帰還!密林の長 RI-5・戦闘前
それぞれの長所
ドクター、もうかなりジャングルの奥に来てるぜ。
転ばないように気をつけろよ。
ここいらは足元がぬかるんでるし、木が覆い茂ってて根っこだらけだからな。
お、ありゃどこの部族だ? 行ってみようぜ。
ふあ~暇ねぇ、ちょっと昼寝しよっと……
イナム!
ガヴィル? どうして私のところに? 祭典じゃズゥママに負けたらしいわね。
耳が早いじゃねぇか、イナム。
しっかし、トミミから話を聞いたときは正直信じられなかったが……まさかお前が本当に、部族の族長になっちまうとはな。
好きでやってるわけじゃないわよ。でもこの人たちが勝手についてくるんだもの、仕方ないでしょ。
それより、なんで祭典に来なかったんだ?
あ、ドクター。こいつがトミミが言ってたイナムだ。
わあ、外の生きた人じゃない。
外のお友達? シャイな人ね。
ドクターは無口なだけだ。
はあい! ガヴィル、この人あんたみたいに明るいのね。
あれ? イナム、なんでお前までサルゴン語がわかんだよ?
これでも正式にはこの辺り一帯のトランスポーターだもの。
トランスポーター? お前が?
なによその反応……でもトランスポーターが何なのかは知ってるのね。
他の人たちに言ってみても、なにそれって顔をされるだけなのに。
ちょっと待て、お前いつトランスポーターになったんだ?
いつって、最初からずっとトランスポーターだけど……
ここだって一応サルゴン領内よ。……まさかあんた、サルゴン政府はここのことを何にも知らないなんて思ってないでしょうね?
え、違うのか?
もちろん違うわよ。私の知る限り、ここは数百年前まで、サルゴンのとある集落の採掘場だったのよ。
でも天災で移動都市が離れてから、採掘場は廃れてしまったの。
今ここにいる人たちは、その時に残った人と、その後戻ってきた人たちの末裔ってわけ。
サルゴン政府は元々、天災が落ち着いたら一番近くにいる移動都市を呼んで、採掘場を再利用するつもりだったみたいけどね。
ほら、十何年前に来たあれよ。あんたも覚えてるでしょ。
ああ、あれか。ズゥママも知ってるはずだ、あいつはあの日からおかしくなっちまったんだ。
そうなの? でも、あの都市は結局行ってしまった。きっと調査してみたら、この鉱脈には大した価値がないってわかったんでしょうね。
ま、ここに都市を泊めたら、他の都市から離れすぎちゃうしね。
昔はこの無人地帯も結構栄えてたらしいけど……どれほど昔のことなんだか。
まあそれはともかく、私がまだ、えーっと、何歳だったかしら? とにかく小さい頃にトランスポーターになって、それからここに派遣されたの。
へぇ。
はぁ、やっとこの話ができる人に会えたと思ったのに……せめて興味があるふりくらいしてよ。
めんどくせぇヤツだな。つーかトランスポーターだったら、頻繁に外と行き来するんじゃねぇのか? アタシはお前がここから出ていくのを見たことないんだが。
そりゃそうよ。外に出たって、街で買い物するくらいしかすることないわ。こんな閉鎖的なところから、外に手紙を出そうとする人なんていないもの。
どういうことかわかる? ここを出て行った後も連絡がつく人は、私がトランスポーターになってから今までで、あんた一人だけなのよ!
はぁ……まぁそれで、あまりにもやることがないから、一番近い街から商品を仕入れて商売をするようになったの。
そしていつの間にか、「商売人イナム」って呼ばれるようになってたわ。
なるほどな、まったく気づかなかった。
昔のあんたじゃそうでしょうね……
私は都会育ちだけど、今はこっちの生活の方が気に入ってるわ。
何もかもシンプルで純粋で、悪いところなんて一つもないもの。
アタシはお前のことも他のリーベリと同じように純粋なヤツだとしか思ってなかったぜ。
誉め言葉として受け取るわ。それで、私に何の用かしら?
じゃあまず一個質問だけど、前にAUSが来たってのはどういう経緯だ? お前が呼んだのか?
AUS? まさか! 世間に疎い私でも知ってる有名バンドよ。私が呼んだところで来てくれる相手じゃないでしょ。
むしろ、彼女たちがやって来て一番驚いたのが私なんだから。
ここに来たのは、ただあの人たちの通り道だっただけよ。通訳を務めた私が言うんだから間違いないわ。
ああ、この話になると興奮しちゃうわ。あんたが来てよかった。他の人に自慢してもすごさが伝わらないんだもの。
直筆サイン入りのアルバムも持ってるわよ、見る?
いやいい。アタシも別にファンじゃねぇし。ただ不思議に思っただけだ。
はぁ。長く外にいたくせに、センスは全く磨かれないのね。
ぶん殴るぞ? それより、ここで物資を分けてもらえねぇか? これからズゥママのとこに行くんだ。
いいわよ。物々交換がルールだけど、あんたなら通貨とトレードでもいいわ。
……あ、ちょっと待って、質問攻めされて忘れてたけど、私もあんたに用があるんだった。
あ?
「クロワッサン」って人は知り合い?
クロワッサン? ああ、アタシの連れだ。アタシらも探してるとこなんだが、どっかで会ったか?
ええ。たぶん市場の方にいるわ。
さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 彫りたてホヤホヤの木彫刻だよ!
さあさあ、お立ち会い、爺ちゃんの代から伝わる鉱石だぜ! こいつで武器を作りゃ、何でもバッサバッサと切り倒せること間違いなし!
驚いた? あの客寄せ文句だって私が教えたの。様になってると思わない?
ほら、クロワッサンはあそこよ。
市場の一角で、クロワッサンがアダクリス人と交渉している。
彼女が、相手の手にある鉱石と自身が持っている貝殻を交互に指さすと、相手は首を横に振った。
クロワッサンは、残念そうに眉をひそめて、サッと手を振った。
彼女はポケットから石を一つ取り出し、貝殻、そして相手の鉱石を順番に指さした。相手は少し考えたあと、ようやく頷いた。
交渉では厳しい表情を見せていたクロワッサンだったが、相手が身を翻した瞬間、満面の笑みを浮かべた。
良さげな鉱石やなぁ、うんうん、今回は儲けもんや。
クロワッサン、なんでこんなところで商売してんだ?
ガヴィルはん、旦那さん! いやぁ、やっと会えたわ!
平気平気、ピンピンしとるわ。
アハハ、旦那さん、そないな表情せんといてぇな。
ウチもちょうどイナムはんに霊殿まで連れてってもろて、旦那さんたちを探そうとしてたところやねん。
でけへんよ。でも商売っちゅーもんは、言葉が通じんでも問題あらへんで!
おととい、偶然道端で彼女を拾ってね。外の人みたいだったからここに連れてきてあげたの。
それにしてもこの子、すごい商売上手ね。言葉は通じないけど、私の子分となんとか交渉するやり方を考え出して、あっという間にここに溶け込んだわ。
確かにそうらしいな。クロワッサン、他の仲間には会ったか?
会ってへんなあ。イナムはんにも聞いたんやけど、それらしい情報はないって。
そうか。少なくともお前が無事で良かった。あとはウタゲとブレイズだな。ブレイズのヤツは真っ先に飛び降りたからあんまり心配していないが、問題はウタゲだな……
イナム、大変よ! アダクリスの集団が攻めてきたわ!
なんですって? どこの部族の馬鹿共よ?
ジャイアントウッド族みたい! でも率いてるのは刀を持った変なヤツなのよ!
変なヤツ?
何があった?
刀を持った変なヤツがアダクリスたちを率いて攻めてきたって、子分が言っているの。でも刀を使う変なヤツなんてここには……
待った、刀を持った変なヤツって……それウタゲはんちゃう!?
あんたたちの仲間なの? いや、それより攻め込んで来てるのならまずは止めないと! ガヴィル、それとフードのあんた、手伝ってちょうだい!
あ、ウチも行く!
野郎ども、行け! なーんてね。
あたしの言葉なんてわかんないと思うけど、まぁ頑張ってね~
アハッ、最初はアホくさかったけど、こいつらを連れて片っ端から喧嘩をふっかけるのも、なかなか楽しいじゃん。
おい、ウタゲこの野郎! なにやってんだ!
あれぇ、ガヴィルとクロワッサン、それにドクターも。やっほ~!
やっほ~じゃねぇ! なんであいつらを連れて村を襲ってんだ!
あれぇ、ここってガヴィルの家だったの? じゃああたしは手を出さないようにするね。
他の人らも止めぇや!
えーっと、あのー、悪いんだけどさ、あいつらにあたしの言葉は通じないんだよね。
チッ、しょうがねぇ。片っ端からぶん殴って止めるぞ。