局部壊死 6-3・戦闘後
二人の迷い子
どれだけの人が、お前の目の前で命を落とした?
……
(ウルサス語)
ああ。俺が持って帰るよ。
……(ウルサス語)……?
そうだ。チェルノボーグへは行かない。
安心してくれ。
……
ここは安全だ。
少し眠れ。
どれだけの人が、俺の目の前で命を落とした?
武器を下ろせ!
……一人だけ?
……
振り向かないで。動けば撃つ!
狙撃手なら、まず撃ってから喋るものだ。
なっ? 身体が……消えた?
違う……情報資料に書いてあった。あんたは敵指揮官の一人、ファウスト。そんなアーツじゃ私を欺けない!
あんたのアーツは視覚上のものに過ぎないって知ってる。私が引き金を引けば、あんたはどちらにせよ貫かれる。
いいや。
——!
姿の見えない俺の動きが読めるのか?
……
俺たちは、どちらもはぐれものの狙撃手だ。ここで同時に引き金を引けば、どちらも死ぬ。
名前は?
コードネームはグレースロート。いつの間に私の後ろに?
お前が三度目の瞬きをしたときだ。
……実直な奴だな。
あんたも自分のチームとはぐれたんでしょう。私は敵意のない人を傷つけたくない。
俺たちは敵同士だ。
ロドスは感染者を救おうとしている。それに私はあんたが感染者を助けているのだって見た。
……あれは俺の戦友だからな。だがお前は敵だ。
ロドスになぜこんな幼稚な奴がいるんだ?
そうね、私は幼稚かもね。命令に従うことしかできないから。自分で決断をしようとしても、何もできない。
それなら、覚えておけ。
指を離して!
あんたのクロスボウに連射機能はない。だから私があんたの一発を躱したら、あんただけが死ぬ。撃たないほうがいい。
ただ命令に従い、誰かに追従するだけの奴は、最後には皆恐ろしいものに変わる。
どうして?
そんな奴らのほとんどは、盲目的に従いこそすれ、たじろぎ、震えることもあるだろう。誰かに依存しきっているというよりは、ただ考えることを止めているだけなんだ。
……そうやって自分の方向を失った奴らは、他人の願望を叶えることで達成感と存在感を得るだけの機械と同じだ。
機械のように起動して、作動し続けて、投げ込まれた願望を実現させて、周りのものを全てを喰らい、願望を投げ込んだ奴まで喰らい尽くす。
私は違う。
お前はまだ経験が浅い。
あんたがさっきの感染者と話していたのを聞いた。あんたは正しいことをしてる。
お前が正しいと思うかどうかは、俺には関係ない。
ファウスト、あんたはずっと近衛局を避けて行動している。それに孤立した近衛局員を見つけても、撃とうとしなかった。私はそれを一部始終見ていたから。
……俺の忍耐を軟弱さだと履き違えるな。もし待ち伏せしていたのが俺じゃなければ、お前は今ごろ死んでいる。
でもあんたはそうしなかった。
あんたは疲れてる。同じ武器を使う者として、その疲労は手に取るように分かる。強く張り詰めたままのワイヤーは、いつか切れてしまうでしょうね。
……お前は狙撃手のくせに、口数が多すぎる。
あんたもあの特殊な感染者に遭遇したんでしょ。何か対処方法を考えた方がいい。
お前の言う通りかもしれない。
待って!
だが、方法なんてものはないんだ。
(動き始めと同時に消えた!? ……これじゃ動きを読めない!)
……
……えっ?
どうして私を殺さないの?
お前は俺を撃たなかった。だから俺も撃たない。
だが次はこうは行かない。お前が俺を殺さなければ、俺がお前を殺すだけだ。
私に敵意はない!
それが一番悲しいことさ。
……お前には答えを教えてくれる人が必要なのかもしれない。そうでなければ、お前には理解できない。
簡単な話だ。殺して、殺されて、そんなことは日常茶飯事だろう。お前たちロドスだってそこからは抜け出せない。
……どうして私たちと一緒に彼らを助けてあげられないの?
——そうしたいのは山々だが、それは無理だ。
もう俺を追うな。
お前は奴らのことを知らなすぎる。頭の中にあるのは、誤解と錯覚だけだ。
……だが俺には、もう何も方法は残されていない。
どれだけの人が、俺が何かしたせいで死んだ? どれだけの人が、俺が何もしなかったせいで死んだ?