慈悲光塔 14-3・戦闘前
鉄床戦術を破れ
作戦開始から十三時間後
状況はますます悪化しつつある。
新たに生まれた谷、流れが変わった川……かつて巨大都市の航路であった道は完膚なきまでに破壊され、作り変えられた。今や誰一人としてその全貌を知る者はいなくなっただろう。
地図はもはや紙くずと化した。小道の一つ一つを探索し直す必要があるな。
なれど、「ティカズの血」は間違いなくこの方角にある。我との繋がりが震えておるゆえに。
戦場の中心に近づくほど、あらゆる「情報」と源石との結びつきが増していく。
岩石、土壌、水と生命……テラにおいて源石の影響は至る所に存在するが、その作用の根本的なメカニズムについては、誰もがとうに忘れているのかもしれないな。
ケルシー、今「情報」と言ったか?
……
君もすぐに理解するだろう、ドクター。
あるいは……いや、忘れてくれ。
源石に侵された土地が広がりつつある事実は、客観的に見てテレシスの軍事行動に有利に働く。ヴィクトリア人の戦線はほぼ完全に破壊されてしまった。
だがこれらの源石の活性化の度合いは、以前までの一見恐ろしく見える「天災による打撃」とはおよそ比較にならない。
テレシスがほんのわずかな戦術的優位のために、これほど無闇に源石を利用することはあり得ない。それがどんな結果を招くかは承知しているだろうからな。
この旅には数多の困難が待ち受けていそうだ。
あれ、向こうから車が走ってきますよ?
「止まれ」。
輸送車はふらふらとふらつきながら動きを止めた。すると中から、見知った顔の数人が降りてきた。
バンシー様……それに、「魔王」様まで。
だからこの道はダメだって言ったじゃねぇか! 今度こそ絶対逃げらんねぇぞ!
でも、この人たちは悪い人じゃなさそうよ……
あなたたちは……「ライフボーン」に残っていたはずでは?
ええと……そ、その、白状します……
バンシー様、魔王殿下……僕たちは、とても怖くなったんです。あのままあの骨骸にいたら、また何かに巻き込まれるんじゃないかって。だから逃げ出してきました……
大罪だとは分かっています! けど……僕たちがいたところで所詮役立たずじゃないですか?
お願いします、ど……どうか命だけは見逃してください。鞭打ちの刑なら喜んで受け入れます! 何発打たれようと構いません!
……命は取りませんし、そもそもあなたたちを戦わせるつもりはありません。
ここから逃げたいのでしたら、逃げても構いませんよ。
ありがとうございます、本当にありがとうございます! やはり魔王殿下は皆、知恵と慈愛に満ちたお方――
私たちも一緒についていってもいい?
シッ――口を閉じたまえ! 魔王殿下に命を見逃されただけでも、十分ありがたいことなんだぞ! 欲をかくな!
バカ言わないで。私たち三人とこのオンボロ車じゃ、どっかで爆発に巻き込まれて死ぬのがオチよ。
魔王殿下、お願いします、私たちをこの戦場から連れ出してください。何でも差し上げますから。この二人を生かしていただけるなら私は……あなた様に忠誠を誓います。
えっと……そういう問題ではなくてですね。私たちについてくると今と同じくらい危険な目に遭うことになるんです。
ドクター、どうしたらいいでしょうか?
はい……
ま、まままさか! そんなつもりは毛頭ありません!
二度と傭兵稼業なんてやらないと誓います! 決して!
そう考えると、やっぱり一緒にいた方がリスクは少ないかもしれませんね。
ドクター……本当にそんなことするんですか……?
いえ……また冗談言ってるだけですよね。
分かりました、運転手さん。しばらくついてきても構いませんよ。
この戦域を抜けたら、ヴィクトリアからは遠く離れた場所に向かってくださいね。
感謝する。
助かったわ……それにこの車なら、殿下たちが乗れるわよ。
いやあそれにしても、魔王殿下のなんと慈悲深いことか。僕はもうどうやって報いればよいものやら……
コイン。
はっ?
我が授けたコインがあったであろう。
ああ、すっかり忘れておりました! ははっ、幸いまだ手元にあります。どうぞ、お受け取りください!
お許しください、僕が間違っていました! バンシー様にご奉仕できるだけで光栄に思うべきなのに、その上あなた様からご好意まで受け取ろうとするだなんて!
……
うぬの中の我が、そのように吝嗇な人物像でないことを願う。
我が確かめたかったのは、彼らが依然として「彼ら」本人であることだ。
そう緊張せずともよい。我に悪意はない。
Logosが指を動かすと、手のひらの上のコインが瞬く間に消え失せ、次の瞬間にはまた資産家の手の中に戻っていた。
資産家は掲げただけで地を揺るがせるLogosの手をしばらく見つめる。そして手の中のコインに目を向けた後に、バンシーの真剣な表情を見て、大いに困惑した。
こ、これはマジックか何かですか?
……ははっ、素晴らしい腕前ですね。バンシー様は本当に多才なお方だ!
えっと……その、では僕は運転手のところへ、車の発進を手伝いに行ってきますね!
……
うむ。ScoutとOutcastの手本を幾度か目にしただけで熟練の動きとは言い難いゆえな。さほど効き目はなかったようだ。
ドクター、我らが培ってきた数多の思い出が露と消えてしまったこと、我も時折口惜しく思うぞ。
今後、昔話に興ずる暇があらば、己の過去の逸話にうぬ自身も驚くやもしれぬぞ。
さておき、今は出発するとしよう。
この辺り……何の音も聞こえませんね。
奇妙なくらいに静かです。私たちの呼吸音や、車の移動音も聞こえませんし……自分の鼓動の音さえも感じません。
何かのアーツでしょうか? 誰かが自分の動きを悟らせないように一帯の音を全て遮断したとか?
いや、アーミヤ、よく耳を澄ませ。
音がこの地から去ったのではない。ただあまりに巨大な音が轟いておるがゆえに、その他のいかなる存在も敵わぬだけだ。
この地に巣食う死は……まるで耳をつんざくかのようだ。
見てください、あそこ――
あの葉っぱ……
奇妙なほど艶やかな色の葉っぱをつけた植物が、低い場所にある。その色はまるで画家がでたらめに塗りたくった絵の具か、太陽に照らされて怪しく煌めく油のようだ。
……
あれは腐敗しておる。
衰朽が大口を開け、目にしたもの全てを食ろうておるのだ。極彩色の噛み痕のみを残してな。
いくつか言葉を交わしただけだったが、その間にも煌びやかで異様な色彩は植物全体に、果ては草むら全てに広がっていった。
肉厚だった葉っぱもすっかり変わり果てて、液体となって滴りながら、交錯する葉脈だけがかすかに揺れ動いている。
さながら肉を食らい尽くされた後に投げ棄てられた鱗獣の骨のようだ。
風がどんどん強まりつつある。皮膚が引っ張られるようだ。
それは食らってなお、満ち足りぬことを嘆くため息だった。
Logosさん、沼の中です!
銀色の呪文が流れ出し、沼の奥へと押し寄せていく。
やったか?
……いや。
くぐもった水音が広がって、死の静寂に包まれた空間に反響している。
何者かが汚泥から足を引き抜いては、また踏みつける。濁った波が岸辺にまで迫ってきた。
戦闘準備をしてください。ドクター、私の目の届く距離から離れないように!
黒いアーツが沼の奥に打ち込まれた瞬間に、轟音は瞬時に消え去った。まるで何かに呑み込まれたようだ。
その両足は再び持ち上げられ、踏みしめられた。先ほどと同じリズムで同じ波紋を浮かべながら。
濁った水に、ぼろぼろの裾が浮かび上がる。波紋と波紋がぶつかり合って乱雑な模様を作り出している。
……
Mon3tr。
(警戒したように低く唸る)
Mon3trの口からまばゆい光が吐き出された。槍のようなその光線が沼の中へと消えていく。
すると、水音にようやく変化が現れた。
ふむ――
突如として切迫した足音がいくつも聞こえ始めた。この場所から長きに渡って失われていた音が一斉に蘇り、鮮明に、けたたましく響き出す。
……
死が……お前たちに追いついた。
なんだこいつは、こっちに来るな!
危ない!
「檻」。
Sudaram……「霊骸布」。
亡骸を包む衣。
奴の身体はとうに朽ちている。通常の攻撃では到底決定打にならない。
これはナハツェーラーが生来操る巫術だ。あるいは……古来よりの伝統とも言える。
ナハツェーラーは命を貪ることで肉体を育む。だが普通の肉体は、やがて成長の限界を迎えるものだ。
臨界点に達すると強大なナハツェーラーは自らの肉体を使って弱き同胞を養う。それにより奴らは極限のスピードと恐るべきパワー、そして生身では耐えられない巫術のエネルギーを得る。
そのおかげでナハツェーラーはより強大な生物となり、彼らの社会も発展してきた。落葉が土地を育み、土地が新たな命を育てるように、死と生が循環を作り出している。
「満ち潮」。
沼の泥水が急速に湧き起こり、カーテンのようにナハツェーラーの身体に被さった。
それと同時に、その場の全員の身体に呪文が纏わりつき、侵入しつつある腐敗を防ぐ。
こっちです! 早く! 森の中に逃げ込みましょう!
ぬかるみを踏むでないぞ。
沼が盛り上がったのか、それとも空中に漂う霧が沈んだのか。真っ黒な地面が口を開いたように見える。一行の動きはどんどん鈍くなり、もはや息をするのさえ一苦労だった。
――「生きる」とは、ここまで力いっぱい足掻かねば叶わぬのか。振り返り「死」を受け入れれば安らかに眠れるのに。期せずしてその考えが全員の脳裏によぎった。
Mon3tr――ドクターを守れ。
(急かすように低く唸る)
敵が来ました!
唯一の音が、突如振り下ろした錆びだらけの大剣から響き渡る。
死と共に歩むナハツェーラーが間近にまで迫っていた。
――
(鋭い雄たけび)
Mon3trまで……苦痛を感じてる?
いかなる生命も、やがては凋落する。
ひとたびナハツェーラーの巫術に囚われれば、我らの生命力は養分と化し絶え間なく流れ出てしまうのだ。
速い……!
泥の中から湧いたのでしょうか? それとも、木から生えてきたのでしょうか?
どちらもあり得る。
ナハツェーラーは生まれてから死に至るまで、栄えてから枯れるまでの循環の全てを吸収し、彼らを育む種へと変えることが可能だ。
次々に溢れる巫術のエネルギーが、私たちに向けられているのを感じます。
あの敵からだけではなく……沼や、森の至る所から。
我らはすでにナハツェーラーの弔旗の内におる。
奴は死を我らの頭上に掲げておるのだ。
この巫術障壁を突破できねば、奴に打ち勝つことは叶わぬ。
はぁ……はぁ……坑夫、僕は、ここで死ぬのか?
……
彼は疲れきっているわ。資産家、私の手を取って。はぐれちゃダメよ。私が……
運転手さん! 私の手に掴まってください、倒れちゃダメです!
私が……
意識が朦朧としているみたいです。これ以上は支えが……!
通常の治療は意味を成さない。ナハツェーラーの巫術が全員を呑み込んでいるからだ。
大丈夫よ、放して。
あなたを……巻き込むわけには、いかないわ……
ハッ……いいから、置いていってちょうだい。
分かってるわ。私たちがいなければ、あなたやバンシー様は、もっと楽に……戦えるんでしょ。
ダメです。
戦場から連れ出すと約束した以上、私たちは仲間ですから。
そう……なの?
まあいいでしょう。
血の匂いが広がりつつある。
運転手さんたちがケガを負ってしまいましたから……
いや。これは……血の巫術だ。
え?
まさか……この森にはナハツェーラーの他に、ブラッドブルードまでいるということですか?
うっすらとした血の霧が周囲に浮かび上がる。
以前に目にした、鮮血の王のアーツとは全く異なっていた。それは辺りを覆い尽くす腐敗の霧から絞り出された、数本の糸のように微弱だった。
だがそれらの糸は、淀んだ空気をそっとかき混ぜていた。
アーミヤ、風向きを感じ取るのだ。
我がこの「弔旗」を織りなす痕跡を暴き、最も脆い部分を見つけ出す。
……分かりました。
黒いアーツが、アーミヤの前で一本の槍を形作る。
Logosは手を掲げ、霧の奥を指差した。
「貫け」。
(重苦しい唸り声)
死を告げる者よ。
お前は……腐敗の蔓延を防いだ。
だが、覆ることはない。
死は……
お前を棺に納めるだろう。
それに疑いを抱いたことなどない。
「散れ」。
大剣が、さながら墓石のように泥に突き刺さった。
ナハツェーラーの纏う布がばさばさと音を立てる。
ほんの一瞬の間に、大きな体躯は崩壊し、後にはただひらひらと舞い落ちる数十枚のボロ布だけが残された。
し、死んだのですか?
ようやく息ができるように――
カチ、カチ。
骨と骨が擦れる音。
枯れたように細い腕が泥の中から伸びてくる。
え? あっ――!
油断しないで。
腐った……?
見た目はそうね。
ふぅ……運転手、君、いつからそんなに強くなったんだい?
魔王殿下、そろそろここから離れない?
ええ、ナハツェーラーが再び目覚め、追いついてくる前に……離れた方がよさそうです。
こんなところにブラッドブルードの法陣があるなんて。
いまだ動いているようだな。
「霊骸布」との戦闘の際、突然現れたブラッドブルードのアーツは……これが原因だったとか?
恐らくそう単純な話ではない。
先ほどのアーツは、確かにブラッドブルードのものだった。アーミヤ、君なら分かっているはずだ。
ブラッドブルードの……眷属でしょうか?
私も予想はしていました。ブラッドブルードの大君がすでに戦場から去っていようと、彼が撒いた祝福は易々と消えないのではないかと。
ですが問題ありません。前と同じく、持てる力全てを尽くして、あの歪んだ生命に安息をもたらすだけです。
Logosさん、私と一緒に――
……アーミヤ。
血痕にまみれた巨岩の背後から、その音はますますはっきりと聞こえてきた。四肢と地面とが擦れ合う音。これまでの戦闘で幾度となく聞いた音だ。
アーミヤはLogosから向けられる眼差しに気づいた。
彼が見ていたのは石柱ではなくアーミヤだった。その目の奥に、ある感情がよぎるのが見えた。
哀しみだ。アーミヤは一目でそれを悟った。
この戦争が始まって以来、何度もそれを感じてきた。敵から発せられることもあったが、多くの場合……隣に立つ仲間から感じることがほとんどだった。
……運転手さん。
……
魔王殿下。
いつからですか? ……ナハツェーラーとの戦闘の時ですか?
ええ。
あの骨骸を離れた時に、持ち出してきたのよ……前に軍事委員会から運べって言われた石をね。
それは以前に、私たちの力を増幅させてくれたわ。もしかしたら、戦いになっても役に立てるんじゃないかって思ったの。
ほら、実際少しは役に立ったでしょ?
あの奇妙な敵を、あなたたちと一緒に倒せたわ。以前までの私だったら考えもしなかったことよ。
ブラッドブルードが遺した血色の結晶を使ったな。
身体に突き刺したのか? いや、それではここまで激しい変化は起こらないはずだ。
欠片の一部を呑み込んだな。
君は自ら進んで、ドゥカレの血とアーツを受け入れた。
元々私にはブラッドブルードの血脈が流れているの。とても薄い血ではあるけど……わずかでも確かに、大君の呼び声を感じたのよ。
あのヒルたちがサルカズ傭兵の死体から這い出てくるところは見たことがあるわ。だから、私が血を受け入れた結果どうなるかを知らずにこんな真似に及んだんじゃないかって心配は無用よ。
私は、本物の虫けらみたいにぬかるみの中でひっそりと死んでいくのはごめんだわ。だったらむしろ、より強い力を受け入れて、それなりに真っ当なサルカズとして戦場で死にたい。
あの時もそう考えていたの。数ヶ月前、荒野であてどなく車を走らせながら、ラジオから流れるロンディニウムの話を聞いた時に……
次の瞬間には、どういうわけかこっちの方向にハンドルを切っていたのよ。
資産家からは騎士小説の読み過ぎだって言われたけど……バカ言わないで。カズデルに騎士が必要ないことくらい、誰だって分かってる。
私はただ確かめたかっただけよ。自分だって無為に時間を浪費するだけじゃなくて、何か意味のある人生を生きて、目標のある道を歩めるんじゃないかって。
それから、あなたに出会って分かったの。「魔王の歩む場所こそが道」なんだって……私たちはその道の上で……共に肩を並べて戦ったわよね。
そして今、戦いはひと段落ついた。仲間の多くも生き延びることができたわ。
だから魔王殿下、私のことは好きに処分して。
しょ、処分だって? どういう意味だ?
運転手、どうしてそんな……そんな姿に……
恐ろしいかしら?
……
魔王殿下、お願いします、運転手を助けてやってください! そ、それからバンシー様も、このコインはお返しいたします! 今の僕が持つ、唯一の財産です!
この者の状態は巫術が誘発したものであり、巫術がもたらしたものではない。
たとえ我や、アーミヤ、ケルシー先生でさえ、うぬらの眼前にある結果を覆すことは叶わぬ。
ではどうすればいいんですか? まさかあの赤い虫けらと同じように殺すつもりですか?
資産家、下がりなさい。これは私自身が望んだことよ。
魔王殿下、私聞いたことがあるの……サルカズの最も勇敢な戦士は死ぬ前に魔王から褒美として、「理想の光景」を見る栄誉を賜えると。
その、私にそんな資格があるかどうかは分からないけど……
……
アーミヤは手を掲げた。
黒いアーツが彼女の指先に集積する。
運転手は悟った笑みを浮かべながら、伝説に語られる黒い王冠を探して、無意識にコータスの頭上に目を向けた。
我が……魔王よ……
私はどんな光景を見るんでしょうか? カズデルでも……あのボロ車を走らせてなければいいんだけど……ふふ。
運転手さん、お名前を教えていただけますか?
それも儀式の一環なの?
いえ……ただ名前が分かれば、何かと都合が良いですから。
……マリラよ。ありきたりな名前だけど。
(カジミエーシュ語)マリラ。
カジミエーシュに居た時間は長くないので、発音が良くないかもしれませんけど。
いえ、上手よ。母が亡くなってから、そんなに優しく呼びかけてもらったのは久しぶりだもの。
マリラさん、あなたの頼みは断らせてもらいます。
私には理想の光景を見る資格はないと言うの? そうよね、そもそも私は戦士なんて呼べるようなものじゃ……
違います、マリラさん。私が断るのは、私の手であなたの命を奪うことです。
あなたはブラッドブルードの造物に変わってなどいません。
ただ少し外見が変化しただけです。悪意や狂気が強まったようには感じられません。
たとえほんの少し……太古の血脈の痕跡が増えたところで、あなたは変わらずあなた自身です。
懲罰など必要ありませんし、私の手から褒美を与えるべきだとも思いません。
あなたは、魔王なのに……
アーミヤと呼んでください。
実は少し悩んでいたんです。あなたたちは……その、ロドスのオペレーターではありませんから。
さっきも、一体どうやって接したらいいだろうって考えてました。でも実際は、そんなことはそもそも問題じゃなかったんです。
私たちの共通の目標のために戦ってくれると言うなら、私はあなたを歓迎します。
……
アーミヤを見ているのか?
ここ数年、アーミヤは大きく変わった。
ブラッドブルードの儀式の中枢に変化が現れた。
もはや、あれは単なるサルカズの力の増幅器でも、エネルギー収集装置でもなくなった。
あれはサルカズの血脈と、源石……「アナンナ」との繋がりをいっそう強めているようだ。
「ティカズの血」が何らかの形で効力を発揮しているのだろう。
サルカズの血脈の力は源石の拡散を直接に促して、源石に宿る「情報」もまた血脈を強める……その力だけでなく、外見をも。
このアーツの効果には覚えがある。
準備を整えなければ。
「アナンナ」……あれがもたらす脅威は、あらゆる者の予想を遥かに上回るだろう。