落日の向こうへGO-2・戦闘前纏わりつく持病
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ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグシラクーザサルゴンミノスラテラーノシエスタイベリア

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落日の向こうへ GO-2・戦闘前

纏わりつく持病

大いなる大地よ、我らが王を守り給え♪

彼の民と彼に幸福を与え給え♪

我らに無限の恩恵を賜り給え♪

我ら愉快に声上げて歌おう♪

ヴィクトリア、我が故郷♪

聖王会西部大広間玉座の間

1098年10月8日 p.m. 9:45

ドクター

ヴィーナ

深く印象に残っているだけだ。好きとは言えない。

幼いころ眠れない時に養父母がよくベッドのそばでこの歌を歌ってくれた。

子守歌のようなものだと思っていたが、二人が亡くなってから随分と経って、ふと思ったんだ……二人にとって「私は何者なのか」、とな。

その日ようやく気づいた。私はこの歌をよく知らなかったのだと。だがもうどうしようもない。私は一生の間この歌のメロディーを忘れられないんだろうな。

ドクター

ならまだ覚えているか? かの……

ヴィーナ

かの国王をか? 私は彼のことをよく知らない。血縁上、最も近しいその家族については……

ドクター、貴様に嘘をつく必要はない。かつて、私は記憶の中に散らばってしまった父のイメージを埋めようしたこともあった。

だが再びこの目で彼を見た時、私は彼の身から少しの親近感も見つけることができなかった。

彼は国王で、私はストリートのチンピラだ。「ヴィクトリア」という姓以外に、我々の間には何も共通点がない。

今は彼よりも重要なことに頭を動かさねばならない。

ドクター、先ほどの公爵たちの話は聞いていただろう。ロンディニウムは……私の故郷は、いつ奴らに捨て駒と見なされてもおかしくはない。

当時ケルシー先生が貴様をチェルノボーグから救い出し、私の所へ来てヴィクトリアへと帰る計画を立てた時、まさか今のようになるとは想像もしていなかった。

だが私は、手をこまねいて放っておくなどできない。

ドクター

ドクター

公爵たちも君が放ってはおけないのは織り込み済みだ。

ヴィーナ

私も公爵たちが自らの勢力を維持したいという腹の内は承知している。

奴らがまだ、「ヴィクトリア」という名でもって自らの外見を飾る必要がある限り、私はまだこの都市の回復のために時間を稼ぐことができる。

これは双方ともがよく理解しており、そのために必然的な結果に至る取引にすぎない。

本当に私に勇気を与えられるのは、ずっと背後で私を支えてくれている者たちだ。

我々は家に帰り、戦争も終わった。今は私が彼らの声を聞く番だ。

ドクター

ヴィーナ……

ヴィーナ

どうした、ドクター?

ドクター

ヴィーナ

……分かっている。

ウィシャデルが残りのサルカズを率いて撤退することに貴様らが協力し、私たちの内の多くがそれを受け入れなかったようにな。

だがこの戦争を続けることはできないと、私はよく分かっている。私は……私たちは、もう十分多くの者を失った。

それに、サルカズの警告は我々の皆が受け取った。

全ての公爵艦隊がサルカズの撤退時に兵を動かさなかったのは、緊急の知らせを受け取ったからだ――

ほぼ同時に、ほとんどの主要な国家の首都上空に一時的に恐ろしい天災雲が集まったとな。

フッ、あからさまな威嚇を用いて堂々とカズデルに帰っていった。

ドクター、貴様とケルシー先生ならよく分かっているはずだ。あの源石で奴らにまだ何ができるのか。

ドクター

みだりにあの技術を乱用することはないだろう。

ヴィーナ

自衛のためだけにか? 奴らは今のところは確かにそう考えているかもしれないな。

だが自身の制御できる範囲を遥かに超えた力を有すれば、何が起こるか保証できる者はいない。

貴族どもの力を頼りに急速に台頭し、その後すぐに内部から崩壊した新興ギャングは数多く見てきた。

ドクター

しかし貴方たちでもサルカズが向かう必然の未来を左右することはできない。この戦争の後、双方ともにそうそう塞がらぬ傷痕を負った。

あの若きサルカズ摂政王の望み通り、サルカズはついに再び具体的な憎しみにより団結し、自分たちの源石も手に入れた……

そして憎しみにはあくまで一つの終点しかない。その時、貴方はどこに立っている?

玉座の後ろから、金色の獅子がゆっくりと歩み出てくると、薄暗い玉座のそばに身を伏せた。

ガウェイン。それは、もとからそこにいるべきであるかのように存在していた。永遠のごとくあり続ける周囲の壁面彫刻と共に、帝国の盛衰の長きにわたる歳月を一瞬のうちにその目に収めてきた。

そしてこの瞬間、その黒い瞳はあなたの姿を映した。

ヴィーナ

……先生!?

ドクター

怖がる必要はない。私は化け物でも、幻影でもない。

貴方の前に現れたのは、それが必要なことだったからだ。

ヴィーナは、かつて考えもしなかった危険な道へと自ら踏み出した。彼女は、成長しないといけない。そんな彼女を導いていくのが、貴方だ。

ドクター

ロドスはそもそも彼女の業務に協力するつもりだ。

私が気にかけているのはそんなことではない。ヴィクトリアには自ずから栄枯盛衰の宿命がある。関与するつもりは私にはない。

しかし貴方たちは彼女を、この大地の宿命に向き合う道……望みの薄い道へと導いた。

本来私は旧友との約束を果たし、彼女が命の終点まで歩む付き添いをすべきだった。だが今となって、私は己の身すら保証できない――

ドクター

……我々はより多くの人を巻き込まないように努める。

私はヴィーナのことをよく知っている。その日が訪れれば、彼女は必ずロドスのそばに立つ。貴方たちもより多くの力を必要としている。しかしその日、貴方はどこに立っている?

答える必要はない。彼女が私の代わりに見てくれるだろう。

貴方は彼女の部下でも先生でもなく、彼女と敵対する理由も持っていない。

もう分かっているはずだ。貴方と彼女の関係は唯一無二であることを。

私たちはまだやり直すチャンスが来るのを待つことができるかもしれないが、ヴィーナの方はそうも言っていられない。

ヴィーナ

……

……ヴィーナ、私は貴方に生存するために必要なことを全てを教えた。しかしいかにして他人の希望になるかは教えてやれない――

だが目の前にいるこの人物なら可能だ。

ドクター

自分がやるべきことはよく分かっている。

では彼女が信頼するお人。さあ、彼女の手を引け。貴方は彼女の火種で、彼女の動力源なのだから。

ヴィーナ、迷った時は、この者の考えに耳を傾けてみるのだ。

議長室

1098年12月10日 p.m. 7:32

デルフィーン

あの、ヴィーナさん、この機械は何ですか?

ヴィーナ

ロックロックが作った試作機だ。労働者の疲れを取ることができるとかで、どうしても試せと言ってきてな。だが眠くなったら、そのまま一眠りすればいいのではないか?

デルフィーン

それで、効果はあるんですか?

ヴィーナはあくびをして、目をこすると、引き続き目の前の文書に視線を戻した。

ヴィーナ

ない。

しかし国家反逆者「ミルスカー」の掃討を求める百人の嘆願書を四十部以上も返事をしていたら、どうやっても眠れなくなってしまった。

この件で衝突を起こした市民たちはもう鎮まったのか?

デルフィーン

はい。ホルンさんが緊急で駐屯地からまだ実習中の都市防衛軍を連れてきました。

ヴィーナ

……大きな騒ぎになっていないのならよかった。

デルフィーン

双方のデモ参加者の中には兵士の家族や戦友がおり、説得は驚くほどの効果を発揮しました。はぁ、いまだに「ミルスカー」の肩を持つ人たちは、一体どんな頭をしているのやら。

ヴィーナ

彼らを責めてやるな。先に約束を違えたのは議会だからな。我々の薬品供給には問題があり、彼女の薬は確かに一部の人々に生きる希望を与えている。

デルフィーン

ですが結局のところ、気休めにしかなりません。

ヴィーナさん、てっきりあなたが都市防衛軍を寄越した目的は……

ヴィーナ

暴力で彼らを追い払うためだとでも? 暴力で罪なき同胞を押さえつけるのは、最も軟弱で最も効率の低いやり方――

なぜそんな目で私を見る?

デルフィーン

いいえ、ただ余計な心配をしていたと思っただけです。

ヴィーナ

からかってくれるな。この役をうまく演じるにはまだまだだ。だが幸い、助けてくれる多くの信頼に値する者たちがいる。

先生、ドクター、それと貴様……本当に多くの人が。

彼女は伸びをして、ロックロックが用意した試作機を外すと、ようやく長く息を吐いた。

ヴィーナ

もし貴様のスパイやロドスの同僚が共有する情報がなければ、私は闇雲に動くことしかできなかっただろう。

デルフィーン

ですが、「ミルスカー」の件は……

ヴィーナ

出所不明の危険薬物の販売、高利貸し、死による市民の脅迫……そして、サルカズとの結託……

全ての証拠が私の引き出しの中にあり、いずれも事実であると確認済みだ。一部の者が彼女から恩恵を受けているからといって放任することはできない。

デルフィーン

ヴィーナさん、アラデルさんは……

ヴィーナ

これは彼女一人に関わる問題ではない、デルフィーン。

あの災いの後につかみ取ったこの得がたい平穏を誰かに破壊されることなど、誰も望んではいない。

……議会は市民に安全を約束した。そして私は何をすべきか分かっている。

デルフィーン

分かりました。我々の古い友人が彼女の手がかりを持っています。あなたであれば興味があるかもしれません。

そうだ、ドクターから言われたアドバイスについて、慎重に考えました。

こうした目先の面倒事を処理し終わったら、一度ウィンダミア領へと戻り、本来私のものだったものを取りに行くつもりです。

ヴィーナ

どれだけかかる?

デルフィーン

分かりません。ですがドクターの言う通り、あなたを助けたいのなら母が残したものが必要です……母がこの世を去ったばかりの頃、私はそれを拒みましたが。

ヴィーナ

感謝する。

デルフィーン

これは私自身のためでもあります。ヴィクトリアに、ウィンダミア領、リンカルダン――母が気にかけていたものをこの目で見に行く必要があります……

そうしてようやく、母に近づくことができるのですから。


負傷した模範軍兵士

上官……今もまだ上官と呼ばせていただくことをお許しください。ま、まさか会いに来てくださるとは!

私の申請書が承認されたのですか!?

ホルン

ウォーカー、ピットたちがあなたを説得してデモ現場から連れ戻した後のことは聞いたわ。それで――

ウォーカー

……つまりあの件で訪ねに来たわけではないのですね。実は私は毎日ラジオを聞いているのですよ、上官。

あなたが再編を任された都市防衛軍は、ついに都市防衛砲の引き継ぎ式に参加したことも、都市外の付属訓練区画が竣工したばかりだということも知っています。

わざわざ都市を出てその場所も見てきましたが、訓練施設が完備されていました。自分があの場所で訓練している様子まで目に浮かびます……

ホルン

すまない、ウォーカー。あなたの都市防衛軍加入申請は許可できないわ。

ウォーカー

……

分かりました。今はまだ都市防衛軍の求める基準に達していないのなら、引き続き――

ホルン

自分の体の状況はよく分かっているでしょう。このまま退役せずに訓練を続けていてはただ自分を傷つけるだけよ。

ウォーカー

ですが私の病状はすでに安定しており、薬も飲んでいます。体の石ももう長い間痛みはありません! 私はもう回復して――

ホルン

「ミルスカー」の薬で、でしょ? 成分は分析したわ。あれは……

ウォーカー

少し痛みを抑えられるだけの気休め。分かっています。

ですが今の私たちにはこれが必要なんです。議会が配る薬ではもはや足りない。違いますか、上官?

少なくとも今あの薬は痛みを軽減してくれています。片手でクロスボウを持つ練習をさせてくれます。必ず都市防衛軍の試験に合格してみせます、上官。

「生きるのが*ヴィクトリアスラング*難しくても、生きて帰ることさえできたなら希望は必ず見つかる。」これは我々がチェットリーを守っていた時あなたたちが私に言った言葉です。

「模範軍」

「我々は奇跡を創り出す。」

けれど奇跡が幕を閉じた後は? 模範軍はどこへ向かえばいいの?

ホルンちゃんが言ってた。前の模範軍の奇跡はガリアに記憶され士官学校の教科書に残ったって。なら吾輩たちは? 実際にロンディニウムに戻るまで、誰もこの問題について考える必要なんてなかった。

ヴィクトリア人が再び自分たちの都市を接収したと都市全域に宣言した瞬間に、隊の最年少の子が尋ねてきた。

「これから、私たちはどこへ行くの?」

吾輩は興奮して言った。家に帰るんだ、「スロバーノッカー」のボクシングジムに帰るんだよ。ハンナちゃん、ヴィーナ、ダグザちゃんと一緒に。あんたも家に帰っていいんだよ!

でもその子は言った……

「僕の家はもうなくなっちゃった。僕にはお姉さんたちしかいないよ。」

モーガン

ヴィーナたちが到着したよ。下に行こっか。

ウォーカー

ヴィーナ……議長ですか? 彼女も私に会いに来たのですか? デモの件で?

つまり、上官が私に会いに来たのは、見張るためだったということですか?

モーガン

ホルンちゃんはヴィーナが来ることを知ったから率先してあんたを助けに来たんだって。吾輩たちのみんながそうだよ。


ロンディニウムの夕日に温度はない。

幸いにも生き延びた者は。過去もそうであったかはもう覚えていない。そして新たに生まれた者はそれに慣れ、元からそうであったと思う。

ザ・シャード、かつてはこの古き移動都市に栄誉をもたらした建築物だが、今ではその影の中に足を踏み入れようとする者はほとんどいない。

あの日、あの深紅の空の下、本当の恐怖がザ・シャードの先端に降臨したことを忘れる者などいない。

そしてこの瞬間、まばらな人々の間を二人が肩を並べて抜け、彼女たちの影は長く長く引き伸ばされた。

周囲で忙しくする者たちはわずかにお辞儀をして彼女たちにうなずくと、手元の仕事にまた集中した。彼らは軽く口ずさんでいる――

我ら愉快に声上げて歌おう♪

ヴィクトリア、我が故郷♪

ヴィーナ

どうやら我々の予想よりも早くザ・シャードの改造が進んでいるようだ。

デルフィーン

ロドスが随分と助けてくれました。薬の供給と感染者の治療だけでなく、都市の再建もエンジニア部の支援のおかげです。

当時のあの異変が皆に残したトラウマはやはりあまりに深刻で、だからこそザ・シャード改造の議案はすぐに可決されました。

ついでに都市で異常に成長した源石クラスターごと一緒に片づけることができました。

ですが自救軍の修復担当チームが言うには、我々のエネルギー動力エリアにまで影響が及んでいるため、元の状態に復旧するにはまだ時間がかかるかもしれないとのことでした。

ヴィーナ

では、ザ・シャード核心の技術回収作業の人選に結論は出たか?

デルフィーン

一応のリストはできています。ですがそのうちの一部の技術員と学者の背景調査はいまだ行われており、こうした者の背後には……いずれも彼らの影があります。

ヴィーナ

彼らが誰かは知っている。当の数名の大公爵たちがすでに私に連絡してきたものでな。リストに大きな問題がなければ、構わず見て見ぬふりをすればいい。

……私はむしろ奴らにはあのガラクタの山の中から、価値のあるものを見つけてほしいと思っている。それはヴィクトリアにとって良いことだ。

デルフィーン

フンッ、彼らが本当に争い合うのなら、我々にとって良いことですがね。

ホルン

ヴィーナさん、デルフィーンさん。

デルフィーン

ホルンさん? てっきりあなたは……

ホルン

ちょうど古い仲間に会いに来ていたんです。

私を気にする必要はありません。バグパイプが率いる都市防衛軍見習いたちの訓練成果をチェックしに戻るところですから。

ホルンは伸びをしたが、去るつもりは微塵もないようだ。ヴィーナはため息をついた。

モーガン

ヴィーナ! ヴィーナ! 吾輩がウォーカーと何の話をしてたか分かる? チェットリーから吾輩たちと一緒に来てたデイビス夫婦の子供が生まれたんだよ――

ヴィーナ

……モーガン、貴様らがなぜここにいるかは分かっている。

ウォーカーとデモの件については、議会が結論を出すだろう。私は……この件に手を出すべきではない。

私はただ、「ミルスカー」の行方について話しに来ただけだ。

モーガン

……

ウォーカー

お二人ともありがとうございます。ですが議長を困らせる必要はありません。

私は議会を信じています。議会に知り合いが多くいまして、彼らはいずれも最高に良い人たちです。

デルフィーン

議会はあなたが想像するほど単純ではありません。事態がよりエスカレートするのを望んでいる人もいます。

ですが「ミルスカー」の件の解決が早いほど、あなたたちにとっては良いこととなります。

ウォーカー

……

かつて吾輩たちと共に都市に突入した兵士は夕日の中に立ち、吾輩たちの「尋問」に応じる。

ヴィーナが議会に影響を与えられることをみんながよく分かっていた……彼女が望みさえすれば。

その日、吾輩は唐突に本当の意味で理解したんだ――ヴィーナはとっくにグラスゴーだけのヴィーナではなくなっていたことを。

もしかしたらあの午後にはもう、吾輩のヴィーナはグラスゴーの仲間に別れを告げていたのかもしれない。

あの時、都市全体の工場が同時に稼働し、一斉に轟音を鳴らすと立ち上る蒸気が空を衝いた。

彼女の金色の髪は熱風になびいて、目に浮かんだ一瞬の涙を覆い隠した。彼女は笑顔で振り返って言った――

「家に着いた。」

家に着いた。だけど全てが予想した通りに進んでいるわけではない。

吾輩は怖い。帰郷が、別れになってしまうことが――

吾輩は怖いんだ……ヴィーナを失ってしまうことが。

「工場は我々を歓迎している?」

「ま、街に本当にまだ生きている人がたくさんいたんだ!!」

「お前たちはなぜ我々の邪魔をする?」

「申し訳ございません……これは公爵の命令です。彼らが結論を出すまで、模範軍はこれ以上勝手な行動はできません。」

「なぜ私にクロスボウを向ける!?」

「ついさっきまで肩を並べて戦っていたのではないのか?」

「……私たちはどうしたらいい。街の者たちが……デモを行っている?」

ロンディニウム

1098年9月28日 p.m. 5:27

都市が怒っている。

モーガン

ヴィーナ、吾輩たちを阻んでいた連合軍部隊が……撤退してる?

インドラ

どうして急に工場が全部稼働し出したんだ? 情報じゃ、サルカズが一時的に都市内に戒厳令を敷いてたんじゃなかったのか!?

ダグザ

……これらの工場は覚えている。あの場所は、死んでも忘れられない。

あそこは、ヨーク街の「マイルズ工業」だ! あっちは、スコット街の「コッポラ食品工場」! それとあそこ!

「コンソリデーティッド」、「ハンキンズ」、「サウスウィッカー運輸」……

(咽び泣く)ヴィーナ、わ、私はてっきりこれらの工場は……

寂れたもの、廃棄されたもの、サルカズに徴用されたもの、それと戦々恐々と稼働しているもの。

都市全体の工場はほぼ同時に全力で稼働し、城壁外の戦場から慌ただしく都市内へと撤退するサルカズたちはそれを顧みる暇もなかった。

噴き出した蒸気は鋼鉄の機械の鼻息だ。工場が怒り、吼えている。

モーガン

これは……何が起きてるの?

ヴィーナ

彼らが私たちを助けてくれている。ロンディニウムが私たちを助けてくれている。

連合軍兵士

ぐずぐずせずに、前へと進んでください。模範軍の各位、全てを終わらせる時です。

連合軍第六縦隊第十歩兵団中尉ダイアン・ウェーバーが命ずる。小隊員は全員武器を下ろし、模範軍を護送せよ!

ヴィーナ

公爵たちの命令に逆らうのか?

ダイアン

小官は兵士ですが、この地で生まれたロンディニウム人であります……ここは私の家でもあるのです。

これ以上の話は無用であります。参りましょう。シージ、どうか踏みとどまってください。我々にはまだ、共に乗り越えるべき戦いがあります。

我々に属するものを取り戻すために!

最初に一つの公爵連合軍部隊がクロスボウを下ろす。すると続けてさらに多くの部隊が道を開けた。

ヴィーナ

……模範軍、引き続き前進!!

家に着いた。


キャサリン

工場を最高出力で稼働し続けるよう伝えな。サルカズどもをあと少し止めるんだ。あと少しでいい!

公爵どもは都市で生き残ってるヴィクトリア人なんて碌にいないと信じ込ませようとしている。包囲だけして静観する行為を正当化しようとしてるんだ。なら、こっちから音を出してやんなきゃね。

城壁の外の奴らに、あたしたちはまだ諦めてないってことを見せてやりな!

パーシヴァル

息がぴったりですね、キャサリンさん。うちの人間を信じてる人はみんなやり手ですよ。

ナインたちもほかの工場を再稼働させているところです。すぐに都市全体が沸き上がりますよ。

キャサリン

……フェイスト、あんたたちも帰ってきてるのかい?


ハイディ

稼働しましたか?

前衛オペレーター

はい! ドクターの手はず通り、ほかの工場も稼働が回復したぞ!

ただ、市民以外にも、俺たちを助けてくれている奴がいる……そいつらは――

レユニオンと名乗っている……


ゴドズィン公爵

……これほどに活力に満ちた様子のこの都市を見たのは、何年振りでしょうね。

先ほど通信を受け取りました。多くの連合軍部隊が率先して模範軍に道を開けたようです。

これは我々の命令ではありませんよ。今回の探りの結果に、あなたはご満足ですかな?

カスター公爵

ええ。どうやら私たちは「奇跡」というものの影響力を甘く見ていたようね。

こうなった以上は、あの件の準備を前倒しして進めるとしましょうか。


謎の傭兵

ボス、どうやら彼らのために騒ぎを起こしてやる必要はなさそうです。

あの者たちは、自分から模範軍を通しました。

???

周囲の伏兵を撤退させ、我々が奪った工場の支援に戻らせなさい。

ついでに責任者たちに伝えておいて。私が終わりと言うまで、炉の火を消さないようにと。

謎の傭兵

はっ。

???

……

おかえりなさい、ヴィーナ。

議長室

1098年12月10日 p.m. 9:28

ヴィーナ

議長室だ。

安心しろ、ウォーカーは心配いらない。議会がこの件で彼を咎めることはない。だが彼には、しばらく安全に気をつけるよう伝えておいてくれ。

我々を見張っている者たちが彼にも不利益をもたらすか分からないからな。

それと……そちらの進捗はどうだ?

……分かった。

ようやくあと少しで貴様を見つけられる……

アラデル。