快刀乱麻 5-7・戦闘前
一蓮托生
ぐっ……
本日三回目のお目覚めですね、おはようございます。
どれだけ気を失っていた?
ほんの数十秒です。
――ホシグマ、どけ。私がその上の瓦礫の塊を切り裂く。
それは無理そうです。いま少しでも盾を支える力を緩めれば二人共ぺちゃんこです。小官は大丈夫ですから。
だがお前の腕は……
この程度、問題ありません。
何が問題ないだ! 二階分の瓦礫が盾に乗ってるんだぞ!
確かに長くは保ちません。隊長が早めに目覚めてくれて良かった。屈んで、いつでも飛び出せる体制をとってください。
――
コノォォォォォ、どれだけ重かろうが――
――ここで屈するものかぁぁぁぁ――
――こんな重さなどないのと同じだ!! ガアアッ!!
お前……これだけの瓦礫を力任せにひっくり返せるとはな……
はあっ、はあっ……クソッ、瓦礫を吹き飛ばしただけで、両腕に力が入らなくなるとは……
またお前に救われたな。
何度でも助けますよ。他人行儀な言い方はやめてください、小官はあなたの部下なんですから。
ただ少しだけ、休ませてください。全身の骨がきしむようです……たまには戦場で横になってもいいでしょう。
……クソッ、ここまでやってもまだ近衛局を殺れないのか!
残念ながら、横になるのを私が許しても、敵は許してくれないようだな。
仕方ありませんね。もう少しだけ無理をするとしましょうか。
隊長、先に離脱して部隊を掌握してください。ここで足止めをされるわけにはいきません、それこそ敵の思うつぼです。
なに、こいつらを片付けてからでも遅くない。
この崩落で怪我をした隊員がほかにもいるかも知れません。どうかそちらに向かってください。
傷だらけのお前をここに残し、たった一人でレユニオンと戦わせるとでも?
チェン隊長、あなたはご自身の責務を忘れないでください!
二年前、下水(かすい)エリアで賊を追ったときのことは覚えていますか? 小官は脚を負傷しましたが、チェン隊長は小官に一人で戦うことを許可してくださった。
あのときお前はよく三時間も一人で奮戦できたものだ。
ええ、ですから今回だって十分にやれます。どうか小官を信じてください。
別に疑ってなんかいないさ。
さぁ、レユニオンども! まとめてかかってこい!
クソッ、挑発しやがって!
何故ですか! 小官はまだ戦えます。近衛局奪還はこれからです。こんなところで立ち止まっている暇はないはずです。
数年前と同じです。チェン隊長にはチェン隊長がなすべきこと、隊長にしかなし得ないことがあるはずです。
先程のモクカ倉庫でも感じました。いつの間にそんな合理性を無視した情を掛けるようになってしまったんですか!
仲間を暴徒の袋叩きに合わないようにするのは、不合理な話しではないさ。
どうしたんですか? 以前の強い隊長なら、そんな事は言わなかったはずです。
確かに以前の私は感情など無視して合理性だけで動いていた。だが今の私は……お前がさっき言っていたように――
アーミヤを廃都市に置き去りにしたことを……良くなかったと私自身の情が訴えているんだ。
今のうちだ! 感染者の怒りを味わわせてやる! いけっ!
もしかすると本当に私は変わったのかもな。だから龍門への不満が減り、私のことを信頼してくれる者たちが増えたのかも知れない。
お前ももうただのホシグマ督察官などではない。お前は私の友人であり、パートナーのホシグマだ。
お前の盾がいつも私を守ってくれた。たまには私にもお前の盾をやらせてくれ、ホシグマ。
……まったく…そんな恥ずかしい台詞をよく真顔で言えますね。
*龍門スラング*
ハハハ。
了解しました。では改めて相棒としてこの身をお預けします。