ドッソレスホリデー DH-3・戦闘後
銃を手に
これは驚きの展開だーっ! なんとチェン選手、囲まれたミヅキ選手を救うべく路地へと現れ、そのままほかの選手たちと直接対峙し始めたぞ!
相手のチームたちも『龍威鼠心』を脅威と見なして、自然と協力関係を結んだみたいだ!
しかーし! チェン選手は恐れる様子をまったく見せないっ! 彼女は応戦するみたいだよ!
くう~っ、なんてエキサイティングなバトルなんだ!
だけどエブリバディ、お忘れなく! なんとこの路地の反対側ではリン選手も戦ってるんだよ!
おっとこれは! チェン選手の繰り広げる激しいバトルとは打って変わって、リン選手は少ない手数でスマートに、向かってくる選手たちを威圧しているぞ!
強い! 強い! 彼女たちに勝てるチームなんて、この大会に存在するのかーっ!?
ははっ。あの二人、やっぱり別々に戦った方がいいみたいですね。
どうでしょう、お嬢様。例えばの話ですが、チェンとリンお嬢さんがやり合ったら、どちらが勝つと思いますか?
そんなこと聞いてどうするのよ?
ただの興味ですよ。実力のある二人が並んでいたら、どちらの方が優れているのか知りたくなるのは普通のことだと思いますが。
そんなのアンタだけでしょ。
はぁ、どの道、アタシにはわかんないわ。あの女がちゃんと戦ってるところなんて、ここ数年で初めて見たくらいだし。
えっ? リンお嬢さんとは仲良しじゃないですか。それなのに、見たことがないのですか?
誰が仲良しよ誰が。アイツって何かと謎に満ちてるっていうか、いくら電話しても全然繋がらない時だってあるくらいよ。
大体いくら仲が良かったとしても、戦ってるところを見たことがあるとは限らないでしょ。
ああ、確かにそうですね。どうやら私はチェンに慣れすぎたみたいです。何せ今じゃ、チェンが私に勝とうと思うなら、剣術だけでは足りませんから。
まったく、皆が皆アンタたちと同じだとは思わないでよ。
それにアタシの場合、見ずに済むならそれに越したことはないわ。アイツ何をしてるか分かりゃしないんだから、戦ってる姿をみる時が、アイツを捕縛に行く時になるかもしれないし。
結局のところ、あの鼠王の娘ですからね。
とはいえ、そうとも限りませんよ。あの人だって、悪い人じゃありませんし。
昔、私が龍門での渡世を始めた頃のことですが……
はいはい。アタシだって鼠王に会ったことがないわけじゃないんだから、そうやって語ってくれなくても結構よ。
ふふ、お分かりいただけているならいいんです。
……それよりアンタ、今「渡世」とか言ったわね。
おっと、お嬢様の前でやくざ言葉を使ってしまうとは。大変失礼いたしました、小官の口にはよく言って聞かせておきます。
ふんっ。ちゃんとしなさいよ、まったく。
……ところで、アンタとチェンはユーシャが戦ってるところ、見たことあるの?
ないから訊いたんじゃないですか。きっとチェンの方も、見たことはないと思いますよ。
とはいえ、さっきお嬢様が言っていた通り、彼女の戦う姿を見たことがないというのは、我々の立場からすればいいことです。仲の良い相手だろうと、すべきことはしないといけませんから。
でしょ? わかればいいのよ。
ええ。ですから私も、まさかチェンと彼女が共闘する日が来るなんて思ってもみませんでした。
人生というのは、色々なことがあるものですね。
さて。話は戻りますが、お嬢様はどちらが勝つとお思いですか?
そんなこと、考えるのも面倒だわ。
はぁ、それじゃ一人で予想してみるとしましょう。
恐らく、チェンが剣を手にしていたら、リンお嬢さんは、チェンに近付くのは難しくなるでしょうね。
ですが、もし、リンお嬢さんがチェンの懐に潜り込み、剣術を封じることさえできたなら、チェンに勝ち目はないと思います。
あのチェンが、それだけでやられるかしら?
もちろん、本来ならば簡単な話ではありませんよ。チェンの格闘技術は確かなものですし、締め技や関節技に関しても、普段トレーニングで目にする限り、大層な腕前でした。
先ほど彼女が見せた銃撃も精確ですしね。
しかし、結局のところチェンが最も得意とするのは剣術ですから。
それって……つまり、ユーシャの格闘技術はチェンの剣術に匹敵する腕前ってことよね?
ええ、結論としてはそんなところです。
チェン・フェイゼ、ヒーローごっこは楽しかったかしら?
そう楽しいものでもない。そもそも、そんなことをお前が気にする必要がどこにある?
ごめんチェンさん、俺……
言ったはずだ。キミはここで待っていろ、と。ゆえにキミの行動に問題などないさ。
助けてくれてありがとう、お姉さん。
いや、気にするな。
でも、どうしてこんなことしてくれたの?
理由などない。偶然見かけたから助けた。それだけのことだ。
そっか。じゃあ、お姉さんは良い人なんだね。
だったら……はい、これあげる。
これって……競技用の金塊?
うん。さっきはこれを取ろうとして、あの人たちに囲まれちゃったんだよね。
本当にもらっちゃっていいの?
大丈夫だよ。また探せばいいだけだし。
それに僕、元々試合にはそんなに興味がなくてね。だから、お姉さんみたいな良い人と出会えただけでも、満足なんだ。
一応言っておくけど、この辺り、さっきの騒動でちょっと目立ちすぎたわ。おしゃべりするのは自由だけど、長居するのはやめた方がいいでしょうね。
そう? それなら僕、もう行こうかな。ばいばい、お姉さんたち。
では、私たちもここを離れるか。
その前に聞かせてもらおうかしら。そっちはヒーローごっこを楽しむ以外に何か収穫はあったの?
金塊は収穫の内に入るだろう?
じゃ、それでいいわ。
そう言うお前はどうだったんだ?
……特に収穫なし、よ。
で、競技は続けるの? それとも、金塊を渡してゴールする?
ひとまず続けるとしよう。
わかったわ、そうしましょ。
さーて、親愛なる視聴者の皆! 二十個の金塊がすべて提出されたという情報が入ってきたよ!
ってことはつまり、第一ラウンドはこれで無事終了だ。
それじゃあここからは、投票タイムに入るよ!
この投票は何時間か続くからね。それが終われば、メインステージで第一ラウンドの通過チームを発表するから、お見逃しなく!
……ひとまず、終わったな。
これから観客投票があるけど、今の二人の人気だったら、まず問題はないと思うよ。
そうでしょうね。
それでさ、リンさんの方も、危険分子に関する手がかりは見つからなかったんだよね?
ええ。こっちにはなかったわ。
そっか。それなら、そもそも危険分子なんていないのかも……
そうかもしれないわね。
ところで、チェン・フェイゼ。このあと時間はある?
どうかしたのか?
別に。ただ、ちょっと用があるの。