銀心湖鉄道RS-1・戦闘前乗車時のご注意
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カジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ

名前

銀心湖鉄道 RS-1・戦闘前

乗車時のご注意

身軽なチェゲッタ

フン! ハァッ!

息を切らすチェゲッタ

はぁ……はぁ……

疲れ切ったチェゲッタ

ハッ……! セイッ!

闘志みなぎるチェゲッタ

食らえ!

チェゲッタたち

ハアッ! かかれ!

???

あなたたち、食事はちゃんと取ってるの?

もう一度。

疲れ切ったチェゲッタ

む、無理ですよ姐さん、本当にもう限界ですって……

デーゲンブレヒャー

立ちなさい。

私はあなたたちにどう教えてきた?

立って、武器を握りなさい!

闘志みなぎるチェゲッタ

はい!

息を切らすチェゲッタ

はぁ……はぁ……やあッ!

デーゲンブレヒャー

遅すぎる。それに軽すぎね。アーツは急ぎすぎているし、戦術がワンパターンだわ。

少しは息が合ってきたようだけど。

全体の実力としてはお粗末ね。

身軽なチェゲッタ

比較対象が姐さんじゃなあ……

疲れ切ったチェゲッタ

はぁ……ふぅ……

まあ、一言褒めてもらえただけでも、ここんところやってた訓練には価値があったってもんだ。

闘志みなぎるチェゲッタ

こんなもんじゃまだ足りねぇよ! 俺もいつかは姐さんみたいに、片手で岩を細切れにできるようになんねえと!

息を切らすチェゲッタ

お前なんかが……?

デーゲンブレヒャー

……

休憩はこれで十分そうね。

それじゃ、もう一度いくわよ。

チェゲッタたち

えっ!?

慌てるチェゲッタ

姐さん! 大変です!

デーゲンブレヒャー

まずは落ち着きなさい。

慌てるチェゲッタ

はぁ……はぁ……

ふぅ……

デーゲンブレヒャー

何があったの?

慌てるチェゲッタ

あっ、た、大変なことが起きたんです!

麓のほうで、大騒ぎになってて……ち、血がたくさん……! 俺たちじゃどうすることもできません!

一刻を争う事態なんです! 早く来てください!


やんちゃな子供

わぁ! 発車したよ!

あはははっ! ママ、はやくはやく!

――うわっ!

焦る母親

列車の中で走っちゃダメって言ったでしょ! ケガはない!?

やんちゃな子供

(首を横に振る)

ママ、見て見て! 変な帽子の外国人いるよー!

焦る母親

こら、何てこと言うの! 人を指さしちゃいけません! 失礼な子は巫女様に嫌われちゃうわよ。早く謝りなさい!

やんちゃな子供

ごめんなさい……

焦る母親

はぁ……あの、大変申し訳ありませんでした。なにぶん、まだ何もわからない年頃でして……

変な帽子の外国人

構わない。

失礼、私は前の席なので、これで。


変な帽子の外国人

……

(明らかに定員オーバーだな。)

(現地の住民と観光客でおよそ半々か。ふむ、観光列車にしては珍しいな。)

(最後列の隅に積まれた麻袋が若干気にかかるな……袋の中で、何かが動いているようだ。動物は持ち込み禁止とされていたはずだが……)

(ふむ。ほかに異常はなし、注意すべき人物もなし……)

(あの情報は銀心湖行きの列車を示していただけだった。実際の手がかりを得るのは、そう容易ではなさそうだ。)

(やはり、機を見て個室を確かめなければ……)

ドン。

ドンドン。

変な帽子の外国人

……

先ほどから、背もたれに異常な振動を感じる。

まさかイェラグの列車には、背もたれを蹴り続ける怪異でもいるのだろうか?

変な帽子の外国人

…………

ドンドンドンドンドン。

まるで無反応な彼の様子を不満に思ったかのように、また背もたれが何度も蹴られる。

しばらくすると、後ろに座っていた子供が、彼のほうを覗き込んできた。

やんちゃな子供

ねえねえ、変な帽子のおじさん。

もしかして、おじさんって列車乗るのがすっごく好きなの? 何日か前にも見かけたからさ!

変な帽子の外国人

……私を見たのか?

やんちゃな子供

見たよ!

あっ、もしかして今までレールや列車を見たことなかったとか? それでそんなに列車が好きなの?

変な帽子の外国人

ごほん。

やんちゃな子供

なんで咳するの? 恥ずかしがらなくていいよ! ぼく笑ったりしないから!

この列車、とってもすごいんだよ! ぼくもだーいすきなんだ! ママが言ってたんだけど、これがあるのは巫女様とエンシオディス様のおかげなんだって! イェラガンドのご加護だよね!

あ、そうだ……ぼくのおもちゃ貸してあげるよ! ほら、列車のおもちゃ! だから一緒に遊ぼう、おじさん!

焦る母親

もう、やめなさい! ちゃんと席に座って、ほかの人に迷惑かけないの!

ご迷惑ばかりおかけして、本当に申し訳ありません。

しつけがなっていないもので……しっかり言い聞かせておきます!

変な帽子の外国人

いや、気にするな……

(……)

(この帽子……)

(そんなに変なのか?)


ハロルド

今日は乗客が多いですね。例のイェラガンド像はどうやら大人気と見えますな!

しかし、列車に乗るたび思うのですが、カジミエーシュ騎士競技の競技場は――むっ! わが足指をつついているのは何奴か!

リェータ

こいつは……羽獣か?

逃げ出した羽獣

(力強くつつく)

ハロルド

おおっとっと、羽獣殿、どうぞおくちばし柔らかに……!

うわっ!

リェータ

逃がしちまってよかったのか?

大丈夫なのかよ。列車の中ってペット持ち込み禁止じゃねぇの?

ハロルド

ルール上はそうなっておりますが、そこまで厳しく取り締まらない場合もあるのですよ。それが必要な地元民に便宜を図っているとでも言いましょうか。

ですがご安心を。この手の羽獣は大抵、麻袋に入れて持ち込まれていますので、大きな問題にはなりません。

それはさておき、レディ。私が予約しておいた個室はこの先にございますぞ。


リェータ

ふぅ……はぁ~、やれやれ!

クソ混んでたな! やっと座れたぜ!

立ち乗りも覚悟してたから、個室に入れてもらえてよかったよ。ありがとな、おっさん!

ハロルド

お安い御用ですよ、レディ。

リェータ

やめてくれよ、そんなバカ丁寧に喋らなくていいって。レディとか言うのもやめて、ロザリンって呼んでくれ。

ハロルド

ではお言葉に甘えて……「ロザリン」。いやはや、実に美しい名前ですね。貴方によく似合っていますよ。

リェータ

へへっ、そうだろ。母ちゃんがつけてくれたんだぜ。

おっさんはなんて名前なんだ?

ハロルド

ぜひ、ハロルドとお呼びください。無論、引き続き「おっさん」でも構いませんがね。

それにしても、貴方は運の良い方だ。この列車を逃せば、暗くなる前に銀心湖に着くのは難しかったと思いますよ。

リェータ

そーなのか?

へへっ、間に合ってよかったぜ。

そういや、ハロルドも銀心湖に向かってるんだよな? 本当は何しに行くんだ?

ハロルド

はて、その質問にはお答えした気がしますがね。

何しろ、イェラグの景色はこんなにも素晴らしいのですから、良い目の保養になるでしょう?

リェータ

誤魔化しても無駄だぜ。こんな大所帯で観光なんかするわけねぇだろうが。

ハロルド

おや、観光客には見えませんでしたかな?

リェータ

おう、ちっともな。

どっちかっつーと、面倒ごとを起こしに来たように見えるぜ。

ハロルド

はっはっは! そんなことをするはずがないでしょう!

私はイェラグの景色と文化にすっかり惚れ込んでおりましてね。引退後はいっそ、この地で隠居しようかとすら考え始めたほどなのですよ!

ですので、そう、よほどのことが起こらなければ、我々はただの観光客でいられるというわけでして……

リェータ

じゃあもし――

ハロルド

――ではロザリン、そう言うあなたのほうは……

観光客にしては随分イェラグ語が堪能ですね。本当にここへ来るのは初めてなのですか?

リェータ

無理やり話題変えんなっての!

ハロルド

はっはっは。

リェータ

まあいいや。まだ話してなかったっけ?

私は半分イェラグ人みたいなもんなんだ。ウルサスで母ちゃんに女手一つで育ててもらってたから、正直自覚はねぇんだけどな。

ハロルド

ほう、母君はウルサスの方なのですか?

リェータ

ああ。でも母ちゃんが言うには、私はイェラグ生まれで、父ちゃんはイェラグ人らしくてさ……

つっても、ガキの頃のことなんてあんま覚えてねぇし、言っちまえば旅行みたいなもんかもな。

ハロルド

なるほど、そうでしたか。

ところで、お会いした時から聞きたかったのですが……

貴方がずっと抱えているその箱は?

リェータ

こいつは……

……

ハロルド

いや、申し訳ない。プライベートな事情に関わるものであれば、何も仰らないでください。

リェータ

別にいいって。ただ、どう言えばいいのか考えてただけでさ……

これは母ちゃんが私に託した……形見なんだよ。

ハロルド

それは……

心より哀悼の意を表します。

つらい過去に無暗に触れてしまって申し訳ない。

お悔やみ申し上げます……

リェータ

別に、何もつらくなんかねえっての。

私が今回帰ってきたのは、母ちゃんの願いを叶えるためなんだ。


デーゲンブレヒャー

……

駄獣を操る牧畜民

デーゲンブレヒャーさん、これは……

デーゲンブレヒャー

もう大丈夫よ。

やれることはやっておいたわ。

駄獣を操る牧畜民

あなたのおかげじゃ……ありがとう。

デーゲンブレヒャーさんがいなければどうなっていたことか。これもイェラガンドの思し召しじゃな……おかげで皆命拾いしたわい。

デーゲンブレヒャー

私にできるのはここまでよ。

ごめんなさいね。あまり……気持ちのいい眺めではないけれど。

駄獣を操る牧畜民

じゃが、今はもう、ほかにどうしようもないしのう……

チェゲッタ

姐さん、お身体に血がついてますが、どうなさいますか?

デーゲンブレヒャー

後で考えるわ。

今は時間がない。一通り対処はしたけど、また問題が起こらないとも限らないでしょう。

今は「あの人」を見つけることのほうが先決よ。

チェゲッタ

ですが、あの人はもう駅を離れたって話ですよ。

今すぐ列車を止めてくれ、なんて鉄道側に連絡したら、パニックになるかもしれませんし……

デーゲンブレヒャー

列車を止める?

そんなこと、するまでもないわ。

チェゲッタ

じゃあ、どうするんですか?

デーゲンブレヒャー

下を見なさい。

チェゲッタ

こいつは……

列車だ! ちょうど下の山道に差し掛かったとこですね!

デーゲンブレヒャー

ええ。

チェゲッタ

え、待ってください、姐さん!?

落ちて行く彼女の姿は、雪より軽いようにも、石より重いようにも見えた。


デーゲンブレヒャー

……

さて……

あの人はどこかしら?