紅炎遣らう落葉 CF-TR-1・戦闘後
襲来!天空の王者!
了解! 奴は十二時――いや、四時の方向だ!
言ってる間に今度は七時か! 飛んでくるぞ――
盾を構えろ!
大丈夫か?
ああ。
あいつ、今……火を噴いたよな?
そう見えた。
その辺の石まで焦げ付いてるぜ。ブレイズのアーツでしか拝んだことねえような威力だ。
彼女なら、喜んで奴の相手をするだろうな。
っ、避けろ! 突っ込んでくるぞ!
ぐあっ……!
まずいな……
相手の間合いが広すぎる! 近付こうとしたところで、その隙に襲われるか飛んで逃げられるかが関の山だ――これでは反撃の目もないぞ……!
だが、このまま防戦一方というわけには……何とかして接近しなくては!
ヤトウ、避けろ!
問題ない、見えているさ!
それより、奴の動きを観察しなくては……地面に降りてきた時は尻尾を使った回転攻撃や、噛みつき……
すげえ勢いで突っ込んできたあと、急に飛び上がって火を噴いたりもしてくるな!
となると、尻尾攻撃に嚙み付き、突進、そして炎ブレスか。……奴の尻尾が来るぞ、ノイルホーン!
おっしゃ――こんくらい、なんてことねえさ!
よし。やはり、まずは距離を詰めるべきだな。
「アレ」を試してみんのはどうだ? ちっとタイミングが難しくはあるが。
ちょうど同じことを考えていた。……こちらに来てくれ!
奴の巨体は軽くはない。……見ての通り、一つの動作が終わったあとは必ず重心を調整しているんだ。
要するに、その隙を狙えば一気に近付けるってことだな。
ああ。奴の首の真上まで飛ばしてもらえるか。なるべく一撃で仕留める。
よし――作戦開始だ!
行くぞ!
「アレ」というのは私とノイルホーンが何度も使ってきた技だ。
彼の持つ盾に飛び乗れば、足の裏から凄まじい推進力が伝わって、私を高く遠くまで飛ばしてくれる。
手にした刀は空気を切り裂き、鋭く弧を描くと、怪物の首へ真っ直ぐに突き刺さる――はずだった。
ッ、何!?
刀が――弾かれた!?
気をつけろ!
あいつ、飛ぶつもりだぞ!
クソッ……! この咆哮――
頭に響く……! 身体が、動かねえ……!
(この動作は……炎を吐き出す前兆か! 避けなくては――)
なっ……!
ヤトウ!
怪我してるぞ、大丈夫か!?
少し手に掠っただけだ、大した怪我じゃない。まさか急に飛んで来るとは……油断したな。
お前、刀落としてるぞ……!
それが……うまく、掴めないんだ……
私の手……一体どうしたんだ……?
なんだ? あいつ、そっぽ向いてやがる……何か気になるもんでもあんのか?
とにかく、今がチャンスだな! 撤退するぞ、ヤトウ!
どいてくださいニャ! 荷車が通りますニャ!
さあ、この人たちを運びましょうニャ!
運ぶって、どこに運ぶのかニャ?
知りませんニャ! とにかくここから運ぶのですニャ!
あの変なフェリーンたち、ボロボロの荷車かなんかを引いてきたぞ……
って、こら! 何すんだお前ら、ヤトウから離れろ!
先に言っとくが、あのボロいのに乗っけようなんて思うなよ!
まったく……ツノのついたハンターさん、さっきは何やってたんですかニャ? リオレウスの爪でも切ってあげてたのかニャ?
今のあなたたちじゃ、リオレウスを倒せるはずがないですニャ! とにかく早く乗ってくださいニャ!
そうだニャ、乗ってニャ!
こ、こっち来るなって……!
おい! やめろったら……ああクソ、下ろしてくれよ!
いいから乗りなさいニャ!
離せ~っ!
そういえばこれ、どうしてこんなにガタガタするんですかニャ? 荷車の押し方って本当にこれであってますかニャ?
ニャニャ? あなたも押したことないんですかニャ? えっ、ほかのアイルーが押してるのを見ただけニャ?
うっ……ここ、どこだ……?
なんつーもんに乗ってんだ、こりゃ……ネコタクとか言ったっけな……木でできてんのか? 今にも壊れそうじゃねえか。
にしても、いってえな……やたら揺れるから頭打っちまった――
っ、そうだ、ヤトウ! ヤトウはどうなった!?
ちょっと、ツノのハンターさん! あなたたちの漢方薬はどこですかニャ?
漢方薬……って、どういうのだ?
ニャ……? では、解毒薬ならありますかニャ?
いや、持ってねえな……
それなら、アオキノコを出してくださいニャ。そのくらいなら持ってますよニャ? まったく、わたしがげどく草を持っていニャければ危ういところでしたニャ。
キノコ? なんでそんなもん持ち歩かねえといけないんだ……?
ご冗談でしょうニャ! 新大陸のハンターさんはみんなそこまで命知らずなんですかニャ?
命知らずさんだニャー!
そもそも……お前ら一体何なんだよ? この辺のフェリーンはこういう感じなのか?
ふぇり……? 本当に失礼な人ですニャ! 初対面のわたしたちに変なあだ名をつけようだなんて……ですが、ここは名乗ってあげましょうかニャ!
わたしはベルナ村出身で、元王立古生物書士隊のエリート生態研究者にして、正真正銘の学者ですニャ! 新大陸の研究を志し、旅をする中でここへ辿り着いたのですニャ!
ニャニャーン! ニャ!
そちらの子はポッケ村出身の駆け出し鍛冶職人ですニャ。ここで偶然出会いまして、わたしと一緒に行きたいというので行動を共にしているのですニャ!
ニャニャ! よろしくニャ!
こほん。さて、わたしたちが何なのかと聞かれれば――アイルーですと答えましょうニャ!
そう、アイルーだニャ!
「アイルー」……? 聞いたことねえ種族だな……
って、そんなことどうでもいいですニャ! 大事なのはこのツノのお嬢さんのことでしょうニャ! リオレウスの毒にやられた以上、解毒薬がないと身体が持ちませんニャ!
なっ……ど、毒……!?
そうですニャ。今は気を失っているだけですが、応急処置をしたとはいえ、毒がまだ体内に残っているのですニャ!
回復には解毒薬が必要不可欠ニャ! リオレウスの毒は、大きなリノプロスでさえ耐えられないほど強力ですからニャ!
な、なんとかして探さねえと……おい、下ろしてくれ!
やれやれニャ。この人、やっぱりちょっとおばかさんですニャ! 新大陸のハンターさんは精鋭揃いと聞きましたが、そうでもなさそうですニャ。
その上、解毒薬すら持ってないなんて……一体どういうつもりですかニャ? お嬢さんの症状は悪化してますし、この森にはそれらしいキノコもないですしニャ……
そうだ、村に行こうニャ!
そうですニャ。村に行って借りるのが一番早そうですニャ。この前見つけた村を覚えていますかニャ?
あそこのハンターさんたちなら、きっとそういう基本の材料を持っているはずですニャ……わたしは本当に賢いアイルーですニャ!
ニャ?
ツノのハンターさん! わたしたちはアオキノコを借りて解毒薬を作りますニャ!
その間、あなたたちは近くのベースキャンプでちゃんと休んでいてくださいニャ! 大人しくわたしたちの帰りを待つのですニャ!
ベースキャンプ? って、どこのことだ……?
……そ、そのくらいのことは自分で考えてくださいニャ! さあ、善は急げですニャ! 出発進行ニャ!
出発だニャ!
「その日、暗い夜空の下は火の海となった。大きな怪物が森から現れて、その業火は村を焼き尽くそうとしていた!」
「だがその時、村の狩人が皆を守るべく立ち上がった!」『私は狩人だ。村の平和はこの私が守り抜く!』
『ほほ~う。小さな狩人ごときに、この俺の滅びの炎を止められるかな?』
『怪物め! 私がいる限り、ここは通さないぞ!』
「狩人は武器を手に、怪物との最終決戦に臨んだ!」
『食らえ! 俺の超絶大火球~!』
やあっ! とうっ!
うおおおっ、えいやー!!
うわ~~っ!
はっはっは!
討ち取ったり~!
ほ~らね! やっぱり狩人は絶対勝つんだ!
まだ負けてないもん!
え~、ズルじゃん! 今僕に倒されたでしょ!
どんなに危ない獣や、悪い怪物が相手でも、狩人は絶対負けないんだよ!
違うよ、だって……
お父さんが、狩人はもういないって言ってたから。
嘘つき! 村の南に住んでるおじいちゃんは、すっごく強い狩人なんだよ!
あのおじいさんならただの頑固ジジイだ、ってお父さんから聞いたもん。
狩人はもういらないからいなくなったんだよ。だから、怪物は絶対負けないんだ!
地に落ちた紅葉に朝露が触れ、その命を蘇らせる。
曇天の空の下、手入れの行き届いた家々が並ぶ村は、厳かな静けさに満ちていた。
孤独な彫像はいまだ彼方を見つめている。
傷付き迷える旅人は、歓待を受けはしないだろう。
この村はとうの昔から、狩人を歓迎していないのだから。
ヤトウ、起きてくれ。
さっきの……アイルーたちは、お前が毒にやられたって言うんだが……覚えてるか? っわ、寝るなよ……! 意識を強く持つんだ!
揺らすな……ちゃんと聞こえてるから。
そ、そうか。気分はどうだ?
頭が少し重い……腕も腫れて痛むな……多分、毒が回っているせいだろう。
だが、彼らの応急処置は確かに効いている……少しよくなった気がするよ。
あの大きな飛行生物の爪には……毒がある。避けきれなかった私のミスだ……すまない……
お前のせいじゃねえさ。
……あの二人……アイルーと名乗ったが……この地域の、フェリーンは……自分たちをそう呼んでいるのか……?
ともかく、行かせるべきではなかったな……彼らには……あの怪物に関する知識があるようだし……それを聞いてからに、すべきだった。
……あいつらなら確か……解毒薬を作るとか、材料を探すとか言ってたな。追っかけてみるから、悪いがお前はここで休んでてくれ。
いいや。すぐに……村へ、向かわなくては。出発、するぞ。
んなこと言っても、お前は怪我してんだぞ。あいつらだって、ここで待ってろって言ってたし……
森の中に、あんな怪物が現れた今……一刻も早く、行動すべきだ。あれが、直接村を襲うという確証がなくとも……爪痕の主は、間違いなく奴だしな……
奴は、この地域の鉱石病拡散に関わっている可能性が高い上に……広範囲を移動することができる分、私たちには制御不能だ……事態は急を要する。
村の人たちが、あの怪物の存在に気付いているかはわからないが……とにかく、すぐにこのことを伝えなければ……住民たちを、できる限り避難させて……感染拡大を阻止するんだ……
無理すんなって。その怪我じゃ、まずは休まねえと。
今は任務が優先だ。村の人たちの安全を確保しなければ……
はあ、わかったよ……道は覚えてるし、連れてってやる。
……ノイルホーン。
ん?
やめてくれ、おぶらなくていい……自分で歩けるから。
この村、なんだか変だと思いませんかニャ?
ニャ?
昔、わたしは書士隊の皆さんと一緒にいろんな場所を旅していたのですニャ。
シュレイド城の砦に登り、モガの村の空を眺め、心動かす景色を山ほど目にしてきましたが……
こんな村は見たことがありませんニャ!
村人たちを見ましたかニャ? 彼らはヒトのように見えますが、頭には動物の耳が……それに尻尾もついてますニャ! なんだかわたし達に似ていますニャ!
たとえドンドルマの膨大な蔵書を当たっても、こんな場所についての記載は見つけられそうにないですニャ。
加えて……ここにはハンターさんが一人も見当たりませんニャ!
森にリオレウスがいるというのに、この村は一体どうなってるんですかニャ? ハンターさんもいなければ、集会所もないですニャ……これでどうやってリオレウスに立ち向かうんですかニャ?
仮にここが新大陸古龍調査団の作った村ではないとすれば、そもそもこの場所は新大陸ではない可能性も……ああ、もうめちゃくちゃですニャ! ここは一体どこなんでしょうかニャ!?
わくわくしてきたニャ!
わくわくなんかしてる場合じゃありませんニャ!
はっ……そういえば! あなた、途中で遭遇したリオレウスを覚えてますかニャ? 森にいきなり現れて、わたし達を襲ってきたあいつのことですニャ!
あのあと――ピカッ! と一筋の光が見えましたニャ! あれはもしかすると……ニャニャ?
相棒!? どこに行ったんですかニャ!?
ヤトウ、大丈夫か?
言ったはず、だろう……ごほっ……問題、ない……
(口ではこう言うが、ひどい熱だ……)
一旦、ここらで休憩しよう。な?
助けを呼んでくるからさ。
おーい! 誰かいないか! 怪我人がいるんだ、助けてくれ!
おーい! 誰か――全然ひと気がねえな……
(遠くから聞こえる声)*極東スラング*! あの黄色いのを捕まえろ!
(遠くから聞こえる声)急いで! あっちへ逃げたわ!
この村の人たちは一体どこに行っちまったんだ?
(遠くから聞こえる声)いたぞ! あそこだ!
ノイルホーン……
少し、意識が……朦朧としてきたん、だが……もしかして、もう……村の人を……避難させた、のか?
いや、この騒ぎはそういうわけじゃねえんだけど……
あり、がとう……ごほっ。
よせ、喋るなって。体力を温存するんだ。
……なんだか……笑えて、くるな。……任務は、始まったばかり……なのに……まるで、もう終わり……みたいだ……
ば、バカなこと言うんじゃねえよ!
ヤトウ……ヤトウ! おい、しっかりしろ!
クソッ! 誰か……誰かいねえのか!?
お兄さん、大丈夫?
そのお姉さん、すっごく苦しそう……
! そうなんだ、ひどい怪我をしてて……
傷を見せて! ……これって、獣にやられたやつだよね?
ああ……!
こういう傷なら、治せる人を知ってるよ! 連れてってあげる!
本当か! 恩に着るぜ、ありがとう!
どういたしまして! さ、こっちだよ!
ピカピカだニャ~!
これも……これもニャ!
見たことない素材と道具がたくさんだニャ! わくわくするニャ!
あの黄色い泥棒め、どこ行きやがった!?
あっ! 今、足元に……すり抜けられた! 向こうに行ったよ!
行くぞ、追え!
ニャー! ほら、こっちですニャ!
あなた一体何をやらかしましたのニャ? どうしてこんなたくさんの人に追われてるんですかニャ?
見て見て、面白いものいっぱい持ってきたニャ!
ニャ~ッ!? 人様のものを勝手に持って来ちゃダメですニャ!
いたぞ!
おい、一匹増えてないか?
ああ、もう! 森へ逃げますニャよ!
泥棒が逃げたぞ! そっちだ、捕まえろ!
うわわ! 森への入り口が封鎖されてるニャ! ええっと、ほかの道は……あ! あれって、ハンターさんのハウスですかニャ?
きっとそうだニャ!
あ、ちょっと! 勝手に行かないでくださいニャ!
こっちから行きましょうニャ! 下に穴が空いてますからニャ!
あのフェリーンども、どこへ逃げたんだ?
しーっ……
あっちは柏生(かしわう)さんのお家でしょう……簡単には入れないと思うわ。
俺らはあっちを見てくる! いいか、絶対逃がすなよ!
もう行きましたかニャ……? 危ないところでしたニャ!
ニャニャ!
何をそんなにはしゃいで……
ニャーッ!?
こ、これって……な~んだ、毛皮のタペストリーですかニャ。
それにしても、ここは……本当にハンターさんのハウスそっくりですニャ。
上、上! あの缶にキノコが入ってるニャ!
上って……棚の上ですかニャ? あっ、本当ですニャ! アオキノコに似たのがありますニャ!
あれなら、試してみる価値はありそうですニャ。うまいこと効果のある解毒薬が作れるといいんですがニャ……
……! 静かに! 伏せて……足音ですニャ!
まずは外へ――
ニャ!? 出口が……! 板で塞がれちゃいましたニャ!
考えなさい……考えるのですニャ、わたし! 隠れられる場所は……
それより、このハンマーを振り回して……解決だニャ!
そ、それも方法としてはアリかもですニャ。
ニャ~ッ、足音が近付いてきますニャ……! もうそうするしかないのかもしれませんニャ……!
……いいですか、よく聞きなさいニャ! 誰かが入ってきたら、まずはその人の頭の上までジャンプするのですニャ。それで……
ハンマーを使って、こう……どーん、とやるのですニャ!
そうしたら、わたしが彼らの足元をすり抜けて逃げますから、あなたもちゃんとついてくるんですニャ! わかりましたかニャ?
わくわくだニャ!
では、わたしの合図を待ちなさいニャ!
3!
2!
1!
ニャー!
大丈夫だよ、もうすぐ着くからね。今向かってるのはあのお家なんだけど、柏生さんっていうおじいちゃんが住んでるんだ。
この村の狩人で、とってもいい人なんだよ。
あのお家には薬や手当の道具がたくさん置いてあるし、獣につけられた傷を治したいならおじいちゃんを頼るのが一番! お姉さんのことも、きっと助けてくれるよ。
恩に着るぜ、ありがとうな。……と、名前聞いてもいいか?
どういたしまして! 僕の名前は和也だよ。
もうちょっと頑張ってね、あと少しでおじいちゃんの家だから……あの人はよく山で狩りをしてるんだけど、その度にいっぱい獲物を仕留めて帰ってくる本当にすごい狩人なんだ!
村の周りの防護柵も、おじいちゃんが長い時間かけて立ててくれたものなんだよ。村に獣が入らないようにって……そういうふうに、村のみんなを守ってくれてるんだ。
そりゃあ本当にすごい爺さんだな……
ヤトウ、聞いたか? あと少しだ、頑張ってくれよ……
……っ、う……
あれ……おじいちゃん、今は留守にしてるみたいだね。でも、扉の上にある棒を引っ張れば開けちゃえるよ。
だが、留守のところへ勝手に上がり込むってのは……
大丈夫、おじいちゃんは本当にいい人だから! 困ってる二人のことはお家へ上げてもいいって思ってくれるはずだよ。ぼくが保証する!
……ほかに頼れるもんもねえしな……わかった。
ヤトウ、ちょっと待ってろよ。扉を開けてくるからな。
んーと、棒ってのはこれか……? よし、開い――うわっ!?
ニャニャ! ニャ~ッ!
いってえ! 何すんだよ!
わわ、ストップ! ストップですニャ!
あなた……ツノのハンターさんじゃないですかニャ!
お前らは……アエルー? だっけか?
ア! イ! ルー! ですニャ! ちゃんと覚えてくださいニャ!
振って振って……よし、完成ですニャ。
どうぞ、これをツノのお嬢さんに飲ませてくださいニャ。
これは?
解毒薬……になってると思いますニャ。材料のアオキノコがなかったので、似たもので代用してますけどニャ。恐らく効くはずですので、とにかく飲ませてみてくださいニャ。
あっ、思い出したニャ!
何をですかニャ?
最新のレシピでは……アオキノコがなくても、解毒薬を作れるようになってるらしいニャ。
なんですって? それを早く言って……いえ、とにかくわたしのレシピではアオキノコが必要なんですニャ! だから今は黙っといてくださいニャ……!
……これを飲ませたら、ヤトウは助かるんだよな……?
そんなことを聞くなんて……あなた、げどく草のことも知らないんですかニャ? 変わり者ですニャ……
その長~いツノくらい立派な知恵があったら、そんなこと聞く必要もないでしょうにニャ。
俺が知る限りじゃ、テラ中探してもげどく草なんてもんはないと思うぜ。……しかし、本当に熱が下がってきたな……よかった……
なるほど……ここは我々の目指していた新大陸ではなく、テラという別の大陸で……
あなたたちも、我々の知るようなハンターさんではない、ということですかニャ……
言っとくが「変わり者」でもねえからな。……ともかく、俺たちは任務のためにここへ来たんだ。
……まさか目的地とは違う大陸に辿り着いてしまうとはニャ……
わ……わたしの研究計画が~……
本来なら、新大陸屈指の学者として万民から讃えられる予定でしたのに……それが旅の始まりでつまずいてしまうなんてニャ……
(首を傾げる)つまずいたニャ? ニャ!
ええと……そういや、自己紹介してなかったな。
俺はノイルホーンだ。それから、こっちは……
「ヤトウ」ですニャ。あんまり呼ぶから覚えてしまいましたニャ。
そ、そうか。……もう一回聞いときたいんだが、お前らはフェリーンじゃなくて、アイルー……っていうんだよな? そんで、ここに来る前は俺らによく似た別の種族と一緒に暮らしてた、と。
その……ハンターとモンスターがいるのが「普通」の大陸で。
そうですニャ。こちらとはまったく違う場所ですニャ。
じゃあ、あの火を噴く生き物も、そっちから来たやつなのか?
リオレウスのことですかニャ? テラにあれと似たものがいるかはわかりませんが、先ほど見た一匹はわたしたちと一緒にこちらへ来た個体だと思いますニャ。
我々の故郷では、やつはリオレイアとつがいで、火山や森で暮らしていますニャ。このリオレイアもリオレウスと同じで、とってもこわ~い飛竜種のモンスターですニャ!
やっぱり、森で会った時ニオレースがどうとか叫んでたのは、あいつが来るぞって俺らに警告するためだったのか。
ちょっと、何度も言ったでしょう! 「リオレウス」ですニャ!
ちなみに、別名「火竜」と呼ぶこともありますニャ。
悪い悪い。リオレウス……火竜、な。威圧感のある名前だなあ。
でも、言われてみりゃぴったりだ。あんなに高く飛べる上に、でっかい火まで噴くし……爪には毒があるし、刀でも斬れねえような硬い甲殻だってついてんだからな。
確かに恐ろしい相手ですが、まるで手に負えないというわけではありませんニャ。
っていうと?
先ほど歯が立たなかったのは、あなたたちの実力不足ですニャ。武器もてんでダメですし、これじゃリオレウス討伐なんて夢のまた夢ですニャ。
我らがベルナ村の伝説のハンターさんなら、こう――せい! そいやあ! どっかーん! と……
リオレウスを討伐してくれますのにニャ。
マジかよ……そんなにあっさり?
あっさりニャ?
相棒……あなたが知らないだけで、あなたの故郷にも、リオレウスを討伐できるような凄腕ハンターさんが必ずいますニャ。
とにかく、今はリオレウスのことより、どう帰るかを考えるべきですニャ!
――ノイルホーン……
! おう、ここにいるぜ。気分はどうだ?
……少し前から目は覚めていたんだ。会話も聞こえていた……村の人たちの避難は、順調に進んでいるのか?
悪い……まだ村の人には伝えてねえんだ。
……
考えてはみたんだが、一回やり合っただけのリオレウスと、源石の問題がどう繋がるのかさっぱりわかんなくてよ。……だから、下手に伝えてパニックを起こさせるのはまずいと思ったんだ。
大規模な避難活動だけでも、逆に混乱を招きかねないだろ。もしそうなったら、源石粉塵が拡散した本当の理由まで闇に消えて、根本的な解決ができなくなっちまう。
なるほど、一理あるな。だが、感染のリスクがある以上対応は速いほうがいい……次からは注意するように。
……熱はもうねえのか? 布巾があるし、拭いてやろうか。
いや、大丈夫だ。
あ、お姉さん起きたんだね。……あれ……?
二人って、もしかしてそういう……
い、いやいや! 誤解だ誤解!
……? お前たち、何を言ってるんだ……?
……
……
……
お前ら……どこのどいつだ?
答えろ。さもなきゃ、すぐに出ていけ。
ま、待ってくれ!
おじいちゃん、聞いて! このお姉さん、山で獣に怪我をさせられたんだって。だから、手当するためにぼくが連れてきたんだ。
怪我だと?
ああ。毒のある爪で手を切られ、解毒薬が必要になったんだ。それでここにあった素材をお借りしてしまった。勝手なことをして申し訳ない。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかないし、すぐにお暇するよ。
まったく、*極東スラング*な獣どもめ。
怪我してんならそこで寝てろ。
しかし……
――柏生義稜(かしわう・よしたか)。
俺の名だ。好きなように呼べ。
……俺は狩人でな。お前らみたいな素人に、森へ入られると迷惑なんだ。この辺の森には獣が山ほどいるからな。
……助けていただいて本当にありがとう。我々は――
誰だろうが興味はない。この話は終いだ。
おい、そこの若造。こっちに来い。
俺?
あの娘は怪我をしているというのに、お前は湯を沸かしてやることもできんのか?
それと、お前が持ってるのは雑巾だぞ。
……! い、今行くよ!
和也。この傷薬をすりつぶして、持っていってやれ。水で薄めてから傷に塗るんだぞ。
わかった!
そこの学者、少しいいか? 話があるんだが……お前たちは、元いた大陸に戻りたいんだろう?
ええ、当然ですニャ。
お前たちとリオレウスがどうやってここに来たかは知らないが……来た道を辿れば戻れるようなものなのか?
良い質問ですニャ。ここに来たばかりの時、道を探してはみたのですが……あの場所には木しかなかったのですニャ。けれどまあ、森でほかの方法を探そうかと思いますニャ。
もう一度森に行くのもいいかもしれないが、そこで帰る方法が見つかる確率は高くないだろう。
だから、我々と一つ取引をしないか?
ニャ?
私たちの知る、とある場所でなら、お前たちを元いたところに戻す方法が見つかるかもしれない。
とある場所というのはどこですかニャ?
私とノイルホーンの所属する、ロドスという会社だ。我々は……異常事態への対処には慣れているからな。
それに、たとえまだしばらく帰れそうになくても、ロドスはいい居場所になる。私たち二人の拠り所となったようにな。
だから、そこへ連れて行く代わりに、お前たちの知識を貸してほしいんだ。リオレウスとまた戦うことになった時のため……
ひいては、討伐せねばならなくなった時のために。
ニャー! 討伐するのニャ!
ニャア~……今すぐにはお答えできかねますニャ。考える時間をくださいニャ。
……お前たちの故郷にも村があるんだろう? その村に脅威が迫った時、見て見ぬふりなどできるのか?
今まで見たこともない生き物――あのリオレウスがこの大地に現れた今、決してこのまま放置してはいけないということくらい、あれと一戦交えた私たちにはわかっている。
加えて、何より……奴は恐らく、テラの人間なら誰もが知る危機と深い関わりがあるんだ。
今すぐ理解するのは難しいかもしれない。だが、今の状況では、リオレウスへの対処法を見つけることが何より重要なんだ。
鉱石病のことを抜きにしても……爪に毒を持っていて、火を噴く巨大生物が、村からあんなに近い森で自由に飛び回っているとなると……それ自体が脅威になりうる。
……今、なんと言った?
爪に毒を持ち、火を噴いて……飛び回る生き物……? 奴に出くわしたのか?
ああ。あなたも知っているのか? 森で奴に会ったとか……?
我々は森であれに遭遇したんだ。奴はこの地域のものではなく、かつ極めて危険だと判断している。今後の接触で、どう対処するかを決めようと……
奴は俺の獲物だ。
そうだったのか。では、協力していただけないか? この村の狩人であるあなたなら森のことはよく知っているだろうし、狩りの経験というのも我々には足りないものだ。
共通の目標がある以上、一緒に行動するのが一番効率的だろう。私たちにあなたを守らせてくれ。
お前……今言ったことがわからなかったのか? あれは俺の獲物だと言ったんだ。
……? 申し訳ないが、発言の意図が掴めない。我々の戦闘能力に不安があるのか?
であれば、ロドスのオペレーターは専門的な訓練を受けているし、緊急対応の経験も豊富だ。特殊生物の処理も仕事のうちだしな。
今回は準備不足で失敗してしまったが、態勢を整えて仕切り直せば次はうまく対処できると考えている。
バカを言うな! 俺の獲物は俺の物だ。この手で絶対に討伐してみせる……!
お前、俺の獲物を横取りするつもりか!?
リオレウスは未知の生物だし、対応には慎重を期すべきだ。あなたの物だと言われても、そう簡単に認めるわけにはいかない。
……一度たたきのめされておいて、よくも戦闘能力なんてもんを語れるな。
弱っちくて無能な若造どもが、オリジムシ以下の実力で粋がりよって……
いいからお前らは手を出すな!
あなたの気分を害したいわけではないのだが……あなたには、私たちのリオレウス追撃を止める権力はないだろう。これはこちらの仕事でもあるんだ。
ふん……警告しておくぞ。お前らが誰だろうと俺は知ったこっちゃないが、森には入るな!
俺の獲物に……近付くんじゃない。
……あなたが任務を妨害するつもりなら、その時は我々も容赦はできない。
私とて、そんなことはしたくないが。
ハッ、そうか!
だったら出て行け!
*極東スラング*な連中め! 今すぐ俺の家から出ろ!
出て行けと言ってるんだ!
おーい、水持ってきたぞ! って……な、何が起きてんだ?
おじいちゃん、なんで……
行くぞ、ノイルホーン。
お、おい、待ってくれって!
あっこら、投げるなよ! ――悪いな爺さん、それじゃ……わかったわかった、今行くから!
ニャ!
二人とも、待って!
ごめんね……なんでおじいちゃんが急に怒りだしたのか、ぼくにもよくわからなくて……
でも、おじいちゃんは本当にいい人なんだよ。普段なら、絶対にあんなことしないんだけど……
気にしなくていい。それより、ありがとう。君のお陰で助かった。
私たちはもう大丈夫だから、戻っておじいさんのそばにいてやってくれ。
うん……
……よくわかんねえんだが、あの爺さんどうして急に怒りだしたんだろうな。俺たちがリオレウスを探してるってだけで、あんな怒るなんてよ……
思えば色々気になるよな。村からあんな離れた所に一人で暮らしてるし……どっかに家族がいるわけでもなさそうだ。家にある物だってボロボロだったしよ。
なあ、村にあった狩人の像、覚えてるか? ああいう物があるってことは、この辺の狩人はみんなから慕われてるはずだと思うんだが……
そう気にするな。この件は任務にはほとんど影響しないだろう。
それより、まずはこの村について知るべきだ。そのあとは、引き続き感染源の手がかりを探していこう。
ごめんなさい、おじいちゃん。……ぼく、お兄さんたちを助けてあげたかったから……
あいつらはもう行ったのか?
うん……
……少なくとも、あの娘はだいぶ回復しただろうさ。
はあ……