テラ飯 DT-2・戦闘後
密林解毒スープ
うわあっ!? オレの鱗獣干し台が! それにベッドまで!
ライオス!
なんだ、やけに機敏だな……!
俺たちのことを炎竜だと思い込んでいるみたいだ!
どうする!?
とにかく、呼びかけてみよう。
マルシル、俺だ! ライオスだ!
あ、あなたがライオスなわけない! ライオスは叫びながら変なポーズでバジリスクを威嚇するような奴なんだから!
アレは確かに強烈だったな……
ならば、俺がライオスだと証明するにはこれしかないな!
クエーーーッッ!
……
ライオス……本当にあなたなの……?
上手くいくのかよ!
ねえライオス、炎竜がファリンを食べちゃったの! だから炎竜を倒して、ファリンを取り返して、蘇生してあげないと!
待て待て、なんで俺を指さしてんだよ!? 俺のどこが炎竜だってんだ!
うわっ!
一体何が原因なんだ?
うおっ!? もしかしてそいつ、目を回してる上にフラフラ歩いてるとか?
ああ!
すごい勢いで威嚇してきて、わけわからないこと言ってたりする?
そう、そうなんだ!
だったら、口から泡吹いてたりも?
してる!!
なら、そいつは毒に当たったんだ! 運が良いことに解毒法を知ってる奴ならいるんだが、運の悪いことにそれは行方不明の大祭司なんだよ!
私たちが出せるのはカピピ草くらいね。普段は中毒や病気になった時もお腹を壊した時も、とりあえずこれを食べてるの。まずはこれで応急処置をしましょう! でも効果にはあまり期待しないでね。
となれば……俺がマルシルを落ち着かせよう。君たちのほうは、まず大祭司の気を引けるものを探してきてくれ!
どうやって? どこで探しゃいいんだよ!
とりあえず豪華なメシでも作って、それで大祭司を引き付ければいいだろ! 早く! オマエらのツレは多分幻覚を見てるから、このままじゃオレんちが吹っ飛ばされちまうよ!
チルチャック、君たちは行ってくれ! ここは俺がなんとかする!
わかった、マルシルは任せたからな!
魚と木の実は十分手に入ったな……案内に感謝する、アダクリスたちよ。世話になった上で悪いのだが、もう一つ頼みたいことがある。
サカナってなんだ? こいつは鱗獣だぞ。
ほう、ここでは魚をそう呼ぶのか。 とにかく、先に村へと戻って湯を沸かしてもらいたいのだ。できるか?
湯を?
うむ。たった今思いついたアイデアでな。普通の食事では、大祭司をすぐさま引き寄せるのは難しいだろうし、大鍋でシチューを作ろうと思うのだ!
お前たちが我々に親切にしてくれたことへの礼でもあるが、その大祭司とやらは賑やかなほうが好きだという話も聞いたのでな。皆で鍋を囲めば、自然と賑やかになるだろう。
おお! 超美味いシチューを作ってくれるってことだよな? やったぜ! そんなら急いで準備しにいくよ!
うーむ……
この魚と木の実があれば、副菜としては十分だが……
まだ何かが足りないような……
おかしいのう。妙な音が聞こえて様子を見に来たが、変わった様子はなさそうじゃ。
それにしても、「インビンシブル・クール」も急に爆発してしまったし、どうもツイてないのう!
ま、もう良いじゃろ! 帰って寝るとしよう!
やれやれ、ここの研究を代わりに見ておいてやるとズゥママに約束していなければ、一人でここに留まろうとは思わんかったんじゃがな。
ん?
ふくよかな体型に鮮やかな色……丸々と太った健康的な鳥だ。念のため、食べられるかどうか『ボブのグルメガイド』を確かめてみるとしよう……
「羽獣。全身が羽毛に覆われており、空を飛ぶことができる。食べられる。美味。どう調理しても良い。」か……
なるほど……この食材であれば、シチューの主役に相応しい。見た目にも心惹かれるものがあるな。これならきっと大祭司も満足するだろう! よし、これに決めた!
(何やらドゥリンがわしを狙っているようじゃが、まさか食おうとしているわけではあるまいな?)
(ん……むむ? こやつ、本当にドゥリンか?)
(……ほほう、なるほどのう。これは面白い。)
(じゃが、待てよ……しばらくこれをやっておらんからのう。死んだふりというのは、どうやるんじゃったか?)
ギャアアアアアッ!!
……そこまで苦しめるつもりはなかったのだが……
グッ――ガアッ――
まあ、仕留められたのなら良しとしよう。
チルチャック! 木の実は十分集めたか? そろそろ戻るぞ!
ねえ、あなた本当にライオスなの? どうして炎竜っぽい姿をしてるの?
……
マルシル、ファリンの話をしようか。
ファリンはねえ、私の親友なんだよ! あの子は本当にあなたのことが大好きでね。知り合ってからもずっとライオスの話ばっかりしてたの。
ほかの人たちはファリンのことを落ちこぼれだと思ってたみたいだけど、私はそうは思わない。だって、あの子から色んなことを学んだもの! 私、あの子のことが大好きなの!
だけど……それなのに……私が弱すぎるせいで、ファリンは炎竜に……炎竜に食べられちゃった……!
……それは君一人の責任じゃないだろ。
ファリンは俺の妹なんだ。絶対見捨てたりしないよ。
その一方で、彼は好奇心を抱かずにはいられなかった。今のマルシルの目からは皆が炎竜に見えているようだが、それぞれ一体どんな竜として映っているのだろうか?
センシであれば、背が低く丸々とした炎竜だろうか? チルチャックなら、小柄な炎竜なのだろうか?
自分もその実を探して食べてみるのはどうだろう?
マルシルの様子はどうだ?
たった今眠ったところだ……体の防衛反応の一種ということだが、できるだけ早く解毒して目覚めさせた方がいいと彼らが言っていた。
わかった! ならば、すぐにシチューを作ろう。この丸々と肥えた鳥を使ってな!
上手くいくといいんだが……
とにかく、今は急がねばなるまい。鳥はわしが下ごしらえをしておこう。ほかの食材のほうを手伝ってくれ!
森の中の風向きを確かめ……火災が起こらぬよう、風の当たらない場所で火を起こす。
木の実と食用のキノコ、そしてジャガイモをきれいに洗ったらちょうどいい大きさに切り、一度脇に置いておく。
次は、鍋に香辛料とカピピ草を入れ、肉に味がしみやすくなるようにひと煮立ちさせる。
そこに木の実とキノコを加えたあと、数分煮て出汁を取り、その後肉とジャガイモを入れる。
魚はウロコを取り、腹を切って、食べられない内臓を取り出す。エラは流水できれいに洗うか、ナイフで直接取り除いておく。
水平に切り込みを入れた魚に、トウガラシ、胡椒、塩、レモン汁を均等に混ぜ合わせたものを塗り……
清潔な枝で刺し、たき火のそばに立てておく。この時、均一に焼けるよう頻繁に回転させるのを忘れてはならん……
その後は再び鳥のシチューの調理に戻る。スープにとろみが出てきたら、塩で味をととのえ、味見をする!
香りが立つまで弱火で煮込んだら……
完成じゃ! このシチューを大祭司に捧げよう!
お前たちは普段、どのように大祭司を呼び寄せておるのだ?
歌って! 踊って! 楽しいお祝い気分で、思う存分食うんだ! そうすりゃ大祭司は自然と寄ってくるぜ!
よし、早速みんなで食べてみよう!
ふむ……キノコと木の実を加えたことで、シチュー全体の味がとても豊かになったな。薬草の独特な香りも相まって最高の一杯だ。
うわぁ……いい匂いだな……
ほらほら、歌って! 踊って! ぼーっとしてたら大祭司は来ないわよ!
よ……よし!
チルチャック、センシ! 君たちも踊ってくれ……!
はぁ……まだ来ないのかよ……
ううっ……
だったら最終手段だ! 真剣に呼んでみよう!
大祭司様! ご馳走を用意しました、お出ましください!
……大祭司様! ご馳走を用意しました、お出ましください!
うぐぐ……
グガガガガァ!!
じゅるり……もぐ……もぐ……
ごくん。
なんと温かい……
こんなにも気持ちの良い風呂に入ったのは久しぶりじゃ。
しかし、この風呂は妙な物ばかり浮かんどるのう!
キノコのスライス、そのうえこれは、角切りのジャガイモか?
トウガラシとカピピ草まで入っとる!
じゅるじゅる……もぐ……もぐ……
むぐ……ぺっぺっ! ひどい味じゃな!
もしやこれは薬湯なのか!?
あぁ……しかし、この尻の焦げるような感覚は、メカから打ち上げられる直前にコックピットを満たす熱を思い出させるのう。なんとも心地が良い……
これに浸かれば、爆発疲れも一気に吹っ飛ぶわい!!
なんと……! この鳥、復活したのか!?
捌いた鳥が元通りになるなんて、まさか……
……こいつは「不死の魔物」なのか!?
大祭司! どうして鍋の中にいるんだ!?
はあ!? このデブ鳥が大祭司だって!?
うっ……あいつ、風呂みたいに浸かってやがる……
おえ……一口飲んじまった……
(ああ、「不死の魔物」だと思うと味が気になる……!)
うむ! わしこそが大祭司じゃ!
風呂に浸かっている間に、お主らが何を求めているかはすべて理解した!
仲間が毒に当たったのだろう! 無論わしは、決して見殺しにはせんぞ!
なんでそれを知ってるんだよ……
うぉっほん! 仲間の解毒をしてやりたいのなら……
この薬湯を飲ませるのが一番じゃ!
こんなに不味いものを飲めば、どこぞの狂った狼だろうがきっと正気に返るじゃろ!
ま、不味いだと?
だとしたら、一番の原因はメインの食材だろ……
何にせよ、大祭司がそう言うなら、大祭司の祝福を受けたシチューをそいつに食わせてやろうぜ!
ずずっ……うっ……
変なシチュー……でもあったかい……
……うぅ……うるさい……
すごいぞ! 大祭司シチューが本当に効いた!
大祭司……シチュー?
しまった!
マルシルがなんとか目を開けると、そこには――
そこには、喋る魔物の姿があった。そのうえそれは、生きたまま自分を茹でる鍋の中でシチューを味わっており、目の前のお椀からはその鍋と同じ香りが漂っている。
と同時に、スプーンを握ったライオスが、目にも止まらぬ速さで鍋へと手を伸ばし、ひとすくいして自らの口へと運ぶのも見えた。
マルシルは口を開くと、ようやく我に返ったかのように悲鳴を上げた――
ま、魔物!?
ああ――
もういや!!
もう魔物なんて食べたくないよ~~!!
へえ、このシチューなかなかいけるな。
わーっはっは! お主、ひどいセンスをしておるのう!
大祭司……?
シッ! お主が尋ねたいことはわかっておる! 事の次第はなんとなく理解した……なるほど、今はその時ではないようじゃな。
その時?
おおっと、何でもないわい……それよりお主ら、ロドスを探しておるんじゃろう?
ならばそのまま探し続けるが良い!
お主らは正しいほうへと進んでおる! このまま進めば、きっと大丈夫じゃ!
き、消えた……
なんの役にも立たないアドバイスだったな……
正しい方向に進んでるも何も、俺たちはまだ、どこへ向かえばいいかもわからないってのに!
ところでマルシル、どうしてあの実を迂闊に食べたりしたんだ?
……木苺にそっくりだったから。
木苺?
……昔、ファリンがくれた木苺によく似てると思って……
小鳥もあれをついばんでいたし、きっと同じものだと思って少しつまんじゃったの……
でも、それならファリンに土産話ができたんじゃないか。
食中毒で大変なことになったってな!
も〜、うるさいな!
ほら、行こ! ロドスを探しにいかないと!