急転直下 4-2・戦闘後
雨の中を歩く
……
あっ! そ、そこどいてっ!
きゃっ!?
ご、ごめんなさい! ぶつかるつもりじゃなかったんだけど……!
ううん、大丈夫。そうしてすぐに謝れるなんて、立派だね。
わわ、そうかな? えへへ……
ところで、お姉さんはここで何してるの?
この辺は雨が降ってるし、雨宿りしたほうがいいんじゃない……?
ええっと……ううん、その……少しお散歩してただけだから。
それより君、何か手伝ってほしいことがあるんじゃない?
えっ! どうしてわかったの!?
ふふっ、ないしょ。これはお姉さんの秘密だからね。
ええ~? ……んー、まあいっか!
じゃあさ、お願いがあるんだけど――
うーん……でも、やっぱり無理かなあ……お姉さん、背が小さいし……
もう、そんなこと言っちゃダメだよ! 君に比べたら、私のほうが背が高いでしょ!
わわ、ごめんって!
それじゃ……とりあえず、やってみる? えっとね、この板どかすのを手伝ってほしいんだ。
下敷きになってる蓄音機を持って帰りたくてさ。
これ? うん、やってみよっか。
じゃあいくよ。いち……にの……さん! えいっ!
! できた!
……っ、これは……
わあっ、お姉さん力持ちだね! ありがとう!
うん、でも……この蓄音機、壊れてるみたいだよ。
大丈夫大丈夫! 見つけた時にはもう壊れてたしね。いつか、これをちゃんと直して使えるようにするつもりなんだ。
実は僕、みんなのためにレコードをいっぱい集めててさ。まあ、自分でも、一度も聴いたことないんだけど……
でも、いつかみんなに聴かせてあげようと思って!
……
……難しい目標のはずなのに、簡単なことみたいに口に出せるなんて……
……私、何のために行動してるのかな。……私にできることって、何だろう……
……あのさ、お姉さんは僕のこと、怖くないの?
ううん。……どうして、怖がられると思ったの?
だって僕、鉱石病なんだよ!
あははっ、私もそうだよ。
え~っ! こんなに可愛いのに感染者なんて、もったいない……
――
感染者になったからって、全部台無しになるわけじゃないんだよ。
だって、たとえ君が感染者でも、そうじゃなくても――いい子でいたなら、その事実までは変わらないでしょう?
ん~……そうなの? よくわかんないや……
(ぐう……)
……もしかして、お腹ぺこぺこ?
……うん……
……じゃあ、これあげる。って言っても、これしかないんだけど……
えっ、いいの? やった、ありがとう!
……あれ? そういえば……お姉さんって、なんでここに来たの?
それは……
……私が……
ある人と、約束したからなんだ。
――お姉さん、またね!
うん、またね!
……
……
あの子みたいな子供でも、結局、最後には……
感染者め。お前たちはもう、人ではない。
私にできることを、もっと……もっと考えないと……
……どうして……全員を守ることは、できないんだろう……
お前にできるはずがない。
そんな……
飢餓、迫害、そしていずれ訪れる凄惨な死……
感染者の末路など、ほかにはない。
そんなこと、ない……
ロドスが、感染者のために立ち続ける限り……!
お前は数少ない恵まれた人間の一人だ。そんなことを言えるのは、そのためでしかない。
違う……! 多くの人が団結して、同じ目標に向かって努力し続けているからこそ、私は……!
この大地は、すでに麻痺してしまったんだ。
……いいえ、まだそうはなってない。
感染者を、絶望の淵に追いやらせはしない……!
アーミヤ。
怒りに身を任せるが良い。
ただのそれだけで――
……ダメ。
絶対に……そんなこと、しない。
だって、私は……
あの人と、約束したんだから――!
……?
この声は……?
あのお姉ちゃんが教えてくれたんだ。このお人形は、誰かのために作るから意味があるんだよ、って!
だからね、これ、龍のお姉ちゃんのために作ったの!
――――
今聞こえたのって、もしかして……
!
やっぱり、あの後ろ姿は――
チェンさん?
――――
――――――――
――――! ――――――!
――――――――!
――――――
ん……
……
……
あの、チェン隊長……
…………
……
ここで、何をしていらしたんですか?
なんというか、私はてっきり……
キミには関係ないだろう。
単に、龍門の問題は、すべて私の管轄下にあるというだけの話だ。
……
…………
……チェン隊長……
初めて見た……
彼女が、あんな目をしているところなんて……