懐黍離HS-4・戦闘前桑麻の交
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  • 炎、大荒城
ウルサス極東炎カジミエーシュリターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトン
ウルサス極東炎リターニアカズデルシラクーザレム・ビリトン

名前

懐黍離 HS-4・戦闘前

桑麻の交

ワイ・テンペイ

大丈夫か?

商隊隊長

親切な御方、ありがとうございます。

北で貴重な鉱石を買い付け、南へ売りに行く途上だったのですが、ここで強盗に遭遇するとは思いませんでした。貴方にお会いしなければ、今回の商売は取り返しのつかぬ大損でした。

ワイ・テンペイ

商隊ならば、人通りの少ない道は通らない方がいい。

商隊隊長

道を急いでいたものでして……おっと、貴方のご助力に感謝せねば。少しばかりの気持ちですが、ご笑納ください。

ワイ・テンペイ

興味ない、俺はもう行く。

商隊隊長

あの! どうかお待ちを……

相当な腕前とお見受けしましたが、武人の方ですか?

ワイ・テンペイ

何だ、俺と勝負したいのか?

商隊隊長

いえまさか……ご覧の通り、私は非力な商人にすぎません。貴方と勝負する腕など持ち合わせておりません。

しかし武林の方であるなら……なんという巡り合わせでしょうか。ついこの間、偶然にも貴重な武術書を手に入れまして、あるいはご興味があるかと。

ワイ・テンペイ

笑わせるな。この世に俺の役に立つ武術書があるとでも?

商隊隊長

まあまあ、そう言い切らないでください。ひとまずご覧になってみては? 私はお客様の役に立つ商品しか売りません。

ワイ・テンペイ

必要ない。

商隊隊長

一目だけでいいですから、数分もかかりません。きっと後悔はなさいませんよ。

ワイ・テンペイ

いい加減に――


チョンユエ

まさか貴公の武が、この域まで磨かれていたとは。

最早、私では貴公の相手は務まらん。

ワイ・テンペイ

お前……

お前に勝った、ならば俺は天下一か?

チョンユエ

貴公が天下一だ。

ワイ・テンペイ

天下一……俺が天下一?

胸の内で血がたぎり、拳の先には余熱が残っている。

頂へと登り詰め、生涯の願いは果たした――

いや、違う!

こいつは誰だ?


一瞬の忘我。

ワイ・テンペイ

……どういうことだ?

お前は何者だ!?

商隊隊長

先ほど申し上げた通り、一介の商人です。

何でも売り、何でも引き取ります。

こいつはどのように俺を見つけた?

ワイ・テンペイ

……なぜ俺を訪ねた?

商隊隊長

ただ一人の相手を倒すためだけに、貴方が四十年も武の道を突き詰めているのを知っています。

今、数十年の時間を省いてその人に追いつける機会が目の前にあるというのに、欲しくないのですか?

ワイ・テンペイ

手出しは無用だ!

商隊隊長

私から何かを買うつもりがないようですが、貴方は私が買いたいものをお持ちです。

少し前に、とある宝剣を手に入れたと聞き及びました。いくら出せば、譲っていただけますか。

ワイ・テンペイ

失せろ!

なに――

商隊隊長

どうやら私が提示した対価ではご不満のようですね。

値段でしたら話し合いの余地はあります。なぜ初めからそう頑なになるのですか。

ワイ・テンペイ

話し合いの余地はない!

リャン・シュン?

君はこの剣を、そしてこたびの約束を非常に重く見ている。私は義兄弟を見誤ってはいなかったな。

リー?

四十年、脇目もふらず武の頂を求めるとは、頭が下がるねぇ。

その目標のために、本当に全てを差し出せるのかい?

ワイ・テンペイ

面妖な真似をするな!

ワイフー?

父さん?

ワイ・テンペイ

――!

商隊隊長

あぁ、そうそう。私はこの世に成立しない取引はないと考えています。もし成立していないのなら、それは価格の折り合いがついていないだけです。いいでしょう、上乗せするとします。

例えば、貴方の娘さんの命などでは、いかがですか?


ニェン

おいおい、ここは工事中だ。入るんじゃねーよ。

ジー

久しぶりですね、ニェン。

これほど大きな代物、全て貴女が設計したのですか?

ニェン

ご機嫌取りは禁止な。用があるならさっさと言え。

ジー

せっかくこうして会えたのに、ここまで歓迎されないとは、寂しいですね。

もし私が各地を回ってあくせく働き、毎年毎年耳をそろえて納税していなければ、貴女がこの大きな代物を建てるお金はどこからやってくるのかは考えたことはないのですか?

ニェン

バカ言え。そう言うオメーの金の方こそどこから来てんだって話だよ。買い叩いて取った値鞘だろ。しかも売ってんのはオメーが作ったもんですらない。

マジな話……大昔、オメーら商売人が嫌われてたのには理由があるんだよ。

そんで何しに来たんだ? 真っ先にシュウ姉の所に行くかと思ってたが。

ジー

とても気になったのです。我々一家に平穏無事な暮らしを与えられると言われるものが、どれほどの代物なのかが。

建設が思うようにいっていないと聞きましたが、助っ人は必要ありませんか?

ニェン

必要だとしてもオメーにゃ頼まねーよ。プログラムは分からねーだろ。

ジー

シュウ姉さんが手伝っていることなら、私も力になれると思いますよ。

ニェン

……今度は何企んでるんだ?

ジー

このコアエネルギーが、単なるプログラム上のものではないことは知っています。私たちの生存をサポートできる概念上の「巨獣」とするには、概念上の「命」を与える必要があります。

だからこそ姉さんの力が必要なんです。しかし姉さんが、この場所で世話をしなければならないことはあまりに多い。一人で背負いすぎです。

彼女の力なら私も多少なりとも学んでいます。私に代わりを務めさせれば、効率的では?

ニェン

まだシュウ姉のことを気にかけてたんだな……てっきりもう仲違いしたのかと思ってたぜ?

ジー

まさか……

つまり、同意したということですか?

ニェン

いいや。

とっとと帰んな。今日はオメーに会ってないことにしとく。

ジー

はぁ、姉も妹も、誰も私に会いたがらないのですね。

ニェン

オメーのそのそろばんの玉が怖いんだよ。少しでも言葉を交わせば一杯食わされるんじゃねーかってな。

これまでオメーと会うたびにどれだけ騙し取られたと思ってんだ?

ジー

ものを売るのを手伝ってあげただけでしょう。得られた利益は、貴女にもあったはずです。

ニェン

はいはい、そこまで。オメーの話術に付き合う暇はねーんだ。

いいから、さっさと帰りな。私の建築物からできるだけ遠くにいてくれ。これ以上あのじじいたちにうだうだ言われたくねーんだからよ。

ジー

もし、中に入って見てみたいと言ったら?

ニェン

……おい。

ジー

……

そんな顔はやめてください。私が本当に妹からものを奪おうとしているみたいではありませんか。

ニェン

……

ジー

ただ妹の様子を見に来ただけですよ。元気な姿を見て、安心しました。


ズオ・ラウ

一度見た後、行方がわからなくなってしまった……

一体どこへ……

???

ねえ。


墨魎

ガァッ――

(噛む)

ズオ・ラウ

このッ――!

……シー?

シー

なに。前に会った時はもっと偉そうだったでしょう?

ズオ・ラウ

代理人は、好き勝手能力を使うべきではありません……

シー

うっさいわね。

状況がこうでもない限り、私だって司歳台の人間に会いに来たりはしないわよ。

……やっぱり貴方を訪ねてきたのね。

ズオ・ラウ

あなたたちは何を企てているんですか?

十二楼五城着工の時に彼が突然大荒城に戻ってくるなんて、どういうつもりなんですか?

シー

私に聞いてるの? 貴方、持燭人でしょ?

ズオ・ラウ

もちろん、きちんと調べますが……

シー

どこから調べるつもり?

ズオ・ラウ

私はこの間の災害の裏には別の原因があるとにらんでいます……十二楼五城の建設が目前に迫り、あの罪人が付近に石を置いた可能性は高い。

シー

一人ぼっちの持燭人が、他の人の支援なしでどれだけできるっていうの?

ズオ・ラウ

大荒城における司歳台の人員は、私一人だけではありません。

シー

なら、これまで通り、何も知らずに安心して他人の後ろをついて回ればいいわね。

ズオ・ラウ

……

シー

その目。官服を脱いだらかえって物分かりが良くなったみたいね……少なくとも、どうしようもない石頭ではないみたい。

ズオ・ラウ

あなたに、指摘されるまでもありません……

シー

私はそろばんを弾くことで頭がいっぱいの手合いとはやり取りしたくないの。これからの話は一回しか言わないわ。

あの刺繍バカは相当な切れ者よ。絶対にぼろを出さない。貴方たち司歳台はあいつの後を長年追いかけてきたんですもの、そのことは当然よく知ってるわよね。

こういうのを相手にする時は……直接手を下した方がむしろ効き目があったりするわ。

ズオ・ラウ

直接手を下す?

シー

持って行きなさい。

ズオ・ラウ

絵ですか?

シー

貴方一人じゃ、あいつが何か悪さしてるのに気づいても何もできないでしょ?

これを使えば、少なくともしばらくあいつを閉じ込めることができるわ。

ズオ・ラウ

持燭人が独断で代理人に接触するのは重罪です。ましてや代理人の力を借りるなど……

シー

貴方が何を選ぶか次第よ。

ズオ・ラウ

……私に力を貸してくれるのですか?

シー

おしゃべりはもう十分。せいぜい足掻きなさい。


ズオ・ラウ

……ありがとうございます。


シャオマン

つまりここに遊びに来ようと思ったら、あたしが川の傍で寝てるのを見たってこと?

おかしいよ。夢だったなら、どうして夢の中で摘んだお花を持ってるの? 足だって痛いよ。

乱暴な子供

夢の中で足がつるのは背が伸びるってことよ。良かったじゃない。

シャオマン

へへ、そう言えばあなたはここ数年ちっとも背が伸びてないよね。声だけは毎年大きくなってくけど。

それにあたし気づいちゃった。授業をサボってきたんでしょ?

乱暴な子供

シッ、大声出すな、静かに!

シャオマン

ははっ! やっぱり!

ほんとに天師府の学生なの? どうしていつも外をほっつき歩いてるの?

乱暴な天師見習い

学校に行かないのは、学校よりも重要なことがあるからに決まってるでしょ。心配は無用よ。

シャオマン

学校をサボったこと秘密にしてあげるから、あたしがまた川に行ったこと、言わないでいてくれる?

乱暴な天師見習い

私の扇子は? 返してちょうだい。

シャオマン

どうして知ってるの――

ちぇっ、けちんぼ。

乱暴な天師見習い

もうその笛はあげたでしょ。まだ何が欲しいっていうの?

シャオマン

これは適当に竹で作ったやつでしょ。しかも自分で吹いてから渡してきたし。

乱暴な天師見習い

適当!? あんたね――

この音色、それとこの材質。もったいないから自分でさえあんまり使ってなかったのに、あんたに渡す時にどれだけ手放したくなかったのか知らないの。いらないなら返しなさい!

シャオマン

……ほんとにそんなに貴重なの?

分かったよ、扇子は返してあげる。でも約束だよ、お互い秘密にしようね。

乱暴な天師見習い

まあそれならいいけど……

シャオマン

ほら、この稲だよ。

赤くてとても綺麗でしょ。この辺のは全部倒れちゃったけど、これだけは生きてるんだよ。何かの新品種かな?

ちょっ、どうして引っこ抜いちゃうの!?

乱暴な天師見習い

……宿題に使うから。

他にこういう稲があるか知ってる? 作物でもいいわ、こういうありえないほど綺麗なやつ。誰にも教えずに、こっそり私を呼んで。私が摘み取るから。

シャオマン

それっていいの? そんなのズルじゃん!

乱暴な天師見習い

それと、あんたが自分で摘んで持ってくるのはだめだよ。摘んでる時に傷つけちゃうから。必ず私を呼んで、他の人に言わないこと。

シャオマン

分かったよ。もう。でも天師たちに捕まったら、あたしの名前出さないでよね。

乱暴な天師見習い

あんたはそんなことより、前に飼料を与え間違えて実験品種の牧獣がお腹を壊したことをよーく思いだして反省しときなさい。

シャオマン

もうっ――!


僕には夢がある。

大荒城はとても広い。東端から西端まで歩いて、一昼夜かかる。田畑全体を一周しようとすれば、まず足を壊すだろう。

けれど先生はいつも言っている。大荒城の広さは十分ではないと。ここで収穫できる食糧では天下の人の腹を満たすには全く足りないのだと。

僕は大荒城の外に行ったことがない。ここは炎国の北の境界だ。山は高く川は長い、そして道は険しい。ここの食糧が、外との唯一の繋がりだ。

収穫は夏と秋で年二回、茎にはずっしりと重い稲穂がぶら下がる。それはこの大地の重さ。豊作の時の田畑が、最も美しい景色だ。


ホーシェン

あれは……?

顔のよく見えない老いた農民が田んぼに立ち、髪が数輪の小さな花で飾ってある。

ホーシェン

こんにちは……?

老いた農民

これを。

ホーシェン

鍬?

老いた農民

こっちへ来て、土を耕しなさい。

この地を耕し、種を植え、育てる。

心を込めて耕すの。

少年は鍬を受け取る。老いた農民は身を翻してかがみ込むと、農作業を続けた。

手にした鍬は重く、少年はそれを高く掲げた。

刃が地面に刺さる。

ザクッ!

一株の苗が鍬を入れた土地から伸び、すぐに芽を伸ばし始めると、一番上に繊細な穂が生え、いくつか小さな花が咲いた。

少年は訳の分からない疲労を感じた。額ににじむ汗を拭うと、再び鍬を振り上げる。

ザクッ!

稲の花が一瞬のうちに咲いて萎み、穂は見る見るうちにぷっくりと膨らむ。

ホーシェン

あの、稲が成長して穂も実っています。もうすぐ収穫できるはずです。

老いた農民

……

少年は鍬がどんどん重くなっていくのを感じた。自分の手を見てみると、分厚いたこができ、しわが両手と腕に走っている。

老いた農民は答えず、ただ黙って足元の土地を耕す。

土から顔を出したばかりの苗が、育ち始めた稲の下で低く成長している。

ザクッ!

生まれては死ぬ、黄金色の種もみが数粒枝先からこぼれ落ち、たくさんの作物が次々に大地の上で枯れた。

少年は鍬を振り下ろしたその瞬間止まった。彼は愕然と眼前の光景を見る。

ホーシェン

あの……? この稲はなぜ……?

……ごほごほっ……ごほっ……

老いた農民

春が過ぎ秋が来る、一季一収。

少年よ、あなたにとって、一季とは何?

果実が実ること? お腹いっぱい食べること? 種が再びまかれること?

少年は鍬を高く上げ、繰り返し繰り返し地面を耕す。

種もみは彼の足元で根を張って芽生え、花が咲いて穂を出し、そして枯れて土になる。種が、彼に捧げ持たれたことは一度もない。

彼は力が流れ出ていくのを感じた。髪の毛は乱雑に伸びる。真っ黒で丈夫だったそれが、脆く柔らかくなる。身にまとう服はぼろぼろになって、彼の徐々に曲がっていく背の上に掛かる。

力の限り鍬を振った後、白髪混じりの長髪が顔に垂れ下がった。

老いた農民

私は一生を費やしてここで作物を育てた。でも一生とはあまりに短いものだった。

数百、数千、数万、こうした数字は私にとってあまりに大きい……

ホーシェン

……僕は……

……老いた……?

足元は取り散らかっている。

老いた農民

私はこれらの成長を見ることはできない。実るのを見届ける時間はもうない。

私の生命にとって、これはやり遂げられないことなの。

老いた農民が川の堤防に一本の木を植える。手を伸ばして幹をなでると、空気の中に消えた。

一本また一本と樹木が川の堤防に現れる。木には赤い絹が結ばれ、その赤い絹には木札が掛けられている。木札に書かれた文字はぼやけていて、ホーシェンにはよく見えなかった。

風が吹き、林はサラサラとした音を発する。

ホーシェン

あの木札は何だ……?

……どうして地面に生えた作物を留めておくことができない?

落ちた米の粒が静かに地面に横たわっている。

老いた農民

若者、あなたは何を見たかしら?

ホーシェン

なぜ……結果が見えない……?

彼が再び鍬を振り上げる。地面に落ち、枯れ、老いる。

彼は自らの命を土地に伝え、土地は苗に栄養を与えるが、苗にはいかなる反応もない。成長して、枯れ、種を残すことはない。

真っ白な長髪が枯草のように彼の体を覆う。

ホーシェン

……

老いた農民?

こんなことをして、本当に意味があるの?

少年は背を丸め、老いがもたらす苦痛が背中に広がるのを感じている。衰弱が口を開く気力を奪い、彼はぼそぼそと意味の分からない声を発することしかできない。

彼の濁った目が大地に向けられる。その土の上ではたくさんの苗が横たわっている。

老いた農民?

その日が来るのを……見ることができる人はいるの?

ホーシェンは振り返る。

一つの白い人影が彼の背後に立っている。人影の後ろでなびく長髪は古木のように白く、川のように藍みがかっていた。

その人が袖を振ると、苗は一気に成長し、青々と茂った。

ホーシェンの視線をすべて遮るまで。

その人が足を踏み出す。ぼんやりとしている間に辺りは静寂に陥った。

ホーシェン

……


???

――!

――? ――――!!

シャオホー!


ズオ・ラウ

シャオホー? シャオホー! 起きてください!!