慈悲光塔14-2・戦闘前作戦対策会議
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ウルサス炎カジミエーシュクルビアボリバルリターニアヴィクトリアイェラグカズデルシラクーザレム・ビリトンサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

名前

慈悲光塔 14-2・戦闘前

作戦対策会議

三十分前

ロンディニウム ハイベリー区 地下構造

ロンディニウム工員A

戻ったか。上の状況はどうだった?

ロンディニウム工員B

前と変わらんな。むしろ、もっとひどくなってるかもしれん。

前はお前んとこにタバコを借りに来る魔族の傭兵どもが恐ろしくてたまらなかった。あいつら、いつ殴り掛かってくるか分かったもんじゃないしな。だが今は――

ハハッ……空一面に、貪欲で残忍なマジもんのバケモンがうじゃうじゃ飛んでるときた。奴ら、人を血の塊に変えた時だって、瞬き一つしやがらねぇ。

正直な話さ、分かりやすい分、逆に寝付きが良くなったよ。もし奴らに出くわしたら、死ぬだけだからな。

ロンディニウム工員A

サルカズどもは今も誰かを捕えては、無理やり働かせてるのか?

ロンディニウム工員B

見てねぇな、そこまで遠出する勇気はなかったしよ。あいつら、どうやらもうこの都市を管理する気がねぇらしい。今や秩序を維持する人間さえいなくなっちまった。

そもそもの話、奴らがロンディニウムを完全に占拠するなんてありえねぇだろ? そんなことして何の得があるんだよ。本気でヴィクトリアの首都をカズデルまで移動させるわけでもあるまいに。

ロンディニウム工員A

さあな、俺はサルカズどもの目的すら未だによく分かってないよ。単にこの大地の人間を皆殺しにしたいだけなら、こんな面倒なことする必要あるか?

キャサリン

ハッ、感動的だね。素敵な未来のために仲間を裏切った奴らが、すぐにその未来に手のひらを返されようとしてるなんてさ。

ロンディニウム工員B

……

ロンディニウム工員A

こんなことになるなんて誰も思わなかったんです。キャサリンさんも分かるでしょう? 俺たちも本意じゃなくて。したくてしたわけじゃ……

キャサリン

何が本意だ。ビビってあたしらを都市防衛軍に引き渡すことにしただけのくせに。まったく、お優しい男どもだね。最優秀市民賞を授与してやりたいくらいさ。

ロンディニウム工員B

キャサリン、俺たちは……

キャサリン

まっ、これ以上追及しても意味はないし、そんな暇もないけどね。少なくともあんたらは、あたしとフェイストの首を切り落としてサルカズどもに差し出しはしなかったわけだし。

今考えるべきは、これからどうするかだよ。

ロンディニウム工員A

ここはまだ隠れ家として使えます。俺たちの方がサルカズどもより絶対にこの地下構造に詳しい――

キャサリン

トミー、それがあんたの考えかい? 鼹獣(えんじゅう)みたいに一生地下に潜ったっきり、二度と顔を出さないって? いっそ棺桶の中にでも引きこもってな。

前にあんたらがした「正義の行い」を咎めるつもりはないさ。他の選択肢があるなら、戦いに行きたがる人間なんていないだろうからね。けどね、今や戦場はあたしらの故郷にあるんだよ。

もうどこにも逃げ場なんてないんだ。

覚悟を決めな。それで、前に、まともな武器を入手できるツテがあるって連中に会ってね。次は――

ロンディニウム工員A

雷の音か?

ロンディニウム工員B

いっそのこと、大雨でも降ってほしい気分だ。

ロンディニウム工員A

なんだよ、この揺れ? ロンディニウムが出航するのか?

でも動力エリアは――

キャサリン

妙だね。

上まで様子を見に行くよ。用心しな。


キャサリン

……

ロンディニウム工員A

キャサリンさん、どうしたんです? 窓辺で止まんないでくださいよ!

この角度からはちょうどザ・シャードを、あの巨大な塔を望むことができる。

それは、ロンディニウム人にとって何よりも見慣れた光景であり、かつてはあらゆる誇りの源だった。

しかし忌まわしくもあり、親しみ深くもあったあの厚い雲は、今やすでに消えていた。

キャサリン

……ザ・シャード上空の……あれは、一体何だい?

あんたら、今すぐ全物資をかき集めて、まだ連絡のつく奴ら全員に伝えな! 地下構造のもっと奥まで撤退するよ!

早く、早く!


十五分前

ロンディニウム郊外の戦場 シルバーロックブラフス付近

カスター公爵

……もうすぐシルバーロックブラフスよ。艦隊の進軍が間もなく始まるわ。

私は数日前のウェリントンとの通信で初めて今回の作戦を知った。

その時最初に頭に浮かんだ言葉が何だか分かるかしら?

上級士官

ウェリントン公爵の考えは、「あまりに過激すぎる」とお考えになられたのでは?

カスター公爵

過激? 狂気的って言いたいのなら隠さなくていいわ。

上級士官

ええ……狂気的という他ありません。彼が要求してきたのは公爵連合軍の全軍――弩級戦艦十三隻、突撃艦四十五隻、砲艦百七十二隻……

輸送艦八十六隻、補助艦十隻、及び全大砲、予備隊を含む合計十八万の兵士の全てを前線まで送ることだったのですから。

その上、通信の形式も単なる通達であり、ほとんど命令に近いものでした。

それだけでなく、ウェリントン公爵は従来のガリア式艦隊編成を放棄し、複数の防衛ラインを築くことなく、全縦隊をナハツェーラーの戦線に向けて同時に一直線に突撃させるよう指示を下しました。

計画によれば、我々とゴドズィンの役目は火力制圧で、後方に控える敵の術師を一掃することです。そして、ウェリントンの先鋒縦隊はナハツェーラーの中心部隊に猛攻を仕掛ける予定です。

サルカズたちが占拠するシルバーロックブラフスは、レッドメイン山脈とダスクグロー川を隔てる難攻不落の要害です。

たとえ我々が前線で勝利したとしても、敵はたやすくロンディニウムに逃げ込めるでしょう。

公爵様、もしも今回の指揮官がかのウェリントンでなかったなら、私は全力で反対意見を表明しています。

カスター公爵

でもあなたや他の上級参謀は、結局同意した。

上級士官

皆が軍事学校の教科書でこれと似た戦術を目にしたことがあるのです。四国戦争の頃にかの伝説の戦役にてウェリントン公爵が用いたものとほとんど同じ戦術でした。

この策によって、ヴィクトリアとリターニアの連合軍がガリア軍のファランクスを三つに断ち割り、ガリア人たちの抵抗を打ち砕いたのです。

あの一戦は、それから数十年に渡るヴィクトリア発展の軌跡を変えました。

カスター公爵

過去の成功に浸るなんて……必ずしも良い兆候とは言えないわ。

上級士官

公爵様も、鉄公爵は老いたとお考えですか?

カスター公爵

ウェリントンは間違いなく戦争の天才よ。

彼は鋼鉄の戦艦を、リターニア人が楽器を奏でるかのごとく自然に操る。何年も生きてきたこの私ですら……あれほどの人物は彼以外に知らないわ。

あの男は、過去の栄光を盲目的に追いかける愚者になりはてはしない。

私たちにとってはサルカズの問題を解決してからが、真の戦いの始まりよ。

そして今、この瞬間……

前哨戦の終わりを決する勝利を求めているのは、ウェリントンだけではないわ。

上級士官

はい。サルカズはザ・シャードを支配下に置き、すでに発射にも成功しています。いつでも我々、果てはヴィクトリアの他の地区にまで攻撃を仕掛けることができるでしょう。

しかし従軍学者たちの予測によれば、たとえサルカズが再び天災を利用しての攻撃に及ぼうとも、公爵連合軍が被る被害は許容範囲内に収まるとのことです。

我々の最終戦略目標の達成には差し支えないでしょう。

サルカズはロンディニウムを航路から逸脱させた後、一度も燃料を補給しておりません。今や、あれは進退窮まる都市でしかありません。

我々がシルバーロックブラフスを攻め落とせば、サルカズどもは要害を失い無防備となります。ロンディニウムへ向かう連合軍の航路を阻むことも叶いますまい。

全てが上手くいきさえすれば、間違いなく――

カスター公爵

この無意味な睨み合いをいち早く終わらせることができる。

だけど、「睨み合い」というのは――何もサルカズとヴィクトリアのことじゃないわ。

カスター領から電報が届く間隔が日に日に短くなってきてる。支持者たちの不満は分からないでもないけど、戦争って……本当、高くつくわ。

約束の実現があまりに遅れてしまえば、それは守れなかったのと同じなのよ。

上級士官

「ガストレル」号の砲声……?

ウェリントン公爵の進攻が始まったのでしょうか? ですがまだ予定の時間には早いのでは?

遠方から広がりつつある赤い光は、一体――

公爵様、ザ・シャードの塔頂から光が放たれている模様です!

カスター公爵

今すぐウェリントンに連絡を入れなさい。私たちは――

ドクター


アーミヤ

ドクター! 大丈夫ですか!?

ケルシー

Mon3trが衝撃の大半を引き受けた。ドクターは無事であるはずだ。

ドクター

ケルシー

幸い、我々は峡谷の中に落ちた。具体的な位置はいまだ不明だが、少なくとも戦場の中央からはかなりの距離がある。

クロージャ、ホルン、シージが付近の偵察に向かった。すぐに詳細な情報がまとまって届くだろう。

人員及び設備の被害状況は目下計上中だ。あらゆる緩衝措置を取るよう努めたため、差し当たって被害は許容範囲内に収まったと言えるだろう。医療班とエンジニア班はすでに仕事にかかっている。

アーミヤ

ですが、もっと不安なことが起こりつつあるんです。

ドクター

外の空が……

一面、真っ赤に染まっていた。

ケルシー

ドクター、足元に気を付けて、ついてきてくれ。

広がりゆく苦難が、見渡す限り隅々まで侵蝕していた。

遥か彼方のザ・シャード塔頂部を中心として、源石が浸食可能なあらゆる物質に取って代わりつつある。

建物は埋もれ、戦艦は呑み込まれ、軍隊は咀嚼された。そしてその境界は、肉眼でも見える速度で今もなお拡大中だ。

そこにはこの大地における未曾有の惨禍が広がっていた。過去最悪の天災ですら、これと比べれば小さな池の水面に出来た波紋程度でしかないだろう。

しかし、そのうねる源石結晶の中を行軍する軍隊があった。掲げられたボロボロの軍旗が、この角度からでも確認できる。

苦難は、サルカズが敷いた絨毯に過ぎなかった。

飽食を知らぬサルカズの軍隊が、今慟哭の上を行進している。

その牙の届き得る、あらゆる敵に向けて押し寄せる。


果てしない荒野に、血の色を帯びた巨岩がポツンとそびえ立っていた。

狂風はいつの間にか止んでいる。霧が下から上へ、広がっていく。

枯れた草むらからは物音一つ聞こえない。だがいつからか、そこには無数の朽ちた布切れが掛かっていた。

一人、また一人と、死よりも深い静謐を湛えたサルカズの戦士がその前に立つ。

彼らは待っているのだ。腐敗と死の象徴を、戦争の支配者を――彼らの王を。

死の匂い漂う濃霧の中から、枯れた影が姿を現した。

彼は切り立った崖の上に降りた。

冷たい沼地を越え――

――寒霧の中から滲み出し、風砂の中から析出し、枯草の中から生え出でる。

そうして彼は、法陣の中央に降り立った。

ぼろぼろの布切れが、鮮血で満たされた石柱に引っ掛かっている。まるで筋骨の剥き出しになった手が、優しく墓石を撫でるかのように。

ナハツェーラーの纏う布切れは、カズデル城壁外になびく旗と同じく、どれもかつて存在したサルカズの各部族が掲げてきた軍旗である。これを知るのは、最も経験豊富な戦士だけだ。

当初の姿はとうに失われていたが、どれも戦争の匂いが染み付いている。

ネツァレム

……

鮮血の主、「君主の紅」ドゥカレ。

我輩とその方は、決して親しい仲などではない。

しかしその方と、その血が戦争にもたらした貢献は認めよう。

その方の生涯に渡る栄誉と恥辱を、我輩が見届ける。

霧中の巨獣を殺し、時間を束縛せし者。

血脈相合わす魔王を処刑し、王庭を転覆せし者。

その方は我らが歩む道、そして黒き王冠の意義を否定したが――

それでもなお、最初で最後の一雫たる血をサルカズに還した。

これによりその方の力が失われることはなかろう。その怒りも、恨みも、悲願もまた。

――彼は両腕を広げた。

腐敗を纏う黒霧が漲り、巨岩を一つ一つ呑み込んでいく。

真紅が色褪せ、砂の中に沈み出し、霧の中に溶けていく。

戦士たちは黙して語らない。しかし古の巫術が戦場に広がりつつあり、大地の奥底からは低いうなり声が伝わってきた。


「戦士は己が骨と血で戦を育む。」

「戦は戦士の骨と血を抱く。」

「生者よ、死者よ。」

「我ら、共に行軍せん。」

黒い霧が散った。

一雫の血が、ネツァレムの杖の先に凝結する。

最も純粋な血。唯一、腐敗と死に汚されることのない血。


サルース

……それが、「ティカズの血」。

「アナンナ」を呼び起こしながらも、それ自体は戦争法陣の中に失われてしまった。聴罪師は、その内の七十以上の法陣をしらみつぶしに調査したけれど、正確な位置は掴めなかったわ。

あなたがいて幸いでした、ネツァレム閣下。ついに見つけ出したのですね。摂政王殿下も喜ぶでしょう。

深紅の液体はサルースの元へ漂っていき、彼女の腕の中に流れ込んだ。

ネツァレム

失うことのなきよう、聴罪師。

サルース

もちろんです、閣下。自分の持つ全ての血脈の力を使って……命に代えても守り抜くと誓います。

ところで、このブラッドブルードの法陣は今も稼働しているのですね。

大君はどうなったのですか? 最も純粋な血脈、最も残酷な王庭の主、比類なき力を持つかのサルカズは。

本当に、こんなにもたやすく亡くなったのですか。あんな……あまりに若きバンシーと、子ウサギの手にかかって?

ネツァレム

いまだサルカズの魂に帰ってはおらぬ。だが遠く去ってしまったのは事実だ。

サルース

これほど多くの血が無駄になったなんて、残念ですね。

ネツァレム

……血脈を弄びし者よ。その方の軽薄さと不敬でこの戦場を、死そのものを、冒涜するでない。

サルース

う……

申し訳ありません、閣下。私はただ、大君を偲んでいただけです。

ネツァレム

ならば、彼が遺した物をゆめ失わぬよう。

彼の血は、我らと共に戦うであろう。

サルース

ええ。枯朽の王庭の主よ。

「ティカズの血」は、今もその使命を成し遂げようとしています。「アナンナ」は、ほんの一度の震えで空を真っ赤に染め上げ、大地の形を作り変えることができるのです……

それが完全に降臨した時、サルカズの魂の望み通り、源石が二度と我らの運命を弄ぶことは――

ネツァレム

運命だと?

戦争は、あらゆる障害を打ち砕く。たとえそれが「運命」と呼ばれるものであっても。

数多の戦争祭壇に守られながら、枯木の王座が上昇し、戦場に大きな影を落とした。

戦士たちは無言で列をなし、その異様な天災の中に足を踏み入れ、前へ進み続ける。

ネツァレム

我らは嵐に先駆けて進軍する。

生者か、死者かを問わず――

この戦争は、全てのサルカズのものとなる。


マンフレッド

……

新たな始まり、か。

若い士官

将軍、今度はどちらの殿下の言葉を思い出してたんですか?

マンフレッド

……どちらでもないな。

カズデルの中心にある炉を思い出していた。

若い士官

あはっ、あのでっかいあれですか。ロンディニウムに来る前に、何度かあれに餌をやる儀式を見たことがありますよ。

戦士たちは死後、あれと一つになることを誇りとします。皆が進んで、サルカズを前へ推し進めるための炎になりたがるんです。

だけど、いくら食べても満足しないみたいなんですよね。レヴァナントの怒りの炎はますます燃え盛る一方なので当然ですが。

マンフレッド

ナディーン……君はあのカズデルと名付けられた移動都市を、「故郷」と呼ぶのか?

ナディーン

今更どうされたんですか。そのために今我々は戦っているのでは。

私はカズデルの外、戦場で生まれ育ちました。城壁と航路の下に埋まっているのは黒い石か、私たちナハツェーラーの骨かのどちらかです。

カズデルでないなら、私たちの故郷は一体どこなんです?

マンフレッド

……そうだ。それ以外の答えなどありはしない。

未来に関して、少なくとも一つ確かなことがある。新たな始まり……そしてこの戦争の終わりは、どちらも同じ場所になるということだ。

ウルスラと連絡は取れたか?

ナディーン

いえ、まだです。ブレントウードは一掃されましたから。

それと、将軍の予想通りでした。つい先ほど偵察術師が巨獣の骨骸が移動時に残す痕跡を発見しました。奴らはロンディニウムに……いえ、ザ・シャードに直接攻撃を仕掛けるつもりだったようです。

マンフレッド

……私は彼らに機会を与えたのだ。あまりにも多くのな。

ナディーン

ウルスラ軍令長が大変な失態を犯したのは間違いありません。何かしらの筋の通った説明が必要でしょうね……生きていればの話ですけど。

マンフレッド

骨骸の墜落位置は特定したのか?

ナディーン

大体の方角は把握してますが、この広い戦場で探し出すにはもう少し時間が必要です。私が直接部隊を連れて出向きましょうか?

マンフレッド

いや、私が自ら指揮を執ろう。

巨獣の脊椎を奪還、もしくは完全に破壊する。二度と他の者の手に渡すわけにはいかない。

ナディーン

将軍自ら前線に赴くと?

マンフレッド

あの傭兵たちはつくづく我々の計画の妨げとなっている。徹底的に排除せねばならない。

だがその前に……まずはこの儀式の終わりを待とうか。

ナディーン

我らナハツェーラーの儀式を見届けるんですか? 前はこういう伝統にあまり関心なさそうでしたけど。

マンフレッド

サイクロプスに、リッチ、ウェンディゴ……バンシー。去りゆく者は増えるばかりだ。

若きナハツェーラー。君でさえ、カズデルで今挙げた王庭の者たちを見たことは多くあるまい?

ナディーン

そうですね。我らナハツェーラーを除けば、一番多いのはブラッドブルードでしょう。彼らの多くは良き隣人とは言い難いですが、ロンディニウムに来てからは、あの匂いがないと変な感じがします。

マンフレッド

ああ。そして今や、亡者の血は故郷に帰った。

鮮血の王庭に次の主が現れることはない。

サルカズには……あと何人の君主が残っている?


「ジジッ――」

「司令部、聞こえますか。後方支援部隊がスフリオ峡谷付近にて突発的天災に遭遇しました。」

「恐らく天災かと思われますが、定かではありません……我々は源石の波に呑み込まれました。」

「艦船は動力を失い、火砲も深刻な損傷を受けています。いえ、ほぼ全システムに重大なエラーが発生しています!」

「報告します。防御設備は故障……アーツユニットも反応がありません……繰り返します。重大なエラーが……」

「敵の接近を目視しました! 凄まじい火力です、可動式アーツ装置が……ジジッ……」

「データ……自動記録……」

「グレーシルクハット」

この情報が送信されることはなかった。

全通信システムが鉄クズと化してしまった。この鉄の箱を守るために、多くの者が命を落とした……

……あなたたちに敬意を表する。

ふぅ……かがんだだけで腰が痛む。やはり帽子を取るのはやめておこう……

我らの敵は、まったくもって予測が困難だよ。そうだろう? ザ・シャードに関する情報はもはや部屋中を埋め尽くすに足る量となっている。

だが今のこの状況は……やはり……我々の失態の証明だな。

シルクハットを被った男が、もう一方のシルクハットを被った人物をじっと見つめる。

片方は地面に倒れたまま微動だにせず、胸から下が黒い結晶粉末混じりの土の中にすっぽりと埋もれている。しかしその左手に固く握られた小さな箱には、粉塵の汚れ一つついていなかった。

「グレーシルクハット」は戦死した同僚の帽子を少し下げてやることで、元より知られざる顔を完全に覆い隠した。

通信機を取り外すのにはさらに多くの時間を要した。しかし幸い戦争が始まってから、彼はこうした「納棺」の仕事にますます慣れつつあった。

「グレーシルクハット」

情報回収完了。

……通信にはまだ強烈なノイズがかかっているな。

多少回復しただけでもマシか……

「ファイフ公爵の第六歩兵大隊が待ち伏せを受けて、クラムリー附属区画への上陸作戦が失敗しました。」

「ゴドズィン公爵の偵察艦隊が行方不明です。チェットリーが陥落しました。」

「謎の地質変化により、シルバーロックブラフスの前線が大規模な打撃を受けています。活性源石の濃度が安全閾値を超えました。」

「グレーシルクハット」

どれも、いい知らせとは言い難いな。

……近くにまだ軍隊がいるのか?

識別コードは――

まさか……こんな奇跡があるとは。私の運も捨てたものではなさそうだ。

ん?