ツヴィリングトゥルムの黄金 ZT-3・戦闘前
練習曲「奇遇」
先ほど半ば意識を失っている時に聞いた音は……
君が剣を磨いていたのか。
あなたを拾って帰る途中で汚れたから。
よく切れるようにしておくといい。
私の首は、この身を狙う多くの者が想像しているよりもずっと硬いからな。
硬いか硬くないかは言葉で決まるものじゃない。
フンッ……ここは高塔の上か?
俺がいる限り、飛び降りはさせない。命は一つだけなんだ。それ以上無茶をすれば本当になくなるぞ。
私を救いたいかのような口ぶりはやめるんだ。
救いたいわけじゃない、ただ責任を果たしてるだけだ。
あなたのようにな、伯爵。あなたにも責任がある。リターニアに戻ることを選んだなら、子供みたいに、肝心な時に逃げ出すのはやめろ。
君の雇い主は君に知らせるのを忘れているようだな。ウルティカ伯爵はとっくに死んだんだ。
ウルティカ領はまだある。
あなたは今もウルティカ家のたった一人の跡継ぎだ。
そんなの……
逃げたからって問題は消えない。
自分の生まれを選べる人はいないんだ。これはみんな同じ。
それはある種の言い訳なのか、残党殿? 邪悪な老いぼれの信奉者になったのも、あいつの処刑人でいるのも、すべて……君にも選択肢がなかったからか?
違う。俺はいつも自分に言い聞かせているだけだ。今の自由を俺がどうやって手に入れたかを。
なに?
あなたの言う邪悪な老いぼれ、つまり巫王が、かつてウルティカの名において俺の一族の運命を変えたんだ。
俺が今行っているすべてが、自分自身の、そして似たような境遇を持つ何千何万という人々がようやく手に入れた自由を守るためだ。
君は巫王に……感謝しているのか!?
事実を言っているだけだ。
……「事実」。
では巫王によって流れた膨大な量の血と、残党に蹂躙された罪なき者は、一体何だというのだ?
この事実が君にとっていくらか恩恵があると言うならそれでいい。だが、自分にとって利があるなら他人の苦しみは無視してもいいというのか!?
巫王は死んだ。彼の行いの良し悪しへの評価に夢中になるのは、歴史学者や政治屋、そして暇人だけだよ。
俺は戦士だから、興味があるのは今の戦いと次の戦いだけ。
もし巫王が本当に何か残したなら、それの影響が良いか悪いかを決めるのは彼本人ではなく、それを使う人だ。
これこそ継承者が考えるべきことじゃないか。
そんな風に私を見るな!
傷口がまた開くぞ。
巫王派の残党からの心配など、反吐が出るだけだ!
あのさ伯爵――
黙れ!
エーベンホルツ。
巫王に関する事実から目を逸らしてるのは、一体どっち?
……
そんな話はもうよせ、レッシング。
……戻ってきたか。
術式の準備は整ったか?
術式だと……?
よく聞け、ウルティカ家の子羊よ。お前の頭の中のそれは大いに役立つかもしれないぞ。
ほら、私に見せてみろ――
うっ!
お前たちリターニア人は魂については何も知らんが、旋律そのものについては慎重に保存しているな。
チッ、あいつらはヘーアクンフツホルンの寝言さえすべて記録しているのではないかと時々思うぞ……
あやつが家庭教師を罵倒する時に使った比喩でさえ懐かしく思えてきた。
お……老いぼれのことを言っているのか? あいつと一体どんな関係だ?
老いぼれ? お前は自分の家の目上の者をそう呼んでいるのか? リターニア人は礼節が大好きなやつらではなかったか? 小僧、お前はあいつに似ても似つかぬが、この点だけはよく似ているぞ。
私はちっとも、少しも、露ほども! 老いぼれには似ていない!
おぉ、うるさい。生まれて数ヶ月の赤ん坊のようにギャーギャーとわめくな。叫ぶ声が大きいからといって、他人がお前の話を聞くわけではないぞ。
そんなに叫びたいなら、役立つことを言え。舌を使って発することのできる特殊な音律術式をいくつか知ってるが、教えてやろうか?
巫王の下僕が、私の師になろうなど片腹痛い!
アーツの球? レッシング、お前まさかこれを食らったのではあるまいな?
油断した。
何度も言っただろう、武器をもてあそぶだけでは役に立たん、アーツの感知能力をもっと磨け! 物覚えの悪い子羊が、今後外で私に育てられたなどと言うんじゃないぞ!
そもそも言ったことないけど。
……
お前に関しては、まあまあだ。アーツユニットに頼らずともここまでできるのは悪くない。
しかしエネルギーの引き出し方が下手にも程がある。そんなに早く爆発したいか? 体内の病巣をそのように利用するなど、誰から教わった? 高塔の半人前どもか?
これはすべて巫王の……
はっ、これだから愚か者どもは。ヘーアクンフツホルンの狂気だけ見習って、あいつの技量はちっとも身につけないでいる。
うっ――ぐっ!
これでだいぶましになった。子羊、動き回らない方が全員にとって安全だ。
レッシング、防御術式をチェックしろ。
ゲルハルト先生がまだ向かっている最中だから、着いてから始めた方がいいと思う。
女帝の声と金律法衛の注意を引く前に、済ませる必要がある。
いいだろう。ゲルハルトでは何も手伝えんが、あいつに学ばせてやるのもよかろう。
「始源の角」か……
ハッ、我々が会うのはいつぶりだろうな?
カール・シュミット通り。
どうしてまたあそこに行くんですか? 落ちぶれた芸術家が集まる古い通りにすぎません、すでに何度も調べていますよ。
ロリス・ボルディンは事件前、一通の通報を受け取りました。
通報者の名はルーカス、年配の男爵で、カール・シュミット通りに住んでいます。電話の話からすると、彼は近頃通りの騒ぎに耐えられず憲兵隊に連絡しているようでした。
あの老貴族たちはそんなものですよ。何かというとわめき散らしてばかり。高塔に住む資格すら失ったというのに、まだ地上の人を奴隷みたいにこき使うことばかり考えています。
だから、あんまりその情報を真剣に受け止めない方がいいですよ。
ロリス・ボルディンの行動は、そこに調査に値する手がかりがある可能性が大いにあることを示しています。
あの……僕の話を聞いてましたか? ボルディンさんが電話を受けてそこに行ったからといって、その場所が調査に値すると彼が考えたとは限りません。
憲兵隊の長とはいえ、あくまで子爵にすぎません。ましてや家柄のないよそ者ですからね。
二十年以上前の功績があるとしても、ツヴィリングトゥルムのような高塔が林立する場所では、大貴族たちの従者と大差ないんです。
ボルディンさんが男爵の対応に当たったのは、手がかりに価値があるからではなく、そうせざるを得なかったからです。
前述した情報と任務目標との関連性は薄いです。
急に行かないでくださいよ! せめてこう堂々と――ちょっと待ってください!
ん?
そっちのお店に入って。
「シュルツ夫人のファインハット」? 私には光輪があるので、普段帽子はかぶりません。
とにかく入ってください。
……
ご機嫌よう、少しよろしいでしょうか。
こんにちは。
その……あなたの雰囲気と格好からして、地元の方でいらっしゃいますか?
そう思っていただいて構いません。
ではカール・シュミット通りへどう行くかご存知ですか?
えーっと……
申し訳ありません。こちらに来たばかりで、不案内なものでして……あなたのような貴族出身のお若い方であれば、あまり高塔からは出られませんよね? やはり付近の住民に尋ねてみます。
お気になさらず、道は分かります。前方のこの道に沿って進み、四つ目の像を左に曲がって、そうすればその路地が遠くからでも見えますよ。
「遠くからでも見える」?
ご存知ないのですか? カール・シュミット通りは、「カレンデュラ小路」とも呼ばれているんですよ。
カレンデュラ……
カール・シュミット、かの大音楽家が、かつてそこに住んでいたんです。
彼はかつて陽だまりの中のカレンデュラにインスピレーションを得ていくつもの名曲を書きました。それから、その路地は芸術愛好家たちの聖地となりました。
そうでしたか。とても興味深いお話ですね。今まで本で読んだこともありませんでした。
ただの逸話にすぎませんよ。ツヴィリングトゥルムでは至る所がそうです、大した話ではありません。
そうですか、教えていただき、感謝いたします。
ところで、あなたはなぜこちらに? これほど大人っぽい帽子をかぶるお歳には見えません。
えーっと、人を待っているんです。
人を待っている……ですか?
もし我々の目的地が一緒であれば、私と……一緒に行きませんか?
……ご親切に感謝いたします。
ですが女帝の旋律が僕を導いてくれるので、お気持ちだけいただいておきます。
そうですか。
ツヴィリングトゥルムを包む旋律がいつまでもこの瞬間のように、流れる水やたゆたう雲のごとく……穏やかに続くことを願っています。
……もう出てきてもいいですよ。
あなたのさっきの行動を説明してください。
たった今去って行った女性は女帝の声です。
良い人のように見えますが、残念なことに、僕たちは道を違えているのです。
ヴィヴィアナ、予定よりも遅かったわね。
申し訳ありません、レーヴェンシュタインさん。通りで……少し特別な若者に出会ったもので。
それで、我々以外にも、陰でこの事件を調査している者がいると確信しました。
なんだか少し悲しそうね。
はい。あの密偵はまだ子供でしたから。
それに……
立ち止まってどうしたの。
聴いています。
女帝の音楽は……いまだ続いています。
ツヴィリングトゥルム全体は、今も美しい旋律を浴びています。
ですが……異なる意思によって演奏される旋律が、いつまでも調和をし続けることなど可能なのでしょうか?
ミヒャ・ヴォルさん、女帝の声を恐れているということは、あなたの依頼人は女帝の敵ということですか?
そんな話を大通りで堂々と聞いてこないでください!
では、まもなく路地に入るので後ほど質問します。
はぁ。あなたが聞きたいのは、僕がロリス・ボルディンを殺した者の仲間じゃないかってことですよね? それは絶対にありえませんよ。
ご覧の通り、僕はループス、シラクーザに隣接する地域で生まれました。
巫王が君臨していた時代の初期、シラクーザはリターニアから独立したばかりでした。巫王のやり方であれば、彼とそれに従う者たちは僕の一族をどう扱ったと思いますか?
私が質問しているのはあなた個人の選択です。あなたの一族の歴史ではありません。
何が違うんですか?
私はあなたの決定が、あなた自身の意志によるものだという仮定をしています。
僕の意志? 僕は一族の使命を持って生まれたんですよ。「自身の意志」なんて言葉は僕とは無縁ですね。
先ほどの女帝の声になったばかりの女性もそうです。彼女がリターニアからカジミエーシュに向かい、今またリターニアまで戻ったのは、彼女自身の選択だと思いますか?
かなり複雑な状況です。それが敵と協力者との区別を難しくしています。
フッ……サンクタさん、どうしてラテラーノだけが楽園と呼ばれてると思います?
止まってください。
どうしたんですか? カール・シュミット通りはこの先ですよ。女帝の声も向かってますし、ボルディンさんは本当に何か発見していたのかもしれません。
この路地は以前とは大きく異なっています。
静かすぎます。
これらは全てゼーマン夫人が残された絵画作品ですか?
左様でございます。
基本的にどれも……『巫王の死』の下描きですね。
私では触れるのが恐れ多く、見てもわからないので、手付かずのまま置いておくしかありませんでした。
ここ数年の作品は?
ここ数年のものは……ほとんどございません。夫人はよく、彼女の情熱は二十三年前の秋と一緒に終わってしまったとおっしゃっていました。もっと早期の作品をご覧になりますか?
はい、お願いできますか。
ゼーマン夫人の昔の作品は筆遣いが繊細で、色彩が明るく生き生きとしていますね。
フリーダ・ゼーマンは絵筆で、真実の感情を記録することを切に望んだのよ。彼女は記憶力が良くて、アーツを使って残したい瞬間を捉えるのが得意だったわ。
私が巫王の高塔で初めてフリーダに会った時、彼女はすごく若かったわ。
とても明るい性格で、ミノス人のような豪快さもあって、一般的な貴族の女性のようにしずしずと規則に従うような風ではなかった。
そんな彼女は親しみやすかったからでしょうね、彼女の周りにはいつも人が集っていたわ。生まれに関わらず皆が彼女の傍にいたがった。
明るい太陽の光が降り注ぐ午後、フリーダの友人たちはこの路地で詩会を開いていたわね……そうだ、その中にはあなたの父と母もいたのよ。
両親がですか?
あの二人はあなたに話したことなかったの? あなたの両親はこの都市で出会ったのよ。
当時あなたの父はまだ選帝侯の継承人ではなかった。彼はシュトルム領からアインヴァルトへやってきて、仕事の後はよくカレンデュラ小路で様々な若者の集いに参加していたわ。
ある日、ゼーマン夫人主催の詩会で、とある平民出身の若い娘が勇気を振り絞り、自分の書いた詩を読んだ。
それが……母ですか?
聞いたことありませんでした。母にそんな過去があったのですね。
私の記憶の中では、母はいつも難しい顔をしていたので……
ルシンダ・ドロステは気の優しい良い子でね、目は柔らかな光できらきらしていた。彼女を見ていると、まるで……そよ風が吹く夏の湖畔にいるみたいだったわ。
この路地でウェルナーは彼女に一目ぼれして、危うく陛下への謁見をすっぽかすところだったのよ。
ブラントが庇ってくれていなかったら、ホッホベルク家の軍がアインヴァルトに到着する頃には、彼はとっくに巫王の塔の前の像の一部になっていたでしょうね。
その時はまだ……巫王の時代だったのですか?
想像できないでしょう?
けれどあの時代も、ある面においては、確かにあなたの目の前の絵画に描かれているように……きらびやかな輝きがあったの。
輝く……カレンデュラ。
この絵には見覚えがあります。他の場所で見たような気がします。
どこだったでしょうか……
……太陽を追いかける花。
シュトルム領の空が晴れることはめったになく、高塔の上は冷たくて湿っています。父は何度も試し、幾人も術師を招きましたが、部屋の鉢植えでカレンデュラを育てることはできませんでした。
でもツヴィリングトゥルムでは、この小路には、至る所にあるのですね。
とても……温かいです。
ヴィヴィアナ、どこへ行くの?
……敵?
いけない、ヴィヴィアナ!
あるかないか曖昧なチェロの音が聞こえる。
遠い前方から響いてくるようにも、耳元で奏でられているようにも聞こえる。
それは時間を越え、それぞれの聴衆の記憶を越え、同じ空間を繋ぎ合わせる。
もう帰るのね。
つまり、あなたが新たなシュトルム領の選帝侯になる可能性が極めて高いということね。
ルシンダはどうするの?
あなたは彼女を愛し、彼女もあなたを愛しているわ。
陛下……巫王は死んだわ。リターニアを見下ろす唯一の高塔は倒れたのだから、私はてっきり、運命にもてあそばれる日々は昨日で終わったと思っていたのに。
もう一度だけ試してみて。ね? ルシンダを連れて行くか、ルシンダのために残って。
巫王と戦ったあの夜のように。善良で優しい人々は、一人残らず幸せな結末を迎えてほしいの。
チェロの音は次第に鮮明になる。
像の演奏とは異なり、この音楽は生きている。
それは誰よりも親しく優しい手のように、彼女を前へと引っ張る。階段を駆け下り、雨風から逃げた。
もうすぐ、もうすぐだ。この階段を下りさえすれば、外の日差しを抱きしめられる――
車が到着しました。
皆があなたを待っています。
巫王は死に、我々と双子との約束により、あなたの配下の者は領地に戻らねばなりません。
正午までに発ってください。他の選帝侯の軍は皆あなたの反応を見ています。
シュトルム領の安全……いや、リターニアの安全は、あなたお一人の身にかかっているのです。
ここにいるのが私であろうと、他の金律法衛であろうと、違いはないからです。
内戦が再び起これば、リターニアは耐えられません。シュトルム領には人々を従えられる選帝侯が必要なのです。
……ウェルナー、覚えているか? 金律法衛として抜擢され、特殊訓練を受けに行く前に、私はあなたとエルンストを訪ねて、残りたいと話した。
だがあなたたちは私に言った――
「君が守らなければならないものは、どの人の命よりも、ホッホベルク家よりもはるかに重要だ。」
私はその言葉を自分に深く刻んできた。
ダメ、行かないで。
希望を捨てないで。
少なくとも、そんな簡単に……
若き選帝侯の継承者はすでに身をひるがえし立ち去っていた。しかしヴィヴィアナはそれについていこうとはしなかった。彼女は力を振り絞って、振り返った。
秋の小路はいつだって黄金色に輝いている。彼女の母はきっと小路の奥にいるはずだった。ただ間に合わなかっただけだ。
彼女は走っている。彼女は探し続けている。
陽だまりの中でカレンデュラは咲き誇っていた。彼女の両親がかつて未来へ抱いた希望のように美しく。
どれほど母に、父の記憶の中に現れるその面影に手を伸ばしたかったことだろう。出来ることならばヴィヴィアナは、それを掴んで放したくなかった。
まるでそれさえ叶うなら、すでに取り返しのつかない何かを掬い上げられると信じているかのように。何かを――
――父の悲劇の一生を、そして、彼女自身を。
年月を重ねて、小路を満たす金色の花はこの都市の喜怒哀楽をいっぱいに吸い込んで、変わらず煌めいている。
しかしかつて同じように輝いていた希望は満たされることなく、永遠に二十三年前に取り残されたのだ。
なぜ……
どうして掴めないの?
本当に……本当に、運命には首を垂れるしかないの?
ヴィヴィアナ! 周りに気を付けて――!
ヴィヴィアナはぼんやりと顔を上げた。
チェロの音が突然止む。
周囲を取り巻く旋律はその場で固まったかのようだった。また一瞬にして、逆巻くエネルギーとなった。
分厚い雲のようなアーツが日差しを引き裂き、彼女に躍りかかる。
……
うっ――!
大丈夫よ。私が傍にいるわ。
チェロの音……
精神系のアーツね。
このチェロの音は私たちそれぞれのウェルナーに関する記憶を呼び起こしているわ。
お母様……お父様……
ヴィヴィアナ、こっちへ来なさい。耳を塞いであげる。
二人とも……いなくなっちゃった。
私には何も変えられない……
聞いてはいけないわ。あなたが何を見ていようと、それは今起こっていることではないの。
巫王派の残党がこの路地に潜んでいるわ。彼らは私たちが来ることを知っていた。
うぅ……数が多すぎる。
私のアーツでは処理しきれない。何とかして逃げる方法を――
また別の音が空気を震わせた。
旋律のようだが、歌うことはできない。鐘の音のようだが、断ち切ることはできない。
それは直接に心を揺らすある種の宣告だった。
紫色のアーツの光は絢爛そのもののような夕日に似て、いかなる雲の邪魔をものともせず、通り全体に照り映えた。
この旋律は……金律法衛?
ブラント、あなたなの? 来てくれたの?
……ウェルナーの娘を連れて家の中に入っていろ。
……
亡霊にすがる残党ども。
貴様らは、ゴミ溜めの中から拾い上げた汚らしい残滓ごときを手にした程度で――
――このツヴィリングトゥルムに手を出す資格などあるとでも思っているのか?