画中人 WR-5・戦闘後
拙山
来るな! 来るなぁ!!
ててて、手がっ、俺の手がぁ! ……は、はは、どうして全く痛くないんだ? 俺は――
ガアッ!
ひいっ――来ないでっ!
大丈夫か!
遅いじゃない!! どうして誰も鐘を叩かなかったの? 除夜の鐘を打つ僧侶はどこに行ったの!?
あなたたちを信じて言う通りにしたのに、どうして!? どうして私の夫は死んじゃったの!? 一体どうやって……どうやって償うつもりよ!
……まずはここを離れるのが先決だ。
うわあぁ――お母さん、お母さん、お母さんを返してよぉ!
ガアッ!
うおっ! 今回も危機一髪だったね!
お、おじさん、お母さん、お母さんが――
ガアッ!
小さいのを倒すだけならまだしも、外のデカいやつには歯が立たなさそうだ。お嬢ちゃん、しっかり捕まってろよ。ズラかるぞ!
ガァ――! グァッ!
うわっ、もう一匹来た!?
き、キリがないな!
ガア――ッ!
グガッ!
一体どっから湧き出てやがんだ……!?
ダメだ。この数じゃ、全部は食い止めきれない――
ガッ……?
絵の中の人々とはいえ、これほどにひどい仕打ちを受けるなど……このような光景は、見ていて苦しくなる。
ラヴァ殿、ここは拙僧にお任せを。早く他の者を避難させるのだ。
サガ……
心配はご無用。拙僧はこの地を遊歴すること数年、未来への憂いや迷いも多いが――
――目の前の危機を見過ごした事は一度もござらん!
ここは、拙僧が守り抜く。
……わかった。終わったら東に向かってくれ。そこでアタシたちと合流しよう。
承知つかまつった!
ガアッ!
拙僧ここにあり! 前に進むでない!
!?
この境界線を越えた者は――斬る。
うあああーーん!
お、お、お嬢ちゃん! 髪を引っ張るのはやめてくれないか?
お母さん――お母さん――
ガアッ!
ガァガァガァガァうるさいなぁ。こんなにしつこく追いかけ回す頭があるならば、人の言葉くらい話してみたまえ!
ガ……
……ニゲ……ルナ……
うおぉ、今のは冗談だって! なっ、なんでも真に受けないでよ!
ううぅ、おじさん、前、前!
へっ?
いやぁっ!
あ、あなたは占い師さん? 他の二人の英雄はどうしたんです?
危ない、後ろ!
ガアッ!
どうして化け物を連れてきたんです? 早く何とかしてください!
ええ? 私が!?
化け物を引き離してください、早く!
い……いや私だってね――
ううぅ、うわあぁ、お母さん、お母さん――
…………
ああ、もう泣かないの! ね? 泣かないでってば!
あっ! 化け物がこっちを見てる! 早く、早くどうにか――
ガアアアッ!
え……?
せ、扇子で?
……ちょっと離れていてくれるかな。
ガアッ? ガアッ――
一発で……!?
ガオッ!?
す、すごい……
…………
のおおっ! 痛ててて、手が痺れた! こいつら一体何なんだ? 見た目はフニャフニャなのに、叩くと結構カタいじゃないか!
はぁ……そんな目で見ないでくれたまえ。曰く、「駄獣窮して人を噛む」とな。それより早く逃げよう!
ガアッ……
!?
うーん。腕前はなかなかだけどぉ、ウユウくんはこういう状況で人助けをしたことがないんだねぇ?
目の前の敵だけ倒して、周りに気を配らなかったらぁ、いつか痛い目を見ちゃうかもよぉ?
あ、あはは……恩人様のおかげで助かりましたよ。いや本当に危ないところでした。
……はいは〜い。早く残りの人を連れて避難してねぇ。
え、恩人様は?
私ぃ? 大丈夫だよぉ。私は足取りが軽いから、見つかりっこないと思うよぉ。
(足取りが軽いとかそんなレベルの隠れ身じゃないだろ!?)
さてとぉ……一気に敵の数を減らすにはぁ――
いやぁ! あ、あの庭園の火はなに?
おう! 火の柱が天に向かって伸びておる、なんと壮観な眺めか!
む? そうか。たしか「ラヴァ」というのは、異国の言葉で――
…………
ラヴァちゃ〜ん。
……クルース、付近の敵の分布範囲を確認してくれ。
そんな大掛かりなのをやるつもりなのぉ?
ああ。周りの建物が心配で、みだりに派手なアーツは使わなかったんだが……
敵が多すぎる。ちまちま対処してたら、計り知れない数の被害者が出るだろうから。
そうだねぇ。緊急事態には、緊急手段を――だよねぇ。
私は高いところに行くから、安心してやっていいよぉ。
アーツの範囲外にいる敵は私に任せてねぇ。一匹も取りこぼさないからぁ~。
ああ。
任務報告はアタシが出そう……元々ロドスが助けるべき対象は、感染者だけにとどまらない。
感染者……?
どうした?
ううん……なんでもないよぉ。あ、その前にねぇ、ラヴァちゃん。
煮傘さんは見かけたぁ?