OP:LACR-4・戦闘前非伝統的芸術空間
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OP:LA CR-4・戦闘前

非伝統的芸術空間

ディアス

ダメだ。俺がいる限り、芸術祭にレイネルの手下どもを参加させるわけにはいかん。

今は芸術祭を目前に控えた大事な時期なんだぞ。何事も起こらないように、万全を期す必要があるんだ。

テクノ

薬も無事に戻ってきたし、そもそもあの人たちのせいじゃなかったわけじゃん。レイネルだって反対してないみたいだしさ。

ディアス

だが、何か企みがあってこうしているのかもしれんだろう。連中に悪意がないと保証できるのか?

テクノ

……

ディアス

どうしたテクノ。なんで黙ってるんだ?

テクノ

ねえ、おっちゃん。あの人たちがレイネルに雇われてるのは、アタシもわかってるよ? どの新聞でもレイネルと一緒に写真に写ってるからさ。だから擁護するつもりはないけど……

でもあの日、鉱石病の発作で地面に倒れて動けなくなった時、周りには誰もいなくて……アタシは、ついに来る時が来たんだって思ったんだ。

すべてを受け入れかけた瞬間、あの人たちが来て、アタシを助けてくれた。コミュニティまで送ってくれもしたんだよ。

何年も前の火事の時も、アタシは同じような絶望を感じたの。でもあの時はおっちゃんが来て、火の中からアタシを救い出してくれたでしょ。

ディアス

それはまた別の話だろう。俺は消防士だからそれが仕事だった。そこに打算なんてあるわけない。だが奴らはどうなんだ? 何も企んでないと、お前は断言できるのか?

テクノ

おっちゃんがどうしても心配だって言うなら、アタシが誰かに頼んでしっかり見張ってもらうよ。あの人たちには、アタシたちのやることを見せてあげるだけ。それならいいでしょ?

ディアス

どうしてそこまであいつらにこだわるんだ? お前が奴らのことを保証するなんて言ったら……奴らが何かしでかした時には、お前が責められるんだぞ。

テクノ

大丈夫だから。いいでしょ、おっちゃん? 絶対騒ぎを起こさせたりしないって約束するから!

ディアス

はぁ……まったく、お前って奴は。口ゲンカになるとそうやって子供みたいにダダこねて……

テクノ

ねえ、おねがいおねがい! いいでしょ?

ディアス

はぁ……もうやめろ。そうやって目をぱちくりさせてかわい子ぶっても無駄だ。

テクノ

ちぇっ。前はだいぶ効いてたんだけどな……

ディアス

そりゃあな。前はそんなチャラチャラした髪色じゃなかっただろ。服だってそんな真っ黒いやつじゃなかったし、今みたいに歩くたびカチャカチャ鳴ったりしなかった。

はぁ……お前なあ……前みたくさっぱりした感じの格好じゃダメなのか?

テクノ

ふーんだ……

ディアス

まあいい、拗ねて口を尖らせるのはその辺にしとけ。それと、連中のリーダーの女を呼んでこい。少し話がある。

テクノ

ここに連れてくればいいの?

ディアス

……いや、ビーチで話すことにしよう。


ディアス

Elaさん、俺がなぜあんたをここに呼んだか、わかるか?

Ela

一緒に景色を見るため、ってわけじゃないわよね。

ディアス

レイネルのとこで働いてるあんたらにとっちゃ、絶景なんて見慣れたもんだろう。こんなどこにでもあるようなビーチじゃ、お気に召さないんじゃないか。

Ela

そうでもないわ。ゴミだらけの路地の裏に、こんなに綺麗なビーチがあったなんてね。それにこの時間だと、コミュニティより日当たりがずっとよくて、夕陽も綺麗だし。正直、驚いたわ。

ディアス

日当たりはどうしようもないんだ。コミュニティにはやたら背の高い建物が、あちこち林立してるからな。

ゴミに関してはな……元々、ここは路地裏以下のゴミ溜めだったんだよ。俺がここを仕切るようになってから、皆に掃除させて綺麗にしたんだ。

ポイ捨てする奴を見かけたら、それが誰であろうと俺が厳しく教育してやってる。ドッソレスに来た者には、皆等しくビーチでの一時を過ごす機会が与えられるべきだと思ってるからな。

あんたもそうは思わないか?

Ela

そうね。私だってここにゴミを捨てに来たわけじゃないわ。あなたと同じように、こうやって座って、綺麗な景色を眺めたいだけ。

ここは浮ついた観光客もいなければ、カジノの広告がそこら中に貼り付けられてもない。ただ綺麗なビーチが広がってるだけの、いいところなんだもの。

ディアス

ま、静けさの理由は、いつも強い風が吹いてるせいで、誰も開発したがらないからなんだけどな。

Ela

そうみたいね。ここの木、どれも風が当たらない側にしか葉っぱが生えていないもの。

……風に立ち向かいながらすくすくと成長してるなんて、ここに住んでいるのは逞しい命なのね。

ディアス

それを言うなら生えている、だろ。

Ela

……ごめんなさい、こっちの言葉はまだ不勉強で。

ディアス

Elaさん……あんたらが祭りを見てみたいって言うなら、俺たちの方も隠すようなことしない。だがくれぐれもわきまえてくれ。触れてはいけない物に触れないようにな。

テクノはお前達と一緒にいるのが好きなようだし、コミュニティの皆も歓迎している。だから俺がこうして嫌われ役を買って出ることにしたんだ。

言っておくが、テクノの信頼を裏切ったり、あの子を悲しませるようなことがあれば、俺がこの命に代えてでも償わせてやる。

Ela

ずいぶんテクノを気にかけているのね。ただの部下ってわけじゃないの?

ディアス

俺には配偶者も子供もいない。だが、火事からテクノを救い出して以来、あの子を娘みたいに思うようになったのさ。

とりあえず、俺の話はこれだけだ。あとはお前たちが自分の頭で考えて行動してくれ。

Ela

……まったく、心配性のお父さんね。


Doc

(小声)生活に欠かせない工業用の鉱物を感染源とする伝染病か。初期症状は分かりづらく、症状自体も多様、予後は非常に悪く、未だ根本治療する方法は発見されていない、ときている……

(小声)もし、ある日突然、石油が不治の病の感染源になったらと考えると……想像もつかないな。

テキーラ

ええと、ギュスターヴさん、今のって俺に話しかけてました?

Doc

ああ、いや、ただの独り言だ。

テキーラ

そうですか。とりあえず、必要な機器や薬品は一通り持ってきましたよ。まだ何か足りない物はありますか?

Doc

これで十分だと思う。ありがとう。

テキーラ

いえいえ……ここは担当医がいなくなったあと、医療スタッフもほとんどが出ていってしまったので、あなたが手伝ってくださると聞いて皆ほっとしていますよ。

あっ、その鉱石病関係のノートは、その担当医が残していったものだそうです。長年病気と闘いながら続けてくださっていたんですが……

Doc

筆跡から推察するに、忍耐強く注意深い方だったようだな。

テキーラ

……ええ。皆、彼を恋しく思ってます。

そうだ、探し人の件ですが……なるべく早く連絡を付けてもらえるように、トランスポーターに伝えておきました。

俺もそのオペレーターさんたちとは何度かすれ違った程度なので、お探しの人かどうかは正直分かりません。ですが……希望がないよりはあった方がいい、ですよね?

Doc

ああ、もちろん。本当に感謝するよ。

しかし……今、トランスポーターと言ったかな?

テキーラ

はい。

Doc

ここには国際電話はないのか?

テキーラ

国際……電話、ですか?

???

エルネストさん、こんにちは。今日この時間に診察を予約してたんですけど。

テキーラ

ああ、君か。エリー、こちらは新しいお医者さんのギュスターヴ先生だよ。

幼い子供

こんにちはギュスターヴ先生。これ、お母さんが作ったパンです。新しいお医者さんに渡してって。

Doc

おお、ありがとう。代わりにお礼を伝えておいてくれるかな。ところで、これは何のパンだい?

幼い子供

クロワッサンです。

Doc

ふむ……正しくはCroissantだよ、坊や。この機会に覚えておくといい。

幼い子供

えー、変ですよ。誰もそんな風に発音しないし……

Doc

いやいや、これが最も標準的な読み方なんだ。私が言うんだから間違いない。

テキーラ

ええと、標準的な発音と言う意味なら、「クロワッサン」で合ってると思いますけど……

Doc

そんなはずは……

幼い子供

先生、大丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ。

Doc

こほん……ああ、大丈夫だ。それで、最近の調子はどうかな?


テクノ

ちょっと、そこの二人! その腕はもうちょい高く上げて! じゃないとうまく肩と繋げらんないでしょ!

作業員

はいよ!

Iana

こんなにも大きな人形をデュエットさせるなんて……大胆なことを考えるものね。

テクノ

設計から完成まで半年以上かかったけど、こうして見ると、皆の苦労も無駄じゃなかったって感じがするよ。

Iana

言い出しっぺはあなたなの?

テクノ

え? ううん、実はおっちゃんが考えたことなんだ。

Iana

えっ、ディアスさんが? あの人がこんなアイデアを……

テクノ

火事が起きた年は連日乾燥続きでさ。ダンスホールから火が上がった後、凄い勢いで燃え広がっちゃって、大勢が中に閉じ込められたんだ。

そんな中、おっちゃんが上からの命令を無視してまで助けに来てくれて。でも、そこまでして必死に頑張ってくれたのに、結局全員は助け出せなくて……

あの事件は皆のトラウマになっちゃった。だから誰も話題にしたがらないんだ。そんな心の傷を抱えたままじゃ、前みたいに夜明けまで踊り明かすことなんてできないでしょ。

それが最近は、みんな少しずつトラウマから立ち直ってきて、踊りたいって気持ちがまた戻ってきてて。

ただ、おっちゃんはそうじゃないみたいなんだ……救えなかった人たちのことを、ずっと後ろめたく思ってるんだろうね。

Iana

だけど、彼はそれでも、これを率先して計画したのよね……

テクノ

うん。おっちゃんは皆と踊れなくたって、皆をダンスに誘う人になれればいいんだって。

Iana

そう……ねえテクノ、聞いてくれる?

私、初めてここへ来た時はすごく驚いたの。何しろ区画整備は滅茶苦茶だし、違法建築だらけで、人が大勢住んでるでしょ。だから、消防面に大きな問題があるに違いないと思っていたのよ。

でも実際は、コミュニティの至る所に消防設備が適切に配置されているし、どの建物にも迅速に避難するための緊急用通路や階段が設置されていた。

だから、このコミュニティはきっと、本当にすごい人が管理してるんだろうなって思ったの。

やっぱり、私の目に狂いはなかったみたいね。

テクノ

そりゃあね……って、あれ?

Iana

どうかしたのかしら? あら、あの人形の腕……動かなくなってるみたい。


現場監督

何が起きたんだ?

作業員

まずいな。動かしてる途中で、胴体のロープと腕が絡まっちまったらしい。

現場監督

一旦取り外して、位置を調整し直せないか?

作業員

無理だ、ぴくりとも動かねえ……

現場監督

どこで絡まってる? 誰か向かわせて解いてもらおう。

作業員

ちょっと難しいんじゃないか。絡まってるのは三階と四階の中間あたりで、窓からかなり遠いんだ。

現場監督

命綱を使って吊り下げるのはどうだ?

作業員

そうだな……やってみよう。


Iana

たった一人を吊り下げて、手作業でなんとかする、って……それも八階から? 人形の頭よりもずっと高いわよね。ちょっと危険すぎるんじゃない?

テクノ

でも、あそこからやるしかないんだよ……下の階にはロープを固定できるような場所がないからね。

Iana

機械を遠隔操作して対処できないかと思ったけど……うーん、建物の外壁には機械を上げるための取っ掛かりもなさそうね……

テクノ

あの人形はハンドメイドだから、内部の構造がかなり複雑なんだよ……だから、詳しい人じゃないと弄れないんだ。

気を付けてよ……

Iana

もうちょっと……あと少しだけ左に行けば――

テクノ

やばい! 落ちちゃった――


作業員

ふぅ……よかった、命綱のおかげで何ともなさそうだ。

現場監督

もう一度試せるか?

作業員

無理だろうな……あいつ、ビビって足がガクガク震えちまってる。

震える声

む、無理です……ホントに無理です……お、俺、高いところが苦手で……

現場監督

しかしな、こいつの構造に一番詳しいのはお前なんだぞ……誰かに代わりにやらせたところで、もっと難しくなるだけだろ……

震える声

でも……ホントに怖すぎて……さっき落ちた時なんて、もう死んだかと……

て、テクノに頼むのはどうですか? こ、こいつをデザインしたのはあいつですし……


作業員

テクノ! テクノ!

テクノ

あいつ、無事だった?

作業員

ああ、何とかな。けどビビっちまって動けないって言うから、お前にやってもらえないかと思って。

テクノ

けど、アタシは内部の構造なんて全然分かんないよ?

作業員

あれはお前がデザインしたんだろ?

テクノ

そうだけど、アタシがやったのは外観のほうだけ。技術的にどう実現したかについては、まるっきり専門外だし……

作業員

じゃ、じゃあどうすりゃいいんだよ?

Ela

テクノ。私とFuzeにやらせてもらえない? 私たち、工学と機械に関しては、ある程度知識があるの。

テクノ

あっ、Ela。おっちゃんとの話は済んだの?

Ela

ええ。それで、どう? 私たちにやらせてもらえる?

テクノ

けど、おっちゃんが……

Iana

私が行ってもいいわよ。みんな工学の知識はそこそこあるから、役に立てるはず。

テクノ

その……えっと……

作業員

あんた、高いのは平気か? 問題の箇所は八階にあってな……技術に明るいだけじゃダメなんだ。

Ela

前に二十階建ての高層ビルから降下したこともあるし、それくらいなら朝飯前よ。

テクノ

い、いや……Elaたちが行く必要はないよ。アタシが行くから。

Ela

テクノ?

テクノ

ごめんね、信用してないわけじゃないんだけどさ。おっちゃんと約束したんだ。何があっても、Elaたちにはただ見ててもらうだけにするって。

Ela

でも、あなただけでできるの?

テクノ

ベストは尽くすよ。

Iana

はぁ……

Ela

マイヤー、ちょっと手を貸してくれる?

Iana

もちろん。何をすればいい?

Ela

あそこに何人か、こっちを見張ってる人たちがいるの。彼らが私を追いかけてきたら、少しの間足止めしてもらえるかしら。私はFuzeを探してくるから。

Iana

ああ、ディアスさんの手配したお目付け役ね。

できるにはできるけど、Fuzeを探した後はどうするの?

Ela

上に向かうわ。テクノひとりじゃ、あの大きいのを何とかするのは難しいでしょうから。

Iana

ちょっと! Ela!

真面目そうな見張り役

クソッ、どこへ行くつもりだ?

Iana

はぁ。

ねえそこのあなた、少し手伝ってほしいことがあるんだけど!

真面目そうな見張り役

ん?

うっ……

Iana

こんなところで寝ちゃダメじゃない。


レイネル

なんだ、ミウォシュ?

ミウォシュ

イベリアの修復師が来ているんだが、すぐに会うか?

レイネル

もちろん。案内してやれ。

修復師

はじめまして、レイネルさん。今回ご依頼いただいた、修理が必要な物というのはどちらでしょうか?

レイネル

そこのテーブルの上のオルゴールだ。

修復師

まあ、これは……十五年前に界隈を震撼させた傑作で、著名なデザイナー・アリージアの手により制作されたという……本当に、美しいですね。

心地よい温かさと静けさを感じます……

この蓋に彫られた女性の顔など、何とも穏やかで綺麗ですね。慈愛に満ちた瞳と、口元からかすかにうかがえるアンニュイさが、筆舌に尽くしがたい逸品です。

レイネル

解説はその辺りで結構だ。僕はここ数日、四六時中これと一緒に過ごしていたおかげで、細部まで知り尽くしているからね。

修復師

でしたら早速所見を述べますと……この手のシリンダー式オルゴールの要であるシリンダーが激しく損傷しています。ですので、復元できるかは私にも正直わからない状態です。

レイネル

僕が壊してしまったからね。修復はしなくていいんだ。

それよりも、二重底の中に入っている楽譜を基にして、新しいシリンダーを作ってくれないか。

修復師

二重底の……?

男は卓上のオルゴールを持ち上げ、逆さまにすると、ぴったりと閉じられた底板を爪を引っかけて開いた。すると中からは、折りたたまれたメモが出てきた。

紙の黄ばみ具合から察するに、かなり長い間中にしまわれていたようだ。レイネルは慎重な手つきでそれを開くと、そっとテーブルの上に置いた。

それは丁寧に書かれた、手書きの楽譜だった。

修復師

こんなものがあるなんて、どうやって知ったのですか?

レイネル

ああ、それは、僕の母がこれを隠すのを隣で見ていたからさ。


Fuze

本当にここから八階まで上って、そこから降下する気か?

Ela

もちろん。それが最短経路だもの。

Fuze

危険な道でもあるがな。

Ela

私たちの命綱が信用できないっていうの?

Fuze

いいや。あんたのことは信用してるが、ここには俺たちを歓迎しない連中がいるだろう。

誰かから敵意を持たれている状態でこういう目立つ行動を取ると、住民全体から非難の的にされかねないぞ。

Ela

珍しく饒舌じゃない。

Fuze

あんたも珍しく、合理的じゃない真似をしてるだろう。

Ela

私は、彼らの想いを無駄にしたくないだけ。

Fuze

あのエキセントリックなアーティストたちを、そこまで気にかける理由でもあるのか?

Ela

Fuzeはエキセントリックって言葉、嫌い? 不可能に挑戦してそれを可能にしてきた人物を言い表す常套句なんだけど。

Fuze

それを言うなら、俺らが今までこなしてきた作戦も全部、エキセントリックな創作活動ってことになるが。

Ela

実際その通りでしょ?

Fuze

……

降下後はすぐに見つかるだろうし、行動は迅速にな。

とはいえ、焦ることはない。時間はたっぷり稼いでやる。

Ela

……ありがとう。