喧騒の掟 CB-1・戦闘前
6:44P.M.
p.m.6:44 天候/晴天
龍門環状道路 車内
バイソン様?
バイソン様、お休みでございますか?
うぅん……ごめん……いまどの辺り?
間もなくお約束の場所に到着いたします。バイソン様、どうかお気をしっかりお持ちください。ペンギン急便の皆様は既にご到着かと存じます。
うん、わかった。
私にはお疲れのように見えますが……
そんなことないよ。
差し出たこととは存じますが……旦那様の今回の決定はあまりにも性急でございます。もし、御心に沿わぬということであれば、遠慮せずお声をあげられるべきかと思います。
……父さんには、父さんの考えがあるんだ。
それに、ペンギン急便さんのところで成果をあげさえすれば、父さんの周りの人たちだって、二度とぼくに口出しできなくなるかもしれない。
バイソン様は当家の中でも歴代最年少でトランスポーターになられた御方。十分な職務遂行能力を持つ優秀な人物であることは、この私が保証いたします。
かもね。でも、あの大人たちは、まだそう思ってくれていないと思うよ。
バイソン様……
外を見てよ。この龍門では、民間のトランスポート業務の大半が父さんの掌中にあるよね。
そして、最後に残ったのが、どこにも属さず、最も奇妙な噂が多い会社——ペンギン急便。
父さんとエンペラーさんの関係は良好みたいだけど、ぼくたちはこれからだからね。これからペンギン急便さんを理解していかないといけない。
私としてはバイソン様の御身が心配でございます。ペンギン急便はあまりにも特殊なところだと聞き及んでおりますゆえ。
そんな顔をするのはやめてよ。このぐらい自分で何とか出来るさ。
それは私からも申し上げたい事でございます。今のお顔を鏡でお見せしたいぐらいです。貴方様には、もっと同じ年頃の皆様と同じように笑って頂きたい。
今宵は安魂夜です。本来でしたら貴方様も、ご友人らと街に出ても良いかと存じます。
……いま、ぼくに友達がいないってバカにした?
フッ、お戯れを。まさか私がそのようなことを。
ところでバイソン様、お手元に盾はお持ちでしょうか?
どうしたの?
狙われております。
ターゲット発見。おい、準備はいいか?
おう、起爆装置の導火線が少し短いようだが……
問題ねぇ。やれ!
うっ――爆発!?
バイソン様、しっかりお掴まり下さい——。
ターゲットを確認。まだ生きてるな。
奴を連れていくぞ、急げ。
(まさかこんな公道を爆破するなんて…… いったい誰が……)
(まずい、視界が……何も見えない……)
状況はどうだ?
野次馬が多いな。だが他のターゲットが見当たらねぇ。
待て、煙の中にまだ人がいる!
まだ生きてる奴がいんのか? なら一緒に——。
うぁッ——!
おい? おいっ! どうした?
ケッ、こんなに簡単にやられんなよ。
こんな古くせぇ映画みたいな展開には虫唾が走るぜ。
なあ、ペンギン急便さんよォ。
ありゃ、バレちゃってたか。
いやでもさぁ、道路の真ん中にバリケードを置いてから爆弾付けるなんて、そっちのやり方もだいぶレトロな感じじゃない?
爆破はただの俺の趣味だ。それよりお前、周りを見てみな。それだけじゃねぇんだぜ。
クソ、あのバカ、よりによって源石爆弾をこんなに使いやがって。もし鼠王にでも知られたら、俺たちもタダじゃ済まねぇってのに。
ペンギン急便のトランスポーターを発見。あれはエクシアですね。奴が爆破チームを全員……
俺だって馬鹿じゃねぇ。あいつらはもういい。あのテキサスとかいう狼は?
いえ、確認できていません。
フン。ならいい。奴らを包囲しろ。速攻で片づけるぞ。
やっぱりまだ伏兵がいるんだね。ずいぶん徹底してること。
ねぇ、動けそう? 手足をガクガクさせてるみたいだけど。
……な、なんとか頑張りま…す……あなたは……もしかして、エクシア……さん?
ウン、そうだよ! キミは、えっと、誰だっけ?
バイソンです。
ここは危険です。まずは離れましょう。ただ……
そんな険しい顔しなくても大丈夫。あの執事さんなら無事だよ。
本当ですか!?
とりあえず、道路脇までいったん退避してもらったよ。あの様子なら手助けは要らなそうだけどね……ま、大丈夫っしょ!
ペンギン急便のエクシア! それからそこの小僧! 投降しろ。俺たちと一緒に来てもらうぞ。
この辺じゃ見ない顔ばっかだね。みんなキミのシラクーザの親戚かなんか? 龍門でのシノギのルールって教わってないの?
テメェにゃ関係ねぇ。今回こそお前らを徹底的に潰してやる!
う~ん……龍門に来て長くなるけど、キミたちの縄張り争いって、いつまで経っても一番単純で荒っぽいことしかしないんだね。
だけど、シラクーザのマフィアもただバーで喧嘩ごっこしてボコられるだけじゃないってことか~。
あぁそうさ……シチリア人を甘く見たこと後悔するぜ、この*龍門スラング*野郎! やれ!
ハイハ~イ。お待ちどおさ~ん。で、ウチ間におうた?
クロワッサン! ナイス・タイミーング!
なんや敵さんたち、攻撃やめるつもり無さそうやね。さて、どないしよか?
決まってるでしょ。そっちが道を開く、あたしがシンガリ。ボーナスは山分けね!
よっしゃ、ほな決まりやな。ハイハイ、ちょいとソコ通らせてもらうさかい、退いてもらうで——。
な、なんだあの怪力イカレ女! 無理矢理周りを吹っ飛ばして道を作りやがった。
……先に行け。深追いはしなくていい。ボスの支援を待て。
は、はい!
テメェ、みすみす逃すつもりか、このクズ野郎が。
知るかボケ。そもそも誘拐なんざ得意じゃねぇ。それにペンギン急便のほかの連中の顔を見るまで、迂闊に市街地に入ったら不利になるのは俺たちなんだよ。
いつもながら減らず口だけは達者だな。オープンカーが一台、そっちに向かった。嫌なほど見覚えがあるメンツだぜ。
……チッ、やけに早くねぇか?
ええっ! ここも行き止まりなんだ? もう何回目?
どうせ周りなんて全部、建設途中のまんま放置されとる廃墟やろ。壁にドッカーンと穴開けたらええんちゃう?
ちょ、ちょっと待ってください、お二人とも! ぼくたちはいったいどこに向かっているんですか?
奴らがいたぞ! まさかこんな袋小路に迷い込んでるとはな。奴らを囲め!
こ、これじゃ逃げ道が断たれちゃうじゃないですか!?
あっ、そうだ!
何か打開策が!?
あたしたち、まだちゃんと挨拶してなかったよね?
奴ら全員やっちまえ!
ええっ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょう! それいま重要なんですか!?
いや。
とても重要、非常に重要、か・な・り重要だ。
ウチの会社は「企業文化」ってやつを大切にしてるんだ。そして今日の標語は「人と接するときは礼儀正しく格式を持て」だ。
まぁ、いま適当に決めたことだけどよ。
エ、エンペラーだ! 早くボスに連絡を!
待て、後ろにもう一人いる!
敵は餌を食わなかった、エクシア。
そっか、さすがのシラクーザの奴らだって、みんなバカって訳じゃないもんね。また次の機会があるっしょ。気にしない気にしない。
それよりも、みんなに紹介するよ。こちらが、我らペンギン急便の臨時メンバー、バイソンく~ん!
あの野郎退路をふさぎやがったな。や、やるしかねぇ!
死に急ぐな。今はそこで大人しく寝ていろ。
チッ! 慌てるな、ボスの支援が来るまで持ち堪えれば——!
持ち堪えれば?
ライト! オン!
まっ、眩しい! 何なんだこのスポットライトは!?
ヘイ! ようこそペンギン急便へ、子猫に子犬たち!
まず大切なコトを言っておくぜ。俺の視界ってやつこそが、俺たちペンギン帝国の領土なんだけどよ。お前ら、俺の視界にいるよな?
悪りぃけど、俺の帝国にいられるビザは持ってんの?
まぁ、持ってねぇよな?
じゃあ仕方ねぇ、強制送還ってやつだな。ママのところに泣きながら逃げ帰る準備でもしてもらおうか。