紅炎遣らう落葉 CF-2・戦闘後
盤石の守り
右だ! 気をつけろ!
ハアッ!
上からも来るぞ!
――ッ!
間一髪ってとこか……!
にしても、とんでもねえ数だな! こいつら、なんでこんな場所に出てきたんだ?
何年経ってもそういう無意味な質問がやめられないな、お前は……
とにかく、これ以上奴らを進ませるな! 村に入られることだけは絶対に阻止するんだ!
ヤトウ、右だ! また来るぞ!
――くっ、刀が……! 無茶をしすぎたか……切れ味が鈍い……!
なんとかしてあいつらを止めねえと……あ! そういや、前回の任務で申請した源石爆弾、カバンに入れっぱなしだったな。これなら通風口の蓋もぶっ飛ばせるんじゃねえか?
リモート式だし、起爆はそれでいいとして、俺たちまで吹っ飛ばされないようにうまいこと使わねえと……
通風口か……
あれは洞窟の内壁を貫いて外に通じているはずだ。爆弾で、上方にある通風口の蓋を吹き飛ばせば、そこから脱出できるな。
この洞窟にも爆弾を仕掛けておいて、先に蓋のほうを起爆する。通風口から出たら、今度は洞窟内の分を爆破してここを崩落させ、奴らの進行を食い止める……試してみる価値はありそうだ。
ただし、上方での爆発も崩落を早める要因になる。脱出までの時間は限られてくるぞ。
それに、爆弾を仕掛けている間は誰かが感染生物を食い止めなければならないが……行けるか? ノイルホーン。
当たり前だろ、しっかり守ってやるさ。代わりにそっちは頼むぜ!
ああ。気をつけろよ。
さーて、俺がいるからには一匹だって通さねえぞ!
あと少しだ……よし! こちらは終わった!
予定通り、まずは上方から起爆する!
無事退路を確保できたようだな……計画通りだ。
先に上がっててくれ! 俺があいつらを足止めする!
ダメだ、危険すぎる。生き埋めにされてしまうぞ!
ギリギリまであいつらを食い止めとかねえと、村に被害が出ちまうだろ。――俺を信じろって。
……いいだろう。だが、指示はきちんと聞けよ!
こちらは登り終えた! ノイルホーン、急げ!
おう、今行く! よっと――わっ!?
どうした?
まずいな、ハシゴが折れちまった……
っ、なんだと!?
ヤトウ、落ち着け。俺なら大丈夫だ!
慌てるな、冷静になれ。考えろ、何か方法が――そうだ!
爆風を利用しろ、ノイルホーン! 起爆時の衝撃波を盾で受け止めてその力で上まで飛び上がるんだ!
お前の手は私が必ず掴んでみせる!
ははっ、すげえこと言うな。いいぜ、やってやるよ!
では、衝撃に備えろ!
今だ、跳べ!
よし――掴んだ!
上がって――来いっ!
やれやれ……助かったぜ、お陰さんで傷一つなしだ。
ノイルホーン……お前、少しダイエットしたらどうだ。
あー……帰ったらハイビスに健康食のレシピでも聞いてみるか……
……いつの間にか森まで来ていたな。
こっち、こっちですニャ! ツノの人たちも無事に逃げられたみたいですニャ!
逃げられたニャ! よかったニャ!
そっちもな。しかし、お前らはなんでどっからでも湧いて出てくるんだ……?
……あの肉は間違いなく、洞窟の奥の何かをおびき出すために、誰かが意図して置いたものだった。恐らく、その何かの手を借りて私たちを始末するつもりだったんだろう。
だが我々が洞窟から逃げおおせた今、その人物の計画は破綻した。
その人物ってのは……俺らに洞窟の場所を教えたあの人のことか?
さてな。まあ、彼であろうとなかろうと、村を壊すことが目的というわけではないだろうし、あの洞窟が封じられた以上はこちらに手を出しにくくなるはずだ。
そして仮に、鉱石病の問題がリオレウスと洞窟の両方に関係しているとすれば、この件の解決方法も見えてくる。……要は洞窟の最奥部に辿り着けばいいんだ。
洞窟の構造を見るにそれは必ずこの山脈のどこかにあるはずだが……特定は困難を極めそうだな。
なら、リオレウスを探してみねえか?
洞窟の中には、リオレウスがいた証拠が色々あった。となれば、あいつはその最奥部まで立ち入ってるかもしれないだろう。
そうだな。可能性は高そうだ。
村に戻れば動きが取りづらくなることを考慮しても、我々にできることはただ一つ……
森の奥へ向かい、リオレウスを探すしかない。
お待ちなさいニャ!
激しい攻防を終えたばかりですのに、またすぐにリオレウスを追いかけようなんて……ネコ生というのはまったく波乱万丈ですニャ。
しかし、ゆえにこそ! お腹を満たすことは大変重要ですニャ! さあさあ、アイルーのスペシャル料理をご堪能くださいニャ!
さっき余り物だとか言ってただろうが!
ちっちっ、本当に何もわかってないですニャ。真の美食というのは色褪せぬものなのですニャ!
はあ、もういいや……肉が食いたい、一口くれ。
私ももらおう。
それでは、生態調査にしゅっぱーつ! ですニャ!
新しい素材を求めてしゅっぱーつ! だニャ!
…………
リオレウス……待っていろよ。
利藤。あの二人を勝手に洞窟へ行かせたこと、きちんと説明してもらおうか。
簡単な話ですよ、村長。あの二人は怪物とやり合うつもりのようでしたから、チャンスを与えてあげたんです。
外の人間に、我々の秘密を知られたらどうなるか……お前もわかっているんだろう?
当然ですとも。村長の姪っ子さんも、久しぶりにお戻りになった時は秘密を知って随分大騒ぎしてらっしゃいましたしねえ。
ロドスのような源石を専門分野とする企業に知られたら、なおのことです。
では、この責任をどう取るつもりだ?
どうもしませんよ。二人は洞窟で死ぬんですから。
よく考えてください、村長。私は餌を撒いたんですよ。あなたも私も昔は狩人だったんですから、結果はわかっているはずです。獣というのは、血の匂いに抗えぬものだということを。
我々の秘密へ辿り着く前に、二人は怪物に遭遇し――死闘を繰り広げることになるのです。
彼らが口先だけの人物ならば、怪物に殺されてくれますから、あれこれと憂慮する必要もなくなります。
その一方、二人が本物の実力者で、あの怪物を倒すことができたとしても、それはそれで我々の得になりますよね? 危険を排除できるわけですから。
そこで、彼らが洞窟に入ったあと少し時間をおいて、部下に追跡させておきました。
怪物と戦えば満身創痍は免れませんし、我々はいつでも彼らにトドメを刺せるというわけです。
つまり、どちらに転んでも得をするということですよ。
悪巧みだけは一人前だな。
洞窟を封鎖して隠し通すというあなたの方針よりはマシだと思いますがね。
ふん……
そう怖い顔をしないでください。あなたにも似たような算段があったことはわかってるんですよ。だからこそ、あなたに代わり早めに手を打って差し上げたんじゃないですか。
何しろ明がいなくなってからというもの、あなたの一番の補佐はこの私ですからね。
村長、大変です! 裏山の洞窟で爆発が!
崩れてきた石で、入口が塞がれてしまいました……!
状況はわかった。後始末を頼む。何人か連れて瓦礫を片付けて、中に入れるようにしてほしい。
すぐに作業を始めてくれ。
……これもお前の仕業か? 利藤。
いやいや、さすがに予想外でしたよ。
ですが、洞窟が崩落したなら彼らの生存は絶望的でしょう。きっと怪物と相討ちになったんですよ。これで、計画には何の支障も出ませんね。
――今回の件については……
村の利益と損失を確かめた上で、お前の身勝手な行動の責任を追及するかを決めるとしよう。
あの二人の生死については、人を遣って確認させておく。
それはいいですね。……では、村長がそう仰るのなら帰らせていただきましょう。まだ勘定仕事が残っていますし。
……
はあ……
やはりお前が正しかったんだろうな、明……
ん……
また木の葉が落ちてきたな。
もう秋か……
――行くぞ、明。