紅炎遣らう落葉 CF-9・戦闘後
決戦!燃える狩猟魂!
相棒、早く! わたしがこれから言うことをきちんと記録するのですニャ! テラ大陸におけるリオレウス討伐について記した、唯一の資料になるかもしれませんニャ!
ニャ!
ニャ! 我々は第一期テラ大陸調査団! わたしは、この調査団の学者にして団長たるアイルーですニャ!
ニャニャ?
ニャ? わたしが団長になるのは当たり前でしょうニャ。え? 納得できないんですかニャ? じゃあ、あなたは筆頭職人を名乗りなさいニャ!
って、そんなの今はどうでもいいですニャ! とにかくわたしたちは現在、狩りの最前線……にある、石の後ろにいますニャ!
我々の目の前で、手に汗握る狩猟が始まったところですニャ!
相手は天空の王者――リオレウスですニャ! それに挑むのは、テラのハンターさんと、自称百戦錬磨のオトモアイルーですニャ!
これだけ聞くとリオレウスが有利だという声もあるかもしれませんが……実際のところ白熱の展開となっていますニャ! ……相棒、ちゃんと記録しましたかニャ?
ニャ!
今ちょうど、オトモがリオレウスの攻撃を……避けましたニャ! お見事ですニャ! 注意を引きつけましたニャ!
この機に乗じてノイルホーンがリオレウスの尻尾に向かって走り、太刀を振り上げ――そして!
そしてニャ!
吹っ飛ばされましたニャ!
ひどいニャ~!
ノイルホーンのほうはやや苦戦していますが、ヤトウはこの隙を利用して、横から攻撃を始めましたニャ!
素早い動きでリオレウスの猛攻を避け、うまいこと下へ潜り込んでますニャ! 狙いは……リオレウスの右翼ですニャ!
しかーし! ここでリオレウスが急に空へと飛び上がり、すっごいブレスを吐きましたニャ! くう~っ、ヤトウの攻撃が通らなくて残念ですニャ。
ニャ!
あ! ノイルホーンがもう一度リオレウスに向かって……攻撃しましたニャ! 今度は尻尾にしっかりと突きを繰り出してますニャ!
ですが……力みすぎて転んじゃいましたニャ……わっ! ここで尻尾回転がきましたニャ!
ノイルホーンはまた吹っ飛ばされちゃいましたニャ……
それでも、彼は立ち上がりますニャ! 不屈の狩猟魂がメラメラと燃えていますニャ! 再び攻撃ですニャ!
ノイルホーン!
平気だって、ちょっと苦しいだけで……げほっ。
やめろ、そんな目で見るな! 本当に大丈夫だから!
ダメージは与えられているようだが、明らかに手強さを増してきているニャ……
奴の周りに漂う粉塵の密度が高くなっておるようじゃニャ。炎の威力も増しているし、動きが読みにくくなってきたニャ。
奴の勘が鋭くなってきているようだ。凶暴性も増しているし、気を逸らそうとしても効果がない。隙を見つけて仕掛けても上手くいかない……
くっ、また振り出しか……! もはや近付くことも難しくなってきたぞ!
ニャ! リオレウスはもはやワシらを見ておらんニャ!
! あの方角は……
避難所へ向かっているようじゃニャ……! しかし、村人たちはまだ移動中の頃合いだニャ!
すぅ、はぁ……練気を以て刃を御す、か……!
ノイルホーン! ぼさっとするな、あいつを止めるぞ!
その太刀では方向を制御するのは難しいだろうが……盾でやっていたように飛び板として使って、リオレウスへ近付くしかない。今度こそ奴の弱点に命中させてみせる!
しかし、リオレウスの様子を見るに、そのようなことをすれば奴の前で無防備に身を晒すことになるニャ……
考えている暇はない! ノイルホーン、私に合わせろ!
ヤトウ……
なんだ、早く言え。
よく聞いてくれ。奴の頭部にはでかい傷がある。傷は癒えてるように見えるが、下あごの動きが前と変わってるんだ。
隙を見つけた瞬間に奴の下あごを攻撃すれば、最大ダメージをたたき出せると思うぜ。
だが今の状況では、その瞬間を見出すのはほぼ不可能だぞ。
リオレウスの身体のバランスさえ崩しちまえば……隙は作れるはずだろ?
そうかもしれないが、それには――おい、ノイルホーン!? 何をするつもりだ!?
隙を作りに行くんだよ! そこのオトモに教わった技でな! 確かに難しくはあるが……
俺を信じろ! これは俺にしかできねえことだ!
ヤトウ! 俺はお前を信じてるぜ! チャンスを掴めんのはお前だけだってな!
……わかった。
頼んだぞ!
練気を以て刃を御し、獲物を剣でとらえれば、溜まった練気でより強力な攻撃を放つことができる……だったな。
練気を以て……獲物を、剣でとらえる……
ああもう、早いとこコツを思い出さねえと……!
オトモが教えてくれたあの技、前に似たようなのを師匠に習ったことがあるんだよな。何かを斬るにはこれが一番、って具合の……!
ハンター殿! リオレウスが怪我を負っている今のうちに、伝授しておいた気刃斬りを繰り出されよニャ!
わかったからちょっと黙ってくれ! ――そうだ、思い出した! こうして刀を納めて、そこから……
今だ! ――抜刀!
居合抜刀気刃斬りだニャ!
っし、当たった!
ノイルホーン殿! 時が来たニャ!
おう! 覚えてるぜ、太刀の最強技ってやつだろ! この力……使いこなしてみせようじゃねえか!
行くぞ!
うおおおおおッ!
気刃兜割だ! はあッ!
リオレウスの巨体を踏み台に、ノイルホーンは高く跳び上がった。
宙に舞うその身体は、見えない糸に導かれるかのように頂点に達し――
気が最高にして最小の一点へと練り上げられていく。
そして練気は解き放たれ――
怒涛の勢いで、リオレウスへと振り下ろされた。
っ、視界が……ノイルホーン! 無事か!
だっ……大丈夫だ……! ただ、ちょっと身体が動かねえんだけど……
この短い間に気刃兜割を習得するとは……驚きだニャ!
だが、リオレウスの反応も早いニャ……! あの一瞬で反撃してくるとはニャ。
退いてくださいニャ! 相棒、荷車の出番ですニャ! ノイルホーンを運んであげましょうニャ!
あれっ、何を持ち上げてるんですかニャ? ちょっと、それはノイルホーンじゃなくて……ニャニャ!?
これは……ニャ!
リオレウスの尻尾だニャ! ノイルホーン殿がやったのニャ! ――リオレウスが倒れたニャ!
今こそ好機だニャ!
ああ……行くぞ!
わわわっ……早くノイルホーンを運ぶのですニャ! わたしたちはあれを記録しないといけませんからニャ!
ヤトウ……あとは、頼んだぜ……
(傷はどこだ? 下あごにあると言っていたが……)
(くそっ、灰や土煙がひどい……視界が悪すぎる……)
(! あった、あそこだ!)
ここで終わらせてやる!
ヤトウ殿! 止まりなされニャ!
くっ……このチャンスを逃すわけには……!
尻尾を斬られたばかりでありながら、すぐさま身を起こすとは……あのリオレウス、本当に凄まじい相手じゃニャ。
あっ……!
リオレウスが飛び去ろうとしているニャ! 方角は……やはり避難所のほうだニャ!
奴を打ち落とす手立てはないのか!?
閃光玉を使うほかあるまいニャ……! されど、ワシの持っていた閃光玉はここへ来る前に使ってしまったニャ!
手持ちの道具だけでは、リオレウスのほうから仕掛けてこん限り立ち向かうことはできぬぞニャ。
奴がすべてを壊していくのを黙って見てなどいられるか!
絶対に……絶対に、好き勝手にはさせないぞ!
まずはモンスターをこちらの狩り場へ引き込むべし――これは長い歳月の中でハンターたちが経験から得た最重要の定石だニャ。そうすることで初めてまともな戦いができるのじゃニャ。
対してこの状況は……王者たるリオレウスにとって、空は己の領域だからニャ……
今のあやつを止めることは……もはやかなわぬのやもしれんニャ……
ニャニャ! 相棒! 危ないですから、そっちには行かないでくださいニャ!
閃光玉の代わりならあるニャ!
何……?
まさかおぬし、この地の素材で作ったのか?
これだニャ。
オリジムシの殻、叩いて砕いて、燃やしたらピカピカだニャ!
爆発する石の粉、混ぜ混ぜしたから、どかーん! できるニャ。
ニャ! ヤトウ殿! これをリオレウスの前で炸裂させれば、きっと墜落させられるニャ!
奴の頭をしっかりと狙い、炸裂する前に目を閉じるのだニャ!
スタングレネードのようなものか? わかった!
名付けて閃光爆弾だニャ!
了解。
貸してくれ!
これでも……喰らえ!
! よし、落ちていくぞ!
ニャニャ! リオレウスが落ちたニャ!
この双剣で、リオレウスに今一番大きなダメージを与えられる技を教えてくれ。
空中回転乱舞だニャ! まずは鬼人化状態に入り、しっかりと狙いを定めて、高所より飛びかかると……
要点だけ言え!
強く激しく双剣を振り、空中を舞う技だニャ!
回転乱舞、か……
(……一瞬の機会を、逃さず掴まなければ……!)
空中を、舞う……
我が刃を喰らえだニャ! ニャー!
――リオレウス!
私は、ここで――
お前を倒す!
彼女は怪物だけを見据えて、真っすぐに突進していく。
双剣を翻し、空から斬撃を放つ。その勢いに降りしきる灰塵すらも吹き飛んでいく。
彼女の身体は、舞い踊るように空を駆けた。
――よし! 捕獲成功だニャ! 東方でこれを習得しておいたことは幸いだったニャ……
やり遂げた、のか……
ようやく……勝てたんだな。
ヤトウ殿! あまり長時間拘束しておくことはできぬニャ。早々に処断を決めなされニャ!
ああ……わかっている。
ワシはリオレウスを討伐対象にすべきではないと思っていたが……ヤトウ殿と共に狩りに出る中で、少し考えが変わってきたニャ。
あの時は、この土地のことを理解できていなかったのニャ。しかし今は……源石が存在する限り、今後再びリオレウスが脅威となることもあり得るとも思うのじゃニャ。
何より、ここはおぬしらの土地……おぬしらが決めるべきだニャ。
彼女は視線を怪物の巨体へと向けた。それがもがくたび、大量の灰塵が舞い上がる。
鱗が剥がれ落ち、体中傷だらけになっていても、リオレウスには変わらず恐ろしいほどの気迫があった。
なんて強大な命だろうか……
この地の人々の安全を守るために、脅威はすべて絶たなければならない。それが私の責務というものだ。
……こいつを、生かしておくことはできない。
待ってくれ!
どうした?
ごほっ……そいつを……
……
げほ、ごほっ……そいつの命を、俺たちが奪う必要はねえんだ……
理由を言ってみろ。
それは……げほ、ごほっ……
ニャ! わたしが説明しますニャ!
ヤトウ、こっちですニャ! 源石が塊になっている、ここを見てくださいニャ!
相棒、ハンマーを貸してくださいニャ。これで、叩けば……ニャ!
! 源石が、剥がれ落ちた……
ノイルホーン、これを検査にかけてくださいニャ。
あの学者さんは、リオレウスは感染していない、源石の影響を受けて凶暴になっただけ、と言っていましたニャ。だからこそ、結果的に源石を拡散してしまったわけでしてニャ……
とはいえ、これだけでは納得できないことはわかってますニャ。それでも、鉱床にいた時すごく気になったことがあって……色んな記録と照らし合わせて、ようやく確認が取れたのですニャ!
実は、リオレウス自身も源石がもたらす悪い影響に抗っていたのですニャ。リオレウスの身体に付着した源石結晶は、その抵抗の産物なんですニャ。
ノイルホーン、検査結果はわたしの仮説通りでしたかニャ?
ああ。この源石は非活性状態だ。
やはり! 活性源石の粉塵は、ただくっついていただけですニャ。つまり長時間源石のある環境下にいなければ、リオレウスが活性源石の粉塵を拡散することもありませんニャ。
だが、奴がまた別の源石鉱床に出現しないとは言い切れん。それでは危険が拭いきれないだろう。
いいえ……このリオレウスには、もうそこまで力は残っていないのですニャ。わたしが保証しますニャ。
この個体は元々相当飢えていたようですニャ。そこに加えて、今回の狩猟での消耗……もう満足に動くことはできないはずですニャ。
おそらく、この場所を巣に選んだのは、少しでも体力を回復するためだったのでしょうニャ。リオレウスが巣作りする場所のひとつである火山地帯は、ここと環境が似ていますからニャ。
言われてみれば、ワシが初めてリオレウスを見た時も、火山の方角へ飛んでいるところであったニャ。
今にして思うと、こやつはただ郷里へ帰りたいと望んだだけなのやもしれぬ……ニャ。
ノイルホーン……お前はどう思う?
俺は……こいつが脅威じゃなくなって、村の人を襲おうと思ってるわけでもねえなら……
……リオレウス……
リオレウスの息遣いは未だに激しく、その口や鼻からは小さく火が漏れ出していて、口元には新たな傷が付いていた。
最後の力を振り絞り、必死で拘束を抜け出そうとしているのだ。
ニャニャ! びっくりしましたニャ、拘束されてるのに暴れるだなんてニャ……!
――天災が……近付いている。
真の災害の前では、我々などちっぽけなものだ。
……先ほどのオトモの発言には、少しだけ間違いがある。
ニャ?
この空の下にあるすべては、「私たちの」ものなどではない。この大地に息づくどんな命も、懸命に努力しながら生きているんだ。
ただ一筋の生を求めて、互いに争い合ってまで。そう、たとえ……
壮烈な死を遂げることになろうともな。
ヤトウ、どこ行くんだ?
支援要員が到着したようだし、避難所へ向かって、村人の護送に協力してくる。
リオレウスはどうする?
任務目標以外のことに時間を割くつもりはない。……世話好きな誰かさんが対処してくれるだろう。
――これは第五回目の音声記録だ。記録者は変わらず、ロドス行動隊A4隊長、ヤトウ。
露華村における、源石粉塵拡散源への対処を完了した。脅威が排除されたことも確認してある。現在は、村人が天災から無事逃れられるよう手配しているところだ。
村人たちの離脱を以て任務はほぼ完遂とする。音声記録は以上だ。
お姉ちゃん、見て! 怪物が飛んでる!
ん? リオレウスが?
あははっ、思った通りだね。
お姉さんとお兄さんは、リオレウス? に勝てなかったのかな?
そんなわけないでしょ。二人はとっても強い人だし、山ほどのオリジムシだって倒せちゃうんだから。
オリジムシとリオレウスを一緒くたにしていいのかな……
何にせよ、あの人たちのことだから、きっといい判断をしてくれると思うよ。
ふ、吹き飛んでしまった……私の家財も、何もかも……
無駄な抵抗はやめて、早く車に乗れ。どの道逃れられはしないんだからな。……これまでの代償を払う時が来たんだ。
(刀を拭く)
……明。お前なら、きっと同じ判断をしただろう?
私は知っているんだ。あの時お前が、最後に一匹残った鎧爪獣の赤ん坊を救ったことを……
飛んでっちまったな。
本当に飛び去っていくとはニャ……
飛んだニャ! 飛んだニャ!
ぼーっとしてないで手伝ってくれ!