潮汐の下 SV-2・戦闘前
歌い手
p.m. 3:23 天気/曇天
イベリア サルヴィエント
地図にある場所は……ここね。
……嫌な臭い。それに、気持ちいいとは言えない空気だわ。
こんにちは。
……
すみません――
…………
……
……ここには怪物がいる、ですって?
人しかいないみたいだけど。
(イベリア語)
今はこんな言い方しないのかしら?
(発音を少し変えたイベリア語)
……
……それに、今の私は歌い手だもの。
ホセさんが言ってたわ。歌い手はそんなことしないって。
九十九……
今、何か言ってたわね。
九十九。
子供……?
間違いない……数字を数えてるみたいね。
あっ――
私からネックレスを盗っていくなんて……
待ちなさい!
九十九、九十九……
もう逃げられないわよ。
う……あぅ~……
なぜ私の物を盗ったの? ここへおびき寄せるためかしら?
そう……
落とし穴に、縄まで仕掛けて……残念だけど見え見えよ。三流バウンティハンターの待ち伏せの方が、まだサマになってたわね。
出てきなさい。
私もあなたたちに用事があるの。さっさとして。
妙な奴だ。
そうだな、トタン。こんな奴、見たことない。
俺も、見たことがない。
あなたたち、言葉を話せたのね。
お前は何者だ?
さすらいの歌い手よ。
さすらいの歌い手? それは何だ。
トタン、こいつと話すな。
知らない顔だ。妙な服を着ている。よそ者だな。何をしに来た?
聞きたいことがあるの。
お前……新品の服を着ているな。
私の仲間を見なかった?
それに、強そうだ。腹いっぱい食えているんだろう。
彼女は私より先にここへ来たはずなの。
その箱も、重そうだ。
……楽器なんてどれも重たいものよ。
持っているものだって、おかしい。
ここのハープも、これと似たようなものでしょ。
ほら、ちょっと弾いてあげるわ……
……ッ! 耳がおかしくなりそうだ。武器に、違いない。
武器以外の使い方もあるわよ。
トタン、こいつ、変だ。もう構うな。話すの、疲れた。
おい。ベンチを放せ。
ベンチ……この子のことかしら?
この子に危害を加えるつもりなんてないわ。ネックレスを持って行かれたから、追いかけたの。大事な物なのよ。
お前は、何か奪いに来たのか。
……
違うわ。私は自分の物を取り返して、それから話の通じる相手を見つけたいと思っただけよ。
あぅ……う~……
俺たちの子供に、触ることは許さない。
俺たちの物を、奪うことも許さない。
何を……
俺たちのルールを、破ることも許さない。
トタン、あまり近付くな。どうするつもりだ。
あいつは俺たちの子供を傷つけ、俺たちの物を奪い、俺たちのルールを破ろうとしている。
あいつは、俺たちの姉妹ではないのか? 姉妹には、分け与えてやるべきだ。
あいつは、違う。
……話が通じる相手じゃなさそうね。
なら、他をあたるわ。
駄目だ。行かせない。
待て、トタン……
うわっ!
あ、穴が、ある……
木枠の穴だ。忘れたのか。
あら、それ本当に役に立つのね。
よそ者、ここは俺たちの場所だ。お前が来ていい場所ではない!