慈悲光塔 14-8・戦闘前
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何あれ……あの空飛んでる奴ら、一体何なの!?
伏せて!
うっ……ゲホゲホッ!
デルフィーンちゃん、その左手――
……触っちゃダメです。
今のは普通の砲撃じゃありません。腐食性を伴った……サルカズの巫術です。力が入りません……
じゃあ汚染区域に踏み込んだ人たちは……
もう手遅れです。
空を飛んでるやつも、地面から生えてきたやつも邪魔だし、それにあちこち結晶と粉塵だらけで、ちっとも前に進めやしねぇ!
サルカズの狙いは、戦場を自分たちの最も馴染み深い姿へと変えて我々を車から引きずり降ろし、行く手を塞いで不意打ちを食らわせることだろう。
歩兵同士が真っ向からぶつかり合えば、弾薬不足の状況下なら、サルカズの身体能力が優位に働くのは間違いないからな。
よく分かったぜ。汚ねぇ手しか使えねぇってことか!
だから、ここで混乱に陥るわけにはいかん。ひとたび崩れれば、その瞬間に何もかも終わりだ。
モーガン、動かせる車両は全て動員しろ。サルカズ歩兵との接近戦は避けるようにな。
もし車を壊されても、車上に搭載された大砲はなるべく諦めるな。あれは我々が持つ一番効果の高い兵器だからな。
オッケー!
デルフィーン、通信兵を可能な限り展開しろ。模範軍内部の連絡だけは、何としても確保してくれ。
はい。
ここから先に進むためには、前方の可動式祭壇を片づける必要があるな。
ホルンさん、砲兵の援護が必要だ!
了解!
インドラの部隊には敵の牽制を頼む。奴らが術師なのか、それともアーツによる造物かは分からんが、とにかく空に飛んでいる奴らの注意を引き付けろ!
あいよ。
ダグザの部隊は私についてこい。
いつも通りだな?
いつも通りだ。
コアが見えた――行動開始。
またもやサルカズの巫術祭壇だ。
上に登り、思い切り跳び上がったら、ハンマーを叩きつける。
戦いが長引くにつれ、彼女たちはその悪魔の目のような戦争装置に慣れつつあった。
それは、戦争そのものに対しても同じだ。
インドラ、モーガン、ダグザたちは少し変わった。ヴィーナはしばしば、そう感じていた。同様の変化は、恐らく自分にも起こっているだろう。
それは、良い変化だと言えるだろうか? またあるいは、自分たちは変わるのが遅すぎたのではないだろうか?
悪魔の真っ赤な瞳が彼女を見つめている。
ハンマーが勢いよく叩きつけられると、シージが地面に落ちる前に祭壇が崩れ始めた。
やったか……ふぅ。
この前よりも早く片付いたな。
……何か聞こえるぞ。
退がれ!
んだよこれ……さっきぶっ壊したやつのすぐ近くに、祭壇がもう一個、地面から生えてきやがったぞ!
こんなもんが後いくつ埋まってんだ? ふざけやがって……
次から次へと、際限なく湧いてくる。
シージはハンマーを固く握り締めた。
彼女たちは確かにこの状況に順応しつつある。しかしそれでも、まだ速度が速いとは言えなかった。
……台座の位置に変化はあったか?
計画変更の知らせはまだ受け取っていない。
やたらにでかい源石クラスターが至る所にあるが、船はまだ動かせそうか?
ヴィクトリアの擁する陸上艦隊はテラ一強大だ。
行軍速度に影響はあるかもしれないが、お手上げというほどでもない。
……艦砲の音だ。
音から察するに、鉄公爵の「ガストレル」号だろう。
我々の新たな進攻が始まった。
アバーコーンの突撃艦がサルカズの先遣部隊と接触しました!
敵は霧の中に潜みながら、どこからともなく姿を現してくる上――
視界がクラスターに塞がれているせいで、敵の動向を捉えられません!
中距離通信は復旧したの?
艦載通信塔の故障がまだ直っていません。工兵部隊が修復に当たっていますが、この源石環境では……
……ところで公爵様、なぜ甲板までいらしたのですか?
どこもかしこも源石粉塵まみれです。司令室を離れない方が……
ウェリントンはどんな時でも「ガストレル」号の甲板に立ち、自ら前線部隊を指揮すると聞いたわ。
それは、鉄公爵は百戦錬磨のつわものですが、公爵様は……
今しがた、「ガストレル」号が砲撃したわね。
ええ、その通りです。
ウェリントンはまだ前進しているの?
恐らくは。鉄公爵の部隊は、予想よりも敵陣の奥深くまで突撃しています。じきにサルカズの中心部隊とぶつかるはずです。
彼は……
まさか鉄公爵は、あのサルカズの君主の首を取ろうと考えているのでは?
……私の知るウェスリー・ウェリントンは鉄公爵となる前、一人の戦士だったわ。
その勇敢さは狂気的とも言えるほどだったけれど……彼は決して、戦いを賭けだとは見なさなかった。
いずれにしろ、鉄公爵の無謀は我々に大きなリスクをもたらすことになります。
当初の指令通り、アバーコーン公爵とアッシュワース公爵の部隊は鉄公爵と共に前進中です……我々の先遣部隊も同行しています。
それに加え、源石による地形的な阻害を受けて、我々の戦線は引き延ばされています。
「ガストレル」号に置いてきた「目」は?
何も見ておりません。
我々「グレーシルクハット」間の通信にも……大幅な遅れが生じています。
アイリーン、剣の台座の状態を確認してちょうだい。
今のところ問題ありません!
決してサルカズの巫術に台座を汚染させたりはいたしません。
公爵様、「詩人」が信号弾を発射しました。
となれば、アレクサンドリナと「諸王の息」はすぐそこね。
部下にしっかり見張っておくよう伝えなさい。あの剣を見失ったりしないように。
「諸王の息」には、すぐにでも役目を果たしてもらわなければならないのよ。
通信が完全に復旧しない限り……「公爵連合軍」が真に成立することはありえないもの。
敵がどんどん強くなってきてるみたいだ。
同じ巫術でも……私らは蝕まれ、敵は逆に強化されてる。
シージ、危ない!
――
うぐっ――!
ダグザ!
ハンマーの強烈な一撃によって、ナハツェーラーの戦士の肉体がひしゃげた。
しかしその身体は、なおもこちらに迫ってきている。
――!
二発、三発と、立て続けにハンマーを打ちつける。
続いて、再び舞い戻ってきたダグザのメタルクローが、敵の胴体を裂く。
とどめに、「グレーシルクハット」の炎を纏った刃が、敵の胸を刺し貫いた。
ぐっ……かはっ……!
ようやく一体か。前方には……まだまだ控えているな。
まったく、このサルカズたちは……
バケモノだ!
魔族どもは皆バケモノだ! クソッ、奴らはそもそも生きてる人間じゃないんだ!
奴らに抗えるのなんて……死人くらいしか……
……死人?
辺りから奇妙な音が聞こえてくる。
それは源石クラスターが地面を貫く音とも、結晶や粉塵が弾ける前兆とも異なる音だった。
隊長、このままだと埒が明かないよ!
倒せば倒すほど……敵がどんどん湧いてくる!
なら、目の前の一体に集中しなさい。
必ず誰か一体は先頭に出てくるわ。
盾を構え、砲撃をする。幾度となく繰り返してきた動作である。
ヴィクトリアにはこの大地で最強の兵器がある。一発の砲弾には、サルカズが身に纏う甲冑を易々と破壊する力があるのだ。
しかしほどなくして、二人のサルカズが同時に突撃してきた。その次は三人の敵が押し寄せてくる。
砲火を全力で浴びせたところで、押し寄せる波をせき止めることは不可能だった。
はぁ……はぁ……
敵は無尽蔵に湧いてくる。
目の前には、立ち向かってくる敵もいれば、倒れている敵もいる。もはや彼女には、一体何人のサルカズがいるのかさえよく分からなくなっていた。
倒れていったヴィクトリア人は、恐らくもっと多いだろう。
バグパイプの叫び声と、破城矛の駆動音は変わらず聞こえてくる。それが彼女にとっては最大の慰めであり、戦い続けるための支えとなっていた。
突如、そう遠くないところで炎の光が揺らめいた。
……
バグパイプ……
隊長、どうかした?
いえ、なんだか……ヒルの顔がまた見えた気がして。
そう、あれはヒルだ。
間違いない。時折悪夢の中に現れては、仲間がいかに無残に死んでいったかを告げてくる……裏切者の顔だ。
……死んだようね。
それって……あそこに倒れてる人? ずいぶん前に死んじゃったみたいだけど……あれ……? 隊長、今なんか……ひょっとして……
動いた。
起き上がってくるの……
……
ウェリントン部隊の制服を着た男が、ふらふらとした足取りでこちらに向かってくる。
彼は刀を握り締めたまま、ホルンの目の前にいるサルカズに斬りかかった。
分厚い甲冑によって攻撃はあえなく弾かれた。しかし彼は奇怪な方向に曲がった腕で、なおも続けざまに二撃、三撃目を繰り出し続ける。
その見慣れた顔が彼女たちの方へどんどん近付いてくる――
生気のない蒼白の中で、ただ一点の紫色だけが躍動していた。
あの人だ。
これは――ダブリンの仕業だよ!
「私が戦士の栄誉を手放すのは、今後ターラーの土地を二度と血に染めぬようにするため。そしてドラコの同族が二度と剣を向け合わぬようにするためである。」
「赤き龍の炎が、死した戦士を溶炉の中から蘇らせるような日が来ない限り、私の選択は変わらない。」
三陣目の祭壇、破壊完了!
殿下、術師と飛行兵は配置につきました。最も大きな祭壇に接近しております!
倒れた同胞たちが魔族どもの汚染を食い止めてくれているとはいえ……この巫術の殺傷力は前代未聞です!
下がれ。
……殿下?
まさか……ご自分で祭壇を破壊しに行かれるおつもりで?
お前たちは、臣下として最善を尽くした。
ならば私も君主として、皆を率いて前へ進む。
自ら足を踏み入れたのことない土地を己の国に変えるなど、できようはずもないからな。
赤き龍の炎は……幾千年も前そうであったように、戦争の最前線に落とされるのだ。
――祭壇が破壊されつつある!
陣形を維持せよ! 炎に追い散らされるな――アーツを放ち続けるんだ!
軟弱な異種族が、少しくらい増えただけで――
その言いざまは看過できん。
我々はぬるま湯で生きてきたヴィクトリア人とは違うのだ。
ターラーの戦士は皆、影の中に身を潜め、苦痛によって鍛えられてきた。
我らは亡霊の名の下に、死と共に在ることの何たるかを最も熟知しているのさ。
させるか――!
自らをアーツの材料とし……祭壇を起爆するつもりか?
やってみるといい。
ダメだ……!
間に……合わな……
命の灯が徐々に薄れていく。
それに取って代わるように、紫に輝く死の炎が、死にゆくサルカズ戦士の身体とエブラナの瞳の中で躍り始めた。
死を司る王庭などは存在しない。
サルカズ、確かにお前たちは死に慣れ親しんでいる。だがそれは所詮……争いを数多く経験してきただけのこと。
見たか? 皆の者!
死は我らと共に在る! 我らが戦っているのは、正体不明の悪魔などではない!
サルカズどもをハリボテの法陣から引きずり出し、我らの矢と砲撃を、とくと味わわせてやろうではないか!
「将校」……お前の瞳に、炎が燃えている。
ええ。私も、ターラーに生まれた数多の将士たちも、あまりに長い間待ち続けてきましたから。
我らは皆、帝国の弔鐘の伝説を聞いて育ち、熱き血潮を胸に軍人となったのです。
ですが過去数十年に渡り、ウェリントン領と公爵様は抑圧を受け続け、我らもまた他の公爵たちの交渉のテーブルの間で板挟みにされ続けてきました。
熱き血を抱く多くの戦士たちは、出身を理由に弾圧されるか、ヴィクトリア人どもの陰謀によって屈辱と共に倒れるかのどちらかでした。
私が長年耐え忍び、自らが策を弄する卑劣漢になることさえ甘んじて受け入れたのは、あくまで真の戦争のため。貴族どもが私欲で始めた戦争のためではありません。
こうした戦場の上でこそ、戦士たちの死は誉れ高く、意義あるものとなるのです。
もしも私がこの戦いで命を落とすことがあれば――
その時はどうか殿下の炎を用いて、私を再び立ち上がらせてください!
烈火が我が躯を灰にするまで、我らの理想の国が築かれるまでは――この武器を決して手放しはいたしません!
よし、ならば私についてこい。
見えるか……あの枯れ木の王座が。
奴がサルカズの頭領ですか。
ナハツェーラー・ネツァレム。奴は、戦と死の王を自称している。
サルカズの王庭は誇張した呼び名を好んでいるようです。
誇張? ……いいや。
奴はただ年を食っているだけだ。
だが生ける伝説は、奴一人だけではない。
……その通りです!
そう遠くないところで、艦砲が轟いている。
山を崩すほどの力は、無論、古の巫術だけには留まらない。
戦争には戦争を……死には死を。
宗主、狩りに邪魔が入りました。
あのドラコの炎に、我らの陣形が断ち切られたのです。
……ドラコか。
さる数千年前、故郷を失ったばかりの頃のサルカズも、かつてこの土地で赤き龍と刃を交えた。
無数のサルカズたちが焔に焼かれ、焼け焦げた石と化した。彼らは今この時我らの足元に、我らの傍にいる。
奴を仕留めます。
赤き龍を食らえば、しばらくは我らの腹も満ちることでしょう。
この戦争を支配しているのは、あいつではない。
ナハツェーラーの王は戦場の一角に目を向けた。
赤き龍がもたらした炎と煙の奥からは巨大な影が、身の丈とは不釣り合いな速度で彼らの元へ向かいつつある。
大地にその影を投げかけ、一息で山河をも揺るがすことのできる巨物は――
もはや、赤き龍などではない。
「パラメータ設定完了!」
「装填完了!」
「ジャミング弾発射!」
「目標捕捉――」
「主砲、一回目、一斉掃射開始!」
撃破確認!
将軍、障害の除去が完了しました。
よし。
「ガストレル」号、全速前進。
目標――ナハツェーラーの王座。
艦砲が唸り声を上げる。
ウェリントンは自らの忠義厚き部下――船で最も古い艦載砲をよく知っている。それはかつて、共にリンゴネスの防壁を打ち破った大砲だった。
彼はこの大地で最も隆盛していた移動都市の命を奪った。そして背骨を躯から引きずり出し、旗艦「ガストレル」号の一部と成したのだ。
その後、ウェリントンは再び旗艦と共に多くの場所へ赴き、多くの敵を討ち取った。
リターニアの術師のアーツオーブ、ウルサスの先鋒の盾、サルゴンの刺客が帯びる黄金の刃――彼はあらゆる敵が身に着ける最も価値ある品を集めては改造して、旗艦に取り付けてきた。
決して記念品ではない。在りし日の印に想いを馳せ、過去を偲ぶ必要があるのは、月日と共に弱り果てていく人間だけだからだ。
「ガストレル」号は敵の死骸を踏みにじり、その力を吸い取ることで、力を増していく。
そうして初めて彼らは共により強大な敵を打ち破れるようになる。
止めろ!
結晶障壁が……砕けたか。
敵はいまだ前進してきている。
砲火で道を切り拓いては、死を授からんと渇望している。
源石の海に、砲撃が一度また一度と浴びせられる。
金色の破片が散らばり、凝固した大波にぽっかりと穴が開いた。
よもや……ここまで近づいてくるとは――
濃霧が戦艦を包み込む。
無数のナハツェーラーの戦士が甲板に降り立つと巫術の光が船全体を覆い尽くした。
噛み千切り、分解し、腐食する。
砲火が静まり始めた。
過去にナハツェーラーのアーツの陣地に囚われたあらゆる獲物と同じく、鋼鉄の躯もまた、腹の中で溶かされつつある。
捕獲……完了。
……
まだ、だ。
彼はアーツユニットを掲げた。
王座の下から枝が急速に伸び広がり、ナハツェーラーの戦士たちの前方を遮る。
枝と枝の間に、一発の砲弾が嵌まり込んだ。
数秒の間を置いて砲弾が炸裂すると、枝は一本残らず砕け散った。
それはこの開戦以来、ナハツェーラーの王座が初めて揺れ動いた瞬間だった。
宗主!
構わん。
腐敗の霧の中から、艦船がゆっくりとその姿を現した。
外板の一部は腐食によって剥がれ落ち、主砲と副砲も巫術の弾幕を受けて半壊状態だったが、鋼鉄の骨組みだけが変わらず輝きを放ち続けている。
――それは今もなお、陸地で最も強大な軍艦「ガストレル」号であり続けていた。
そして、その主は――
王座の上から見下ろしたサルカズの目は、結晶と結晶の間に小さな影を捉えた。
将軍、サルカズの先遣主力部隊はしっかりと「ガストレル」号に引き付けられています!
奴ら、我々が旗艦から移動したとも知らずに――
待ってください、何かが急速に接近中です!
親衛隊、陣形を縮小せよ!
砲撃が炸裂した。
数本の細枝だけが、煙塵と共にパラパラと落ちてくる。
数多の結晶の波を砕くほどのエネルギーを受けても、宙に浮かぶ姿が揺らぐことはなかった。
ナハツェーラーの王は陣形中央の指揮官を見下ろした。老いたフェリーンのすぐ後ろでは、血に渇いた軍艦が腐肉を引き裂く瞬間を、今か今かと待ちわびている。
ヴィクトリアの……公爵か。
我らは数多のヴィクトリア人を食らってきた。将軍、伯爵。肩書がどうあれ、ほとんどは同じ味だ。
策謀家や商人であり、戦士ではない。
奴らにとって戦場は卓上の砂盤であり、戦士は駒に過ぎず、戦争など権力闘争の道具程度にしか見ておらぬ。それほどまでに戦争を軽視しているのだ。
だがその方は少し違うようだ。その船も数多の敵を食らってきたのであろう。
ウルサス人、リターニア人、ガリア人……そして、サルカズ。彼らの血肉の匂いが香ってくるのだ。
ナハツェーラーもまた、かつてはその者たちをこの身に受け入れてきた。
サルカズ……貴様に関する記録は数え切れぬほど読んできた。
古のナハツェーラーは、カズデルに攻め入らんとするヴィクトリア軍を、わずか十分の一の兵力で押し留めたと聞く。
まったくもって不可解だ。そんな戦争は軍事学校で教わることもなければ再現することもできん。
その方の目的は、仇討ちか?
……フッ。私はただ残念なだけだ。二百年前に、生まれていなかったことがな。
貴様は、「戦争の神」と呼ばれていたか?
違うな。戦争に絶対的支配者など存在しない。
あるのはただ……目の前の勝ち負けのみだ。
ウェリントンは剣を抜くと、その切っ先を空中のサルカズへまっすぐに向けた。
彼の背後では、全艦砲が同じ方向を向いている。
――ネツァレム、私は貴様に勝利する。
私が過去に葬ってきた、強敵たちと同じように。