マリア・ニアール MN-8・戦闘後
商業連合会
観客席に、一人の老人が座っている。
騎士競技には微塵も興味はないが、孫の機嫌を取るためにどうにかチケットを二枚手に入れ、新聞やテレビで大々的に宣伝されていたこの試合を見に来たのだ。
老人は眉をひそめ、ため息をついた。目の前で繰り広げられているサルカズ人による若いクランタの公開処刑……なぜこのような残酷な見世物が好まれるのか、理解に苦しんでいた。
理解に苦しめど、間違っているとは思わない。彼自身も所詮は貴族の地位など持たぬ征戦騎士なのだ。ただ彼は、この試合、或いはあのサルカズ人の戦い方に心底辟易していた。
しかし、会場が突然眩い光に包まれた時、老人は思い出したのだ。あの若い騎士が、ニアール家の末娘だということを――「実に残念だ」老人はそう思いながら、眩い光を眺めていた。
それと同時に、ごく数人のカジミエーシュ人たちが、とある物語を思い出していた。
物語の舞台は、深い森の湖のほとりにある、高い壁に囲まれた要塞が建つ守衛地。
夜の帳が下りると、松明の炎と月明かりが、辺り一面とそこに集う征戦騎士の鎧を照らし出す。そしてきらめく銀槍の鋭い刃が、暗闇に蠢く敵に向けられる。
だが無慈悲な侵略者たちは、大気を操る力を持ったリターニア人に月明かりを遮断させた。そして暗闇から現れた恐ろしいウルサスの軍隊が、壁を越えて要塞へ侵入を果たした。
いくつもの都市が屈辱的に陥落し、防衛線は後退する一方だった。そして「銀槍」という言葉さえも、死の商人たちにとっては、騎士をあざ笑う代名詞となったのだ。
最後の防衛線である荒地まで、もう後がない――
そんなカジミエーシュ最後の砦に、黄金の髪の年老いたペガサスが舞い降りた。
ウルサスが初めて敗北したあの夜明け……カジミエーシュの彼方に見える地平線に、二つの太陽が昇った。
光。
光は消えていなかった。遍く光が周囲を照らし、競技場を支配していた恐怖の霧が晴れていく。
そして今、太陽が頷き、騎士の帰還を歓迎している。
......
......
……マリア。
立つんだ、マリア。
……
……お姉ちゃん?
マリア。
成長したな、お前はよくやった。
いや……あれはマリアのアーツではない……
一体何が起こっている?
チャルニー様! 先ほど無冑盟の見張りから連絡がありました! ここより北西の方向およそ1キロの地点から、一筋の光が外壁を穿ち競技場に飛び込んできました!
恐ろしい速度で、まったく詳細が確認できません!
……テロの可能性は?
い、いいえ、武器のようなものでは――待ってください、人です! あれはクランタ人です! これほどの速度を出せるのは最上位の騎士以外に――
……
……いいや。
あり得ない……まさかこの光は……
グオオ……敵はどこだ? 眩しすぎて、何も見えん……!
任務は、最後まで遂行する。どんな事態であろうと――標的を抹殺するのみ!
グアア……!
拳で……この俺を拳だけで吹き飛ばすだと? 何者だ?
汚れたアーツ……苦難の道を歩んできた、哀しきサルカズ感染者の成れの果て。それが、「騎士」にあるべき姿なのか?
グオオ……
お姉ちゃん……?
待って……本当にお姉ちゃんなの? 気を失って幻覚を見てるってわけじゃないよね……?
ああ。
……
ほ、ほんとに……?
そうだ。
……お姉ちゃん?
よくここまで耐えた、マリア。
うぅ……お姉ちゃん……戻ってくるの……遅いよ……
……目障りだ! まとめてぶち殺す!
ふっ……させるか!
なっ! 攻撃が効かない――だと?
……奴の放つ光が、俺たちのアーツを無効化している。退がれ、俺がやる。
ああーーっ! 眩い光の中から現れたのは――あれは間違いなく、そう……あれは――耀騎士だ!!
これは一体!? 追放されたはずの耀騎士が、まさかのタイミングで戻ってきましたーーー!!
(おい! 今すぐあの代弁者のところに行って何がどうなってるのか聞いてこい! な……に?)
ル、ルールには反しますが! そんなのは問題ではありません! 妹マリアを助けるために、危険を冒してカジミエーシュに戻ってきた耀騎士!!
迫力が! 勢いが! いいえ、そもそも格が違います! 地獄から這い出たかのような騎士二人を前にしても、まったく臆することはありません!!
さぁ、復活した耀騎士に――ありったけの歓声を!!
あれは……マーガレット? あの盾を持った騎士は、マーガレットなの……?
ど、どうして戻ってきたのよ……?
まるで別人じゃないか……
……確かにマーガレットだが……一体、どんな日々を過ごしてきたというんだ?
はぁ……
あの気迫に満ちた耀騎士が――マーガレットがついに、戻ってきたのか!
ふむ……大人しく退いてはくれんかの?
残念だけど、ムリだね。
となると、本気を出さねばならんということかのう?
……できれば、そんなに頑張ってほしくないんだけどなぁ。
もう一度言うよ。アンタたちにはどうすることもできない。そして必要に迫られない限り、見逃してあげるっていうのが私の主義だから――
競技場にさえ近づかなければ、命は助けてあげるよ……ん?
――なにあの光?
おい! フォー、あれを見ろ!
なんじゃ……?
あの光……あれは……
まるでニアールの旦那様のようじゃが……
(ここまで強い輝き……マリアがこれまでに放ったアーツとは似ても似つかないけど、まさか……)
(でも……ラズライトの二人が……ウソでしょ……)
ん……?
もしもし。
遊びはオシマイ。つーことでさっさと撤退よろしく。
……どういうこと?
耀騎士が競技場に突入したんだ。これ以上そこでやり合ってても意味ないだろ?
……
大体状況はわかった――アンタたち二人掛かりで失敗したってことだね。
上のランクを疑うとは感心しないぜ、プラチナ。元々、理事会から受けた任務も「耀騎士を見張れ」って内容だったんだ。実力行使しろとは言われてねぇ。
まぁやり合うことになっても、あのしかめっ面が一緒だし、楽勝だと思ってたんだけどな。
ただ、ほんの少しだけ想定外のことが起きたんだ。まず、耀騎士自身がちょっとばかし強くなってて……あとは……何だ、厄介なツノ付きが増えててな。
はぁ……アンタたち二人が厄介だって思ったんなら、わざわざ私に恨みがましく言わなくてもいいんだけどね。
おっと、忘れるとこだった。このままだとお前とも鉢合わせることになるって教えてやろうと思ってたんだが――まぁ、もう遅いかもな。
とにかく手は出すなよ。命を大事にするんだな、プラチナ。
はぁ? ちょっ――!
まったく、一体どういうこと……
まさか、ムリナールが? あり得ない……アイツはずっと会社にいるはず……じゃあ一体誰が……
うっ……!?
(な、なにあれ……あの青白い影は?)
フォー……!
うむ……
何なんだ? こんな感じは初めてだ――
……無闇に動くでない。息を潜めて辺りを観察するんじゃ。
(まるでなにかに心臓を掴まれてるみたい……あの二人が厄介だって思ったんならかなりの……)
うっ……! 来る!!
……
……
……
剣を携えた白い角のサルカズが足を止め、静かに顔を上げた。
……
……はぁ、これなら手を焼いて当然か。端っから騎士ですらないんだもん。
……
通っていいよ。ターゲットリストには載ってないし。
……ありがとうございます。
リズさん、まだ歩けますか?
大丈夫です……あそこ、とても明るいです。
ニアールさんですね。
では、私たちも行きましょう。
はい。
……まったく、なんて日なの。
さっきのサルカズ……マーガレットの知り合いなのか? いったいどうなっとるんじゃ?
ありゃマーガレットだ! フォー! 本当にマーガレットが帰って来たんだ!
……騒ぐでないわ。
で……わしらはどうするんじゃ? 続けるか?
ちょっと、そんな目で見ないでよ……ま、ここまでだね。
……
任務自体が無くなったんなら、こんなところでアンタたちの相手をする意味もないし。
命拾いしたね。
待てい! 逃げるのか?
フォー! 競技場に行くのが先だ、あんなのは放っておけ!
ふんっ……無冑盟め!
マーガレット・ニアール……耀騎士め!
競技場の警備はどうなっているんです?
け、警備ですか……? 耀騎士が全力で突入してくるなどとは想定しておりませんでしたので、防壁なども特に用意は……
……
耀騎士……
はは……耀騎士、今さら戻って来て何をするつもりだ? 騎士たちの墓標でも眺めていくのか?
チャルニー様! 商業連合会から連絡が……その……
……
マルキェヴィッチさん。
へっ?
これから何があっても――たとえ私が戻ってこなくても、この部屋を出てはいけませんよ。
は、はい……
ええ……準備は万端に整えてきました。そうです、やれることは全てやり尽くしたではありませんか。後は終幕を迎えるだけ――
まったく、お笑い種ですね……あはははっ……
チャルニー様?
これは、失礼……
……
チャルニー様? お電話が……?
……ええ、わかっていますよ。
申し訳ありませんが……しばらく失礼します。
……騎士としての力量はある。
だが、薬の多用、そしてアーツに頼り過ぎる傾向、さらに……
グオオ――
俺が奴を抑える! お前は標的を始末しろ!
理性を失いかけたサルカズ騎士たちが繰り出す武器とアーツによる攻撃は、辺り一面に死の匂いを撒き散らしている。
それでも、耀騎士は微動だにしない。
――殺せ!
むっ、爆破のエネルギーで――
――死ね。
させないっ――!
グオオ……! 貴様、俺の突進を盾で? まだそんな余力が残っていたのか!?
マリア、そんなことをしたらケガが――
お姉ちゃん……! 前に言ってたよね、騎士は弱者を守るために盾を手に取るんだって……そうでしょ?
でも、今この場には――
――お姉ちゃんが守らなきゃいけないような弱者はいないよ!
……!
私がお姉ちゃんの盾になる、だから――
どいてろ、こいつらまとめて粉々にしてやる!
――全力を出して!
グオオ……盾を捨てたぞ! お前のアーツはどうした!
……あり得ない……あの戦鎚はただのアーツユニットのはず……奴は……
マリア……準備はいいか?
うん!
……騎士とは!
大地を照らす崇高なる存在だ!
戦場に飛び込んできた耀騎士ですが、少し交戦しただけで盾を手放しました! ……いやわざと捨てたのか? あ、あれは!!
かつて耀騎士が、両手持ちのウォーハンマーで大会を席捲したのを覚えているでしょうか!? 今のあの姿、盾を捨てウォーハンマーを掲げるスタイル! あれこそが耀騎士の真骨頂です!
幾重もの警備を突破した耀騎士! 帰ってきた伝説! ですが試合が終了次第、国民議会に連行されてしまうかもしれません! 耀騎士の雄姿を目に焼き付けられるのは今だけです!!
あのアーツ……あの輝きは……
なぜ貴様は堂々とそのような光を放てるのだ……? 不遜なヤツめ――まさか本当に己を太陽だとでも思ってるのか!? 耀騎士よ!
マーガレットさんが盾を手放す姿を見るのは、久しぶりですね。
あの光……焼けつくように熱いです。
大丈夫、ですよね?
あの状態になった耀騎士が失敗したところなんて、今まで見たことがありませんよ。
あの子、ニアールさんと似ていますね。
えぇ、彼女の妹です。
ふふっ……なんて可愛らしい騎士なんでしょう。マーガレットさんとそっくりです。
……矢が……尽きた!
グオオ――! アーツを使え!
アーツを矢の代わりにするつもりだね……でも大丈夫、防いでみせるから!
あぁ、後は任せておけ。
くそっ! 貫けない――忌々しい光め!
……
……観客たちがやけに静かだな。
あのサルカズたちは強い……コンビネーションも息が合っている。見た目ほどマーガレットは優勢なわけじゃない。
でも、マーガレットが負ける気は全くしないわ……あの子が劣勢だなんて、微塵も感じない……
マーガレットの戦いは人を魅了する……優雅な佇まいとあの光が、さらに高揚感を与えるんだ……
ニアールの旦那様が若かった時を思い出すよ。
な、なんということでしょう! 摩訶不思議です!
耀騎士がハンマーを振り下ろす度に放たれる光が、相手のアーツをかき消しています! 彼女が踏み越えた地面の亀裂までもが、光り輝いているではありませんか!
なんとまばゆいアーツなのでしょう! なんと素晴らしい戦闘技術なのでしょう!!
これこそが王者の技! 真の騎士の実力――!!
わぁ……傷口の痛みが引いていく……これもお姉ちゃんのアーツ?
(あんな攻防を繰り広げながら私の傷まで気にかけてくれるなんて――)
グオオ――! 俺のハンマーが……!
武器が駄目なら、この両腕を使うまで。その体を引き裂いてやる!
殺せ!
……
お姉ちゃんの表情、何か変だな。どこか……哀しんでいるみたい。
あのサルカズたちの行動に? 彼らが騎士と呼ばれてることに? それとも……彼らの境遇を嘆いているの?
……マリア。
えっ、うん!
援護は頼んだ。
――うん!
お前もかかれ!
わかっている!
懺悔するがいい。
――
――
その瞬間、競技場は水を打ったように静まり返った。
試合の決着に沸く歓声も、勝者の雄叫びも、敗者の嘆きも――何も聞こえない。
サルカズたちは地面に膝をつけども、まだ倒れてはいない。しかし耀騎士は、それ以上は不要とばかりに武器を下ろした。
彼女は二人のサルカズを見下ろすと、次の瞬間、片膝をついて手を差し伸べた。
……
――サルカズは何の反応も見せない。
……己の運命を諦めるべきじゃない。
いいや……
……
二人の前で跪く姿が屈辱であるかのように、サルカズたちは口を閉ざしたまま微動だにしなかった。もはや、立ち上がる力も残っていないようだ。
耀騎士は、軽いため息とともに立ち上がると、後ろを振り返った。
マリア。
え、えっ……?
私たちの勝利だ。
信じられません! 誰が信じることなどできるでしょうか!?
かくいう私でさえ信じられないのですから! 突然、乱入してきた耀騎士と、試合を中断させることなく全てを了承した騎士協会! あぁ神よ! 私はこの光景を何と喩えれば――
私の長いMC人生でも、こんな状況は初めてです! 国民議会が今回の乱入をどう処理するのかはわかりません。しかし、それも今この瞬間の勝利には関係のないことです!!
今ここに――
(モーブさん。)
(……あぁ、待ちくたびれましたよ!)
これを宣言できることを心から光栄に思います!!
(代弁者さん、なんと宣言したら良いでしょう?)
(構いません。勝利を認めてください。)
勝者は! 若き奇跡の騎士、マリア! そして、遥か彼方の地から戻りしペガサス! 誰もが知る耀騎士、マーガレット・ニアール!
(素晴らしいですよ、モーブさん。人々の気持ちを高揚させるそのMC、称賛に値します。)
(ひとまずこの場を保たせてください、すぐに現場担当が場を鎮めますから。)
さぁ、二人に大きな声援を送りましょう――!!
――
ゾフィア!? どこに行くんだ?
マーティン! おい、皆どこにいるんじゃ――ん、あ、あれは?
ほ、本当にマーガレットなのか……? しかし何故、マーガレットが戻ってきておるんじゃ?
何と言おうと彼女は追放者じゃろう? わしらに連絡もなしにこんな――
落ち着くんだ。ムリナールなら何か知っているかもしれないが……今はひとまずここを離れなければ。
記者と観客たちはすぐに出入口に殺到するだろう。まずは道を――耀騎士を連れて帰る道を探すんだ。
あれが……耀騎士!! 前々回のチャンピオン、耀騎士か!!
どけ、どけ! 写真を撮らせろ!!
皆様、観客の皆様! どうか冷静になってください! 何が起きようと、我々は試合を合法的かつ滞りなく進める義務があります!
(次はどうする!? 代弁者が見当たらない? バカ! VIP席を探すんだよ――!)
待ってください! あれは……鞭刃騎士! 鞭刃騎士が観客席から壇上に乗り込み、耀騎士めがけて一直線――
ゾフィ――
えっ――! ゾ、ゾフィアおばさん?
どうして……今頃戻ってきたのよ!?
――か、彼女は今、ひょっとして耀騎士にビンタを……? え? あれ? ちょっと待ってください、今のシーンも一面を飾る絵になる――
申し訳ない。だが、確かに戻ってきた。
……今のビンタは、マリアの代わりだから。
ええっ――!?
私の分はいいわ。
そうか、手加減してくれてありがとう。だが……今使ったのは右手だな……利き手はどうしたんだ?
……その話は後にして。君が急に現れたせいで、ここはもうパニック状態よ。追放者が堂々と戻ってくるなんて、国民議会が黙っていないわ。
記者や役人が駆けつけてくる前に、早くここから逃げないと。
い、今すぐ? でも、試合後のインタビューとか――
そんなのに構ってる場合じゃないわよ! 彼女が会場に乗り込んできたことは、試合なんかよりもずっと大ごとなの!
ニアールさん。
リズ、足元に気をつけろ!
……そんなに心配しなくてもいい。ほら、手を。
このサルカズの二人は……?
安心してくれ、私の戦友だ。シャイニング、手を貸してくれないだろうか?
はい。
……!
ん……気絶していた? ……これは、治療アーツ?
な……何者だお前は!?
サルカズか? お……お前! ありえない、お前が俺の治療を?
二人とも酷い怪我ですが、この試合によるものではないようです。たとえアーツを使っても、薬物が残した痕跡までは消すことはできません。どうか、ご自愛ください。
退け――触るな! グオオ……
俺は……!
ま……待て、お……お前は――
――ニアールさん。
ああ、わかっている。
無冑盟の刺客が二人ほど私たちを監視していた……のんびり勝利を祝う暇はない。
無、無冑盟? 君はいったい――
逃げますか、ニアールさん?
いや……
勝利した騎士が恐れおののく必要はない。私たちを止めるつもりならば、やらせておけばいい。
ニアールさん、あそこ。
ああ……コーヴァルさんとフォーゲルヴァイデさんだな。こちらに手を振っているが、何か見つけたのか?
そんなの逃げるルートを確保してるのに決まってるじゃないの!
私とあの三人で観客の波を抑えるから、さっさとここから逃げて。でもこの後、国民議会は必ず君たちの家に向かうはずよ。そこからはもう、君たちだけで解決策を考えるしかないけど――
――マーガレット!
ん?
帰ってきてくれて……よかった。本当に。
あとで、いつもの場所に集合よ。遅刻厳禁。
ああ……もちろんだ。
あれは……ニアールさんの家族でしょうか?
そうでしょう。彼女が帰ってきたことを喜ぶ気持ちが、私たちにも伝わって来ました。
ですから、しばらくついて回るのはやめましょう。どのみち、このカジミエーシュで耀騎士に手を出せる者などいないのですから。
はい。
私たちは……アーミヤさんたちと合流しましょう。
マーガレットは真っ直ぐ顔を上げた。
彼女はかつて、この土地を何より憎んでいた。
……マリア。
え?
……帰ろう、私たちの家に。
しかしここは、彼女のたった一つの故郷なのだ。
……
……来たね。いつも一緒にいるあのコバンザメは?
……彼は後任者です。
へぇ……残酷だね。
やめましょう。それよりも、答えを聞かせてください。
ずいぶんあっさりしてるんだね……もうわかってるくせに、聞く必要なんてないんじゃない?
……
もしかしたら、もっといい人生が送れるかもしれないよ。
いや……私は流刑地の荒野で野垂れ死ぬでしょう。もしかすると、あなたが手を下すことになるかもしれませんね。
……そうだね。その時は恨まないで。
もちろんです。
アンタの流刑手続きは国民議会を通さないから、今晩中に出ていってもらうけど、何か今のうちに言っておきたいことは?
……
シェブチックには、まだ息子がいます。事件発生当時も、その場にいたはずです。
うん。
あなたにお願いしたいのは……
彼が真相を告げる機会を潰していただきたい。永遠に――