狂人号 SN-ST-4・幕間
海沿いの大通り
――名のあるイベリアの建築家であり、最高造船技術士でもあったブレオガンの遺したノートの写し。それは、難解なエーギル文字でしたためられていた。
これはエーギルの問題だ。
お前がイベリアの地にいる限り、法の眼は注がれている。そして私の眼もまた同じことだ。
フン……
三人のアビサルハンターとの関係は?
――貴様はスカジに傷を負わせたそうだな。実に妙な話だ。あいつは戦いを避けたがっただろうに。
……
スカジの血は特別だ。俺たちの誰よりもな。――ときに、貴様の得物に付いた血は念入りに拭っておいたか?
質問しているのは私だ。
答えるかどうかは俺が決める。
……カルメン閣下が自由を許した狩人は、サルヴィエントの戦いで己の立場を表明したエーギルのみ。とならば――
……なるほど。あいつに手傷を負わせたことは、偶然ではないようだな。
あれは、彼女が私に実力で劣っていたからではない。
……優劣などというくだらん物差しで計れるとは思うなよ。
単にあいつは陸に不慣れであるゆえに、柔軟には対応できないというだけのことだ。
――動かないで。
大人しく調査に協力しなさい。アビサルハンターはすでに、裁判所と契約を結んでいるの。あなたの一挙手一投足が、私たちの協力関係に悪影響を及ぼすことになるのよ。
……協力関係だと?
ええ。よく考えてちょうだい。
審問官よ。イベリアには、あとどれほど貴様のような戦士がいる?
答える義理はない。
三千人はいなければ、「協力」など話にならんぞ。
……
その反応を見るに、今のイベリアではやはり不十分のようだな。
逃がさんぞ!
ギュイイイ、ギギギッ!
何? 一体どこから……
上官! お怪我はありませんか?
ああ。だが、あのエーギルは……
申し訳ありません、私のせいで……!
……奴なら、今の隙を狙えば、私の腕を斬り落とすこともできたはずだ。しかしそうはせず、逃げを選んだ。
――とはいえ、追っている暇はないようだな。
この恐魚、町のほうから来ているようです……! きっと土の下に潜んでいたのですね!
いいや、違う。
この土地すべてが汚染されているんだ。
そんな……どうしてそんなことに……!?
――この邪悪な気配で満たされた、灰色の大地を見ろ。
っ、はい!
グランファーロはすでに、深海教会の手に落ちている。
戦いに備えろ。できうる限り迅速に、閣下の安否を確認するぞ。
この溟痕というのは、恐魚にとって命を育む領土……たとえるなら都市のようなものか。
信じがたいことだが、奴らは溟痕から生まれ、そして溟痕によって勢力を広げているようだ。
グギュ……ジュル……
すべての生命が自立を渇望しているわけではない。そう考えれば、こうした不浄なるものが、この小さな町に潜んでいたのも不思議ではないが……
……これを上陸させたのは何者だ?
あ~あ、がっかりね。今回のバカンスは良いインスピレーションが得られそうだったのに、これじゃ台無しだわ。
(賛同を表すソロを奏でる)
ってか、ヤバくね~? 海が大地を撫でてる感じすんだけど。
ケルシーが言うには、エーギルは一度勝ってるとか、あのアビサルハンターたちはその戦争の生き残りだとかって話だったけど……現状を見る限りじゃ、とても勝ったとは言えなさそうだよね。
あ。そういえば、あれはもう渡したの?
ええ。
そう。にしても、回りくどいやり方だよね。ケルシーが、自分であのグレイディーアってエーギルに渡したほうが早かったんじゃないの?
(疑問を示すソロを奏でる)
もしかすると、あの鍵を使って、私たちをここへ呼ぶのが目的だったのかもしれないわね。だとすれば、その目論見は上手くいったわけだし。
あるいは、元々は私たちに何かを探させたり、手伝わせたりするつもりだったけど、気が変わったとか。
ん~……でもあの人、何でもお見通しって感じで計画立ててるタイプでしょ? そんな人の気を変えさせるような何かがあったってことかしら?
……かもね。まあ、あの人は確かに知識も豊富だろうけど、それ以上に慎重でもあると思うよ。じゃなきゃ、命がいくつあっても足りないでしょ?
で、さっきからDanはどうしてエアドラムなんかしてるわけ?
え~? 決まってんだろ? 「この礼拝堂、ライブハウスにぴったりじゃん!」って意味をこめてんだよ!
サメ、それにスカジも。
見える範囲の敵は片付けておいたわ。
……見えざる波が、浜辺に聞こえる潮騒のように、ここまで打ち寄せてきています。
これは良からぬ兆候です。私たちはここにいるべきではない、と告げているよう……
……ゴミを片付けたくらいでは、我に返るには足りないようね。
だったら、このあとはどうするの?
ここの掃除を終わらせましょう。そうすれば、イベリア人の手を借りてあの船を探し出すことができるわ。
――ねえ。こいつらの身体には、私たちの知らない何かがあると思うの。
知らない何か、ね。それもあるいは、恐魚の一部なのかもしれなくてよ?
……だけど私、前から考えていたのよ……
奴らはなぜ、こんなにも早く進化することができるのか。そして、なぜ、あれほど生命力に満ちているのかを。
だって、「あれ」はとっくに私たちが……
それはこの先考えていくことよ。だからこそ、私はケルシーとの協力を選んだのだもの。
――ケルシーは……
元気よ。
さあ、あなたたち。日が落ちる前に片を付けましょう。海の声が聞こえない恐魚など、単なる下等生物なのだから。
……そうね。
あら……グレイディーア。来てくださったのですね。それならば、あなたのご指示に従いましょう。
……サメ。
得物の調子はどうかしら?
これのことですか? ええ、まるで共に踊っているかのようで……武器を手にしているということすら、時折忘れてしまうほど、しっくりときておりますよ。
そう。……それが過去よ。もうじきあなたに追いつこうとしている過去。
私たち、あなたを待っているから。
ビィィ……ギュギュギュ……!
素晴らしい行軍速度だな、ダリオ。頼んでおいた件は順調かね?
はい、閣下。
懲罰軍に、イベリアの眼へ向かう船を用意させました。彼らはその後海岸を離れ、この町の包囲に当たっております。
道を踏みはずした者に、逃げ場などありません。
確かに、あの小悪党たちは恐るるに足りん相手だろう。しかし、奴らの持ち込んだ新たな脅威は油断ならないものだ。
とはいえ、我々の技術ならば、汚染を取り除くことも可能かと。
それでもたらされるのは、一時の勝利に過ぎぬ。加えて言うと、あれは我々ではなく「エーギルの」技術だ。
潮が砂浜に打ち寄せるこの一分一秒、そして海水の一滴や、砂の一粒……すべてが恐魚とその生態系の延長線上にあるとすれば。我らは、如何にして故郷を守り抜けばいいのだろうか?
時が来るまでには、方法を見つけ出してみせましょう。
ああ。必ずや、成し遂げてみせよう。
それから、もう一点――不測の事態に備え、あの三人のアビサルハンターとの交戦準備も整えました。必要とあらば、彼女たちを殲滅することも可能です。
よろしい。……この地は墓場に相応しき場所だ。彼女らが賢明であるよう、そしてケルシー女史が約束を果たしてくれるよう、願っておくとしよう。
……
さて。その子が君の弟子か……裁判所でも、噂は耳にしているよ。
は、はい、カルメン閣下! 私は審問官アイリーニと申します! ここにご挨拶を申し上げますっ!
ダリオが廃墟で君を見つけた時のことは聞いている。傾いた梁に身につけた経典が引っかかり、奇跡的に君の命を救ってくれたそうだな。
はいっ!
ふむ……若者よ。ダリオは、君が前線に赴く意志を持っていると判断した。それゆえ、君はここにいるのだろう。
はい!
君はまだ未熟だが、活力に溢れており、身体も丈夫で、健康そのものだ。
とはいえ、グランファーロでの任務は、サルヴィエントの時ほど甘くはない。これまでより深く、邪悪の中心へと入り込んでいくことになるだろう。君にその覚悟はあるか?
私は、イベリアの潔白と美徳を守るために、この剣と灯りを掲げております。
この言葉は私にとって、単なる宣誓以上のものなのです。
アイリーニは、覚悟を決められる人間です。
ふむ……ならば、君の判断を信じるとしよう。だが、運命は往々にして覚悟を決めるいとますらも与えてはくれないものだ。
では、アビサルハンターの小隊をイベリアの眼へと案内する任務は任せた。私はケルシー女史に用があるのでね。
イベリアの眼……ですか。上官、具体的には、何をすればよろしいでしょうか?
……整備士が安全に大灯台へ辿り着けるよう、拠点を作り、道を整えるんだ。
グランファーロに最も近い海岸から五十海里ほど行った場所に、最後のイベリアの眼がある。
前提として、その灯台が地図通りの場所にあれば、ということにはなりますが。
五十海里……
――かつて、我らの艦隊は見渡す限りの穏やかな海を目にすることができていた。だが大いなる静謐のあと、海はさながら毒の煮えたぎる鍋のごとく、触れる物すべてを融かしてしまうようになった。
これは困難な任務となるだろう。けれども、最後の灯台を取り戻すことは、非常に大きな意義のあることなのだ。
わ、わかりました!
そのためにも、あのエーギルたちの協力を得なければな。
……
その表情、聞きたいことでもあるのかね?
彼女は、裁判所の地下にある檻を見たのです。
ならば、君も裁判所が探っている真実を見たということになる。たとえ、我々がその答えを導き出すことができておらずともな。
行きなさい、若き審問官よ。時間は待ってはくれぬゆえ、必要とあらば、君たちには時間をも裁いてもらうことになるぞ。
ギュアアアッ――!
っ、危ない!
大丈夫かい!?
は、はい……! また助けていただいちゃってすみません……
ははっ、これくらい気にしないで。
ありがとうございます。――あっ……あの恐魚たち……
(どれも同じ傷が残ってる。穴を狙って叩き込まれてるみたいだけど――このやり方は、スカジとお仲間さんだろうな……)
……街中、ボロボロにされていますね……
そう、だね……
ッ――ジョディ、止まって!
うわっ!?
な、何なんでしょうか、これは……!?
――光る……植物? いや、プランクトンか……? あるいは……珊瑚とか?
この先はアレに覆われているみたいですね。……あれ? 待ってください、何かが軒先から……
――! 避けて!
っ……! う、嘘だろ――
――こいつら、ここに巣を作ってるの!? じゃあ、単に深海教徒の指揮で攻め込んできただけじゃないってこと……!?
(それに、こんなにたくさんいるなんて……もしかしてあの巣から生まれてきてるのかな? だとしたら、とんでもない速さで増えてるんじゃないか……!?)
ジョディ!
えっ、は、はい!
こっちには進めないし、来た道を戻ろう!
で、でも、後ろも似たような感じですよ……!
――くっ……! こいつらときたら、鉗獣よりも巣作りが早いみたいだね……!
こうなれば、一か八かだ。何か武器になりそうなものを握ってて。
ええっと……傘でもいいでしょうか?
……はは、確かに一雨来そうな天気だしね。ま、とにかく、なんでもいいからしっかり持っておいて!
ジュギギギ……ギュイイ!
――っ! 来るよ!
(得意げな雄たけび)
――Mon3tr、家ごと焼き尽くせ。
(愉快そうな雄たけび)
見たところ、エーギルの技術に頼らずとも、溟痕を取り除くことはできるようだな。
ケルシー先生!
無事で何よりだ。一体何があった?
……それと、そこで呆けているエーギル人は誰だ?
素晴らしい実力だな、狩人諸君。
お世辞は結構ですわ。早く本題に入りましょう。
……ケルシー女史はここしばらく、貴女の代わりに多くの苦労を引き受けてきたのだぞ。
もちろん、肝に銘じておりますわ。彼女が我々のためにしてくれたことも、そしてあなた方の行いも……私は決して忘れはしませんもの。
……
……
ですが、この会合は紛れもなく、彼女が作ってくれた機会です。狭く小さな海辺の町で、顔を合わせるだけの簡単なものではありますけれどね。
では、彼女のためにも、暫し平和的な姿勢で話を進めるとしよう。
貴女は、かのブレオガンの遺産――スタルティフィラ号を探しているのだろう。
――!
(スタルティフィラ、またの名を「狂人号」……大いなる静謐の時に全滅した艦隊の、旗艦の名前だったはずよね……? でも、どうして今になってそれを……!?)
私としては、貴女のような部外者が、何ゆえあの船はまだ沈んでいないと考えているのか……そちらのほうが興味をそそられるがね。
でしたら、イベリア人たるあなたのご見解はいかがですの?
……そうだな。
恐らく、あれは沈んでなどいない。
――!
だがその一方、港へ戻った試しはないというのも事実だ。
かの船は、六十年以上も沈まぬまま、けれど陸へと戻りもしない……そんな状況にあるということですのね。
船の現在地を確認することはできますの?
過去には可能だった。しかし、今は不可能だ。
となれば、それゆえに……
グレイディーアは、脇目に彫刻を見やる。
彼女の記憶の中には、それと同じ建物は存在しなかった。大方、彼女が陸へと上がってきた頃には、この手のものは静謐の中に飲み込まれたあとだったのだろう。
「イベリアの眼」。
その奇跡はかつて、壮大な計画の礎だった。けれども、今となっては灯台のほとんどが大いなる静謐に飲み込まれ、最後の一基を残すのみとなってしまった。
あれはあなた方の物ではなく、エーギルの物ですのよ。
……確かに、ブレオガンは海から訪れたエーギルだ。彼は私欲のない人であり、イベリアの海洋探査に大いに貢献してくれていた。
そうは仰いますけれど、あなた方は災厄のあと、民衆がエーギルに――そして彼に怒りをぶつけたその愚行を黙認したのでしょう? そうした判断を下す方々は、信用しがたく感じますわ。
ならば、エーギルは大いなる静謐とは無関係だと本当に言い切れるのかね?
……
……
隔絶の先に待つのは袋小路です。これ以上その話題を続けるおつもりであれば、イベリアとエーギルは滅びたも同然かと。
とはいえ、それでも文明は滅びず、単に変化していくだけですが――この次の文明は、人類とは無関係のものとなるでしょうね。
ケルシー医師。閣下に対する言動には気をつけていただきたい。
構わんさ。我々はもう随分と親交を深めたからな。……しかし、君は常にこうなのかね? ケルシー女史。
大きな運命の中から鍵となる人物を選び出し、説得して、君の考えを実行に移す――そうしたことを繰り返してきたのか?
私の考えは、あくまでもあなた方を救うためのもの。イベリアにはそれを拒絶する権利がありますし、エーギルもまた同じことです。
……
そちらの若く優秀なお嬢さんを含めれば、この場には裁判所の人間とアビサルハンターが三人ずついる、ということになります。
加えて、この広場にはエーギル人が築いたイベリアの景観が広がっており、交渉の場を飾るには最適といえるでしょう。
――今この時も、溟痕は広がり続け、恐魚は町に営巣し、同時に以前とはまったく異なる形に変化しています。この「変化」は、十分警戒に値するものです。
この期に及んで海の脅威の全貌が見えていないというのなら、確かに我々は皆一歩引き、アビサルハンターがその身を犠牲に稼いだ貴重な時間が無駄になるのを、黙って見過ごすべきかもしれません。
……あの勝利には、意味があったの?
勿論だ。そうでなければ、大いなる静謐のあとのイベリアが、命を長らえることなどできなかっただろう。
……カルメン閣下におかれましても、エーギルに対する先入観を暫くの間手放していただけますと幸いです。あなたの――
――ケルシー女史。私も歳だ。時間を無駄にする気はないとも。
……
老いた我が身はもはや闘争心を失い、言葉で己を誉れ高く飾り立てる気力もない。結局は、生きることこそが最大の誉れなのだ。
私は誰よりも現状を理解している。これ以上の説得は不要だ。――裁判所は、アビサルハンターとの協力を望んでいる。狩人諸君がかの失われし大船を見つけられるよう、助力させてもらいたい。
……大船……黄金の、大船。
……
こちらも、異存はありませんわ。
エーギルはイベリアとの交流を躊躇うものと思っていたが。
交流? ああ……もしあなたが水中でも呼吸をできて、機材の助けなく私たちの都市へ辿り着けるのなら、真のエーギルの技術展示会へ案内して差し上げてもいいくらいですわよ。
それは実に楽しみだ。
さて、今後の動きについてだが……懲罰軍の大方陣と軍艦数隻がグランファーロに向かってきている。その到着を待って拠点を作り、港を制圧して、準備に取り掛かるとしよう。
ダリオ、アイリーニ。君たちはアビサルハンターに同行しなさい。イベリアの眼への航路確保を優先し、我々の到着と指示を待つように。
かしこまりました。
……ケルシー。
訪れた機会が限られていて、選択を迫られた場合には、私はエーギルとの繋がりを取り戻すことを優先いたします。
ああ。船を探すも、エーギルへ帰る手段を探すも、君の判断に任せよう。
海へ深入りすることは誰にとっても危険な行為だが、君たちからすれば、単なる里帰りに過ぎないのだろうしな。
次にお目にかかるのは、ずっと先になるかもしれませんわね。
――我々が伝えたことを忘れるな。願わくば、エーギルに戻った時には、彼の地に起きたすべてをもう一度確かめてくれ。
……
それでは、早速だが――
あっ……
……すみません、ケルシー先生。灯台って言葉が聞こえたので……
……ちょうどいい。お前には色々と聞きたいことがある。
待ってくれ。
口を挟まないでいただこうか。――エーギル人よ、お前は何者だ?
……僕は……ジョディといいます。この町に住んでいて……
グランファーロにエーギルが住んでるわけないでしょ! この町の資料には目を通したけど、昔エーギル人と深海教会が共謀する事件が起きたと書いてあったもの!
では、お前の両親はどのような人間か答えろ。
ぼ、僕の両親は……灯台の、整備士でした。イベリアの眼のために命を落としたんです。
だから、家には古い図面がたくさんあって……でも、僕は実際にその灯台を見たことはないので……
見てみたいんです……故郷がしてきたことの意義を……両親が生涯を捧げたことの意義を、確かめたいというか……その……
そうはいかん。お前はまず、裁判所の尋問を受けねばならない。
私としても、戦いのさなか、ひ弱な労働者を守らなくてはいけないというのは、効率的な提案とは思えませんわ。
彼がブレオガンの子孫だとしてもか?
何ですって? この方は映像記録の中のブレオガンとは似ても似つかないように見えますけれど……
仮にそれが本当でも、ご家族の遺したものは裁判所に引き渡して、研究を引き継いでもらうべきよ。
そうですよね、上官!
……
エーギルの若者よ、名は何といったかな?
……ジョディ……ジョディ・フォンタナロッサです。おじさんが教えてくれたことには、ですけど……
では、ジョディ。君も、我々の前に現れるということが何を意味するかはわかっているのだろう?
は……はい、わかっています。
――アイリーニ。
はっ!
この若者を拘留し……
……同行させてやりなさい。
かしこまりまし――えっ? い、今何と仰ったのですか?
これが君の望みなのだろう?
ありがとうございます、閣下。しかし正確に述べるのなら、私の望みは、エーギルとイベリアが今後長きにわたって、真の意味での協力関係となることにあります。
千里の道も一歩からと言うだろう?
なるほど。……ならば早速ですが、この荒れ果てた海をイベリアの眼で見つめ直すといたしましょう。