだ――

リポーター

情けない奴だな……おい待て! カメラを落とすなよ!

サリバン

やるな、テクノ。人形の扱いがまた上手くなったじゃないか。

テクノ

上の階の画家夫婦が協力してくれたおかげだよ。ホールの火事のせいで二人が飼ってる羽獣まで被害を受けちゃって、二人ともカンカンに怒ってるんだ。

アタシらの作品はお化け屋敷の飾り以下だってさ。アーティストが本気を出したらどうなるか、目にもの見せてやろうよ。

「芸術は感情を呼び起こすもの」とかも言ってたよね。なら、「恐怖」って感情がどう生まれるかも教えてやろうじゃん。

サリバン、みんなに準備するよう伝えて。ショーはまだこれからだよ。


見習いカメラマン

はぁ……はぁ……も、もう帰りたい……

火事で死んだ子供の怨念は一番強いって、父さんが言ってました。あの子はきっと俺たちに復讐しに来たんです!

リポーター

バカ言うな。私たちは別に……何も悪いことはしていない……

おい、何を笑ってるんだ。気でも狂ったのか!? 住民を起こしたら写真が撮れなくなるだろう!

見習いカメラマン

これは……あの子の笑い声です。きっと俺たちをどこかに連れ去るつもりなんですよ!


サリバン

電線は切られたはずだよな。なら、この声はどうやって出してるんだ?

テクノ

トゥリオンがエアロバイクを非常用の発電機に改造したの。

サリバン

やるじゃねえか!

じゃああいつは、今夜俺たちの計画に出す新作を用意できないってことか。

テクノ

ううん。新作は『全力でペダルを踏むトゥリオン』だよ。

彼が一番得意なのはパフォーマンスアートじゃん。忘れたの?

サリバン

……


見習いカメラマン

行き止まり……あはは、もうダメだ……

リポーター

落ち着け! ただの子供騙しだ。カメラをセットしろ、何があってもマッテオ大尉から報酬を出してもらうんだ!

クソッ、痛……おい、私の陰に隠れるな!

見習いカメラマン

お、俺じゃないです……

リポーター

待て……後ろに誰かが……いるような……

彼らの目に映ったのは影だった。

背後から伸びる巨大な影が、すべての路地への逃げ道を覆い隠している。

リポーターは首筋が凍り付くのを感じつつも、背後の気配を確かめずにはいられず、恐る恐る後方へ目を向けた。

そこにあったのは凄惨な形相だった。獰猛な大口をぱっくりと開け、焼け焦げたような匂いを発している。

ギシギシと軋む音に、寒気がする。そして、二人の耳元に近付き――

「……ネエ……ワタシ、キレイ……?」

二人

う、うわあぁぁー! 綺麗ですうぅぅぅーーー!


テクノ

ふぅん。彫刻の頭を制御する源石動力装置を風力駆動に変えたら、不安定さでかえって作品に生命力があるように見えるってわけ。

サリバン

トゥリオンもやるじゃないか。あいつが漕ぐスピードを調整したおかげで、光の強さが絶妙に変化してた。

あいつ、今後も発電役を引き受けてくれるかな?

街の彫刻家

あの素人リポーターが「灰もまた美しい」って言ってたおかげで、新しいインスピレーションが湧いてきたよ。

こいつはダンスホールから回収した、煤まみれの動力装置で改造したんだ。照明演出の方にも新しい試みを加えてみた。

この彫刻で来月の展覧会に参加しようと思う。きっと会場を賑わせる作品になるぞ!

テクノ

新しい試み……

サリバン、アタシが色んな音楽ジャンルに興味あるってことは知ってるよね。

サリバン

ああ、だけど例のチケット代を返せるほどの金は今持ってないぞ。

テクノ

そうじゃなくて……

アタシが言いたいのはさ、一緒に曲を作ってみないかってこと。


リポーター

この音はどこから聞こえてくるんだ? 誰かに耳元で囁かれているのに、誰もいない!

テクノ

わお、いいエフェクターじゃん。

見習いカメラマン

俺たちはもうここから出られないんです……頭がおかしくなりそうだ……

サリバン

そうだろ? Bメロから八小節の不協和音をよく聞いてみな。全部俺が丁寧にアレンジしたんだぜ。

二人

助けてくれぇぇー!

サリバン

しかしテクノ……お前がこんなに圧のある声を出せるなんてな!

リポーター

光だ、光が見えた! やっと逃げられる。マッテオの報酬なんかもう知るか!

テクノ

ふふん。ずっと前からやってみたかったんだ。

興味出てきた? 今度アタシが一番好きなベテランヘヴィメタルバンドのライブに連れてってあげる。これで次の投票は言い訳なしだからね。

サリバン

ははっ、いいぜ! なら俺が曲を作る時は、ボーカルのサンプリング素材をお前にやってもらうとしよう。

テクノ

任せといて。

サリバン

ん? あの二人はどこ行ったんだ?


???

……ふぅ……ふぅ……どうし……て……ここに……あ……

リポーター

……

見習いカメラマン

……

トゥリオン

なんでこいつら……気絶したんだ……?

動力を電力に変換するプロセスを実際にやるってのは……骨が折れるな……くたびれたよ……テ、テクノ!

テクノ

トゥリオン、お疲れ様。

思った通り、アンタをゴールに配置したのは最後の仕上げとして完璧だったね。

サリバン

トゥリオン、ちょっと怖すぎるぞ……

顔は真っ青だし、汗だくだし、まるで湖で釣り上がったばかりのお化けみたいだ……服はどうしたんだ?

トゥリオン

へへっ……芸術のために……身を捧げたのさ……

サリバン

さて、これからどうする?

テクノ

うーん……悲鳴はアレだったけど、こっちの若いカメラマンはなかなかいい腕してたよね。

せっかくコミュニティのみんなでこのビッグショーを作り上げたのに、観客が二人だけじゃもったいないでしょ。

ねぇ、確かこいつら、映像を送ったらすぐに放送できるとか言ってたじゃん?


サリバン

テクノ。祝勝会にも参加せずに、階段に座って何してんだ?

テクノ

放送後の反響、見た?

サリバン

ああ。バカバカしいとか、怖いとか、良いエンタメだとか……色んな評価があったが、これでテレビが俺たちの邪魔をすることはもうないだろうな。

テクノ

だからって、これから安心してぐっすり眠れるわけじゃないよ。

この土地を狙ってる奴らはまだいっぱいいるからね。あいつらはストリートアートの価値も分かってないくせに、「生産性のない流れ者」とか言ってアタシたちを追い出そうとしてくるの。

サリバン

ところで……今日の祝勝会は、ここを抜ける奴らの送別会でもあるんだよな。

芸術なんて金ばっかりかかる割に、認められるのは難しい。それで身の危険まであるときたら、ここにいるのはどんどん苦しくなっていくだろうな。

テクノ

ダンスホール、いつになったら再開できるかな?

物好きな観光客

すみません、ちょっといいですか?

あなたたちって、あのテレビの深夜番組でやってたストリートアーティストさんですよね?

テクノ

うん。

物好きな観光客

やった! 一緒に写真撮ってもらっていいですか? あたしも友達も、あのショートムービーがほんとに大好きなんです!

芸術の勉強をしたことはないし、そういう理論もあまり分からないです。でも、なんだか抑圧からの解放とか、自嘲みたいな感情が伝わってきて……その、変なこと言ってたらすみません……

テクノ

アンタ……ほんとにアタシたちの作品が好きなの?

物好きな観光客

はい!

サリバン

へえ、どの作品が一番好きなんだ?

物好きな観光客

一番は……

あれ……? 急に人だかりが……

テクノ

待って。

スコアボードは融点の高い金属でできてたから、火事にも耐えられたんだ。

みんな! 投票はまだ終わってない。音楽ジャンルの投票では負けたかもだけど、作品の投票でアタシに勝てるかな?

サリバン

アタシ「たち」の作品だろ。

俺たち二人のミックステープが好きだって奴は、最初と最後の番号に投票してくれ。

はいよ、お嬢さん。電動ドリルだ。

物好きな観光客

カッコいいですね。新しい体験型デバイスですか?

街の彫刻家

ああ、新しい投票のアイデアを思いついたんだ。

ちなみに、あの彫刻作品が好きなら真ん中の番号に投票してくれ。

倒壊したダンスホールの前で、古びた音楽プレイヤーから途切れ途切れに奇妙なスタイルの合作曲が流れ、道行く人々を惹きつける。

テクノが人形を持って自分に票を入れるようアピールする一方、彫刻家はチョークで地面に何かを描き出す。

ペピ・トゥリオンが服を脱ごうとしたが、それは観客に止められた。

焦げついた二つの人形が互いの手を取り合い、BGMに合わせて観客の足元で軽やかに踊る。

もし人形をもっと大きくして、より多くの人に見せることができたら……自分たちのことを理解してくれる人は、本当はもっといることに気付けるかもしれない。テクノはそう思った。

いつかきっと、皆がもっと広い場所で踊れる日が来る。