局部壊死 6-3・戦闘前
二人の迷い子
メフィスト?
さっき使ったアーツは一体なんだ? お前の……部隊が、さらに狂気を増しているじゃないか。
彼らは……苦しんでいる。
ああ、見たんだね? 僕の植えた種がついに花を咲かせたんだ。
大丈夫だよファウスト。あいつらは僕たちには攻撃しない。
まだ彼らの鉱石病を活性化させ続けているのか?
メフィスト……止めろ。そんなことをしなくても、俺たちは生きていける。
違うよ。こんなことは僕のアーツでしかできないし、このくらいやらなきゃ逃げ延びるなんて夢のまた夢だよ!
君だって偵察に行った時に全部見ただろう。僕たちが今の状態で強行突破しようとすれば、スラムの抜け道に辿り着く前に、近衛局に皆殺しにされるよ!
あんな武器、これまで見たことあった? あのチェルノボーグの守衛だって使ってないような武器を!
あいつらはこの都市を知り尽くしている。でも僕たちはただの余所者だ。あいつらが、いつどこから出てくるのかまるで分からない。今の僕たちの戦力では、正面から戦うのなんて無理だ!
チェルノボーグのウルサス人は弱かった……でも龍門は、まるで軍隊を相手にするかのような対応をしている。僕たちが率いているのは軍隊なんて程遠い、ただ生きていきたいと願う同胞たちだけなのに。
声を抑えろ。こちらの士気は相当下がっている。
僕の家畜たちはこんなことじゃ揺るがないよ!
……俺たちと合流したばかりのレユニオン構成員も多くいる。
持ちこたえていれば、フロストノヴァが支援に駆けつけてくれるはずだ。
フロストノヴァ? あのフロストノヴァが?
フッ、フフ、あいつも、あいつのスノーデビルとかいう小隊も、レユニオンを裏切ったんじゃない?
メフィスト!
あれ程の実力を持ってるのに、それ以外にここに来られない理由なんてないだろ!
……でもあいつらを責めたりはしないさ。裏切りだって、生き延びるためだろ。
フロストノヴァは裏切ったりしない。約束しただろ、自分の目で真相を確かめに行くと。
そうだね……みんな生きるために努力している。
早まるな、このままだと近衛局の思うつぼだ!
一つ方法があるよ、ファウスト。もっとたくさんの同胞たちを生き延びさせる方法が。
……? 何をするつもりだ?
近衛局のやつらに、軍隊なんかよりもっと恐ろしいものを見せてやるんだ。あいつらには僕の同胞たちが咲かせる花びらが、どんなものかなんて想像できないだろ。
メフィスト!?
近衛局に自分たちがやったことのツケを払わせてやる……あのチェンとかいうやつにも、君を傷つけたツケを払わせてやるんだ!
僕の同胞たち、僕の徒党たち、僕に応えろ!
……!
君たちの体内には、今よりもっと旺盛な生命が宿ってる……その衝動を手繰り寄せ、君たちの種をばらまきながら、未来を掴み取れ!
止めろ、メフィスト!
彼らは皆、まだ人として生きているんだぞ!
(混乱する叫び声)
龍門の全てが君たちの養分だ! 行け、君たちの生命を他の奴らに分けてやれ! 早く、今すぐ、行けっ!
ああ? なっ!? 何が起きてる?
お、おい何するつもりだ? 俺たちとお前は別のチームだろ!
……俺はお前たちを侮辱したりしてない! メフィストのことだって……
隊長? 隊長はどこだ!? 隊長!!
うわぁ!! ど、どうして、どうして俺に噛み付くんだ!! どうして……うぐぐ!
助けて!! 助けてくれ!!
ううあ、うわああああ!!!
フフ……
みんな、前よりもずっと強くなったよ。
まぁ僕の声なんて、もう届いてないだろうけどね。でも僕たちには絶対に攻撃してこない……肉体はどんどん逞しく強くなり、そして成長し、数を増やしていく。
龍門は奴らに徹底的に滅ぼされるんだ。フンッ、僕の同胞たちが龍門を手に入れられないからって、龍門人はこの都市が無傷で残るなんて思わないことだね!
ファウスト、行こう。僕たちは……
ファウスト?
……
何をしたんだ?
……
(苦しい叫び声)
ファウスト? どこへ行くの!?
ファウスト!
どうしてメフィストの手下が俺たちを攻撃してるんだ!?
あれはまさか……な、なんで……さっき連れて行かれたイワンだ……間違いない! イワンもおかしくなっちまってる!
スカー、何だよこのバケモンは……何なんだよ!! 殴っても痛がらねぇ、刺しても死なねぇ!
さっきより何倍も凶暴化してる! 俺たちじゃ抑えきれない!
お前たち、ついて来い!
ファウスト!?
行くな、メフィストの罠かもしれない!
……こいつに命を救われたことがあるんだ。
メフィストは愚図だが、こいつはそうじゃないかもしれない。
……
ここを進め、早く。迷彩狙撃兵たちがお前たちを守る。
わかった。
感謝する……ま、待て!
危ない!!
——源石を投げてきた?
早く行け! あいつらの目標はお前たちだ!
グレースロートさん、敵の動きが不自然です。
重装オペレーターが戦線を維持しつつ、私たち術師が敵の数を削ります。あなたは狙撃オペレーターたちと一緒に、アーツを扱える敵感染者の対処をお願いします。
感染者の射殺も、許可される?
グレースロートさん……
できることなら、誰であろうと感染者を傷付ける行為を許したくはありません。
ですが、私がそれを許せなくても、逆に感染者が他の人を傷つけるのを許せない人がいても……
それには何の意味もありません。戦場ではそんなものは全部意味を持たないんです。
ただ……もし本当にそれが叶うなら……誰にも他人を傷つけてほしくありません。それが感染者だろうと非感染者だろうと同じです。
……
わかった。そうする。
今回の医療支援担当はガヴィルさんですので……くれぐれも自身の状況には注意を払って、怪我をしないように気をつけてください。
……変です。あれは……メフィストの兵士……?
でも……あの人たちからは、少しの感情も伝わってきません。
違う。あれは!
グレースロートさん、すぐに降りてください! マズイです!
あれは……自分の身体の源石を引き抜いて投げようとしてる?
グレースロートさん!
ドクター! 大丈夫?
大丈夫だ! 自分のことを気にかけてくれ!
どこからこんなに湧いてきたの? 動きも前とぜんぜん違う!
君のところはまだ安全そうだね! そこでじっとしてて!
私がこの化け物たちを全部片付けるまで待ってて!