落日の向こうへGO-4・戦闘前アルコールと偽薬
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ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

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落日の向こうへ GO-4・戦闘前

アルコールと偽薬

パブ「テンパイント」

1098年12月21日 p.m. 5:05

泥酔した兵士

ハハッ、議長万々歳だ!

ロンディニウムの床を一つ一つ引っぺがして、まだ隠れてる魔族のクズどもを一掃してやらねぇとな……ゴホ、ゴホゴホ……

落ちぶれた市民

もうすぐ鉱石病の薬が大量に運び込まれるってのも聞いたぞ。

俺の幼馴染が物資調達事務室で働いてて、そいつなら俺のために薬を手に入れてくれるかもしれない。その時はお前の分もなんとかしてやるよ、ハハ……お祝いに乾杯だ――ゲプ――

なあ、お前公爵直属部隊に入ったばかりの頃は鼻高々だったよな。そのうち今度は模範軍に入ってよ、戦争が終わったら、結局俺たちはまたおんなじだ。

なーんにもなくなっちまった感染者二人――

泥酔した兵士

何が感染者だ!?

俺は戦えるぞ! お前たちみたいな病人とは違う……死ぬのだって怖くない! オエェ――

その場の多くの人が顔を上げ、前後不覚になっている兵士を見つめる。

一枚のコインが彼の目の前を通り過ぎ、カウンターの上に投げられた。やつれた顔の人物が彼の体を支えた。

シアラー少尉

……彼は相当酔っている。家まで送ってやってくれ。お代は私が代わりに払っておく。

どうか彼らの話を気に留めないでいただきたい。

キャサリン

こいつは事実を述べただけだよ、少尉。

シアラー少尉

……私も退役しました。ですがお好きなように呼んでください。

キャサリン

そうかい。あんたが今しがた尋ねた件だけどね……あたしが繋がりを持つのがあの指名手配された奴にせよレユニオンにせよ、それとも他の誰かにせよ、それはどうでもいいんだ。

工員たちは、故郷のためにもう少し力を尽くしたいと思っている。けどあいつらが感染悪化のリスクにさらされるのを放ってはおけないんでね。

時期が特殊なら、方法もそれ相応に。あたしたちはずっとそうやってきたのさ。

シアラー少尉

……

善意からの助言にすぎません。出所不明の薬が引き起こす悪影響はこの目で見ましたから。数日前に、ある兵士が酒を飲んでいる時、突然倒れて意識を失ったのです。

何かの巡り合わせでしょうね、戦時中私はちょうど彼に応急手術をしたことがありました。

あの時、彼は生き延びました。ですがその日……彼に人生最後の検査をしてやることしかできませんでした。

キャサリン

あんたは情け深いね。

うちの工場エリアの薬売りなんて、戦争してた頃に一体何人が毒をもらいに自分を訪ねに来たか、これっぽっちも覚えちゃいないって言っていたよ。

シアラー少尉

いいえ、私もわざわざ応急手当てをした負傷者を一人一人覚えるわけではありません。

軍医として、もっとひどい現場に何度も直面してきました。ですが少なくとも、医療テントから生きて出た人々には再び会うことができます。

あなたもよくお酒を飲みに来られるのなら、人々の中から会ったことのある人を見つけることはできるでしょう。たとえ一度きりの面識であっても。

キャサリン

ロドスから来た医者を何人か知ってる。あんたには彼らの助けが必要かもね。

シアラー少尉

お忘れですか、私自身も医者なのですよ……「模範軍」についてどう思われていますか?

キャサリン

老いぼれ工員に、無理やり昔のことを思い出させるんじゃないよ。

あの歴史は、あたしにとっても随分と昔のことさ。覚えているのは数十年前に子供たちが誇らしげに語っている時、一番特徴的だった名前はどっかの公爵の軍隊じゃなくて、模範軍だったってことさ。

すごい部隊だったよ、大勢が犠牲になった。

シアラー少尉

いえ、私が言っているのは――

キャサリン

あんたが聞きたい答えが何かは分かってるよ。だけどね、申し訳ないが、あたしに言えることはこれだけなんだ。

シアラー少尉

……現在の、このいわゆる「模範軍」は、ほとんどが軍人の資質を持っていません。歴史上の軍隊と同列に論じられるべきではない。

キャサリン

大公爵たちがサルカズに勝った時、あたしたち都市に閉じ込められてた人間がすぐに祝いのムードになることなんざなかったよ。

城壁に火の手が上がり、武器も持ってない市民とサルカズの兵士が一緒に閉じ込められた。

サルカズに勝ったところで、大公爵たちは二ヶ月ばかり話し合ってからロンディニウムに入ってくるつもりかもしれない。これからどうなるか、確かなことを言える奴は誰もいなかった。

幸い、最終的に城壁を越えてきたのは模範軍だった。少なくともここじゃ、あんたたちの貢献をなかったことにできる奴なんていやしない。

キャサリンはしばらく言葉を止めた。士官の手が震え始めているのを視界の端に捉えたからだ。

彼は腰のポーチを長い間探った。ついにはため息をつき、グラスを掴んで酒を一口あおった。

シアラー少尉

ですが、今の我々は大部分がどこかしらのバーの常連でしかないんです。

ありがたいことに、ここのマスターは心優しく、酔っ払いを家に追い返すことはありません。

何せ、家に帰るために戦わざるを得なかった者たちのほとんどは、帰る家を失ったのです。

……得がたき勝利に乾杯。

シアラーはグラスを掲げ、キャサリンに乾杯を促すが、彼女は応じなかった。

キャサリン

あんたは飲み仲間としちゃ不合格な相手を連れてきちまったみたいだね。興醒めさせたら悪いが、人と約束してるんだ。あたしは行かないとね。

あんたもう酔ってるよ、軍医。酒はまた後日に取っておきな。

模範軍に関する噂は大体知ってるよ。どうしてあの議長に直接話しに行かないんだい?

キャサリンは立ち上がって混雑した客たちの間を抜けると、カウンターの向こうのマスターに会釈をする。そのまま、荷物で塞がれた隅のドアの奥に消えた。

シアラー少尉

……私が彼女を訪ねていないとでも?

彼はキャサリンが消えた場所を見やる。そこは、この都市の忘れ去られた場所に通じている。

都市防衛軍巡回隊が何度も入って捜索したが、毎度埃塗れになるだけで、何も見つからなかった。

シアラー少尉

フッ……私には関係ない。

彼は手招きをして、次の酒を注文した。


ヴィーナ

シアラー少尉から手紙が二通届いた。トランスポーターを呼び止めて尋ねたところ、二通ともこの地下にあるバーから出されていた。

モーガン

でもデルフィーンちゃんが、ウィンダミア公爵の軍艦から連れてきた兵士で、まだ生きてる人の面倒はみんな彼女が見てるって言ってたよ。

本当にデルフィーンちゃんが言ってた例の通りを先に見に行かなくていいの?

ヴィーナ

……

必要ない。入るとしよう。


あの日、吾輩はヴィーナの後について、ドアを開けてもらった。だって吾輩はつい癖で蹴り開けてしまうから。

グラスゴーがオークタリッグ区に場を荒らしに行くことは決してない。決して。

今回はただ模範軍の仲間と酒を飲むだけだとヴィーナは言っていた。でも実際には、きっとたくさんのことを考えているのだと分かっていた。

彼女はいくつかの工場の閉鎖を手配し、次の冬に備えて備蓄した精錬源石をどのように分配するか計画を立てた。

でもヴィーナの備忘録の最後には、きっと一つの単語――「模範軍」――吾輩たちの旧友があるんだ。

興奮した兵士

約束だぞ。俺の質問に正直に答えろよ。

モーガン

もっちろーん――腕相撲で吾輩に勝てたらだけどね~。

興奮した兵士

うおっ――

モーガン

――よゆー。

興奮した兵士

チッ、あの程度の怪我どうってことないと思ってたんだがな……

モーガン

でもあんたが何を聞きたいかは想像がつくよ~。

「ヴィーナは模範軍を解散させるのか?」……でしょ?

……正直な話、吾輩にも分かんないよ。最近じゃ考えてることがどんどん複雑になってるし、もう全部理解するのが面倒になっちゃったしね。

興奮した兵士

俺は解散なんてしないと思うがな。わざわざ俺たちと一緒に戦った時の服で会いに来たんだぜ。これは本人の態度を表してるってことだろ?

モーガン

は? あれは単にあんまり人目を引きたくないからだって言ってたけど?

興奮した兵士

お前は分かってねぇな! 色んな本にそう書いてあるんだよ!


シアラー少尉

このバーが特殊というわけではない。

戦後、傷や痛みに煩わされている人々には、模範軍メンバーがかなり多くいる。

薬が不足している現状を考えると、アルコールはそうした者たちにとって手に入りやすい慰めだ……質がどうであれな。

最近では情報を得に来る者もいる。しかしそれよりも多いのは一時的に行き場を失い、そのため朝から晩までここに入り浸っているしかない連中だ。

ヴィーナ

皆のために納得のいく説明が欲しい……それが私に手紙を書いた理由か?

シアラー少尉

違う……どうやら私の手紙を読んでいないようだ。

ヴィーナ

……

すまない。ただやることがあまりに多く――

シアラー少尉

以前の君は、もっと率直な話し方をしていた。

大多数の模範軍メンバーが戦争で受けた苦しみを引きずっており、退役軍人の待遇問題にもっと気を払ってほしいと君に訴えている――もし本気でそう思っているなら大間違いだ。

彼らは次の指令を待っているんだ――君からの指令を

ヴィーナ

……?

シアラー少尉

この二ヶ月、私が耳にしたのは、議長となったシージはより高みに立ち、以前よりも指揮に通じていると固く信じる者たちの声だ。

そして、彼らが最も頻繁に口にする話題は、自分たちの次の戦場はどこかというものだ。

ヴィーナ

より良い暮らしを送れるようにするのではなく、皆に血を流せと強い、犠牲を払わせ続けるのか? ……あってはならない。

シアラー少尉

君は、自分がこうした者たちの指導者だと本気で思ったことはないな。自らと平等な戦士や友人と見なしている。これは私が君を尊敬する部分だ……だが君が失格だと言える部分でもある。

直接的な物言いを許してほしい。だが多くの者にとって模範軍に身を置き、勝利の栄光を享受したあの瞬間が、最も素晴らしいひと時だったのだ。この先、あれを凌駕することはもう起こりえない――

彼はグラスを必死に握り締め、勢いよくあおろうとする。

しかしグラスはそのまま彼の手から滑り、地面に落ちた。

シアラー少尉

……

誰もが彼の方を向いた。シアラー少尉の目尻は赤く、絶えず深呼吸をして、力の限り体を抑えつけている……

彼がコインをカウンターに置くと、そばで慣れた手つきで掃除をするマスターの方を見ることなく手招きをした。

シアラー少尉

いつものをもう一杯。

今どこまで話したか?

ヴィーナ

……

吾輩はシアラー少尉とそこまで気が合うわけではない。長い間、自分の彼に対するイメージをヴィーナに殴られてふらふらだった姿にとどめようとしていた。

少し頑固だけど、まあ冷静で頼れる軍医。

外科医としての両手は、戦場で多くの人を死から引き戻した。

モーガン

あんた……どうして――

シアラー少尉

以前怪我した時の後遺症だ。

我々は激戦を戦い抜いてようやく帰ってきたんだ。そうだろう?


でも彼が負傷した箇所は絶対に手ではない、吾輩ははっきりと覚えている。

それに何にもない感じで座っていたから、デルフィーンちゃんが提供する支援で順調に回復したものだと思っていた。

だけど彼の言う通り、ロンディニウムに帰るために、吾輩たちは確かに激戦を潜り抜けてきた。

城壁の下

1098年9月25日 a.m. 3:03

ヴィーナ

都市内の状況に関する新たな情報はあるか?

デルフィーン

詳細までは分かりませんが。

少なくとも昨日までは、軍事委員会による重要エリアの戒厳令がまだ続いていました。

幸い都市内にいる抵抗勢力にも反撃の可能性が出てきました。ナハツェーラーは公爵連合軍と対峙するために、王庭軍の核となる精鋭を全て城壁の周囲に配置していますから。

インドラ

けど都市を包囲してもうすぐ十日も経つんだぞ! あの公爵どもは一体いつになったら攻め込むつもりなんだよ!?

デルフィーン

彼らは連合軍の損害を最小限にとどめようとしているんです。都市を包囲して敵軍を消耗させるのは、確かにそのための最善策でしょう。特にウェリントン公爵の態度がいまだ不透明な現状では……

モーガン

でもそれって、都市の罪のない市民の命が犠牲になるよね? このままだと……

ダグザ

全てを失った空っぽな都市、彼らは本当にこの代償を受け入れられるのか?

都市の現実の状況を広められれば――

デルフィーン

外に広められる情報なんてありません。都市包囲の段階まで来たなら、彼らは自分たちの制御を超えた事態が起こることを決して許しはしませんよ。

人々は常に公爵たちの「覚悟」を甘く見ていますが、彼らが最初から変わったことはありません。

ヴィーナ

フッ、奴らの蒸気騎士に対する扱いのようにな。

デルフィーン

それもただの一つの例にすぎません……他の人のことはそんなに理解していないかもしれませんが、私は母のことをよく理解しています。

彼らが共通の利益のある決定を行う際、道徳は……いつも、一番比重の小さい考慮要素なんです。

昨晩の連合軍会議においても、彼らの議論の本当の焦点は、いかにザ・シャードの技術を回収するかということでした。

ダグザ

つまりすでにこの結果を黙認したというわけか。

デルフィーン

ダグザさん……

ダグザ

シージ、一小隊を貸してくれ。シャイニングさんたちが教えてくれた聴罪師の秘密の通路の突破をもう一度試みる――

ぜってー帰ってくるって約束するよ、シージ。

ヴィーナ

分かった、行け。

インドラ

ヴィーナ、ダグザが胸張って保証したら行くの許すのかよ?

俺が見張ってやんねぇとな。ダグザ、今はお前一人がカッコつけてる時じゃねぇんだ!

ダグザ

なら私に遅れを取んなよ、ハンナ。

ヴィーナ

デルフィーン、フェイストとロックロックたちの進展はどうだ?

デルフィーン

設計図を頼りに壁の建設当初に残された予備の接続口を特定しましたが、サルカズの巡回が頻繁にあるため、まだ近づくチャンスがありません。

ですが、ドクターたちもチャンスを作ろうとしてくれています。連合軍が陽動攻撃さえ行えば、敵は必ずほころびを見せます。それに乗じて我々も突破を図ることができるでしょう。しかし……

ヴィーナ

連合軍に攻撃するつもりは全くない。

デルフィーン

はい。

ヴィーナ

……

サルカズが一度ほころびを見せれば、都市に入る方法を必ず見つけられると保証できるか?

デルフィーン

自信はあります。ですが協力が必要です。もう一度、公爵たちの説得を試みましょう――

ヴィーナは首を横に振った。

ヴィーナ

二時間くれ。

これから軍営へ行き、私についてきてくれるアーツに優れた部隊を募る。それから戦場のドローンも合わせてN12エリアの城壁接続口へ陽動に向かい、奴らの注意を引く――

残りは、デルフィーン、貴様に指揮を任せる。

デルフィーン

ダメです! それは死にに行くようなものです!

モーガン

チェットリーでしょ、それとブレントウードに「グロリアーナ」号にシルバーロックブラフス……吾輩たちって死にに行かなかったことある?

でも誰かがやらないといけないんだよ。でしょ、ヴィーナ? 吾輩が一緒に行くよ。

ヴィーナは反応しない。モーガンはヴィーナの顔色が変わり始めていることに気付いた。

モーガン

……ヴィーナ?

ヴィーナ

ドクターから緊急連絡を受け取った――

つい先ほど、ラフシニーがウェリントンの駐屯地に入った。

モーガン

……

デルフィーン

……

モーガン

えーっと、ラフシニーって誰?

実のところ、戦場で起きる色んなことを吾輩はあまり分かっていない。静と動、勝利と敗北、全部があまりに早く発生する。

連合軍が都市を包囲して十日近くが経った後、連合軍陣地からいち早く離脱していた「ガストレル」号は、突然自らの駐屯地を離れて連合軍陣地の中心に無理やり停船した。

あの日、連合軍の通信にあの長らく沈黙を続けていた老公爵の声が再び響いた――

「『ガストレル』号の意志が帝国の栄光を取り戻す。」

それから、砲火が再び鳴り響いた……

吾輩たちの城壁に向けて、ためらいなく撃ち込んだんだ。

城壁の下

1098年9月25日 a.m. 7:33

シアラー少尉

後方の皆に急いで塹壕を通過するよう伝えろ!

サルカズたちの主力は正面で牽制されてはいるが、我々が通過するのに十分な時間は残されていない。

模範軍看護師

上官、軍営にまだ多くの設備が残っています。時間が必要――

シアラー少尉

構うな!

都市内に戻れさえすれば、設備不足の問題など解決する。

模範軍看護師

ですが、行動不能な負傷者もおり……担架で運ぶのは困難です。

シアラー少尉

君たちは、引き続きシージたちが切り拓いた道に従って前進するんだ。私は残って負傷者の移動を指揮する。行け!

模範軍看護師

手伝います、上官。負傷者たちの状況は私の方が詳しいですから。

それに、彼らに約束したんです。見捨てたりはしないと。

シアラー少尉

……では、抑制剤と防護装備は君にも分けておく。全て負傷者のために用意したものだ。ないよりはましだろう。

城壁に近付くほど、空気中の源石粉塵濃度が高くなる恐れがある。負傷者の方が、我々よりもリスクが高いと判断した。

模範軍看護師

はい、上官。

……上官はロンディニウム人ではないと皆が言っています。それなのになぜ、危険に飛び込もうとされるのですか?

シアラー少尉

……

模範軍看護師

見てください! 「ガストレル」号が包囲を突破するのをどこかの高速軍艦が助けている?

シアラー少尉

カスター公爵だ……

模範軍看護師

ですがウェリントン公爵の裏切りがあり、彼とカスター公爵たちは仲たがいしたのではなかったのですか?

シアラー少尉

まずい!


???

宗主に伝えろ。こっちでヴィクトリア人の小規模部隊を発見、攻撃の命令が必要だ。

ナハツェーラー王庭軍

奴らを仕留め、奴らの所属する部隊に他に任務がないか確認しろ。

――?

雲が散った?


シアラー少尉

……火だ。


城壁の火に空が照らされた。

紫の炎の波が「ガストレル」号の船首から立ち上り、ロンディニウムの城壁へと流れ込む。繰り返し、絶え間なく。

イベリアの切り立つ絶壁に冷たい死の大波が打ち寄せるように。

そして飛び散ったしぶきがシアラー少尉の目の前にいるナハツェーラーの体に降りかかり、腐朽を洗い流した。

ロンディニウムの城壁はドラコの火に完全に燃やされた。

都市を守るサルカズは紫の炎が燃えるための薪となった。


模範軍看護師

奴らは、これで死んだのですか?

シアラー少尉

気をつけろ。この炎は敵を瓦解させるに十分だが、我々にとっても脅威だ。

フッ。

城壁の上にある枯れ朽ちた玉座の上の姿が紫の炎の中見えつ隠れつしているのを彼は遠目に見た。軍艦から発射される大砲がそのそばで轟音を鳴らす。

城壁の上、死が死を燃やしている。

城壁の下、生者が死者の燃えかすの中を歩まねばならない。

シアラー少尉

この戦争が記録されたら、将来あらゆる中核国家が衝撃を受けることだろう。

しかしその者たちが気にするのは恐らく死傷者がどれだけ出たかではなく……交戦する双方のうち、一体どれだけの人がロンディニウムそのもののために戦っていたのかということだろう……

君たちの帰郷への道は、相当長いな。