喧騒の掟 CB-7・戦闘前
11:08P.M.
ボス、ペンギン急便に動きがありました。
……想定内だ。奴に大した傷を負わせてなかったからな……
それよりもカポネだ。奴はどうした?
じ、実は一時間前から全く連絡が取れなくなっています。
……最後の定期連絡はどこだった? スラムか?
ええ、そうです。
やれやれ、奴には失望したぜ。
と言いますと?
まずは全チームに通達だ。元の計画に沿って、ペンギン急便の奴らを食い止める——
ま、一部の奴らにはもう連絡取れねぇだろうがよ。
それはどういう……あっ。
まさか——カポネさんがファミリーを裏切ったんですか?
ああ、俺にはアイツが考えそうなことなんて全部分かるんだよ。
俺たちはガキの頃から一緒に育ってきた。自分の手で父親の為に裏切り者をバラしたのが、俺の——俺たちの最初の殺しだ。
だがシラクーザの惨敗は俺たちを変えちまった。俺と奴の唯一の違いは、奴が臆病になり、俺は賢くなったってことだけだ。
奴はファミリーを売るつもりだ。つまりファミリーの名前を変えるんだな。
なら俺たちはどうすりゃいいんでしょうか?
……ペンギン急便は想像よりも手強い。敵をあんまりいっぺんに作らない方がいいかもな。
やはり、先に裏切り者を片づけるべきかもしれねぇな。
こちらは三差路、異常なし。
わかった。なら予定通りの作戦で行動しろ。
ちょ、ちょっと待て! 作戦ってなんだっけ?
あ? お前マジで言ってる?
いやぁ、ちょっと確認するだけだって。龍門はあんまり詳しくないもんでな。
安魂祭は0時過ぎから恒例のイベントが始まる。俺らの任務は人々がイベントで街を留守にしている間を狙って、ペンギン急便の連中を倒すことだろうが!
じゃあボスの——。
ウルセぇな。あれこれ聞くなよ。これは命令だ。いいから言われた通りにしてりゃあいいんだよ。早くしろ!
……そういうことだ。
俺のことは殺さない。約束だろ?
もっちろん。ありがとね、お兄さん。それじゃおやすみ~。
もしもしテキサス、聞こえる~?
こちらの状況と同じだな。奴らはチームを分散させた。
ただリーダー自らが戦闘に参加するからには、必ずもう一人が司令塔になり、部隊の配置を指揮しているはず。
そいつを探し出し、対処すれば全て終わりだな。
もしも~し? テキサスさん?
龍門の中心街に到着しました。だけど、本当に人が多いですよ。
敵の動向に注意しろ。
わかりました~! 街の仲間たちに監視してもらいますので……あれっ待ってボス、フロートの上に行くの? うわ、ちょっと待って——。
……クロワッサン、バイソン、聞こえるか?
テキサスさんが仰っていた、その司令塔に関して、少し意外な発見がありました。
……バイソンはん、頭低くしぃや。あの箱の後ろに隠れるで。見つからんようにな。
あっ、はい。テキサスさん、また後で報告します。
俺ら、これからはどうなる?
知らねぇよ。ボス……ガンビーノ・リッチの通信を切ってから、俺らにもう選択肢はねぇんだ。
はぁ……
何ため息ついてんだ。カポネさんは龍門で俺らのためにここまでしてくれたのに、結果はどうだ?
ガンビーノの奴、シラクーザから移ってきてからめちゃくちゃなことばかりしやがって、いいことなんて何もしてねぇ。
カポネさんの計画通りにいけてたら、こんな面倒なことをやらずに済んだろうが。
もう鼠王と話がついているのに、なんで殺しをしなきゃならないんだよ。ここはシラクーザじゃないんだぜ!
はぁ、ボス、というか元ボスは、自分の鬱憤を晴らしてるだけなんだろうよ。
へん、ガキか。
(なんや仲間割れしとるみたいやな?)
(みたいですね。これは絶好の機会です。ぼくたち——)
! そこにいるのは誰だ!
およ? この銃声どっからや?
またあのスナイパーか——! ぼくたちの居場所をバラした!
ペンギン急便がいたぞ! 奴らを逃がすな!
……バイソン様、申し訳ありません。これも旦那様からのご命令なのです。
しかしこともあろうにバイソン様を危険に陥れるなんて……
この件が落ち着いたら、私は暇を頂くべきですかな。
はぁ……
……向こうはトラブルが発生したようだ。
エクシア、マフィアのルートの確認が終わったら、クロワッサンと合流して。
了解~。
ソラ、そちらはどうだ?
えっと……彼らの動向は複雑ですが、二つのチームに分かれて行動しているみたいです。多分、罠かと——
そんなに複雑なことではありませんよ。敵の内部に問題が発生したようです。これはチャンスです。
きゃっ! びっくりした!
……お前、戻ってきていたのか。
なぜ仲間内のチャンネルをハッキングしているんだ。普通に通信をすればいいだろう。
こうする方が早いので。
ところでキミはいまどこにいるの?
ザ・サッドカフェですよ。今日は休日であることをつい先ほど思い出してしまってね。本来の業務を取りやめ、こちらのイベントに参加することにしました。
クロワッサンさんとあの新人くんの座標については、皆さんにはもう送ってありますよ。いや龍門ネットの通信速度は本当に気持ちいい程早いですね。
……わかった。各自の任務を遂行したら、それぞれ彼らのサポートに向かってくれ。
これは反撃の絶好の機会だ。
カポネさん、ボスがペンギン急便に奇襲を仕掛けた作戦は失敗したようです。
当たり前だ。あの馬鹿に何ができるんだ。奴のことは放っとけ。
……本当に良いんですか。
ファミリーに必要なのは生きていくための強固な基盤だ。名前がどうこうなんてどうだっていいんだ。
ところで、まだ鼠王は見つからねぇのか?
まだです。鼠王が残す痕跡が少ないもので……
辛抱強くやれ。奴はこの都市の一部、龍門の影のようなもんだ。俺らの時間はもう多くないが。
しかしもし鼠王に気づかれたら、我々は同時に三つもの勢力と対峙することに……
それは誰にとっても同じことだ。もし劣勢に立たされたなら、俺はむしろこの状況を混沌へと突き落としてやる。
おい、ガンビーノから何か言ってきてるか?
……
どうした? なぜ喋らないんだ?
おいおい水くせぇなお前。俺の声が聞きてぇなら、直接連絡を寄越せばいいじゃねぇかよ?
……どうやって入ってきたんだ?
どいつもこいつもお前と同じわけじゃねぇってことだ。親父の墓前で立てた誓いの言葉を、何の躊躇もなく踏みにじりやがって。
誓いの言葉? ああ、あんなのは単に俺らが同じ道を歩んでいたからだろ。だがな、今は昔と違えんだよ、ガンビーノ。
今のボスは俺だ。お前には失望させられたよ。だが俺はお前に弁明するチャンスをやりてぇと思ってるんだ、ブラザー。
フン。七年前、先代ボスが暗殺されたとき、俺はお前の指示でこの龍門に飛ばされた。
そう、俺がその指示を飲んだのも、ここでイチからビジネスを開拓して、シラクーザのファミリーの後ろ盾を作るっていう大義があったからだ。
しかし結局お前はシラクーザで失敗して、オメオメとこっちに逃げて来たよな。そして俺が苦労してイチから作り上げた全てを奪いやがった。
止せよ、お前はこんなちっぽけな利益にこだわるような人間じゃないだろ。そうでなきゃお前はとっくに死んでるさ。
なんとでも言え。俺はな、今になってようやく気付いたんだ。ファミリーで最も勇猛な牙ってやつこそが、最もファミリーに害を及ぼす元凶になってるってことがよ。
それでテメェの牙をへし折って、代わりに首輪でもハメて大人しくしようってのか? ハッ!
この龍門で、お前にこれ以上好き勝手させてりゃあ、俺たちは遅かれ早かれ時代の波に飲み込まれるんだよ。
へぇ、感動で涙が出そうだぜ。お前がファミリーのためにそこまで深く考えてるとは思わなかったぜ。
お互い様だな。
お前も腕が鈍ったな、カポネよ。
お前がシラクーザで受けた傷もヤバそうだな、ガンビーノよ。
やめろ。お前を殺したくはねぇんだ。
そりゃどうかな。本当はその逆だろ。
ハッ! 俺のことをよくわかってるじゃねぇか!
なに——。
ありゃ? 壁ブチ抜いて脱出しよ思っとったけど、なんや修羅場にブチ当たってもーたってやつか?
まぁええわ。えらいすんまへんな。どうぞお続けください。ウチらが道変えますよって。
早く追え! あの二人を逃がすな!
……これ無理みたいですね。
丁度いい、役者が揃った。全員まとめて——。
今度はなんだよ!?
ハローゥ! 来ちゃったよ!
……これは。全員揃ったようだな。
うーん、この感じは最終決戦ってやつかな? ちょっと早くない?
問題ない。こんな茶番は早く解決するに限るからな。
ボスの命令通り、縛り上げて河に流してやろう。
フッ、混乱すればするほど都合がいいぜ。
どうやら、ここから無事に抜け出せた奴だけが、今夜の勝者になるようだな。