ツヴィリングトゥルムの黄金ZT-9・戦闘前幻想曲「贈答」
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ツヴィリングトゥルムの黄金 ZT-9・戦闘前

幻想曲「贈答」

エーベンホルツ

……

フェデリコ殿? ヴィヴィアナ殿?

他の者といつはぐれたのか、エーベンホルツは分からなかった。頭上からは構造物の断片が時折落ち、足元の階段はねじ曲がり終わりが見えない。

だが彼は進むしかなかった。孤独に、疲れも知らずに。


「巫王の余韻」?

エーベンホルツ、お前は恥さらしだ。

お前は我々の判断を妨げ、我々の時間を浪費し、我々の成すべきことの邪魔をした。お前は最大の罪人だ!

エーベンホルツ

そうか。それは申し訳なかったな。

「巫王の余韻」?

今から共に陛下のお迎えに上がるのか? それとも陛下がこの世に再び舞い降りるのを阻止する気か?

お前にはその資格はない、できもしない。

早くに気付くべきだった。もっと早くに。

陛下の血はかように強大で、その精神はかように強靭なのだ。「塵界の音」はその音の万分の一でしかない。にもかかわらずお前は耐えがたいほどに苦しんだ。

お前は生まれながらにして軟弱だ。いかなる期待も背負えないほどにな。

エーベンホルツ

つまり、お前たちは自分で、こうした無価値の雑音を私の頭に詰め込んでおきながら……

受けた仕打ちについて、私が責任を負うべきだと言いたいのか?

「巫王の余韻」?

フンッ、お前はありがたいに思うべきだ、エーベンホルツ。

もしも初めから、「塵界の音」が陛下の遺産を得るための鍵ではないと知れていたら、あの双子がわざとらしくお前にウルティカ家の領地を与えていたか?

いいや。その時を待たずして、お前はおくるみの中で死んでいただろう。

「ウルティカ伯爵」、お前はこの称号を誇りに思うべきであり、それ以上にこの称号を恥じるべきだ!

エーベンホルツ

そうだな、私もそう思う。

ゆえに、消えろ!

怒る通行人?

エーベンホルツ、憎たらしい。

どれだけの者が巫王の暴政で死に、どれだけの者が訳も分からず消えた? リターニアは傷だらけになり、二十三年が経ってもなお、血が流れ出ている場所もある。

*リターニアスラング*! なのに最後、あの暴君はあっさりと死んだ。しかるべき罰を何も受けないままに!

お前は奴のこの世で唯一の子孫だ。お前は生まれながらに罪の血臭を纏っている。お前はあいつに代わり罪を償うべきだ! あいつに代わり全リターニアに懺悔すべきだ!

エーベンホルツ、お前にどんな資格があって、満ち足りた生活をしながら、「自分は何者でもない」などと自嘲しているんだ?

エーベンホルツ

私も君たちと同様、この罪深き血を憎まなかった日は一日もない!

ウルティカ領民?

いいえ、あなたはその血がどれだけの罪悪を引き寄せたかわかっていない! あの残党たちは何度もウルティカ領に忍び込み、腐肉の臭いを嗅ぎ取ったハエのようにあなたの高塔の周りを漂っていた。

私の息子は治安部隊に入ったばかりなのに、奴らの痕跡を見つけたばかりに、死体は排水溝の中で三日間も浮かんだままだった。だがあなたはいつまでも高塔に隠れている!

あなたはウルティカ領がどれだけの広さか、どんな作物を生産しているのか、首都の税務官が一年で何回来るか、さらにここ数年領地はどんな災害に見舞われたのかすら知らない。

あなたほど憎い領主はいない、伯爵様。

エーベンホルツ

……


ビーグラー?

止まってください、これ以上は進まないように。今のあなたは、勇ましく振舞うほど滑稽に見えます。

エーベンホルツ、あなたは哀れです。

ゲルトルーデを覚えていますか? 彼女は死ぬ前に悪らつな呪いを残していきました。ヴィセハイムを、リターニアを、巫王を……そしてあなたのことも呪っていました。

彼女はあなたを、「その血に潜む狂気から永遠に抜け出せぬよう」呪いました。

あなたがツヴィリングトゥルムに戻った時、私は思いました。何てことだ、あの狂った女の呪いは本当に現実となってしまった。強情な子は結局運命の渦から逃れられないのだと。

もちろん彼が運命に従うことはない。しかし今回、彼は運命から逃れるために狂気にのめり込むことは避けられないでしょう。

……むしろほっとしたはずです、違いますか?

「塵界の音」はあなたを十年以上苦しめました。あなたはずっと必死に抗ってきたというより、慎重に見守ってきたと言うべきでしょう。

いつか爆発するともしれない爆弾を見守って、それを不審者に利用され罪のない命を傷つけてしまうのではないかと恐れる。

これがあなたにとって重く、それでいて重大な意味を持つ……運命でした。

しかし実際それはただの雑音であり、命に関わることのない頭痛にすぎなかった……戻りなさい、エーベンホルツ。ゲルトルーデの呪いは失敗したのです。

エーベンホルツ

違う!

そんなことできるわけがない!

ビーグラー?

それはより残酷な呪いだからですか?

結局、あなたの努力は無価値であり、あなたの抵抗はまるで意味がなかった。そのために犠牲になった者たちに、そしてあなたが永遠に心に刻むと決めた涙と笑顔に……

どう向き合うのですか?

あなたは唐突に気づいたはずです。信頼、愛惜、理解、絆……これ以上ないほど美しい感情ですが、希少だからといって得難いものではない。

それらは一瞬にして軽いものとなってしまった……

まるで冗談のように。

そうだ、冗談。

どうして、ただの冗談などであっていいものか!?


高塔が見えた。

エーベンホルツ

ハハ、やはりな。中にいるのだろう。

死んでからこれほど経っているにもかかわらず、まだこの邪悪な高塔をリターニアに再び降臨させようとしているのか。

そうはさせない!

私は、力尽きるまでアーツを放ち、折れるまでアーツユニットを振り続け、源石ダイスを粉々に砕けるまで動かし続ける。

もしお前にまだ血肉があるのなら、その血肉を打ち砕く。まだ魂があるのなら、その魂を滅ぼしてやる。

お前を問いただし、呪い、唾棄して、そして殺す。

――巫王!

巫王

フランツ。

空気中の音符には触れるでない。

我が削除したこの旋律の中で溶け合う術式は、完全に散逸するまで依然恐ろしい力を有している。

感情を落ち着かせ、千年前の先賢たちの意志を避け、心を引っ張られないようにするのだ……

エーベンホルツはアーツユニットを握り締めるも、一言も発することができない。

彼はかつて巫王に関するあらゆる文献を読み、つい最近この部屋に監禁された。彼は当然この歴史を知っている。

音符が部屋の中をゆっくりと流れ、「シラクーザ」という名の旋律が「リターニア」の大楽章から去っていく。

彼は巨大な雷、降り続く雨、そして流れる風が聞こえたような気がした。「リターニアの意志」は天地と等しい偉力となり、この小さな部屋を繰り返し押し流す。

入り口に立っているだけで、逆巻くエネルギーが彼の鼓動をきつく押さえつけた。

部屋の中央の人物は振り返らない。それほどまでに集中しながら傲然と立っていた。荒れ狂う大波の中、彼は常に波よりも高い岩であった。

エーベンホルツは自分が間違った場所に来てしまったのではないかと思わず疑った。ここはまるでどこかの作曲家の宿命の夜、あるいは歴史学者の最も奮い立つ教室のようだった。

ここには彼の仇などいない。運命もない。怒りの行き場などまるでなかった。

エーベンホルツはふとあることに思い至った。彼は過去の人生を思い返したが、これまでたったの一度も、それこそあの数々恐ろしい悪夢の中ですら――

巫王の姿を見たことはなかった。


???

フレモント、また遅刻か。

貴様が人気のある先生だったとは記憶していないが。貴様も学生たちに囲まれて身動きが取れなくなることがあるのか?

フレモント

……

一つ。もし教育者の気性なんぞを理由に知識の前でひるむのなら、リターニアで一番優秀と言われてるあの若者たちも将来は高塔で苔掃除をする以外、何の役に立たないだろうよ。

二つ。毎月私に学者手当を支払っているのはルートヴィヒ大学だ。だからそもそもお前の呼び出しに直ちに馳せ参じる必要はないな。

ヘーアクンフツホルン陛下に口答えすべきではなかったかね?

ヘーアクンフツホルン

……

これが初めてではないであろう。

来月各管区の選帝侯はヴィドゥニアに続々と到着する。我々に残された時間は多くない、フレモント。

引見後、更新した金律楽章の副本を彼らが各管区に持ち帰れるようにしたい。

フレモント

お前はすでにあの鹿や羊たちから、千年に一度の明君と言われているぞ。そんなに急いで自分の立場を固めたいのか?

次は何だ? 選帝侯たちの軍隊や、行政権を宮廷の高塔のものとするか?

ヘーアクンフツホルン

そのことについてはもう話し合ったはずだ。

フレモント

私がリターニアに来たばかりの頃、当時の皇帝はすでにシラクーザの問題で頭を悩ませていた。あれからどれだけ経った?

あの狼の小僧どもは今でもちょっとばかしでかい騒ぎを起こすことしかできん。

お前は即位したばかりだ。大典で着る衣装選びにもっと時間を費やしたらどうだ?

ヘーアクンフツホルン

すでに選んだ。

フレモント

……

ヘーアクンフツホルン

貴様は未だに金律楽章の書き換えとその後の一連の国策が、国家全体を未知の動乱に陥らせるのではないかと心配しているのか?

フレモント

リターニアに関心はないが、図書館を抱えてあちこち引っ越すのは実に面倒なものでな。

アインヴァルトの選帝侯になった時から、お前はずっと楽章の研究をしていたな。あれがどんな代物か、なぜ千年来修正しようと思った者も、できた者もいないのかなど、お互い分かっているだろう。

三つの章と十の旋律が織り成されて一体となったあれは、音楽の動機やテーマというよりも、むしろ千年前のアーツの大家たちが傾注して成した超術式と言えよう……

リターニアの始まりに、無数の先賢がこの国のために成した偉大な創造、思考、そして庇護である。「リターニアの無上の意志」なのだ。

あれは永遠に限りなく近い。

ヘーアクンフツホルン

「永遠」?

「同じ川に二度入ることはできるのか」について白壁の下で討論するのが好きなミノスの哲学者を除き、その言葉を好んで用いるのは恐らくリッチくらいであろう。

そしてこの言葉の意味を理解しているのも貴様らだけである。

「永遠」――不易、不動、不変。しかし永遠とは不朽ではない。

無論、楽章を作り上げた先賢たちが千年前に及びがたい偉業を成し遂げたのは自明である。

「リターニア」とはその時よりこの国の名となり、同時に単なる国の名ではないのだ。

「リターニア」はこの土地の万民に栄辱をもたらし、優雅、調和、道徳、そして美を我々の呼吸一つ一つに刻み込んだ。

彼らは、千年前のこの国に何よりも優れた展望と、計画を打ち立てると「リターニア」をこの土地における真理とした。

しかしあらゆる真理は朽ちる。シラクーザの不和反目がその最たる証拠である。

そして、私はリターニアのためにより良い未来をもたらすのだ。

リターニアの新たな君主は懐から楽章を取り出し、リッチの方へ顔を向けた。

「永遠」「不朽」……

ヘーアクンフツホルンの話す声は決して重くない。しかしフレモントにはその壮大な言葉の一つ一つが彼の口の中で砕け、そして再構築されるのをはっきりと聞こえた。

フレモント

いかにも傲慢で、いかにも「ヘーアクンフツホルン」だな。

だが、リターニアがお前の手の中でさらに大きな危機に遭遇せず、お前の言う未来が不朽であるといかにして保証するんだ?

書き換えられない楽章も、超越されないアーツも、打ち負かされない意志も、征服されない未知もないぞ……

ヘーアクンフツホルン

不朽は、「更新」にある。

今日に至るまで、海と空はいまだ認知の濃霧に覆われている。大地こそテラ人の感知する極限である。

しかし貴様が共有した知識によると、最も高い雲と、最も深い海底でさえ、時間と空間にとらわれた「実在」にすぎない。

そして実在の外には世界のもう一つの面――虚無で奇怪な、そして危険で未知な領域が存在している。

問題が尽きぬのならば、解答もまた同じ。

ウルティカの伯爵塔はあまりに矮小である。ゆえに我はヴィドゥニアに始源の塔を建てた。これはすでにリターニアで最も高い建築物であるが、全大地で最も高いとは限らぬ……

我は永遠に止まらぬ。これが我と歴代の先賢との異なる点だ。

これこそ我の「不朽」である、フレモント。

フレモント

新たな塔を建設する際は部屋を多くしてほしいものだな。楽章を修正するのに私の秘密の部屋を借りずとも済むようにな。

ヘーアクンフツホルン

そうしよう。

フレモント

……

ヘーアクンフツホルン

では、始めるとしよう。

フレモント

全ての共振捕捉装置を作動させてくる。このあと、旋律を解体する時に、よりはっきりと見えるようにな。

ヘーアクンフツホルンは部屋の中央にある椅子に腰掛けて、宙に楽章を広げる。フレモントは様々な貴重な古書を蹴ったり引っ張ったりして、アーツマトリックスのためにスペースを空けた。

ヘーアクンフツホルン

そうだ、フレモント。貴様らは世界のもう一面を、何と呼んでいたのだったか?

フレモント

(サルカズ語)「千糸万弦の終始」。

ヘーアクンフツホルン

ちんけな名だ。

「命結」の存在が、リッチという種族に何よりも特殊だと言える能力をもたらした。命結を隠せば、貴様らは永遠に終わらぬ命持つようになる。

リッチは無限の時間の中で世界の無限の真実を垣間見ることができたというのに、それらをただの知識の一ページとするだけなのか?

フレモント

慎み深さは我々の天性だ。発見が多くなるほど、住むに適した場所は少なくなる。

ヘーアクンフツホルン

では、フレモント、貴様は?

フレモント

私?

ヘーアクンフツホルン

「千糸万弦の終始」……

貴様は事あるごとに配下のリッチたちが若すぎるやら融通が利かないやらと不満を口にするが、その空間を自らの命結を隠す引き出しとするだけだ。入って見てみたくはないのか?

大きな寒けがフレモントの全身を巻き取った。

極めて小さく、なお眩い光がヘーアクンフツホルンのアーツユニットの先端でほころぶ。彼はすでに金律楽章を奏でており、フレモントも手元の動作をやむことはない。

リッチとキャプリニー、王庭の主とリターニアの皇帝は、常にこのように言葉なくして心を通わせる。

どれだけ緊迫した瞬間でも、二人は依然隙を見つけ何らかの話題について話し合うことができる。哲学、音楽、時にはリターニアの気候や飲食。

ヘーアクンフツホルンは、極めて自然にこの件に言及した。リッチの生死を真に脅かすその秘密に。

仮に全力で「追放」を放てば、命弦が一瞬のうちにあらゆる音符を消し去り、目の前のこのまるで警戒していない者を虚空の中に滅することができるか?

リターニアの新たな皇帝がこの場所を訪れたことを他に知る者はいない。リッチ王庭にこの国から撤退するよう知らせる時間は彼には十分にあった。

しかしヘーアクンフツホルンは、かくも自然にこの件について言及した。長い歳月の中で誰も気付くことのなかったその秘密に。

フレモント

ハハハハハハハハ――

しばらくの沈黙の後、フレモントは声を上げて大笑いした。

フレモント

ちょうど、あの空間の研究について私もいくらか行き詰まっていたところだ。

ヘーアクンフツホルン、もし本当に興味があるのなら……

命結を貸してやらんでもない。


フレモント

この辺にしといてくれ、ヘーアクンフツホルン。

昔話など食欲が失せると思わんか。昨日の夜飯まで吐き出したくなるぞ。ましてや私は急いでいてな。


巫王

久しぶりであるな、フレモント。

フレモント

私から何を借りていったかまだ覚えているのなら、さっさと返せ。