帰還!密林の長 RI-9・戦闘後
さらば密林
片付いたぜ、トミミ。
……ま、まだです!
ヌール、ペータ!
ドクター!
ドクター様!
な、仲間を傷つけられたくなければ……
アタシを怒らせるんじゃねぇぞ、トミミ!
……ガヴィルさんが残ってくれると言うまで、絶対にやめません!
助けてくれ、ドクター!
ドクター様、怖いですううぅ……
ちょっとドクター、空気を読んでくれよ。こんな健気なお嬢ちゃんなんだから、少しくらい乗ってやっても死にゃしねぇだろうよ。
はぁ、ここの人たちは本当に純粋ですから、正直彼らを騙すのは良心が痛みます。私に心はありませんが。
おいおい、そんな目で見るなよ、ドクター。
安心してくれ、こんなんでもロドスのオペレーターだからな。このくらい自分でどうにかできるぜ。
ドクター様あああ!
Lancet-2!
ドクター様あああ!
うわっ、二人とも俺よりノリノリで演技してんな。
えっ?
いつの間に縄を!
ははっ、わりぃな、最初から縛られてねぇんだ。
ドクター、まさか最初からトミミの企みを見抜いてたのか?
な、なんでわかったんですか!?
まず、君は最初にズゥママの名を出すときにためらった。
えっ? そうだったっけ?
そして、祭典では、ガヴィルの突然の行動に焦りを見せた。
……
そして最後に、ディラン、例の物は?
おう、Lancet-2に積んであるぜ。
うう……私の身体に物を入れさせるなんて、ドクター様の為でなければ絶対にしませんからね。本当ですよ。
……
これは……ロケットランチャーか?
そうだ、トミミの部族で見つけたんだ。
まさか……
そのまさかだ。俺たちを撃ち墜としたのは、このお嬢ちゃんってわけさ。
トミミ。
ううう、ごめんなさい、ガヴィルさん。
こっち来い。
うううぅ……
アタシの脚の上に伏せろ。
ガヴィルさん、ぶたないでください。反省しますから……
ダメだ。
言うこと聞かない悪ガキは、お尻尾ペンペンだ!
ううう……
お尻尾ペンペン、なんか痛そう……
これで懲りたか?
懲りました、ううう……
それならよろしい。
とりあえずこれで一件落着だ、ドクター。
ははは、確かに災難の連続だったな。
おい、ドクター、立ったまま寝てんじゃねぇだろうな。
トミミをケガさせるわけにもいかねぇからな。しっかし、さすがのアタシも疲れたぜ。
この大きなロボット……一見不格好に見えますが、この角々しさや粗削りな造形、雑然としながらも理に適った配線など、よく見れば独特の美が感じ取れます。
これは結婚向きのタイプですね。
おい、Lancet-2、エンジンが使えるか見てやってくれ。
え? まさかエンジンはこの巨人さんの中に!?
ああそうさ。アタシらがボコボコにしてやったけどな。
ああ、可哀想なエンジンちゃん、可哀想な巨人さん。
ディランさん、手伝っていただけませんか?
おうよ。
……
おい、ズゥママ、どうしたんだ、ボケーっとして。
ガッ、ガヴィル!
あぁ? なんだよ?
あれ、あれ!
どれだよ?
あれ、あの自分で動いたり話したりする機械はなんだ!?
ああ、Lancet-2のことだな。あいつもアタシらの仲間さ。
は、話しかけてもいいか?
好きにしたらいいじゃねぇか。
や、やあ。
はい、こんにちは。
お前は機械なのか?
私の製品名は「レイジアンイグジスターシリーズS-Typer62六輪作業プラットフォーム」です。ロドス所属で、コードネームはLancet-2です。
おお! し、質問してもいいか?
私には一定の知能が備わっておりますので、そこまで難しくないご質問であれば、回答可能かと。
ちなみに、私は医療用の作業プラットフォームのため、提供可能な知識は医療方面に偏ったものとなります。ご了承ください。
^%&$*#(#……!!!!!
何でしょうか?
だ、抱っこしてもいいか?
はい?
何やってんだあいつ、おかしくなったのか?
見ればわかるじゃろ。あの機械に衝撃を受けたんじゃよ。
あぁ?
自らの意思で動き、喋る機械から受けた衝撃は、初めて移動都市を目にしたとき以上のものじゃった。つまりそういうことじゃ!
わしも同じくらい、興奮しておるがな!
のう、美しいお嬢様、わしとのデートに付き合ってもらうことはできんかの?
このジャングル一番の景色を知っとるんじゃ。そこで素晴らしい午後のひとときを共に過ごすのはどうじゃ!?
ええ? わ、私、誘われました!?
どうしましょう、ちょっと嬉しいような……ドクター様、これは受けるべきでしょうか?
じいやは引っ込んでいろ。でないと長年のよしみを捨てることになるぞ。
……多分私もドクターと同じ気持ち。
吹き出しそう。
えっ、そんなドクター様、急にそう言われましても、心の準備が……
……
ガヴィル、お前たちが住んでいるところは、こういう機械も造れるのか?
ん? あー、まぁクロージャなら造れるかもな。
そうか……よし、決めたぞ、ガヴィル。
そのロドスというところだが、人手は足りているか? 私も加入したい。
あぁ?
そこで機械の技術を学びたいんだ。
ハァ?
実はこれまでも外に出て勉強したい気持ちはあったが、部族のこともあって真剣に考えていなかった。だが今はいい機会だと思っている。
じゃ、じゃあ私も行きます!
なんだって!?
こうなったら予備プランを実行して……私がガヴィルさんについていけばいいんです!
ガヴィルさん、私だって戦えます。きっとガヴィルさんの役に立ってみせます!
えーっと、ドクター、どうすりゃいいんだこれ?
そうだな。オペレーター適性試験自体は誰でも受けれるしな。
おい、ドクター。あんまりいじめてやるなよ。
ドーークーーターー!
まあいいや。とりあえずドクターから色々勉強すりゃいい。
はい!
それよりガヴィル、この子が言ってることも通訳してくれない?
……
あぁ? クマールか。
この人についていきたい。
お前についていきたいってさ。
ふーん、いいよ。腕も立つし、きっとオペレーターとして認められるはず。
いいってよ。
よし。
……いやちょっと待て。ズゥママがいなくなって、トミミもクマールもいなくなっちまったら、ここの部族のヤツらはどうすんだよ?
ガヴィルは出て行くときにそんなことを考えていたのか?
アハハ、あのときはカッとなってたからノーカウントだ!
確かに……部族を放っておくわけにはいかないか。
うむ、それに関しては心配無用じゃろう。
ガヴィルにゃ負けるが、やっぱビッグ・アグリーもつえーな。
そうだそうだ、オレもああいうのを造ってみてぇな。
どうせ霊殿は壊されちまったんだし、いっそ機械造りで勝負して、すげぇモンを造ったヤツが大族長になるってのはどうだ?
いやいや、やっぱり喧嘩の方が気持ちいいぜ!
うーん、一理ある、喧嘩も捨てがたいな。どうすりゃいいんだ……
ったく、アホかお前らは。喧嘩しながら機械造りの勝負もやる。それでいいだろ!
それだ!
ほれ、心配するだけ時間の無駄じゃて。
わしの経験則じゃが、人々は想像を超える早さで環境に適応していくものじゃ。統率者が未来のことで頭を悩ませていようがお構いなしでの。
例えばじゃ、二百年前にとあるティアカウが勝手に初代大族長を名乗り始めて、それから自然と大族長選挙の習慣が生まれた……とわしが言ったら、お前さんたちはどう思う?
そうなのか!? じいや、なぜ今まで教えてくれなかったんだ?
そんなこと、今のお前さんたちにとっては重要じゃないからじゃ。人は想像以上に逞しい。急に伝統が一つ途絶えたからといって、死ぬことはない。
伝統など、元々は人々の団結力を高めるための決めごとに過ぎん。
じゃがその決めごとが数十年も続けば、なぜかそれは「伝統」に変わり、不可侵なもの、破ってはいかんものになる。全くもって理解に苦しむわい。
実際そんなことは毛頭ないんじゃよ!
じゃからこそ、お前さんが霊殿をぶっ壊すと言ったとき、わしは両手を挙げて……いや、両手両足と尻尾を挙げて賛成したのじゃ!
むむ、両手両足を挙げたら尻尾を挙げられんか……うーむ? うつ伏せになればできるかの? 試してみるぞい!
……そうか、わかった。
二百年前がどうとかって、お前は一体何歳なんだ?
ハハッ、さあのぅ。
歳なんて、お前さんたちが時間を記録するために作った概念じゃ。わしには関係ない! まぁいつ生まれたか忘れただけなんじゃが!
そうかよ……でもいずれにしても、やっぱ誰かに大族長になってもらわねぇとな。
ねぇ、ガヴィルとズゥママがもうひと試合やるって話を聞いたんだけど、それはどうなったの?
おっ?
何見つめてんのよ、気持ち悪い。
イナム、お前大族長になる気はねぇか?
はい?
つまり、一連の事件を経て、エンジンを取り戻した後に、緊急処置を施してなんとか帰途についたと。
そ、そういうこと!
ドクター、確か私は君に、飛行ユニットは貴重な乗り物だと言ったはずだが。
飛行装置の被害が修理可能な範疇に収まってる以上、私もとやかく言うつもりはない。ただし修理の費用は君とブレイズの給料から差し引かせてもらう。
えっ、私も?
エリートオペレーターは多くの責任を担うものだ。
はぁ、わかったよ。
連れてきたあの三人については、オペレーターになる素質があると君たちが判断したのであれば、ドクターに任せておけばいい。
ガヴィル、今回の里帰りは満足のいくものだったか?
そりゃあ満足さ。アタシの予想を上回る出来事の連続で、楽しかったよ。
ドクターが君を置いてきた場合のことも考えていたのだがな。
どういうことだ?
君が故郷に残る可能性も考えていたということだ。
あぁ? 水くせぇこと言わないでくれよケルシー先生。
君がまだ外の生活に馴染んでいないことは明白だ。君は相変わらず自分のやり方で、毎日この大地に起きる出来事と激しい衝突を繰り返しているからな。
言い方を変えれば、君がある日突然、休職や脱退の申請を出しても私は驚かないということだ。
なあドクター、よくわかんねぇけど、ケルシー先生はアタシのことを気にかけてくれてんのか?
Dr.、ほかに用がなければ、もう退出して構わない。
チッ。お前はこういうとき黙ってばっかだな。
まぁ、ケルシー先生の言葉は良心的に解釈しとくぜ。
ドクターでもよくわからないのか。さすがケルシー先生。
ケルシー先生、アタシはここを出ていくつもりはないぜ。
あのとき故郷を離れたのは、医者になりたいって思ったからだ。
まぁ当時のアタシは、本当に医者になれるとまでは思ってなかったがな。だけど今となっては、あのときの自分の決定に感謝してる。
現代医学の見地に立ってみれば、アタシの故郷は医者がいないのと同じだ。何かを治療するにしても、簡単な民間療法くらいしか打つ手はない。病気になったら命を天に任せるしかねぇんだ。
あそこを出なかったら、アタシは、この大地がどんなもんかだって知ることはできなかった。
多くの病人は救えるってことも、鉱石病がこれほど忌み嫌われる病気だってことも知り得なかった。……人を救うのは、殴るのと同じくらい楽しいってこともな。
外は確かに複雑なところだ。目的のわかんねぇヤツらも多いし、なんで戦ってんのかわかんねぇこともある。
だが今のアタシは医者だ。どんなヤツが現れようが、理解できないことがあろうが、全員の鉱石病を治してやるってのがアタシの理想さ。
アタシが医学に励むなら、ロドス以上にふさわしい場所はあると思うか?
おそらくないだろう。
だからアタシはここにいる。つーかケルシー先生たちの方が、毎日アタシの何倍も疲れてんだろ。アタシのことなんか気にかけなくていいよ。
むしろこっちがケルシー先生のことを気にかけといてやりたいくらいさ。
アタシがいない間、無理してアタシの仕事まで引き受けたりしてないよな?
していないさ。
それならよし。じゃあアタシはズゥママたちの鉱石病検査に行ってくるぜ。
じゃあ私もクマールの様子を見に行こうっと。あ、今はフリントって名前だっけ。あの子言葉が通じないから、また誰かと喧嘩になってるかも……
ドクター、トミミは一般常識の授業を受けてるはずだ。もうすぐ終わると思うから、様子を見に行ってやってくれ。
ガヴィル。
ん、なんだ?
おかえり。
ハハッ。
あれ、私には!?
君の次の任務は先週から決まっている。本当は、もうかなり遅延しているんだ。
ええ……
……
君にとって、今回はいささか常識外れな旅だっただろう。
だが今回の出来事は、この大地が活力に満ちている証明でもある。ガヴィルの性格と同じようにな。
長い年月の中で、多くの物事は摩耗し本来の色を失っていく。かつての当たり前は、今となっては得難いものになっている。
我々は、人混みの隙間から漏れ出す光を探りながら、それを常日頃から意識しておかねばならない。
手が届かないと思っているものも、目を凝らせば、案外近くにあるものだ。そのことに、君や、今回の旅に同行したオペレーターたちが気付いてくれれば、と思う。
ケルシー、会議の時間だよー!
ああ。
Dr.、君にはまだ多くの仕事が残っている。
今回の休暇で十分癒されただろう君が、今まで以上に尽力してくれることを期待している。