テラ飯DT-1・戦闘前オリジムシの田舎風
フォントファミリー

フォントサイズ

⌘/Ctrl+
拡大
⌘/Ctrl−
縮小

地図

名前

テラ飯 DT-1・戦闘前

オリジムシの田舎風

ファリン

兄さん……逃げて!


炎竜(レッドドラゴン)に食われた瞬間、妹のファリンは俺たちを魔法で迷宮の外へと逃がしてくれた。

しかしその結果、荷物や金をすべて迷宮の奥深くに置き去りにしてしまった俺たちは、ほぼ無一文で再び迷宮に入り、ファリンが炎竜に消化される前に救い出さねばならなくなった。

困ったのは道中の食事だ。そこで食糧は、迷宮内で調達することにした。

迷宮を進む道のりは困難も多かったが、新しい仲間も増え、出くわした問題を解決しながら進むうち、この迷宮についての新たな理解も得ることができた。

しかし、次第に深くへと足を踏み入れ、すべてが順調に進んでいると思ったその時――俺たちはまたもや、新たな困難に出くわしてしまったようだ……


ライオス

――ッ、ファリン!

……なんだ、夢か……

マルシル

ライオス、やっと目が覚めたんだ!

気分はどう? めまいはしない?

ライオス

めまいはしないが……なんだか少し腹が減ったな。

ここは……?


ライオス

空、太陽、森……それに……

マルシル

迷宮の外みたいに見えるけど、私もセンシもチルチャックも、こんな場所見たことないよねって話してたの。

それに……ほら。何度も試してるんだけど、精霊がちっとも反応しなくて。

ライオス

珍しいこともあるもんだな……センシ? 何をしてるんだ?

センシ

ここの土を調べていた。

見てみろ。この土は湿り気を帯びていて色が濃く、手の平でこすって温めれば臭いがする。これは腐植質を多く含んでいることの表れであり……

マルシル

つまり、どういうこと?

センシ

つまりは、栽培に適した土壌だ! ゴーレムの身体の土に酷似している!

マルシル

そんなことが聞きたかったわけじゃないんだけど!

チルチャック

おいマルシル、鳥を脅かすなっての! 危うくぶつかるとこだっただろ! ったく……

良い知らせと悪い知らせがある。周囲を一通り見渡してみたが、魔物の姿がまるで見えなかった。その点では、この辺りはかなり安全そうだ。

ライオス

なるほど。それで、良い知らせっていうのは?

マルシル

魔物がいないのは良い知らせのほうでしょ!

じゃあ、悪い知らせのほうは?

チルチャック

この空間はかなり広そうだ。しかも、周りの環境は俺の知ってるようなものとはまるで違ってる。

上から見た限り、ここは森の端っこでしかないみたいだな。

センシ

地下一階から五階までの間で、こんな場所は見たことがないし、こういった場所を発見したという話も聞いたことがない。

マルシル

……ということは……

ライオス

ということは……?

ライオスパーティー

まさか、また迷宮の形が変わった……!?

センシ

空を飛んでいる鳥はどれも見たことのない種類ばかりだ。迷宮の中のどこかというよりは、別の空間のようにも思えるな。

マルシル

もしかすると……生ける絵画の中みたいな場所だったりして。まったく別の空間に連れてこられたって可能性は?

ライオス

ってことは、未知の魔物がいるかもしれないな。

食べられる魔物ならいいんだが。

マルシル

なにバカなこと言ってんの!

私たちの目標は一刻も早くファリンを助けに行くことでしょ! 今はこんな知らない場所で時間を無駄にしてられないよ!

それと、大事なことだから伝えておくけど――さっきから何度も試してるのに、ここでは簡単な魔術しか使えないみたい。

ライオス

……それは確かに深刻な問題だな。すると……

センシ

加えて言うとすれば……

ライオス

ん?

センシ

この森と土地は奇妙だ。まるで植物を成長させるために、誰かが開墾したように見える。これはわしもよく知る方法だ。

マルシル

人里が近くにあるかもしれないってこと?

チルチャック

あー、そういうことなら……実はさっき森の外に妙な小屋を見つけたんだ。中に誰かいるかもしれないし、関係あるかもな。

とりあえずそこを目指してみるか? 何かわかるかも。

マルシル

話が通じる相手だといいけど。

ライオス

妙な小屋……?

わかった、とにかく行ってみよう。

マルシル

賛成。


マルシル

こういう知らない場所では、いつもより慎重に動かないと。

この小屋だって何がいるかわからないし、万が一それが狂暴な新種の亜人だったりしたら……

チルチャック

まずは俺が……っておい!


センシ

この小屋、そう大きくはないが、多くの柵で囲まれているな。柵の杭は頑丈そうだ。深く打ち込まれている。

とはいえ、それほど高さはないし、トールマンであれば簡単に乗り越えられるだろう。となれば、人間の侵入を防ぐためではなく、中にいる生き物が地面を掘って逃げるのを防ぐための物かもしれん。

地面の至る所に黒い石が落ちているが、これは何かの目印か?

チルチャック

ああもう、勝手に動くなよ! 罠があったらどうする!

ライオス

(小声)ケン助?

(ケン助は近くの魔物に反応することがあるが、まさか……)

マルシル

え?

チルチャック

だから無暗に動くなって言ってんだよ!

マルシル

――ぎゃあああ!

う、動いた! 石の下に、な、なんか柔らかいものがいる!

うわっ!

ライオス

こ、これは石を甲殻にした昆虫型の魔物か? この硬い殻は防御手段にも、攻撃手段にもなっているのか……!

マルシル

感心してる場合か!

ライオス

この硬い殻が一番柔らかい腹部を守っているようだ。通常なら神経が集中しているだろう首も、この殻で隙間なく覆われている……

俺たちの武器では大した損傷は与えられないな。

マルシル、魔術を使ってくれ!

センシ

強い魔法は使うでないぞ! ここの生態系を壊してはならん!

マルシル

そもそも今は強い魔法なんて使えないんだってば!

ふぅ、これなら歩き茸(きのこ)レベルね。

ライオス

やっぱり見たことのない魔物だ! マルシル、ケガはないか? 攻撃されてみてどうだった?

マルシル

だいじょーぶ。お心遣い、どーもありがとー。

センシ

うーむ……硬いな。鉱物のような殻で覆われている……

ライオス

じゃ、じゃあほかの部分は?

センシ

(斧でオリジムシをひっくり返す)

マルシル&チルチャック

うわっ!

ライオス

どれどれ……

センシ

あまり近付きすぎるな!

こうした未知の生物には、無暗に直接触れてはならん。

地面を這って生活しているものは、その多くが腐植質を食して生きている。ゆえに通常は多くの細菌や寄生虫を宿しているのだ。直接触れれば感染する可能性もある。

ライオス

確かにそうだな……

(ん? ……ケン助がまだ反応しているな。虫はもう倒したはずだが……まさか他にもなにかいるのか?)

……まずい! この辺りの石、すべて「生きている」ぞ!

マルシル

だったら、一気に片づけるしかなさそうね!

はぁ、はぁ……これでどう?

センシ

危ない!

色々な種類がいるようだ! 液体を吐くものもいた! 気をつけろ……触れれば溶けるぞ!

ライオス

そ、そんなのまでいるとは……! すごいな!

マルシル

だから感心してる場合じゃないんだって!

チルチャック

こりゃ俺には手に負えねえ。お前ら、任せたぞ!

マルシル

ひとまず、あの小屋で態勢を整え……

……えっ……?

???

……

マルシル

キャァァァァァァァー!?

チルチャック

妙な鎧を着込んでるが、オークか……!? おいセンシ、あいつ知り合いだったりしないよな!?

センシ

ふむ。わしの知る限り、あそこまで重装備のオークは見たこともないが……あの小屋の主人だろう。道でも尋ねてみるか?

マルシル

尋ねる!? と、とりあえず逃げようよ!

チルチャック

おい、いい加減下ろしてくれ!

マルシル

あ、あいつまだ追いかけてきてない!?

ライオス

あれは本当にオークなのか?

センシ

本当に話を聞きにいかんでいいのか?

マルシル

あの変な大きい刃物見た!? 友好的な人があんなもの振り回したりしないって!

チルチャック

お前の爆発魔法に腹を立ててたのかもな! 試しに謝ってみたらどうだ?

マルシル

だって、あの状況で魔術を使わずに虫を追い払えたと思う!?

ライオス

うーん、やはりここは来たことのない場所らしいな! 見たこともないものにたくさん出会えるぞ!

チルチャック

それとセンシ! 自分で走れるから下ろせっての! おいこら――

ライオス

本には書いていなかったが、素晴らしいな……

チルチャック

ライオス!!!

マルシル

いやあああああああ!!