幕開く者たちPV-2・戦闘前選択の余地
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リターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトン
ウルサス炎リターニアヴィクトリアカズデルシラクーザレム・ビリトンラテラーノ

名前

幕開く者たち PV-2・戦闘前

選択の余地

エイレーネ

トラック……なんて仰いました? すいません、名前が長すぎて……

ラヴィニア

「ヌオバ・ウォルシーニ貨物輸送労働者およびトラックドライバー連合互助会」です……ヴィクトリアとクルビアにある、同様の労働者組織を参考にしようと考えています。

ファミリーの脅威に抗うには、まず私たちが団結し、彼らに抗う力を持たなければなりません。

レオントゥッツォ

運送業は都市の生命線だ。これまで、シラクーザの都市はどこも、ファミリーの手でその生命線を握られていた。

俺たちはその現状を変えたいと思っている。

ヌオバ・ウォルシーニにおいては、トラックはもはやマフィアの私物にはならない。それを運転する人間と、すべての実直な市民だけのものだ。

エイレーネ

でも、どうしてあたしなんですか?

運転の腕にはそこそこ自信がありますけど……これまではソマーの小さなスーパーで仕入れのために車を走らせてただけですし……

レオントゥッツォ

ウォルシーニにおいて、どのファミリーからも賄賂を受け取ったことのない市政府職員は、両手で数えられるほどしかいないんだ。

エイレーネ

それって、どういう……

ラヴィニア

すみません、エイレーネさん。あなたとソマーさんの経歴は、内々で調査させていただきました。ですから、あの不幸な事件についても知っているのです。

思うに、スーパーに火を放ったファミリーへの憎しみだけで動いていたならば、別のファミリーの力を借りて復讐を果たすこともできたはず……

ですがあなたはそうしませんでした。

これは私の臆測にすぎませんが……ご気分を害されたら申し訳ありません。

エイレーネ

ありがとうございます……ラヴィニア裁判官。

ラヴィニア

エイレーネさん、ドライバー互助会の責任者として最適であるかは別として、あなたは善良な人だと私は信じています。

このご提案を、真剣に考えてはいただけませんか?

エイレーネ

……

1100年11月6日 p.m. 4:47

裁判官補佐

こちらでお待ちください、エイレーネさん。ラヴィニア裁判官は法廷審理中ですので、それが終わり次第いらっしゃいます。

エイレーネ

わ……わかった。急ぎじゃないから、大丈夫。

裁判官補佐

そちらの資料はラヴィニア裁判官への提出用ですか? 私からお渡ししておくこともできますが。

エイレーネ

あ、いや、いいよ! ……後で自分で渡すからさ。

エイレーネはそう言って、手中のノートをさらに強く握り締めた。

エイレーネ

なあ、ラヴィニア裁判官が今審理してる事件って、あの手の企業関係のもめ事か? そ、それとも、昨日の夜起きた交通事故に関係してることだとか?

裁判官補佐

いいえ、どちらでもありません。

正確に言うと、今行われているのは法廷審理ではないのです。裁判官は、おそらくご自身にもどうしようもないであろう訴えに耳を傾けているのですよ。

その当事者は平凡なヌオバ・ウォルシーニ市民なのですが、少し特殊な状況に置かれていまして。

エイレーネ

ヌオバ・ウォルシーニの裁判官にすら、どうしようもない事件って……どんなものなんだ? あたしも傍聴していいか?

裁判官補佐

もちろんです。それなら、傍聴席でお待ちください。


ラヴィニア

……モンテルーペ市政府へ迅速に連絡を取り、犯人逮捕の協力を仰ぎます。

加えて、この事件の管轄権をヌオバ・ウォルシーニ裁判所で持てるよう申請を出しましょう。

悲しむ市民

それで、どの程度可能性があるかは教えていただけますか?

ラヴィニア

……

管轄権を勝ち取るべく、全力を尽くします。ほかの地域で審判を開く申請自体は、この一年でも存在はしていますし――

悲しむ市民

ですが、一度も上手くいってないですよね?

ラヴィニア

……それが失敗に終わったとしても、事件を公正に審理し、犯人にしかるべき罰を受けさせるよう、モンテルーペの同僚に強く促しましょう。

悲しむ市民

公正に、って……

それでどんな結果になるかなんて、誰だってわかりますよ!

連中はどうせこう言うんです。バーで酔って先に挑発したのはうちの兄で、気の毒なファミリーの方々は正当防衛を行っただけ。それで手元が狂い、不慮の事故が起きたんだと。

ご存じの通り、そんなのはまったくのデタラメなのに!

兄はカルネヴァーレ関連の用事でモンテルーペに出張に行った時、誤って現地ファミリーの不興を買って、汚い路地裏で殴り殺されてしまったんです……

そのファミリーはすでに、裁判所の人間に食事をご馳走したと聞きました。この状況でも、ご同僚に公平公正な審理を促せると言えるんですか?

ラヴィニア

それは――

悲しむ市民

兄はいい人で、悪いことなんて一度もしたことはありません。私たちは最初の募集に応じてこの街への加入申請をして、これまで貢献してきたんです。みんな、兄のことが大好きだったのに……

ラヴィニア

本当に、遺憾に思います。

悲しむ市民

そんな言葉なんていりません。このくらい、シラクーザではよくあることでしょう?

ラヴィニア裁判官、私は復讐がしたいんです。

自分なりの……シラクーザで一番よく見る方法で。家財を売って殺し屋を雇うか、くだんのファミリーに恨みを持つ別のファミリーを頼りたいと思うんです。

ですがそうすると、ヌオバ・ウォルシーニの法律に反しますよね?

その時あなたは、私を裁きますか? 私は、ヌオバ・ウォルシーニから永久に追放されることになるでしょうか?

ラヴィニア

……『新都市管理法』に照らすなら、確かにそうなります。

悲しむ市民

ヌオバ・ウォルシーニの法律は厳格で有効なものですが、それはヌオバ・ウォルシーニの中だけのことです。

こんなの、あまりにもバカバカしいとは思いませんか?

ラヴィニア

……

残酷に聞こえるかもしれませんが、それが法律というものです。ヌオバ・ウォルシーニは極めて特殊な都市ですが、それがこの都市の持つ意味であり、現状の欠点でもあるのです。

ですが、信じてください。我々は全力であなたをお助けします。


悲しむ市民

いいえ、裁判官。兄が死んだばかりの今そんなことを言われても、とてもじゃありませんが……

わ、私は、ヌオバ・ウォルシーニ市民としての立場を捨てて、モンテルーペへ帰ろうと思います。

エイレーネ

……

どうしてこんなことに……

裁判官補佐

はぁ……どうしようもないことなのです。

ヌオバ・ウォルシーニは特殊な都市ですので、『新都市管理法』の内容も、その効力の根拠も、シラクーザの長い歴史とは矛盾しているのが現状です。

ある意味、この都市は国家のすべてと相容れません。だからこそ、ヌオバ・ウォルシーニは一歩たりとも譲歩してはならないんです。

実際、ここ一年で、こうしたケースに遭遇するのは初めてではないですし……あっ、申し訳ありません。こんな話をすべきではありませんよね。

エイレーネ

いや……話してくれてありがとう。


ソマー

エイレーネ、これは互助会にどうにかできることじゃないんだ。


ラヴィニア

ここはヌオバ・ウォルシーニです。この地の法律は、いかなる義理やよしみにも左右されることはありません。


エイレーネ

……

悲しむ男は一言も発さず、二人の横を通り過ぎていった。エイレーネは彼の顔から何の表情も読み取ることはできなかった。

裁判官補佐

ラヴィニア裁判官は事件関係の文書を処理されていますので、声をかけてきましょう。エイレーネさんはここでお待ちください。

エイレーネ

……


ラヴィニア

……

裁判官補佐

ラヴィニア裁判官、大丈夫ですか?

ラヴィニア

大丈夫よ。それより、エイレーネさんはどうしたの? ずっと待ってくれているという話じゃなかった?

裁判官補佐

あら? 先ほどまでここにいたのですが。

ラヴィニア

何か言っていなかった? 逃走車両の行方がわかったとか……

裁判官補佐

いえ、何も……

ラヴィニア

……彼女の性格からして、急に手がかりに思い至って、挨拶する時間も惜しんで去っていったんでしょう。きっとまた連絡をくれるはずよ。

裁判官補佐

そういえば、先ほど警察署のほうから電話がありました。

以前捜索を依頼していた、チェルタルドさんという方の……行方が判明したそうです。


テキサスは武器を脇に置くと、部屋の窓を押し開けた。

彼女はいくらか退屈していた。


今は雨期であるはずだが、都市上空には雲などほとんど見えず、通行人は賑わいに満ち、うららかな日差しを浴びている――

その光景を前に、彼女は危うく、ここが一年前に足を踏み入れた土地と同じ場所だとはわからなくなるところだった。

去年までここはウォルシーニの一部で、降りしきる雨に覆われて、毎日尻尾を乾かすのに多くの時間を費やすような場所だった。

レオントゥッツォが病室で寝ていなければ、シラクーザは本当に良くなっているのだと信じ切っていたことだろう。

テキサス

……


テキサス

ボス、レコードまでスーツケースに入れたら、傷ついてしまわないか?

エンペラー

仕方ねえだろ!

俺はシラクーザのわざとらしくゆったりしたジャズが嫌いなんだ。エレガントに聞こえても、実際は群狼が獲物をパクつく時に尾っぽが地面を擦る音となんにも変わりゃしねえ。

カルネヴァーレ、パレード、ショー……どうせどこも音楽だらけなんだ。俺はただ、耳を辱められることなく昔馴染みに会いたいだけさ。

テキサス

昔馴染み? ボスの同胞も行くのか?

エンペラー

昔はよく連れ立って行ったもんだが。こんだけ経って、シラクーザ人がまたこういうテーマパーティーを開くと聞きゃあ、あいつらもきっと騒ぎに行くだろうよ。

おいおい、テキサス! 口では興味ないとか言っといて、俺より荷造りが早いじゃねえか!

テキサス

そもそも特に持っていくものがないからな。

それに長居もしないつもりだ。事が片づいたら帰るぞ。

エンペラー

今度も何かが起こるって確信してるような言い方だな。

だがマジな話、ザーロはゲームに負けたんだから、お前らの取引ももう無効だろ……

お前とシラクーザと、それからあの昔馴染みどもの間には、俺からすりゃまるで興味の持てねえしがらみがあるのは確かだが、解決すべきことは全部解決したはずだ。

「最後のテキサス」の物語は幕を下ろした。それにお前はシラクーザへの期待を抱いてるわけでもねえ。そんなら、あの場所が良くなろうと悪くなろうと、お前にゃ関係ねえことだろ?

テキサス

……

エンペラー

言いたくねえのか? それとも、なんて言っていいかわからねえのか?

まあいい。俺は龍門で留守番してても構わねえとは言ったからな。


テキサス

……

テキサスは窓を閉め、コートの内ポケットから封筒を二枚取り出した。

一枚目はヌオバ・ウォルシーニのシティホールからの招待状だ。裁判所の公印と市長代理レオントゥッツォのサインがついている。

もう一枚は紫色の空の封筒で、隅には白い狼と、ブドウが無造作に描かれていた。

テキサス

……ラップランド。


エイレーネは逃げるように裁判所を去った。

たった今何が起き、自分が何を経験し、そしてどうあがいたのかを顧みる勇気は微塵もなかった。

一台のタクシーが彼女の前で止まる。エイレーネには、自分が手を上げたかどうかも定かではなかった。


悠然と話すドライバー

どちらまで?

エイレーネ

トラックの野営地に……

悠然と話すドライバー

へえ、聞いたことない場所だ。

エイレーネ

トリノ区、アリト大通り500番。

一番外側の区画だよ。ここからはだいぶ距離があるから、あそこまで客を乗せたことがないのもうなずける。


悠然と話すドライバー

お客さん、何をやってもうまくいかない一日だったんじゃない?

エイレーネ

まあね……

悠然と話すドライバー

可哀そうにね。ボクがヌオバ・ウォルシーニに来てから見た中で、一番不機嫌そうなお客さんだよ、キミは。

どうしてそんなに落ち込んでるの? あと数日でカルネヴァーレのパレードだよ。みんなこの新都市と新しい人生にウキウキしてる頃じゃないのかな?

エイレーネ

……

悠然と話すドライバー

話は変わるけど、ボクはこの場所がたまらなく好きでね。

賑やかに飾り付けられた通りに、素晴らしいパーティー、おいしい食べ物も色々揃ってるでしょ。ファミリーの連中はいないし、雨もめったに降らないから、空気も尻尾もカラッとして気持ちいい。

エイレーネ

静かにしてくれないか、運転手さん。今はおしゃべりする気分じゃないんだ。

悠然と話すドライバー

そんなこと言わずにさ。一体何を悩んでるの? 話してみなよ、ボクだって何か力になれるかも。

エイレーネ

……

あたしは間違ったことをしたんだ。いや、正しいことをし損ねたって言うべきかな。あるいは、信じるべきでない人を信じてしまったというか……とにかく、他人の信頼を裏切ったんだよ。

はぁ、やっぱり話すのはやめとく。あたしの抱えてる問題は……解決しようがないものだし。

悠然と話すドライバー

何言ってるのさ、シラクーザに解決できない問題なんてないよ。

ほどけない紐はナイフで切ればいいし、開かないアタッシェケースはハンマーで壊せばいい。どんな問題もそういうものだよ。

大抵の場合は考え方を変えて、ほんの少しの勇気を持つだけでいいんだ。そうすれば、どんな問題もあっという間に解決さ。

エイレーネ

あんたにはそういう経験があるの?

悠然と話すドライバー

キミが思うよりずっとたくさんあるよ。

何せタクシードライバーになる前は、一番の大親友の厄介ごとを片付けてあげるのが主な仕事だったからね。

ふふっ、その人はとんでもないトラブルメーカーで、それはもう大変だったよ。

エイレーネ

他人の厄介ごとを片付けるのが仕事だなんて、ファミリーの奴らみたいな言い方だな。

悠然と話すドライバー

それは誤解だよ。

ここは新しい場所だから、昔のやり方は通用しないってことくらいボクはよくわかってるんだ。

ほら見て、誰もが情熱と愛に溢れて見える一方で、カルネヴァーレのマスクを被ってる。とっても面白い光景だよね。

時々本気で気になっちゃうんだ。こういう人たちのマスクの下にはどんな表情が隠されてるのかなってね。

エイレーネ

何を言ってるのかわからないんだけど。

悠然と話すドライバー

簡単なことさ。他人に課せられた制約として被るマスクは息苦しいものだって話。

実のところ、キミはどうするべきかくらい知ってるはずなんだよ。答えはすぐそこにある。これ以上ないほどはっきりした答えがね。だけど、色んな理由からそれを直視するのを拒んでるだけさ。

でも、それで肩の荷が下りるとしたら……どうしてそうしないの?

エイレーネ

……悪いけど、車を停めてくれ。

運転手は素早くブレーキを踏んだ。

乗客はどういうわけか、車に乗った時から、運転手はこう指示されるのを待っていたのではないかという感覚を覚え、バックミラーの中にその明るい微笑みさえ見た。

エイレーネ

野営地へ行くのはやめだ。別の場所に行こう。


悠然と話すドライバー

仰せの通りに、親愛なるお客様。