慈悲光塔14-5・戦闘前洞窟地区を探索
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ウルサス炎カジミエーシュクルビアボリバルリターニアヴィクトリアイェラグカズデルシラクーザレム・ビリトンサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

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慈悲光塔 14-5・戦闘前

洞窟地区を探索

ロンディニウム外周区画 荒れ果てた屋敷

緊張する私兵

あの女は帰ってきたか?

不満げな私兵

まだだ。

緊張する私兵

クソッタレ! 魔族どもの目を避けるだけでも大変だってのに、あの女め。いまだに生き永らえてるどころか、俺たちの居場所まで――

あいつ俺が前に魔族どもと取引してたなんてこと、どうやって知ったんだろう?

不満げな私兵

ハッ、どのみち魔族どもも、今はお前なんて気にかけちゃいないだろ。

緊張する私兵

で、お前は? どうやってあの女に捕まったんだ?

不満げな私兵

……クロスボウを頭に突きつけられたんだよ。

あいつのことは以前から知ってるが、前はあんなんじゃなかったはず――

???

あんな、ってどういう意味?

続けなさい。

不満げな私兵

あっ、いや、そんな――

公爵に生涯尽くしてきた私兵は、床に倒れ、クロスボウを額にあてがわれた。冷ややかな光を放つ矢先が、彼の頭に突きつけられる。

来訪者の放つ声は、氷のように冷たかった。

???

続けて、と言ってるわ。

恐れる私兵

いえ、その――す、すみませんでした、「ミルスカー」様!

し、失礼を――ぎゃあっ!!!

クロスボウの矢が、彼の耳介を貫いた。

「ミルスカー」

飼ってるペットの耳に穴を開けて、所有物であることを証明する人もいるそうね。

もちろん、人はペットじゃない。だけど……ある面においては、同じようなものじゃないかしら?

恐れる私兵

うう……

「ミルスカー」

さっさと立って、結論だけ言いなさい。

あなたたちに頼んだ件は?

恐れる私兵

はっ、はい、「ミルスカー」様!

我々の方でなるべく情報はまとめておきました。聴音哨の電波が悪かったので、ひたすら全力で――

「ミルスカー」

私が聞きたいのは結論だけだと、何度言えばいいの。

恐れる私兵

「グレーシルクハット」が残した情報と、たまに傍受できた通信から判断するに、「模範軍」と呼ばれる部隊が結成されたのは事実であるようです。リーダーは恐らくあなたのおっしゃる……

「ヴィーナ」さんかと、思われます。

現在……シルバーロックブラフスの前線に向かっているようです。

「ミルスカー」

……シルバーロックブラフス。まだ戦場に残っていたとはね。

そのまま続けなさい。何か新たな情報が入ったら、随時私に報告すること。

恐れる私兵

は、はっ!


「ミルスカー」

――ふぅ。

ふん、こういう仕事も、思ってたよりは楽なものね。

てっきり、もっとプレッシャーを感じるものだと思ってたわ。

何に気兼ねする必要も、何を演じる必要もない。

私は、「ヴィクトリア」を見つけたのよ。

深い影の中で、赤い光が何度か明滅した。

「ミルスカー」

あなたの責務は、彼女を守ることでしょ?


作戦開始から四十三時間後


ウルスラ

やっぱり会いに来るわよね。

ヘドリー

……ウルスラ。

ウルスラ

この何十時間かの間、爆弾遊びの大好きなWが一度ここに来てね。私のために手間暇かけて、この監獄を作ってくれたわ。

イネスがここに来たのは二回。私への「心配」の態度を示すためにね。あいつ、他人の影に集中すると、人に悪態つく時に反応が遅れるのは相変わらずみたい。

それで今度はあんたの番なの? 一体何の用かしら?

ヘドリー

考えはまとまったか?

ウルスラ

それは私のセリフよ。

予断を許さない状況の中、唯一頼みにしていた乗り物は故障中。

そして機関士である私は、あんたたちの知らない秘密を握っているかもしれない。ついでに、次にいつ寝首を掻かれるか分かったもんでもない。

ヘドリー、悪いこと言わないから私を殺しておくべきよ。

ヘドリー

それよりも、知っている情報で俺たちを助けてくれることに期待したいんだがな。

ウルスラ

寝言はほどほどにすることね。

もうとっくに断ったでしょうに。私のことを、捕虜にされた途端立場を変えるような奴だと思ってるなら、ずいぶん甘く見られたものね。

ヘドリー

……三つの命。

ウルスラ

え?

ヘドリー

カズデルにいた頃に、俺たちはお前に三度も命を救われた。俺が一度、イネスが二度だ。

ウルスラ

あんたまさか、それ全部日記につけてるの?

ヘドリー

精算してくれ。何とか返してみせる。

ウルスラ

ヘドリー、仮にあんたが傭兵をやめてカズデルで店を開いたところで、大損して元手を全部失くすのがオチでしょうね。

ヘドリー

生きてカズデルへ戻れるサルカズが少しでも増えること。俺の願いは、ただそれだけだ。

ウルスラ

ご大層な願いね。

まあいいわ。こうなったからには、スカーモールでのしきたりはこの際カズデルの地下にでも捨てときましょう。私たちの間の貸し借りは、これでチャラよ。

最後にもう一度忠告しておくわよ、ヘドリー。今ここで私を殺さないと、いつか必ず後悔するわ。

ヘドリー

ウルスラ、考えたことはないか? 俺たちは昔も今も、同じ目的を――

ウルスラ

うるさいわね。あんたの正論はもう聞き飽きた。

綺麗事で私の命を買おうだなんて思わないことね。それは金で買おうとしてるのと大差ないわ。

傭兵は立場を持たないものだけど、私とあんたは、もうただの傭兵じゃないのよ。


W

イネス、一つ賭けをしない?

ヘドリーの奴、ウルスラとスカーモールでの思い出を語り合うつもりよ。それからウルスラにさっさと自分を殺せって言われて、すぐにしょぼくれたツラして戻って来るに違いないわ。

イネス

何を賭けるつもり?

W

なによ、それだけなの? あいつらを二人っきりにしたら、てっきりすごーくヤキモチを焼くと思ってたのに。

イネス

……W。

W

あたしの影をそう何度も何度も、眺めるのやめてくんないかしら。うざったいったらないわ。

子ウサギとヴィクトリア人が出発してからずいぶん経つわよね……あっちがどうなってるのかも分かんないし。

この骨骸はいまだに死んだフリの真っ最中で、テレシスが起こしたやたらと大げさな天災はいつまでも続いてるし、次の瞬間にはマンフレッドの奴が飛び出してくるかもしれないってんだから。

あーあ……本当なら、テレシスをぶっ飛ばしてやるチャンスがあったはずなのに!

イネス

あなたがテレジアの件で浮足立ってるのは分かるけど、その爆弾みたいにカッとなりがちな頭は冷やしておいた方が身のためよ。私たちにはまだ、備えておくべきことがたくさんあるんだから。

W

*サルカズスラング*! 別に――

W小隊メンバー

W、ちょっと知らせておきたいことが……

W

なに。

W小隊メンバー

偵察に向かわせた連中のことなんだが、交代の時間になっても戻ってこない奴がいるんだ。

峡谷北側に向かった「クレーン」たちの部隊の十人だ。今は連絡がつかなくなってる。

W

腕のいい術師にでも出くわしたのかしら?

イネス

最後に連絡があったのはいつ?

W小隊メンバー

大体三時間前だ。

イネス

ひっそりと傭兵を一部隊を消せるほどの相手なら、恐らくもうこっちに攻め込んできているはずよ。

W、今最優先すべき任務は「ライフボーン」を守ることよ。軽率な行動は取るべきじゃない。

W

外で問題が起きてるってのに、ここでぼーっと待ってろっての?

アスカロン

私もイネスに賛成だ。

我々は外の状況を何一つ知らない。一か所の防衛に集中するのが最も確実な戦術だ。

W

バカも休み休みに言いなさいよね。あたしの部下が突然消えたからには、何かしら理由があるはずでしょ。

道に迷ったんなら連れ戻すだけだし、敵に遭遇したんならこっちに着く前に潰すべきでしょう。

イネス

落ち着きなさい! もしこっちの戦力を分散させるための罠だったら――

W

後手に回るのは性に合わないわ……だからこっちから打って出る。たとえ罠だとしても、爆弾で吹っ飛ばしてやれば、奴らの方から姿を現すでしょ。

半日経ってあたしが戻らなかったら、厄介な敵に出くわしたって考えてちょうだい。あんたたちは応援に来なくていいから、ここの防衛に集中して。

その間にアーミヤから連絡があった場合も、あたしに構わず直ちに「ライフボーン」を起動して。

他の連中に時間をとらせはしない。あたし自ら部隊を率いていくから。

あんたたち、武器を持ってあたしについて来なさい。


W

あいつらが向かったのはここで間違いないわね?

W小隊メンバー

方角はこっちで合ってるはずだ。俺たちは峡谷北側の奥に向かう途中でこの洞窟を見つけたんだが、中の様子はまだ分からん。

もしかしたら、隠し通路か何かか? ひょっとしたら王庭軍のお宝が隠された秘密のアジトだったりするんじゃないか?

W

もしほんとにそうだとしたら、ここに落ちた瞬間から二百体くらいのブラッドブルードやナハツェーラーに囲まれて、呪文の大合唱に巻き込まれてたわよ。

前にクロージャから聞いた情報によると、今いる場所は恐らくロンディニウム西側の山の中ね。老いぼれどもの前線からは、かなり離れてるわ。

にしても、なんだか……クン……ここにいた誰かの残した臭いがするわ。カビるほど古臭い感じの。

あたしはそういうの嫌いだけど、ヘドリーならきっと喜ぶでしょうね。

で、あたしの幸運な部下たちはどんな敵に出くわしたのかしら?

W小隊メンバー

W、あんたいつの間に爆弾を使ったんだ?

W

なに言ってんの? ここに来るまでの間、あたしが爆弾を使ったのなんか見た?

W小隊メンバー

じゃあ、その焼け焦げた壁はなんなんだ……?

W

はぁ……?

妙ね。岩壁をこんな風に焦がしておいて、アーツの痕跡が全くないなんて。一体何を……

W小隊メンバー

ちょっ、聞こえたか!?

W

何よ、いきなり大騒ぎして。

W小隊メンバー

鉄を叩く音だ……誰かが鉄を叩く音が聞こえた! ここには人がいるってことだ!

W

何バカなこと言ってるの……

勝手に不安がるのはやめなさい。人影一つすらないっていうのに。

W小隊メンバー

W……まだ進むのかよ? なんか妙な感じがするぜ。

W

当たり前でしょ。何のために来たのよ。

あたしについてきた連中が身に着けてるのは、どれも上質な装備ばかりよ。それが地下に埋もれたまま腐っていくのを黙って眺めてられるほど、あたしも懐に余裕があるわけじゃないの。

W小隊メンバー

あんた、とあるサルカズの伝説を聞いたことがあるか……? クイロンもまだ生まれてなかった頃、サルカズはかつて赤き龍と――

W

黙りなさい。

歴史の授業したがりはヘドリーだけでたくさんよ。それ以上続けるつもりなら、あんたを先に行かせてや――

――!

W小隊メンバー

どうした……?

W

血の匂いがするわ……けどサルカズの血じゃない。

さっき残ったばかりの――警戒して!

???

グオォ――――――――!