挽歌が灰に還る時EA-2・戦闘前単なる別れ
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ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

名前

挽歌が灰に還る時 EA-2・戦闘前

単なる別れ

テオ

……ん?

なんだか人だかりが……

ごめんなさい! っ……通してください――

――うわっ!

焦る住民

――ミリントン通りにも行ってみたが、何一つ残ってやしない! どの店も営業はしてるのに商品棚が空っぽなんだよ!

クラマンの奴がここなら在庫があるって言うから、わざわざ五つ向こうの通りから来たってのに――羽獣の毛ひとつ見当たらないじゃないか!

こんなことならクロスボウでも持って、哨戒所の向こうの黒き森へ狩りに出ておけばよかった。そうすりゃ飢え死にする前に本物の肉にありつけるかも……

テオ

……えっ?

怒る住民

飢えで頭がおかしくなってるんじゃないの? 黒き森へ行くなんて死にに行くようなものよ!

焦る住民

お前に何がわかるんだ! 知ったような口利きやがって!

怒る住民

実際知ってるから言ってるのよ! あなた、ラグラン通りのエマがやってる食料品店のことはわかる?

焦る住民

あそこにはまだ行ってないんだが、どうかしたのか?

怒る住民

私は先にそっちへ行ってきたのよ。食糧こそなかったけど、エマの話じゃこの件には*ヴィクトリアスラング*なヴィクトリア人どもが関わってるらしいの!

焦る住民

あのクソ野郎どもが封鎖をかけてくるくらい、今に始まった話じゃないだろ。あいつらに責任があって当然だ。なのに何をいまさら騒いでる?

怒る住民

そうじゃなくて、ヴィクトリアのスパイがナ・シアーシャまで忍び込んできてるのよ!

焦る住民

何だって!?

怒る住民

エマが農作地へ行った時に放火の痕跡を見たんですって。今ダブリンが調査してくれているそうよ!

焦る住民

*ヴィクトリアスラング*! ターラーが独立した時点で、すぐに反転攻勢に出るべきだったんだ!

怒る住民

ともあれ、確かにあなたは家からクロスボウを取ってくるべきね。狩りのためじゃなく、ヴィクトリア人どもの手先になった裏切者を引きずり出すために!

私がそいつを捕まえたら、クロスボウで胸を射貫くだけじゃ済まさないわ。

テオ

(小声)この辺りのお店、食糧供給が止まってるみたいだ……

(小声)クランさん用のジャガイモを少し買い貯めしてたけど、それだけじゃ足りないかも……

(小声)ここは人が多すぎるし、別の道から行ってみよう。

(小声)武器を持ってる人もたくさんいるし……

(小声)みんなヴィクトリアのスパイを捕まえる気なのかな? 街に食糧がないのも……本当にヴィクトリア人が関係しているの?

(小声)だけど僕は……

(小声)僕は……

僕は何も関わってない。僕はクランさんの弟子なんだから。みんなそれをわかってくれるはず。

怖がることないぞ、テオ。きっと誰もお前に何かしようなんて思ってないんだから。

テオは身をかがめて人だかりから抜け出すと、通りの曲がり角までやってきた。それから細い裏路地を素早く通り抜け、石壁の裏手へ回り込む。

喧噪は次第に遠ざかっていった。


テオ

……ほらね、誰もお前を責めたりしないだろ、テオ。

クランさんは赤き龍の彫像の件でまだ忙しくしてるだろうから、気付いた時にはどこも品切れになっちゃってそうだ。

僕が助けてあげないと。


クラン

ひとまずこれを持って行ってくれ。周りの連中と分け合って食べるようにな。そうすれば気を揉まずに済むだろう。

友好的な住民

あなたはどうするの? それにネモスも。彼女の分がなくなっちゃうじゃない。

食糧を分けてもらうより、ヴィクトリアのスパイを一緒に捕まえに行ってもらえるほうが助かるわ。そうしないと根本的な解決にはならないでしょう?

クラン

……俺も行くつもりだと、周りにも伝えておいてくれ。それと、まずはこれを持っていけ。

ネモスはリーダーの側近だからな。お前たちのために多少苦労するくらいは当然のことだ。

友好的な住民

それじゃ……遠慮なくいただいていくわね!

不機嫌な住民

……なあクラン、あんたほかにも食糧を貯めこんでるんだろ?

それに、どうして供給が途絶えることを知ってたんだ? ネモスから事前に何か聞いてたんじゃないのか――

友好的な住民

ローリー、あなた何を言ってるの!

クラン

必要ないならそれで構わんが。

不機嫌な住民

あんたやネモスがスパイじゃないって誰が証明できるんだ? あんたらときたら、二人してヴィクトリアのガキを育ててるだろうが!

クラン

……出ていけ。

不機嫌な住民

どうして出て行かなきゃならない? 一体何を隠してるんだ? あんたは――

落ち着かない様子の住民

ようクラン、食糧を配ってるんだって? 本当に助かったよ! それで、そいつはどこにあるんだ?

クラン

残りは全部ここだ。

不機嫌な住民

話をそらすな、クラン。まだ質問に答えてないだろ。

クラン

言えることは全部言った。このジャガイモを汚いと思うなら、ほかの奴に袋を譲ってやれ。

不機嫌な住民

なんだと!?

落ち着かない様子の住民

なあローリー、いるのか? いらないのか? いらないなら俺によこせよ。食うに困ってる奴は山ほどいるんだから、状況をわきまえろ。

じゃあ、これは俺の分ってことで――

不機嫌な住民

何でお前に渡さなきゃならない?

落ち着かない様子の住民

どうせ必要ないんだろ? だからよこせって言ってるんだ!

不機嫌な住民

ふざけるな――

落ち着かない様子の住民

ぐっ――ああっ!

袋の中のジャガイモはひどく小ぶりで、まともな楕円形の物など一つもなかった。

落ち着かない様子の住民

う、腕が……!

友好的な住民

なんてこと、血が出てるわ! ローリー、あなたどうして同胞に刃を向けるの!?

不機嫌な住民

……お、俺は――

クラン

ナイフを放せ。

俺にこの槌を使わせるな。

友好的な住民

や、やっぱりあなただけが頼りだわ、クラン。

クラン

……

友好的な住民

怪我の手当てはお願いできる? ローリーの様子が変だったから、ちょっと様子を見に行ってくるわ……あの人、骨董品のコレクションを戦争で全部焼かれたときからおかしくなっちゃってて。

彼のナイフは――あなたが預かっていてちょうだい、クラン。彼には返さないでね。

落ち着かない様子の住民

クラン、俺……はぁ……

クラン

そう深い傷じゃない。止血してやるからこっちへ来い。食糧の件はネモスが戻ってきてから、あいつに相談しておこう。

落ち着かない様子の住民

俺はわかってるぞ……うっ……ちゃんとわかってる。あんたが本当に、自分の持ってる分を全部差し出したんだってこと。

あんたは、見かけが恐ろしいだけで――ううっ!

クラン

喋るな、体力を温存しておけ。

家にまだ挽いたトウモロコシが少し残ってるかもしれん。探してくる。

そいつを持たせて、お前を家まで送ろう。


ネモス

クランさん、テオ、大丈――

……どうして床に血が?

クラン

ローリーが暴れて怪我人が出たんだ。

ネモス

怪我人が? 無事であったならいいんですが……ところで、テオはどうしたんです?

クラン

あいつは朝早く出かけて――

……まずい!

ネモス

あなたったら――はぁ、仕方のないことですね。誰もこんなことになるなんて想像してませんでしたから。

クラン

街は今どうなってる?

ネモス

ヴィクトリア人が農作地を破壊したという噂があちこちで広まっていて、ナ・シアーシャは爆発寸前の状態です。

あなたが前にテオをかばって以来、誰もあの子をいじめていないからこそ安心して自由にさせていることは知っていますが……今回は状況が違います。

クラン

すぐに探してくる――

ネモス

彫像のほうは間に合うんですか?

クラン

サウィン祭までには仕上げねばならないが、時間は残りわずかしかない……クソッ……!

ネモス

テオの件は私が引き受けますから、クランさんは自分の仕事に集中してください。

クラン

……

わかった。


ネモス

テオを見かけませんでしたか?

友好的な住民

あら、あの子またどこかでサボってるの? クランったら甘やかしすぎなのよ。あなたも何か言ってやって……


ネモス

テオ、テオ!

冷淡な住民

随分必死に探してるけど、あの子何かやらかしたの?


ネモス

テオを見かけませんでしたか?

黙り込む住民

……

ネモス

大丈夫ですか?

黙り込む住民

……ん? ああ、俺なら平気さ。ただ腹が減りすぎて……ええと、何か言ってたか?


怒る住民

ちょうどいいところに! ねえネモス、テオの奴、最近妙な動きしてないかしら?

ネモス

……いいえ。忙しすぎてそんな暇もないと思います。

怒る住民

フンッ、ならいいけど。


ネモス

テオ!

???

「霊の守人」さんでは? なぜまだここに?

ネモス

あなたは――ああ、「吟遊家」さん。こんなところで何をしているんですか?

「吟遊家」

街の混乱を耳にして、何か手助けできないかと思ったんですが、結局は……はぁ、何もできずじまいです。ただ、食糧不足がヴィクトリア人の仕業だという話は聞きましたね。

とはいえ私自身は、ヴィクトリア軍と遭遇したことなど一度しかありません。それも偶然の出来事でした。思えば、あの時もあなたとクランさんに助けていただいたんでしたね。

あなたが提供してくれた霊の守人の情報は、本当にためになりました――

ネモス

すみません、今は昔話をしている時間はなくて――それより、力を貸していただけませんか? クランさんの弟子が行方不明になってしまって、探しているところなんです。

「吟遊家」

それは……私にはどうにもできませんね。

街の人々は今や、ヴィクトリア人の生皮を剥いでやりたいと思うほど彼らを憎んでいるというのに、ヴィクトリアの子供一人のためになぜそこまで必死で駆け回っているのですか?

ネモス

もういいです、一人で探しますから。

「吟遊家」

一つご忠告を。祝賀会まであと一時間ほどしかありませんよ。あなたには霊の守人を象徴する祝福の祭器を会場へ運ぶ役目があるのでは?

ネモス

チッ……!

「吟遊家」

はぁ、あなたという人は……すみませんが、私はこれで。

ネモス

……

このままじゃ……

ラフシニー

ネモス、そこにいるのはキミ?

ようやく見つけた……この街で一体何が起きてるの?