テラ飯DT-5・戦闘前饗宴の図
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  • 炎、婆山町、勾呉
ウルサス極東炎カジミエーシュリターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトン
ウルサス極東炎リターニアカズデルシラクーザレム・ビリトン

名前

テラ飯 DT-5・戦闘前

饗宴の図

チルチャック

5、4、3、2、1……

よし! 鐘が鳴った、始めるぞ!

墨魎

ガァッ!

チルチャック

マルシル、左だ!

マルシル

えいっ!

チルチャック

ライオス、前だ! それと右も!

ライオス

ふっ! はぁ!

チルチャック

センシ、後ろ! 左と――前にも!

センシ

ほっ! せいッ――

チルチャック

前、後ろ、前、右、左、左、後ろ!

マルシル

はああっ――!

チルチャック

前、後ろ、左、前、右、左、後ろ!

マルシル

やああっ――!


マルシル

ふぅ、ふぅ……この辺の墨魎(ぼくりょう)は全部片付いたかな。

レイ

お疲れ様でした。

マルシル

全然! 町の人は私たちを快く受け入れてくれたんだから、トラブル解決のお手伝いくらいはしないとね。

センシ

それでは、わしはまだ畑仕事を手伝わねばならないのでな。先に行くぞ。

チルチャック

センシの奴、すっかり町に馴染んでるな。

レイ

チルチャックさんだって似たようなものでしょう。墨魎を片付け終えたら飲みに来い、ってチャンおじさんから伝言がありましたよ。

チルチャック

向こうさんも、さっさと負けを認めりゃいいのにな。大して飲めないくせに何度も挑んできやがって……

マルシル

レイさん、今日お茶しにお邪魔してもいい?

レイ

マルシルちゃんに時間があるのなら、もちろん。

今日はあなたの冒険譚を話してもらう番でしたね。とっても楽しみです。

でも……確か、最初に来た時は、ライオスさんの妹さんを助けに行かないとって言ってましたよね。

まだ出発しなくていいんですか?

マルシル

……うん、ファリンを助けに行かなきゃいけないのは、事実なんだけど。

でも――

急いだところで、この場所を出る方法なんて見つからないし。

それに、ここはとっても居心地がいいから……

その時が来たらまた考えよう。ね、ライオス。

ライオス

ん? 何の話だ?

マルシル

も~、また私の話をちゃんと聞いてないんだから!

レイ

……ふふっ、ライオスさんの墨魎への情熱は、今ではこの町でも有名ですからね。

ライオス

それにしても、この墨魎というスライムは本当に興味深い。

個体ごとに決まった形を持っていて、頭と身体、手足など、パーツの区別がつけられる。攻撃方法も相手の頭部を包み込むようなものではなく、獣が人を襲う方式に近い。しかも吠えることまである!

一番特殊なのは、魔物であれば殺したら死体が残るのに対し、墨魎は黒い水たまり以外何も残さないという点だ。

マルシル

……

ライオス

昨日、墨魎の弱点を町の人たちに教えたんだが、みんなあまり興味がなさそうだった。

マルシル

こんなのに夢中になるのはライオスくらいだからね。

ライオス

……そうだろうか?

しかし、チルチャックにもあしらえる程度の魔物だってのに、この町の人々は一向に対処できない。まるでどうすればいいのかわからない様子なんだよな。

墨魎

ガガァ!

ライオス

墨魎たちは、人間の言葉を理解しているようにすら感じる……

つくづく不思議だ。センシも言ってたけど、スライムと違って身体の器官ははっきり存在してるし……

マルシル

はいはい、わかったから。

――あれ、もしかして取り逃しちゃってた?

墨魎

ガアッ――

ライオス

ん? あの顔にほくろのついた個体……見覚えがあるな。

そうだ、数日前に間違いなく倒したはずだ。なぜまた現れた?

……どうなってるんだ? まさか、蘇生している? ……追いかけてみよう!

マルシル

夕飯までには戻って来てよ!

……はぁ、全然話聞いてないんだから。

ごめんね。ライオスってああいう人なの。

レイ

大丈夫ですよ。

それよりも……マルシルちゃんは、婆山町に来てどれだけ経ったか覚えていますか?

マルシル

もちろん……あれ?

私たち、いつからここにいるんだっけ?


ライオス

ま、待った……さすがに多すぎないか?

墨魎たち

ガァ……

ライオス

ここに来てから、随分時間が経っている。毎日あれだけ墨魎を倒しているのに、まだこんなに残っているのか?

そのうえ、これほどの数が一箇所に集まっているというのに、仲間内で争うことはないらしい……本来は穏やかに暮らしている生物なのだろうか。

墨魎たち

……

ライオス

しかし、幼体らしいものは見当たらないな……

見ている限り、雌雄の区別もなさそうだ。みな成体だが、老いた個体はいないらしい。これほどの魔物が棲息している割には不自然だ……

おっと、さっきのほくろのついた奴はどこだ……?

……まずい、見つかった!

ここで騒がれるわけにはいかないーー仲間を呼ばれてしまったら、一人では対処しきれないぞ!

ダメだ、気付かれるーー

墨魎

――

ライオス

そうだ、この果物で口を塞いでやる!

墨魎

ガァ……ウゥ? ガブガブッ……

ガブガブガブ……

ガァ!

ライオス

おや。まさか、もっと食べたいのか?

墨魎

ガガァ。

ライオス

よし。大人しくしてろよ。

ほら、これは間食用に取っておいた分だ……欲しいか? ついてこい、一緒に壁の後ろまで行こう……

……ずいぶん大人しいな。一体どういうことだ……?

墨魎

(壁の後ろに向かってこそこそと這い進む)

(地面に落とされたアンズに狙いを定める)

(アンズをくわえて美味しそうに食べる)

ライオス

今しがたまで町を襲っていたというのに、果物数個の前ではこれほど従順だ。

墨魎

ガブガブ……

(ライオスのポケットに咬みつく)

ライオス

……ん? 何をしているんだ?

町を執拗に攻撃してくる割にはいまいち目的がわからないし、負けて逃げ出したかと思えば、こんな所に隠れてアンズを食べている……

うーん、食べ物を取り合ったりはするようだが、食料目当てなら町より山の方が豊富なはず。大体、果物を少し得るためだけに、これほど頻繁に町を襲う必要があるだろうか?

町の人々が奴らの幼体を捕らえているわけでも、縄張りを侵したわけでもなさそうだが、墨魎たちの敵意はどこから来るんだ……?

おや、あいつはさっきのほくろの奴じゃないか。

それ!

ライオスがアンズを投げれば、ぽんと音が鳴って、ほくろのついた墨魎の頭に直撃した。

その墨魎は少しよろめいたものの、すぐに体勢を立て直し、二本の短い前足で頭を押さえた。

そうしてすぐに、アンズの甘い香りを嗅ぎ取ったようだ。

墨魎

ガウッ!

ライオス

お前もアンズがお目当てか?

それっ。

墨魎

ガウ! ガウッ!

ガブガブ……

ライオス

どれどれ、良く見せてくれ……ほくろがついていて、頭部は少し大きく、尻尾は細く二股に分かれている……

確かに以前見た個体だ! あの時も何かおかしいと思ったんだ。腹が膨れるまで食べて動けなくなっている様子は、どう考えても町を襲いに来たようには見えなかったからな。

墨魎

ガウ……

ライオス

ということは、本当に生き返ったのか?

つまり、君たちはずっとここで、死んで生き返ってを繰り返しながら暮らしている、と?

そう考えると、迷宮での俺たちの生活にも似たところがあるな。

墨魎

ガウ?

ライオス

おかしいな。こういう習性を持っているなら、君たちは何のために町を襲っているんだ……?

みんなアンズが食べたいのか?

よし、それならまだ少し残っているから……