挽歌が灰に還る時EA-6・戦闘前迷い人
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ウルサス炎カジミエーシュクルビアボリバルリターニアヴィクトリアイェラグカズデルシラクーザレム・ビリトンサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

名前

挽歌が灰に還る時 EA-6・戦闘前

迷い人

ラフシニー

つまり、返し火の儀を行うためであっても、街へ行く気はないってことだよね?

生真面目な霊の守人

あなたから伺った状況はあまりに異常ですし、あなたのお言葉だけで都市の住民の生死を確かめることはできませんので。

それに、返し火の儀はあくまで葬儀にすぎませんから、過度な期待はなさらないでください。

ラフシニー

……そう。それなら、もう戻ってもらって大丈夫。どうあれ、キミたちの協力に感謝するよ。

生真面目な霊の守人

我らの同行がなくとも、ナ・シアーシャへ戻られるのですか?

ラフシニー

モランたちはすっかり馴染んでいるようだし、もう心配ないでしょう。ネモスからの頼みも聞き届けたし……

やるべきことはもう、他にないから。

生真面目な霊の守人

どうかお気をつけて。

ラフシニー

うん。

赤き龍はひとり、来た道を再び歩み始めた。昨日の出来事は今や、まぶたに映るおぼろげな影のようであり――

また、小さな炎のようでもあった。

ラフシニー

「返し火」……

「放逐王」

死にに戻る決意が固まったのか?

ラフシニー

あなたは……

ちょうどよかった、少し聞きたいことがあったんだ。もし力を貸してくれるなら――

「放逐王」

お前は赤き龍の歴史を学ぶ上で、ラヴラーハという不運な男の物語を聞いたことがあるか?

ラフシニー

――えっ?

「放逐王」

ハッ、知らんようだな。

長年家を出ていて久方ぶりに王城に帰ってみれば、愛する弟の顔も見ぬうちに衛兵に連れ出され、剣で胸を刺し貫かれて死んだ男さ……

ラフシニー

その話なら、知ってるよ。

「放逐王」

お前もその男のような底なしの間抜けになるつもりか?

ここを離れろ。お前は姉に会うことができ、そのうえでまだ生きているというだけでも、ラヴラーハより随分とマシな境遇だろう?

ラフシニー

ラヴラーハとアリルの物語と、私とエブラナの物語は違うから。

「放逐王」

……ふん、それなら余計なお節介だとでも思ってくれ。それで、聞きたいことというのは?

ラフシニー

街で行う返し火の儀式について聞きたいんだ。

本当は儀式の準備をしてくれる人を探していただけなんだけど、あなたはターラーの歴史や故事に詳しいみたいだし、力になってもらえないかなって……

「放逐王」

歴史に故事か。

では、歩きながら話すとしよう。こちらへ。

ラフシニー

でも、黒き森は向こうでしょう。

「放逐王」

その黒き森にいた時と同じように、私についてこいと言っているんだ。


ラフシニー

……王城の遺跡?

ここなら前に来たことがあるよ。源石が密集していて、安全とは言えな――

「放逐王」

歴史と故事を知りたいなら、ターラー中でここ以上に*古代ティェンゲ語スラング*な王城はほかにない。

ラフシニー

今、どんな王城だって言ったの?

「放逐王」

チッ、気にするな。

ラフシニー

黒き森で助けてもらったことには本当に感謝しているけど、今は急ぎの用事があるから、あまり時間が取れなくて……

「放逐王」

用事というのは、死にに行くことを言っているのか?

お前と姉は本当に似ても似つかんな。あいつは呪われた炎を持ってこそいるものの、赤き龍としては典型的な性格をしている。傲慢で他人の言葉など少しも耳に入っていない。だがお前は――

ラフシニー

確かに私たちは似てはいないけど、姉さんはあなたが言うような人じゃないよ。

「放逐王」

だが、お前たちがどれほど違っていようとも、赤き龍は争いに身を投じる定めにある。お前がただ巻き込まれるばかりの存在であろうともな。

そして、争いがもたらす結末は一つ――お前の死か、彼女の死だ。

ラフシニー

……

「放逐王」

つまり、どちらかは死ぬことになる。ならば何を焦ることがある?

もう少し落ち着いたらどうだ、若人よ。じきに目的地だ。


「放逐王」

着いたぞ。この祭壇だ。

ラフシニー

祭壇って、中央にあるあれのこと? でも、あれって……炉じゃないの?

「ターラーの戦士すべての武器を熔かし、王朝の運命を覆したという伝説の炉」……死した戦士を蘇らせるというあの溶炉。

「放逐王」

ハッ、今の連中はそう呼んでいるのか? 仰々しい響きだが、「祭壇」より力強く聞こえるな。

だが残念ながら、あれは他より大きいだけの単なる祭壇だ。王城はあの祭壇を中心に建てられたものでな。ゲル王の戴冠式に用いられたストーンサークルが元になっているんだ。

そして老いた赤き龍が死んだ時も、人々はここで返し火の儀を行っていた。

ラフシニー

返し火っていうと……

「放逐王」

お前があの石頭どもと見たものと同じ儀式だ。奴らときたら、幾年も過ぎた今になってもよく隅々まで覚えているものだな。

だが、当時の返し火は、かがり火に火を灯すだけで終わるようなものではなかった。

マイリェードの婆さんの時代には、ゲル王の位を継いだ赤き龍の兄弟や姉妹は、ただ水ぶくれができるまで炎に腕を突っ込んでいるだけで済むようになっていた。

しかし、これは伝説に過ぎん話だが、さらに昔まで遡ると――王の兄弟や姉妹は皆、炎の中へ身を投じて葬られねばならないという頃もあったそうだ。

ラフシニー

……

「放逐王」

随分顔色が悪くなってきているぞ。

彼が手を上げると、袖口から流れ出た紫の炎が、祭壇の中で燃える同じ紫色をした炎の中へと流れ込む。

炎は、母の腕で眠る赤子のように、静かに呼吸していた。

ラフシニー

あなたの炎も紫なの?

というか、あなたはドラコだったんだね……まさか――

「放逐王」

この件についてだけは驚くほど鈍かったな。だが、もう逃れられんぞ。腕をこの中に入れるんだ。

ラフシニー

なっ……

「放逐王」

ナ・シアーシャへ火を返したいのだろう? ならば腕を出せ。

赤き龍は黙り込み、腕を伸ばして溶炉の中の火種に触れた。すると――その炎に相変わらず温もりはなかったが、想像していたほど冷たくもなかった。

「放逐王」

お前をここに連れてきたのは、お前に見せてやるためだ。

今のターラーの悲劇も、赤き龍に長らく付きまとってきた汚名も……すべては残酷な運命の繰り返しに起因することなのだと。

私はお前の姉と同じ、死の炎を吐く異端者だが、もはや死者に無礼を働くつもりはないし、その力もない。ただ、この地で命を落とした者たちを……

彼らの運命を見せに来ただけだ。

なるほど、ここから再生されるのか。確かに、最近で言うとこれが一番の大ごとだったからな。

お前の姉が言ったことは正しい。死の炎に侵された者を救う手立てはもはや存在しないんだ。とはいえ本来なら、これほど容易く炎が広がることはないはずだった。

私にはずっと不思議だったよ。一体どれほどの恨みが積もれば、六百年ぶりに不吉なドラコの異端児が生まれるに至るのだろうとな。

ああ、次は彼のことか。

私に言わせれば、彼は目覚めるのが遅すぎたな。日が沈む頃にようやく起き出したとて、犠牲になるのは当然というものだ。

ラフシニー

……あなたであろうと、そうして死を軽んじ、犠牲という言葉で正当化するのは許されないことだよ。

お前はまだ、多くの死を見てきてはいないからな。慣れてしまえば、少し我慢するだけで耐えしのげるようになるものだ――

見ろ、また一人犠牲者がやってきたぞ。


憂いげな住民

あなたを殺したヴィクトリア人は、もうみんな追い払ったのに!

最後に残ったあのガキも、私の前で……死んだのに……

ある意味では、お前の姉の描いた未来は実現したと言える。ターラー人は立ち上がり、ヴィクトリア人は倒れた。シンプルでわかりやすく、「痛快」なことにな。

ラフシニー

あなたも……それをただ傍観していた人間の一人ということ?

そんなことに固執するな。ここまでくれば、私の正体には気づいているだろう。

さて、この場面は見たことがないな。説明を頼めるか?

ラフシニー

……これは、ある戦争での場面だよ。

戦争など無数にあるだろう。もう少し具体的に話してくれ。彼女は誰の仇を焼き、どの土地を見据えているんだ?

ラフシニー

戦いの相手はヴィクトリア。エブラナは、ターラーの持つべき権利をアスランの手から取り返そうとしたんだ。これは、その戦争の最終局面。

アスラン? あの自分を特別視している間抜けのことか? だがお前の姉が相対しているのはサルカズだろう。

ラフシニー

……

まあいい。獅子がヴィクトリアを奪い去ったということがわかれば十分だ。

この場面については、言われずともわかる。仮面に覆われていようと、その下の表情は想像できる。

定められた死に向き合う時、赤き龍の顔に表れるのは、望みを叶えた満足感か狂喜ばかりだ。

ラフシニー

違う……あれは喜びなんかじゃない。それとは真逆の――

何を言うやら。お前はその時ひどい怪我を負い、死を前にしていたのだから、目にしたものすべてを美化し始めていたのだろう。

これは繰り返しの中で起きたことでしかないと言っただろう。都市に車輪がつき、国の主が入れ替わろうと、その中身は何一つ変わっていない。

この場所は? お前たちの家か? ここでお前たちは互いに剣を向け合う方法を学んだというわけか。それで、こいつは何者だ?

ラフシニー

私とエブラナの育ての親だった、ワーウィック伯爵。

エブラナは言っていたよ。伯爵はターラー人に希望を見せたけど、それは水を求める旅人を狂わす幻のような、見えこそすれど決して届かない希望に過ぎなかったと。それが彼の行ったすべてだった。

当時彼の手には細い糸が握られていた。その糸は、ようやく名前を取り戻したターラー人と、ずっと権力を握り続けてきた抑圧者を繋ぐものだった。

……そしてその糸というのが、姉さんと私だったんだ。

今思えば……最初に紫の炎に侵されたのはあの人だったのかもしれない。


「放逐王」

……ハッ。

お前は姉への同情心のみならず、深い理解をも持ち合わせているようだな。道理で奴を殺そうとしないわけだ。

ラフシニー

だけど、私は絶対に姉さんのようにはならない。それに、大人しく首を差し出すつもりもないよ。


ラフシニー

この一連の出来事、あるいは歴史と言うべきかもしれないけど――これを振り返らせたのは、私に何を証明するためなの?

「放逐王」

ターラーの歴史は、単なる過去の残骸を積み重ね組み合わせたものにすぎないということを証明するためさ。私もお前と同じ物を見てきたが、新しい発見など何一つなかった。

ラフシニー

でも、私が見た物は過去の残骸なんかじゃない。あれは……炎の根源だった。

ナ・シアーシャを包む炎は確かに姉さんのものだけど、それと同時にあの血塗られた過去の背後にある、巨大で行き場のない悲しみでもあるんだ。

戦争が……ううん、戦争より前からずっと続いてきた苦痛や抑圧、奪われ続けてきた物が、みんなの心に火を灯したんだよ。

姉さんはそうした悲しみを憎しみに変えて、ターラーの原野を焼き払い、ヴィクトリア人を追い出した。

でも、今はもう悲しみを復讐で覆い隠すことはできない。だからその炎は彼ら自身を焼き尽くして、次々と生ける屍へと変えていくしかなくなっているんだ。

「放逐王」

悪くない要約だな。だが、たった一度の返し火で、街で起きているすべてを解決できると本気で思うのか?

ラフシニー

私には、それ以外の道は残されていないから。

「放逐王」

確かにな。だが、果たしてその道はどのように歩むべきだと思う?

さあ、来い。お前の分は見終えた。次は私の番だ。


「放逐王」

(古代ティェンゲ語)泣くな、泣くんじゃない。あいつはただの雲獣だろう。

悲しみに暮れる少女

(古代ティェンゲ語)でも、「灰の爪」はあたしが小さい頃から育ててきた子なんだよ……

(古代ティェンゲ語)ねえパパ、みんなが言ってたのを聞いたの。パパの炎はみんなとは違うって。パパは生きてる人を治すことはできないけど、死んだ人を元に戻せるんだって……

「放逐王」

(古代ティェンゲ語)あれは戻しているわけじゃない。動いているだけの抜け殻だ。

悲しみに暮れる少女

(古代ティェンゲ語)それでもいいからお願い、パパ……もう一度「灰の爪」の鳴き声が聞きたいだけなの……


かくして、情に流されやすい赤き龍は、娘の願いを渋々聞き入れた。

だがその数ヶ月後、雲獣のみならず、牧場全体の獣たちに異変が表れた。

駄獣は草を食べなくなり、瘤獣は乳を出さなくなった。老いた獣はいつまでも死なず、生まれたての獣がすぐ命を落としていく。あまつさえ肉を持たない骨だけの姿で草原を彷徨うものまでいた……

紫の炎が獣たちの間に広がったことで、赤き龍は一族を連れて牧場を離れるほかになくなった。彼のそう長くもない一生の中で、こうした過ちは幾度も繰り返されていたんだ。


ラフシニー

紫の炎が……獣の群れに?

騒ぐほどのことでもないだろう。それよりも、お前の姉はあろうことかその炎で死者を焼いたんだぞ。それこそ開いた口が塞がらないというものだ。

ラフシニー

それで、結局その炎はどうやって鎮めたの?

……今にわかるさ。


ラフシニー

ここは……ナ・シアーシャの要塞にあった廊下……?

いいや、違う。だがそう思うのは無理もない。

実際には、我々は過去に向かって大きく踏み出しただけだ。これはお前の足元に広がる王城の……六百年以上前の姿さ。

それから数百年後の石工が、お前たちが「ナ・シアーシャ」と呼ぶあの場所に、王城本来の姿を再現するに至ったことにだけは、さすがに驚かされたがな。

ラフシニー

ここで……何が起きたの?

ここではな……ハハッ……

愚かなラヴラーハは、お前が見たような過ちを幾度となく繰り返すうちに弱っていき、己の死期を悟り始めた。

そうして、サウィン祭の前夜にふと思い立ち、遊牧生活で手に入れた最上級の贈り物を携えて、二十年ぶりに弟に会いに来たんだ。

儀式を司どる祭司たちを説得し、弟に引き合わせてほしいと頼んでな。

祭司たちは彼の思いに心を動かされ、彼を城の中に引き入れてくれた。だがいつの間にか、彼を案内する者の声も、姿も、態度も、何もかもが変わってしまっていたんだ。

彼は、この廊下へと連れられてきて――

……

兄の処刑を命じたアリルは、恐らく扉の向こうのバルコニーにはいなかったのだろう。私は死の間際まで目を見開いていたが、あの隙間からはあいつの炎は見えはしなかったから。

私は一体何を間違えたのだろうな。

街の祭司が、私を王族として遇したことが弟の機嫌を損ねたのか、あるいは何も言わずに二十年もの間離れていたこと自体が、弟からすれば裏切りと取れることだったのか。

もしくは……処刑を命じたのは別の者で、弟はそれに従っただけなのかもしれないが。

私には何もわからない。

あの瞬きの間に終えられた殺人の中、私がその場で、深く確信したのはたった一つ――

赤き龍は決してその恨みを捨てず、ターラーの歴史よりも長く胸に宿し続けると言うことだ。


「放逐王」

だが、お前に伝えたいことはそれだけではない。

私の死後、アリルは部下に命じて私の棺を王城内で引き回し、その末路を皆に見せつけた。

すると、かつて私が一族と共に滞在していた牧場すべてにおいて紫の炎が燃え上がり、その炎に侵されていた者は例外なく命を失い、死だけがその場を支配した。

それから七日後、祭司たちは黒き森の外に広がる荒野で、私に返し火の儀を執り行った。そうして返し火が消えると、牧場で燃えていた紫の炎も徐々に消え始めた。

そこでようやく、死後もかすかに残り続けていた私の意識は、完全に暗闇に飲まれるに至り――

炎に侵されていた生命は、獣も人も……すべて灰と化した。

お前の姉は、嘘などついていない。彼女が死なない限り、炎は広がり続けるだけだ。

ラフシニー

……

「放逐王」

しかし彼女は、この上なく赤き龍らしい人物でもある。ゆえに人々を生き延びさせるために己の命を投げ出すような気高さなどないはずだ。お前を帰らせたのも、何かの罠に違いない。

だから逃げろ。助けを求め、声を上げるんだ。奴と渡り合える者を探し出し、いつまで広がり続けるか知れない炎を消してほしいと頼め。手立てはもはやそれだけだ。

ラフシニー

だけど、もし姉さんが、ダンスパートナーに相応しいのは私だけだと決めてしまっていたとしたら?

それに私が、まだ救えるかもしれない街の人たちを見殺しにはできないと思っているとしたら?

「放逐王」

それで、生きている人間に返し火を行おうと?

ラフシニー

そういうこと。

「放逐王」

生者への返し火に効果がないとしたらどうする?

ラフシニー

……

いずれにせよ、私は戻るよ。

しばらくのち、ラフシニーの耳にため息だけが届いた。

「放逐王」

(古代ティェンゲ語)やはり愚かさと頑固さというのは、代々受け継がれてしまうものなのだな。