吾れ先導者たらん GA-6・戦闘後
レクイエム
エゼル、左前方です。
うわっ!
危なかった!
あのよ、埒が明かねぇし、もうやめにしねぇか?
……ったく人の話を聞かない奴だな。
エゼル、お前は何よりセシリアの身の安全が大事なんだろ? だったら俺の手に渡った方が安全かもしれねぇぜ?
信じると思いますか?
俺は嘘をついたことねぇんだ。
たとえ本当だとしても、セシリア自身が望まないなら認めません!
……アンドアインも面倒なことをしてくれたもんだな。
!!
エゼル、集中してください。
いや……フェデリコ先輩……
何か感じませんか……
これは……
エゼル、作戦変更です。鐘楼へ向かい状況を確認してください。
反逆者のトランスポーターは私が引き受けます。
教皇聖下、これは!
シーッ――静かに。
ヴェルリヴ、ホールを閉鎖し、面会の予定を一旦すべてキャンセルしなさい。
一体何が起こっているのです?
……
私の前任者――つまり先代の教皇は、歴史の研究をこよなく愛していた。聞いたことはあるかね?
……いえ、初耳です。
うむ、それも無理はない。粗雑なお方で研究記録には誤りが多く、とても褒められた文章ではなかったからね。
歴史の研究というよりも、歴史を題材に、想像力を働かせて楽しんでいたと言うべきだろうか。
あのお方はね……かなりロマンチックな比喩を好んで書いた。歴史論文としては感情過多と言わざるを得ないが、確かに印象深いものではあった。
「歴史、それは形なき巨人が大地に書いた無限なるポリフォニーの楽章である」……と度々語っていたものだ。
その比喩に照らしてみれば、その巨人の音楽家が、新たな一小節に差し掛かったのかもしれないね。
......
肺の中の空気をすべて絞り出し、間髪入れずにまた肺いっぱいに吸い込む。
つまずき、必死に身を起こして、また前へと突き進む。
何かが起ころうとしている。それをはっきりと感じた。
鐘楼の頂上、その扉の向こう、セシリアのいる場所で、何かが起ころうとしているのだ。
扉を開けると――
やせ細った少女がそこで歌っていた。
古いサルカズの歌を。
真剣に歌う彼女の幼い声に、すべての感情が注ぎ込まれていた。
僕は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。自分の乱れた呼吸が歌声の邪魔になるのを恐れて、必死に息を抑える。
ふと、僕は何も聞こえなくなっていることに気付いた。
ただ唯一鐘の音だけが、まるで古を越えてやってきたように響いていた。
……鐘の音……啓示の石塔から……そんなことが……!?
今まで鳴ったことなんてないのよ!?
……いや、唯一……
数千年前、初代の聖徒がまだ地上を闊歩していた時代……
……
「日中、サンクタが天を仰げど陽は見えず、漆黒の空が広がるばかりだった。夜が更けると、悪魔の軍勢が押し寄せ数多のサンクタを殺めた。かくして、サンクタは多くの輝きを失った。」
……「聖徒たちが『我々に付き従え』と呼びかけると、石の塔がそびえ立った。聖徒たちが『我々に耳を傾けよ』と呼びかけると、鐘の音が鳴り響いた。」
「鐘の音が荒野にこだますると、サンクタの心は一つになった。」
「これは啓示であり、これは戒めなのだ。」
「それ以来、陽光が遮られることはなくなった。」
「聖徒たちは『サンクタの楽園となる都市を建てなさい』と呼びかけた。」
「聖徒たちは『それをラテラーノと呼びなさい』と言い渡した。」
……こんなことって……
啓示の石塔はラテラーノで最古の建造物の一つ……いや、書物によれば、まず先に啓示の石塔があり、それからラテラーノが誕生したようだ。
そして、その石塔の聖鐘が今再び鳴った……
あの幼きセシリアによって。
ですが、どうして……
巨人の音楽家が楽章にいくつかフォルテシモを加えようとして、その際に目に留まったラテラーノの古い鐘を割り当てたのだろう。
枢機卿ヴェルリヴ、今この瞬間、聖堂にいるのは我ら二人だけだ。これは果たして幸か、不幸か……
……教皇聖下、聖鐘が鳴った原因をすぐにでも明らかにする必要があります……いえ、実際の原因が何であれ、その原因を提示し、解釈するのは……教皇庁でなければなりません。
諸国の使節がラテラーノに集まっている今ならば、出席者がその証人となってくださいます。これはチャンスとも言えるはずです。
ならば行くがよい、ヴェルリヴ。使節たちに知らせるのだ――数千年の時を経て再び鳴り響いた聖鐘の音は、変革をもたらす予兆であるからして、我々は団結しこれからの未来に備えねばならないと。
では啓示の石塔の方は……?
時が満ちたら、こちらも動くとしよう。
先導者様、もしかして……こうなることを知っていたんですか? セシリアは一体何者なんですか……あ、あの子は混血ですが……まさかまだ何か秘密があるんですか?
いいや、まさか。あの子は私たちの知るセシリアそのものさ。いささか特別な境遇の子ではあるが、何も秘密なんてないよ。
もしかすると、ラテラーノ自身が変化を渇望していて、セシリアは……ちょうどその瞬間に居合わせただけかもしれないね。
あるいは、あの子は本当に長きにわたるサルカズとサンクタの亀裂を埋める資質を有しているのかもしれない。啓示が舞い降り、聖鐘が鳴り響くほどのね。
もちろん、あの聖鐘の音は単なる誤解や偶然、あるいは歴史に埋もれた悪い冗談でしかない可能性もある。
しかし知っての通り、最も重要なのは真相ではないんだ。
はい……いずれにせよ、あたしたちにとってはチャンスです。この瞬間に居合わせることができたのは、あたしたちもまだ神に愛されているという証拠かもしれません。
今、教皇庁の注意は使節の滞在エリアと啓示の石塔に向いているはず……
……あたしたちが道を作ります。先導者様はただひたすら突き進んでください。
……アンドアイン、鐘が鳴ったわ。
この鐘の音は、まもなく旅に出ようとしている少女によるものだ。
そうなのね。
晴れやかな口調だけど、ようやく決心したのね。
決心が揺らいだことなどないよ。
すべてを差し出すことになっても?
ああ、すべてを差し出してでもだ。
……それに意味はあるの?
意味か……意味は何もないところに降って湧きはしない。私たちの選択はどれも、そこに「意味」を構想し、形を作り、舞い降りる機会を与えているだけに過ぎないよ。
そう。わかったわ。
あなたにいつの日か安らぎが訪れますように。
パティア、君のさっきの言葉は、我々の初志に背いているよ。
人々は誰もが礎であるべきだ。我々が重なり合って築かれた平坦な道は、後から来る者のためにある。
今すぐ教皇聖下と面会せねばならん!
銃騎士タルヴァドレ様、教皇聖下はただいま祈りを捧げておられますので、いかなる面会も受け付けておりません。
しかしこの状況は!
どうかご了承ください。
爆発?
おそらく、また市民たちのいたずらでしょう……
いや違う! 爆発音は使節滞在エリアからだ! あそこでの爆破行為はすべて禁止されているはず!
じゅ……銃騎士タルヴァドレ様、使節滞在エリアが襲撃を受けています! また、それ以外にも都市内の複数箇所で火災と爆発が起きています!
迷い人め! 聖鐘の音を聞き、ついに大きく打って出たか!
使節滞在エリアの警備は銃騎士様たちに対応していただいておりましたが……襲撃と爆破を受け、使節たちはパニックを起こし、銃騎士を増派せよと強く要求しております……
わかった。
クソッ、こんな時に!
枢機卿ヴェルリヴ!
啓示の石塔の聖鐘が数千年の時を経て再び響き渡った……この最も神聖な瞬間に、第一回「万国サミット」の開催ができること、そして使節たちが居合わせたことを我々は喜ぶべきです。
しかし異端の残党がこれに乗じて混乱を起こし、サミットの妨害を企てることでラテラーノの栄光を曇らせようとしています。
銃騎士タルヴァドレ殿、教皇聖下の命により、すぐに使節滞在エリアへ向かってください。銃騎士一丸となり使節を保護し、サミットが滞りなく開催できるよう手を尽くしてください。
私も同行いたします。
わかった。だが、枢機卿……
あなたも感じたはずだ。啓示の石塔から広がるあの力は……
どうか言葉をお慎みください、銃騎士タルヴァドレ殿。
あれは栄光に他なりません。
レミュアン、これもあいつがやったの!?
……かもしれないわね。
この期に及んで、まだあいつをかばう気!?
フィアメッタ、こっち来て。
なによ。
いいから。
……?
……!?
ごめんなさい、フィアメッタ。
一昨日、あなたにあんなこと言うべきじゃなかったわ。
……いいから離して。
あなたが許してくれるならね。
確かにあなたにも腹は立ってる。
……でもそれ以上に腹が立つのは……
……自分自身なのかもしれないわ。
フィアメッタ、一つだけ、信じてほしいの。
もし彼が本当にラテラーノに危害を加えようとするなら……私は絶対に放ってはおかない。
じゃああいつは一体何がしたいの?
……たぶん、彼には問いかけたいことがあるんだと思う。
誰に?
……教皇聖下に。
……何を?
サンクタが……問うべきじゃないことを。
もう少しわかりやすく言ってくれない?
……ごめんね、私もよくわからないの。きっと、彼が心の中にずっとしまっていた問いだと思う……本人から直接聞いたわけじゃないし、私の臆測でしかないけどね。
でも八年前のことは、間違いなくその問いと関係しているわ。
……ってことは、モスティマも知ってたの?
そんなわけないでしょ。私はレミュアンとは違うんだからさ。
レミュアンはあいつのことを理解しようとしてそういう考えに至ったんだろうけど、私は……あいつなんて気にする価値もないと思ってるからね。
アンドアインは確かに可哀想な奴だけど、私もいちいちあいつの考えを理解してあげるほど暇じゃないってこと。以上。問題ある?
……レミュアンよりあなたの方にムカついてきたわ。
……私は自分にできることは全部やったからね。でも君はさ、自分が身替わりになれたら良かったのにって後悔してるんじゃない?
……
レミュアン、他に知ってることを全部教えて。
あなたは聞きたくないと思うけど。
聞いてみないとわからないでしょ。
……
セシリア・ラポルタ。教皇の命により、君を保護する。
どうして? 鐘が鳴ったから……?
鐘が鳴ったことが、わたしと関係あるの?
答えられない。
即刻、私と共に大聖堂まで来てもらおう。
……
エゼルお兄ちゃん、大丈夫だよ。
行こう。