緋染めのビロードAD-1・戦闘前リハーサルの日
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ウルサスサーミカジミエーシュクルビアボリバルヴィクトリアイェラグサルゴンミノスシエスタ

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緋染めのビロード AD-1・戦闘前

リハーサルの日

グレータ

……

ダルトンの死は、事故だった――これが結論よ。

医療チームがすでに遺体を収容し、短距離輸送車でランクウッドの中心部へと送って、警察にも事故の詳細を伝えた。

シェリーも残りの小道具を全部再点検して、事故がまた起きるリスクは排除した。みんな少し休憩したら、午後から撮影を再開するわよ。

スタッフA

もうですか?

グレータ

何か問題でも?

スタッフA

フィルムならダメになっても交換できますし、カメラだって壊れても予備があります。ですが、人が亡くなったんですよ。つい今しがた床の血を拭き取ったばかりなのに……

スタッフB

ダルトンさんは小道具を探しに行ったはずなのに、どうして刃のついた本物のナイフを持っていたんでしょう?

本来ならスタッフがすべきなのに、酔ったダルトンさんを唆して小道具を探しに行かせたのは一体誰ですか? それとも、実は誰かが故意に本物のナイフをダルトンさんに渡したんですか?

スタッフA

唆す? こ、故意に渡した?

ダルトンさんは飲んだくれでたまにやらかしてましたが、制作チーム内で個人的な恨みがある人はいないはずです。誰がそんなことをするんです?

それにあのナイフはごくありふれたもので、その辺の店にも売ってますし、どこの台所にも似たようなものはいくらでもあります……

単に誰かがそのことをダルトンさんに何気なく話して、それで彼は自分で……

スタッフB

とにかく、不審な点はたくさんありますよね?

グレータ

なら自分でダルトンに聞いてみるしかないわね、「探偵」さん。

スタッフB

……

グレータ

私を含め、ほとんどのメンバーがまだ仲間を失ったショックから立ち直れていないことは承知しているわ。けど今この瞬間に目の前にある重要な問題は――

撮影スケジュールの終わりが迫っていることよ。

ランクウッドの撮影専用の移動区画は移動都市と異なることはもちろん知っているわよね。

同様に中枢司令塔の管理を受けているものの、一部の移動権限は直接制作チームに与えられている。これによって、私たちは撮影区画をランクウッドの中心部から離すことが可能となっている。

レンタル契約満了後、スタジオは順次閉じられ、区画は自動的に帰航する。

でも、運用権限が大きいことは、メンテナンスコストも高額であることを意味するの。私がサインした契約だと、もし臨時でレンタル契約を延長した場合、多額の延長料金が発生するわ――

そして、それは全員の給与明細に直接反映される。

プロデューサーとして、チームの健全な稼働を確保するために、メンバー全員の損得を考慮する必要があるのよ。

スティーヴン

同意する。

メラニー

主演兼出資者として、私も同意よ。

グレータ

けど、こちらの「探偵」さんが気づかせてくれたわ。確かにいくつかの責任については追及すべきね。

小道具班の班長は?

小道具班班長

わ、私です。

グレータ

小道具の管理はあなたが果たすべき務めよね、ナイフの件があなたの職務怠慢であるのは明らかよ。それに撮影中、部下である見習いの方があなたよりも早く持ち場についているじゃないの。

小道具班班長

も、申し訳ありません、グレータさん。

グレータ

残念ながら、謝罪には何の意味もないわ。

クビよ。幸い移動区画はまだ中心部からそう離れていないわ。さっさと新しい仕事を探すことね……これ以上何も言わないでね。わかってるでしょう、もう十分情けをかけているわよ。

今後……小道具班の責任者はモイラにやってもらうわ。

モイラ

わ、私ですか……?

グレータ

嫌なら、あなたの班長と一緒に制作チームから去ってもらったって構わないわ。もちろん、そんなバカな決断はしないって信じているけどね。

モイラ

……

グレータ

それと、スティーヴン、あなたも急がなければならないわ。

『ミズ・デュポンの死』の結末まではあと一息足りていない。これは共通の認識よね。

当初の計画では、該当シーンの決定稿は先週提出のはずよ。でも、撮影の進捗はもうすぐであなたの修正ペースに追いつきそうじゃないの。

スティーヴン

俺は監督も兼ねてるんだ。このチームは手がかかるってこともわかってるだろ……

グレータ

まだインスピレーションが降りてこないの?

スティーヴン

……ああ。

グレータ

これはあなたオリジナルの脚本、あなたの最も大切な物語なのよ。最高の結末を描いてちょうだいね。

メラニー

それ、今の私が一番に関心を持っている事柄でもあるわ。

ミズ・デュポンは一連の出来事を経験した後、一体どのロックフェラーに殺されるの? どんなシーンで? どんな姿勢で? 彼女は死ぬ前に何を言うの?

この映画が傑作になるかどうかを決める要素よ。

彼女が作中でどう美しく死ぬかが、私がランクウッドにどう返り咲くかを決めるの……

私は全ての財産をこのプロジェクトに投資しているのよ、二人とも。

スティーヴン

……神が訪れてくれるはずだ。

メラニー

何ですって?

スティーヴン

いやなに、文芸評論界にはこういう説があってな。「インスピレーション」ってのは、神が直接劇作家に憑依して、新生と死、破滅と希望を代わりに書き記すことなんだと……

まあとにかく、安心してくれ。この物語はちゃんと完成させる。

グレータ

いいわ、それじゃあ解散、各々準備に向かって。

シェリー

グレータさん! グレータさん!


シェリー

大事な話があります――

グレータ

シェリー、何を言いたいかはわかっているわ。でも今はその時じゃない。

ルシアンの様子を見てこなくちゃいけないの。チームに加わったばかりの初めての撮影で、あんな大変な出来事を経験したんだもの……

逃げ出さないようにしないと。

あなたが何を思い浮かべたにせよ……忘れなさい、シェリー。考えすぎよ。

シェリー

……


モイラ

わ……私が小道具班の責任者?

ティッピ

おめでと~、モリー!

ダルトンさんが亡くなったばっかりだけど――彼が安らかに眠れますように。でも、ほんとにモリーにチャンスが巡ってきてうれしいよ。

ランクウッドで働いてる時間はあたしのが先輩だけど、未だに背景画を描くことくらいしか許されてないもん。昇進のチャンスなんてほんっと滅多にないよ。

モイラ

それはティッピがいつもオリジナルの要素を背景画に加えちゃうから、美術班の班長さんがあんまり任せたがらないんだと思うよ。

でも私なんて開拓地からランクウッドに食いぶちを求めてやってきた、ただの手芸好きなのに、本当に班長なんて務まるかな……

ティッピ

グレータさんができるって言ったんなら、できるって! 人を見る目がすっごい確かだもん。

モリーのお姉ちゃんもきっと昇進を喜んでくれるよ。お姉ちゃんの影響を受けてランクウッドにきたんでしょ? もう立派な小道具班の班長だって早く伝えなきゃ!

モイラ

夜になったら電話するよ。グレータさんの信頼を裏切るわけにはいかないし、まずはちゃんと仕事をこなさなきゃ。

ティッピ

お~、いいじゃんいいじゃん、もう班長らしくなってきたね! 二、三日したらホラー映画鑑賞に誘っても、もう付き合ってくれなかったりして。

モイラ

ティッピ!


アブナー

おい、目の前でうろちょろすんじゃねぇ、シェリー!

ストーリーボードは三回確認したし、設備は五回チェックした。プロデューサーにはもうカメラを失くさないって誓ったんだ。じろじろ見てなくても仕事はする!

シェリー

(小声)ねえ……本当にそうなのでしょうか?

アブナー

ああ? なんだ? もっと声張ってくれ。

シェリー

ダルトンさんの死は本当に事故なのでしょうか? 何もおかしいと思わないのでしょうか?

アブナー

俺とは関係のないことだ。

あの飲んだくれめ。この二ヶ月でどれだけあいつのせいで帰りが遅くなったことか。これでようやく煩わされずに済む。

シェリー

五年前の彼はまだそんなふうではありませんでした。

アブナー

当たり前だろ。あの時はまだグレータとスティーヴンの映画で主演を務めて、人気絶頂だったんだ。俺たちだって制作チームにいただろ?

シェリー

それが一番おかしいんです!

事前ミーティングの時、スタッフリストに見覚えのある名前がたくさんありました。そして、実際にあなたたちの顔を見て、さらに恐怖が増しました。まるで――

アブナー

まるで本当に五年前の撮影現場に戻って、もう一度あの新人の死を目の当たりにしたみたいだって?

シェリー

あの時と今回の事故……よく似ていると思いませんか?

アブナー

どこがだ? 転落死と小道具のナイフの取り違えだぞ。

シェリー、また神経質になってるのか?

シェリー

私は冷静です……あぁ……全部わかりました! ダルトンさんは当時の事故の一番の責任者じゃありませんか!

彼は報いを受けたんです……誰かがそのために彼を……

アブナー

よせ! 腕を掻きむしるのも、バカなこと考えるのもやめろ。前に言っただろ――医者に診てもらって、映画の撮影にはもう関わるなって!

俺たちは所詮、くだらん映画を撮ることで生計を立ててる一般人で、俺たちのことを気にかける奴なんぞいないんだ。シェリー? シェリー、聞いてるのか!

シェリー

聞こえてます……聞こえてますよ……何かが来る、私たちの所に来る……


「ズルカマラ」

頭の中で、ナイフの位置と角度をイメージするのです。

右腹部の下には臓器の隙間があって、血はたくさん出るけれど死には至りません。他人の血でもって感情を表現し、後のクライマックスのためにまずは場の雰囲気を低く抑えるのです。

あるいは――ナイフの切っ先を上に動かして、胸を突き刺すのです。

脆い肺葉は何一つ抵抗することなく刃を受け入れ、相手はゆっくりと自身の血とあなたの高揚した独白の中で溺れ死んでいく。

ナイフを構えなさい、ルシアン。

少年ルシアン

……

「ズルカマラ」

これまでに稽古したシーンを思い浮かべて。あなたの演技はずっと素晴らしいものでした。あとは最後の一歩だけ。

さあ、刺しなさい! 内臓をかき回し、血管を断ち切る感触をナイフの切っ先に感じさせるのです。鼓動の音を聞かせるの!

少年ルシアン

……

「ズルカマラ」

怖いのですか?

……凡庸な子。

劇団長

彼は臆病なのではなく、ただ腑に落ちないところがあるだけだよ。

「ズルカマラ」

劇団長、ルシアンはいまだに暗殺の練習に抵抗があるようです。ナイフを握ると何も話さなくなってしまいます。

劇団長

ご苦労だったね、明日の公演の準備に行くといい。

……私がこの子を指導しよう。

「ズルカマラ」

劇団長自ら……わかりました。

劇団長

ルシアン、ナイフは重いかな?

少年ルシアン

……重い。

劇団長

しかし、その重さは金属や装飾のせいではなく、キミの心から生まれていることはわかっているね?

髪の毛が少年の目元を隠し、彼は黙ってうなずく。

劇団長

「ズルカマラ」はキミの飲み込みの早さを予想できなかったんだ。キミは彼女が疑問を解いてくれるのを待っているが、彼女にはそれができない。

聞きなさい、ルシアン……

劇団長がルシアンの小さな手を握る。優しい微笑みを浮かべているが、その手に込められた力は、拒むことを許さない強さがあった。

ルシアンは自身の指に入った力がゆっくりと緩むのを感じた。

劇団長

「ズルカマラ」がキミに教えようとしたテクニックは忘れなさい。キミは決まったナイフの握り方や暗殺の方法を模倣する必要はないのだから。

血に染まらないナイフも、放たれないクロスボウもない。それらを握り締めるだけでいい。

その手にあるのは道具ではない。キミが何を渇望すべきかを教えてくれる導べだ。

だから、導きに従えばいい。疑ってはいけないよ、たとえ辿り着く先が思いもよらない人物だったとしても――親族や友人、愛する人、さらには自分……

あるいは、今キミの目の前に立っている私であっても。

少年ルシアン

げ……劇団長?

劇団長

ためらわずに、振り下ろしなさい。

さあ、どうぞ。

少年ルシアン

(首を横に振る)

劇団長

さあ。

少年ルシアン

(首を横に振る)

劇団長

さあ。

少年ルシアン

なら劇団長は……僕は……

僕たちは何を演じているのでしょう?

劇団長

テクニックを忘れたのなら、役柄やセリフもひとまずは忘れなさい。それらはあくまでも劇を作るものでしかなく、劇そのものではない。

ルシアンはようやくナイフを握り締めた。劇団長は彼の手を放すと、二人の身長が同じになるように立て膝をついた。

少年ルシアン

ち、近すぎます……

劇団長

私を傷つけやしないかと恐れているのかな?

構わないよ、ルシアン。

その感情も一緒に忘れてしまいなさい。

私を信じなさい。キミは深く深く耽溺し、芝居の美しさに触れるだろう。

劇団長を見つめながら、ルシアンは強烈な疑問を抱いた――彼に会うのは、これが初めてではないか?

ルシアンには相手の言っていることが何一つ理解できず、このフェリーンの男は実は存在しないのではないかと疑うほどだった。

心臓が跳ねている。ルシアンには自分の鼓動がはっきりと感じられた。

そうだ、鼓動は嘘をつかない。鼓動は答えをくれる。

彼はどのような形で尋ねるべきだろうか?

劇団長が微笑みながら、声なく自分を励ましている。

答えは明らかだ。

ルシアンはためらいなくナイフを振り下ろす――


劇団長

……

少年ルシアン

……

劇団長

感じたか?

ルシアンの手は震えていた。一撃を放った後、彼は放心しかけ、危うくナイフの柄を手放すところだった。

劇団長は微動だにせず、表情をぴくりとも動かさなかった。

しかし、ルシアンは自分の手にした刃が相手の体を引き裂いたことを確信していた。彼はその音を聞き……自身のものでない痛みを、強烈で、容赦ない痛みを感じたのだ。

劇団に来てからというもの、彼はずっと沈黙を選んできた。しかし今この瞬間、痛みを感じた彼は突然歌いたくなった。

劇団長

これはキミにしてあげる最初の授業だ――全ての物語の行き着く先は、ある種の感情か、あるいは……

劇団長がそこで言葉を止めた。ルシアンは続きを求める視線を投げかけ、彼の視線は金色の瞳とかち合った。

劇団長

切っても切れない関係か、そのどちらかだ。

少年ルシアン

……

劇団長

キミは天性の役者だ。私の弟子になるべきだろう。

考えがまとまったら、私のところへおいで……ルシアン、私がキミの道を阻むことはない。永遠にね。


ルシアン

……

ルシアンはうつむいて両手を見る。

手袋に付着した血はすでにきれいに洗い流されていたが、ダルトンの手からナイフを奪い取った時の感覚をまだ忘れられずにいた。

耽溺、そして忘我。

師から初めてナイフの使い方を教わった時の、複雑な感覚と同じだ。

巧みな暗殺の技術を忘れ、強烈な感情だけで自らを燃え上がらせれば、あとは二つの魂が互いを噛みつき合うだけ。

真実であり偽物であるナイフによって命を終わらせ、相手に完璧な結末を――

死を、授ける。

ルシアン

どうぞ。

グレータ

ルシアン。

ルシアン

ミズ・グレータ。

グレータ

少し顔色が悪いわよ……大丈夫?