懐黍離HS-1・戦闘前大荒へ
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  • 炎、大荒城
ウルサス極東炎カジミエーシュリターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトン
ウルサス極東炎リターニアカズデルシラクーザレム・ビリトン

名前

懐黍離 HS-1・戦闘前

大荒へ

三ヶ月前

驚く農家

何だって……!? この途切れてるのは地紋じゃなくて人紋だってのか? つまり、俺はこれから大きな病気や災いがあるわけじゃなく、ただ頭に問題があるということか?

楽しそうな農家

あははは。だから頭を良くするために、クルミの木をあなたのために植えてあげたでしょう。さっさと肥料をあげに行きなさいな。今あげないと意味ないんだからね!

シュウ

そうとも言えないわ。この途切れた線は、二十代前半に困難な選択に直面することを意味しているだけだもの。

けれど、完璧な人生なんてもの存在しないんだから。成り行きに任せなさい。ほら、後ろの線は大分なだらかでしょう?

驚く農家

すげぇ! 当たってるぞ!

二十三歳の時、実家の田畑が天災でダメになって、当時俺は移動都市に行ってどう生計を立てていけるか全く分からなかったんだ。

でも、今はみんなと一緒に大荒城へ来て、元の稼業に戻って農作物して、それなりに良い生活を送れてるだろ?

楽しそうな農家

そんなことがあったのね……

シュウ

本当に運命を予測できる人なんていないわよ。起きたことに理由をつけているだけ。

驚く農家

天師府の天師が何でもできてすげーてのは聞いてたが、まさかこんなことまで分かるとは……

シュウさん、あんたは若いのに、もうここの天師府のベテラン指導天師なのか?

シュウ

道を聞くに先後有りってね。ただ人より早く知識を学んで、それをより多くの人に伝えただけよ。

楽しそうな農家

すごいわぁ、にしても……

シュウさん、あっちでずっとあなたを見つめてる若者がいるけど……知り合い?

シュウ

そうねぇ……

大事なお客様だわ。ごめんなさい、また日を改めて話しましょう。

ズオ・ラウ

炎国司歳台持燭人、ズオ・ラウ、大荒城の建設および歳獣に関する事項について監督するよう命を受け参じました。

あなたの日々の活動に制限はかけません。ただし、しばらくの間は大荒城を離れないでいただきたく思います。

どうか。ご協力のほどを。

シュウ

あら、新しい持燭人が来るって聞いたけど、あなたのことだったのね。

ズオ・ラウ

はい。

司歳台による定例検査にすぎませんので、農業研究の邪魔はいたしません。本来の業務に集中していただいて結構です、それ以外のことはご心配には――

シュウ

随分と若く見えるわね。成人はしてるの?

ズオ・ラウ

……はい?

シュウ

ここはかなり辺ぴな場所だけど、道中は問題なかった? 悪党に遭遇したりしてないわよね?

ズオ・ラウ

これでも、追いはぎ程度に遅れはとりません。

また、こちらに十二楼五城を建設する件ですが、司歳台は皆さんが工部と協力し、お互いに利を得られる関係を築くことを認める用意があります。

皆さんには天師たちと友好的に接していただいて、もめごとを避けていただければ幸いです。それ以外にも、いくつかの……

シュウ

そうだ、基本的には作物を踏まないように注意してくれれば、ここの田んぼは好きに歩いていいわ。けど工場に行くなら、事前に天師たちに断りを入れておいた方がいいわね。

ズオ・ラウ

……業務範囲については、自分でよく分かっています。それとまだ……

シュウ

前の持燭人が住んでいた部屋はあそこよ。普段の生活で使うものは新しいのに換えておいたから、そのまま使っちゃっていいからね。

ズオ・ラウ

あの……

シュウ

うん、こんなところね。まだ何か質問はあるかしら?

ズオ・ラウ

い、いえ……ありません。

シュウ

ならいいわ。田んぼでまだやらなきゃいけないことがたくさんあるから、挨拶はこの辺にしておくわね。

何か困ったことがあったら、近くの人に声を掛けて。ここの人はお客さんが好きだし、意地悪はされないから。

ズオ・ラウ

……


やんちゃな少女

おーい!

ズオ・ラウ

……

やんちゃな少女

おーい!

ズオ・ラウ

申し訳ない、お嬢さん。私には公務が――

やんちゃな少女

はい、これ。

ズオ・ラウ

弁当箱? これは一体?

やんちゃな少女

お腹空いたでしょ。

あなたってば一日中ここに突っ立ってるんだもん。ぼうっとして、ご飯を食べに行くのも忘れちゃってそうだし、なんだか、案山子みたい!

ズオ・ラウ

あ……ありがとうございます。

やんちゃな少女

美味しい?

ズオ・ラウ

大変、口に合います……

やんちゃな少女

ねぇ、それでさ。ただ飯食う気?

ズオ・ラウ

ごほごほっ……!

シュウ

小満(シャオマン)、こちらはお客様よ。そんな失礼なこと言ってはダメでしょう。

シャオマン

でもシュウ姉ちゃんが言ってたことでしょ? 大荒城に住む人はみんな、作物と向き合って汗を流して、ようやくご飯を食べられるって。

それなのに、この人は変な感じだもの。公務とか言ってるくせに田植えもしないし建物も建てに行かない。一体何しに来たんだろう。

シュウ

この人は、ちゃんと自分のお仕事があるのよ。

シャオマン

ここでぼーっとしてるのが?

シュウ

ここでぼっーとしてるのがよ。

ズオ・ラウ

……こほん。

何か……私にお手伝いできることはありますか?

シュウ

そうねぇ……田植機は扱える?

ズオ・ラウ

いいえ……

シュウ

それもそうよね。あなたの普段のお仕事では、こういった農具を相手にすることはないでしょうし。

この小さい四角いものは六相儀というの。これで天杭を操って田畑の対応する位置に刺してあげれば、区画ごとの状況をモニタリングできるのだけど。あなた使えるかしら?

ズオ・ラウ

操作したことはないですね……

シュウ

なら、牧獣に飼料を与えるのは……

ズオ・ラウ

……

シャオマン

ぷっ――

シュウ

ここにしばらくいるつもりなら、この機会に農作業へ挑戦をしてみたらいいんじゃない?

そうね。まずは、試験田の未処理の雑草を取り除くことから始めましょうか?

農業天師見習い

先生、いらっしゃいますか? ここに――

シュウ

小禾(シャオホー)、いいところに来たわね。

こちらは……都から来た私の遠縁のいとこよ。しばらく大荒城で休暇することになったの。

こっちは私の教え子の禾生(ホーシェン)。彼が色々と教えてくれるわ。

ホーシェン

え……?

ズオ・ラウ

……え?


ホーシェン

探知器は、ここら辺に牧獣がいるって示してるのか?

シャオマン

うん! この羽獣の笛を吹けば、あたしが探してるってことをめんめんは分かるから、出てきてくれるよ。

ズオ・ラウ

探知器というのは……?

ホーシェン

大荒城の全ての牧獣に付けているんです。正確な位置を特定することはできませんが、おおよその位置なら分かりますよ。

ズオ・ラウ

大荒城には何万と牧獣がいるはずです。その全てに?

ホーシェン

牧獣の脱走は日常茶飯事でしたから。先輩たちが飼ってる研究課題は、よく外の異性に惹かれてついていってしまうんです――

……

ズオ・ラウ

……申し訳ありません、今までこうしたことにはあまり触れたことがなく。

ホーシェン

先生の遠い親戚なら、どうして軍に入ったんですか?

ズオ・ラウ

殊更、話すほどのことではありません。

ホーシェン

家族にお役人がいるとか?

ズオ・ラウ

……なぜそう思うのですか?

ホーシェン

君の話し方です。それと、雰囲気。

ここの同年代で君のような人は滅多にいません。いたとしても高官の子です。

ズオ・ラウ

不快にさせる気はありませんでした……

ホーシェン

君が誰かを不快にさせたとも言っていませんよ。

シャオマン

おっかしいなぁ~、どうして出てこないんだろう……?

数日前にめんめんとおさげちゃんが喧嘩してたけど、まさかそのせいで家出しちゃったのかな?

ホーシェン

まさか、また外の雌牧獣に惹かれて逃げたか?

シャオマン

え? でも、めんめんはおさげちゃんのことが好きなんだよ! 毎日、あの子たちを泥浴びに連れて行く時だって、二匹でずっと一緒にいるんだから。

これじゃいけないよ、燭台くん!

ズオ・ラウ

しょ、燭台くん……?

シャオマン

めんめんの絵を描くから、それを見て覚えて。手分けして探すよ!

ズオ・ラウ

うむ……シャオマンさんの画力は素晴らしいですね。一目見ただけで分かります……

ホーシェン

……本気ですか? 僕ですら、これがめんめんだと見分けがつかないのに、君には分かると?

シャオマン

四本足で、体にまだら模様があるだけでしょ。どうして分からないの?

燭台くん、外で牧獣を見たことはある?

ズオ・ラウ

あまり……

シャオマン

大丈夫だよ。あなたは牧獣を見たことがないけど、あたしだって移動都市を見たことがないもの。誰にでも見たことないものはあるからね。

ズオ・ラウ

あなたは、外に――他の都市に行ったことはないんですか?

シャオマン

ないよ。でも、シャオホーからたくさん話は聞いてるんだ。

ここで栽培されたお米は毎年外に送られててね。外の人をお腹いっぱいにするために、ここの人たちは新しい種を研究してるんだよ。

ズオ・ラウ

……

ホーシェン

これから、いくらでも外に行く機会はあるよ。

シャオマン

うん。今はまだいいよ、あたしここの方が好きだし。

あっ! ちょうどよかった。ね、今の匂い分かる?

ズオ・ラウ

……酒の香り?

シャオマン

そう! あたし、お米で作った甘い酒醸(チューニャン)が一番の大好物なんだ! あそこの湯気が立ってる場所が醸造工場だよ。後でついでに寄ってみよ!

ズオ・ラウ

ここには、醸造所まであったんですね。

ホーシェン

収穫の時期になると、酒造りのためにお米を取っておくんです。最も古いお酒だと、百年以上も寝かせてあるそうですよ。

……お酒は飲んだことある?

ズオ・ラウ

前に少し……任務中に出会った方から、トウモロコシの葉のお酒を頂きました。辛口で、むせるくらい強かったです。

お酒で体を温めろと言われたのですが、まさかそこまで強いお酒だとは思いもせず驚きました。その方は、腹を満たす分も足りてないのに、酒造りのために穀物を使う余裕はないと話していました。

ホーシェン

……外には、やはり十分食べることができない人がいるんですか?

ズオ・ラウ

……

大地は広大ですから。場所が異なれば、違いも大きくなります。

ホーシェン

……

ズオ・ラウ

音がします……あちらから?

シャオマン

わあ、燭台くん、すごいジャンプ力……きっとすぐにめんめんを見つけてくれるね!

ホーシェン

僕たちのドローンならもっと高く飛べるし、測位機能もついてる。

わざわざこんな――待て、あそこ……

シャオマン

なんで燃えてるの!?


工部侍郎

三ヶ月?

ベテラン土木天師

三ヶ月です。この建設はお遊びではありません。全ての工程に問題がないことを確認するために、十分な時間が必要です。むしろ三ヶ月で完了できるなら上出来ですよ。

「十二楼五城」、これは単なる詩の抜粋ではありません。これらの……「原型」が炎国歴代天師の心にどれだけの間眠っているかはご存知でしょう。

工部侍郎

もちろんですとも。何事も初めが難しいということも、理解しています。

私は官吏ではありますが、天師府の教え子でもあります。アーツの技術は各位に及びませんが、毎日ただ机の後ろに座って自分の天師儀を眺めながら茶をすすっているだけではありません。

三ヶ月――当時大雪舞う炎北地区にて、私たちも三ヶ月かかりました。

天師の皆さんには、今一度よく熟慮した上で返事を頂きたいものですね。大荒城中枢区画における最後の二つの区画の組み立て作業には、あとどれだけかかりますか?

ベテラン土木天師

……

エネルギーと物資の供給が十分であれば、およそ一ヶ月余りかと……

工部侍郎

源石エネルギーについては心配いりません。物資補給の方は、繰り返し私から催促しています。天師の皆さんは工程の進捗だけを気にしていればよいのです。

大荒城は一朝一夕では届かぬ距離にあります。都市建設以前に、物資の輸送ですら一大プロジェクトです。一日でも遅れれば、資源と金の消費量は膨大なものになります。

毎年税を納めている民草のことを考えただけでも、我々には、いかなる怠慢も許されはしません。

今は六月です。中秋節には、皆さんが家に帰り一家団らんできていることを願っています。

はぁ。

どこにいても、面倒事からは逃れられませんね。寧(ニン)さんにはお恥ずかしいところを見せてしまいました。

ニン・ツーチウ

「三ヶ月」、「炎北地区」。あの年の丹燕城のことですね。

あの時、大雪で都市が封じられ、朝廷は天候が回復するまで丹燕城の建設中断を決定しました。しかし信使が到着すると、とあるリーダーの天師が区画丸一つを刀とし……

……凍った源石の結晶層を砕いて、厳しい寒さに閉じ込められていた数万の民草を救った。

この物語は今や教科書にも載り、万(ワン)侍郎もその後、この功を認められて一挙に出世なされた。先ほどの言葉はあまりに謙遜でしょう。

工部侍郎

はは、誤解ですよ。私はただの底辺から一歩一歩這い上がった一介の土木天師です。どうして偉ぶることなどできますか。

しかし、先ほどはあの時の出来事を話に持ち出さざるを得なかったのですよ。そうして初めて、現場で苦労をしている天師たちは、不満を飲み込み私の話を聞いてくれます。

ニン・ツーチウ

どうやら、ワン侍郎は十二楼五城の進捗に十全の自信をお持ちのようですね。

ワン侍郎

はぁ、たとえ私に自信があったとしても、すべきことはあまりに多い。やはりいささか時間が足りません。

どれだけ慎重になろうと、見落としはつきものです。その際は、お手数をおかけしますが何卒よろしくお願いします、ニン侍郎。

ニン・ツーチウ

もとより私の本分です。

ワン侍郎

……ニンさんは大荒城にいらしてから日が浅いので、この土地にまだ不案内でしょう。

辺境に位置し、中央の賑やかさには及びませんが、産物は色々とございましてね。特に作物から作られた個性豊かな料理は、趣も味も兼ね備えたものですよ。

例えば、そうですね、ニンさんは、ここで「五豆粥」は食べられましたか?

ニン・ツーチウ

いえ、残念ながら。

ワン侍郎

大荒城の五豆粥は、他所とは異なっていましてね。この地、独自の料理と言っていいでしょう。新品種の五つの豆、すなわち小豆、黒豆、緑豆、大豆、白インゲン豆をふんだんに使って煮るんです。

もっとも、五つの豆は互いを引き立て合っているとはいえ、大荒城の五豆粥が絶品だと言われるゆえんは、やはり唯一無二の……お米にあります。

大荒城の米は甘く、風味豊かで香りも際立っています。だからこそ椀の旨味をしっかりと下支えする柱となり、ごくごく普通の五豆粥が大荒城の食文化の象徴となったのです。

一見すると五豆一米のそれぞれが滋味であるようですが、つまるところ、米が全てをまとめているのです。そのため調理に関しても、適当に煮て完成ではなく、ちょっとしたこだわりがあります。

コツは、火加減にあります。五つの豆を主に据えてはなりません。米が風味を失ってしまえば、この粥は味気ない普通の雑穀粥に元通りです。

ニン・ツーチウ

……

ワン侍郎

ニンさん、お時間がある時にぜひともご賞味ください。

ニン・ツーチウ

必ず。

ワン侍郎

ときに、ニン尚書のお身体はいかがですか?

ニン・ツーチウ

祖父は高齢ですので、病をしていないだけで幸いです。

ワン侍郎

やはりお体が第一です。次に百灶(バイザオ)へ報告に戻る際には尚書へささやかな贈り物をお持ちしましょうか?

ニン・ツーチウ

ワン侍郎の、そのお気持ちだけで十分です。

ワン侍郎

大荒城も歳獣と関係がございますからね。私も司歳台や礼部とのお付き合いは増えていくことでしょう。

かねてより、ニン尚書の壮挙に感服してやみませんでしたが、残念ながら時は人を待たない……今日に至っては、瑣末な事項にニン尚書が労力を費やされるのは、いささか大器小用でしょう。

ニン・ツーチウ

もしも、私が大荒城に現れたことがいらぬ世話だと思う者がいるのであれば、直ちに太傅宛てに文を書くこともできますが。

ワン侍郎

どうやら誤解をされていますね。私はただ、ニンさんがそのお若さで侍郎の職に就くことができたのは、まさにニン家にとって誇らしく、ニン尚書の教えの賜物だと――

ニン・ツーチウ

ワン侍郎。

ワン侍郎

何でしょう?

ニン・ツーチウ

もし、あなたが「何の実績もないニン・ツーチウでは、丹燕城の伝説的天師と共に仕事をするに相応しくない」とおっしゃりたいのなら、否定はいたしません。

でも我々は同僚でしょう。以後、率直に言葉を口にしていただければと思います。

あまり持って回ったような話し方をして、自分が聡明だと思わないように。真に聡明な方というのは、あなたよりもはるかに好感が持てます。

では、失礼。


農業天師見習い

早く、バケツ、バケツを! 幸い火は上がったばかり、それに川辺だ……!

ホーシェン

なぜ、林のそばで火を起こすようなことをしたんですか!?

ズオ・ラウ

山を燃やすことは重罪ですよ!

農業天師見習い

山を燃やしてなんかいねぇよ! 先輩だ! 彼女の研究課題が羽獣に関するもので、その羽獣が俺のを食っちまったんだ!

……俺の課題の土地には卵一個しか残っていない。だからこいつを焼いて……憂さ晴らししてやろうと思ったんだ!

いや憂さ晴らしじゃない。俺は自分の課題の弔いのためにこの卵を焼こうと思っただけなんだ! うぅ……

シャオマン

いいから、ごちゃごちゃ言ってないで! 早く早く、火が奥まで燃え移っちゃう! さっさと踏んで火を消して!

農業天師見習い

鍬を渡すから、風がやんでるうちに、燃え移らないよう草を刈ってくれ!

ズオ・ラウ

奥に延焼させたら事です。向こうの植物を刈ってきます!


ホーシェン

ふぅ……

シャオマン

はぁ……

農業天師見習い

あぁ……

脱走した牧獣

……モー……

シャオマン

ん? ……めんめん?

めんめん

モー!

シャオマン

やっと見つけた~!

なんでこんな所まで来ちゃったの? ……今のうちにこっそり教えて、あなたおさげちゃんが好きなの、好きじゃないの?

ホーシェン

で、ズオ・ラウの奴はどこ行ったんだ? 奥の草を刈りに行くって言ってたけど。

シャオマン

燭台くん……もしかして迷子になっちゃったりして?

めんめん

……モー……

シャオマン

……じゃあ探しに行く?

めんめん

……モー……

ホーシェン

……

ズオ――

ズオ・ラウ

ここです。先ほどあちらに行ってみましたが、ええとその、めんめんは見つかりませんでした。ですが草の巣の中でこの二匹を見つけました。

二匹のまだ目も開いていない牧獣の赤ん坊が、ズオ・ラウのコートにくるまれて、彼の腕に抱かれていた。

ホーシェン

……こんな小さな幼獣、連れて帰ってくるべきではありません。

ズオ・ラウ

え?

ですが、周囲を探しても、母親は近くにいませんでしたし、放っておいては、きっと死んでしまいます。

それならば、こうして連れて来てあなた方に管理してもらった方が良いのではありませんか?

シャオマン

「管理」じゃないの! あたしたちはお友達! 互いに助け合ってるんだよ。

この子たちは毛をくれて、あたしたちは美味しい飼い葉をあげる。ついでに虫を追い払ったり、痒いところをかいてあげたりするんだよ。

ホーシェン

野生の幼獣を大荒城に持ち帰るとなると、伝染病を持っているかも分かりませんし、人に飼育されることを受け入れるとも言い切れません。それに……

シャオマン

でももう抱えちゃってるし、匂いがついちゃってるよ。今更戻したとしても、母獣はもうこの子たちをいらないと思うだろうね。

ホーシェン

だから連れて帰るべきじゃないって言ってるだろ。

シャオマン

でも連れてきちゃったからには、どうにかしないと。

ホーシェン

シャオマン、彼の方が何も知らずに間違ったことをしてるのに、どうしていつも肩を持つんだ?

シャオマン

そうだよ。何も知らなくて間違ったことをしたおバカさんだからこそ、こうしてるんだよ!

ズオ・ラウ

えーと……

シャオマン

もういいでしょ。このおチビちゃんたちをどうするかは、あたしが戻って先生たちに聞くよ。早く戻ろう、この子たちが風邪ひいちゃわないように。

???

……

シャオマン

きゃ! またあなたなの!

怖いおじちゃん、お昼ご飯はもう食べた? ついさっきここで火事があったんだよ。あなたは話せないし、もしあたしたちがいなかったらおじちゃんまで燃えちゃってたよ!

ホーシェン

シャオマン、近づかないで。斧で切られるよ!

シャオマン

そんなことしないよ。あたしが笛を吹くと、おじちゃんは落ち着いてくれるもん。

おじちゃんはあたしが吹く笛が好きで、来るたびにこうなんだよ。

木こり

……

シャオマン

ほらね! みんなここに来ちゃいけないって言うけど、あたしはよくこっそり来てるんだ。川の向こう岸にはまだ渡れてないけどね。

この曲を吹けば怖いおじちゃんは落ち着くし、笑顔を見せてくれたこともあるんだよ。こうやって近づいて斧に触ることもできるんだから。おじちゃんはいつもぎゅっと握りしめてるけど、実はとても……

……わっ!

どうして急に殴るの! もう怒った。今度から食べ物持ってきてあげないからね!

ホーシェン

シャオマン、そっち行かないで。早く戻るよ!

ズオ・ラウ

この幼獣たちは……

ホーシェン

……連れて帰りましょう。

次からは、行動する前によく考えてくださると嬉しいです。

ズオ・ラウ

……

(ここに来て随分と経つが……一体何をしていたのだろう?)