命ある者の旅MT-2・戦闘後祈り
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ヴィクトリアレム・ビリトンラテラーノイベリア
リターニアヴィクトリアシラクーザレム・ビリトンラテラーノイベリア

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命ある者の旅 MT-2・戦闘後

祈り

保育士

この食事には、どれも必要な栄養素が含まれているんです。なのでどうか……

オマケ

言ったでしょ、食べられないって。

保育士

何かご希望がありましたら、食事を取り換えることもできますが。

オマケ

*サルカズスラング*、私を偏食家だとでも思ってるの?

保育士

ではどうして……

オマケ

確かに、ここにはベッドも食事もあるし、あんたたちのリーダー……「総主教」も、私に手出しはしないと言ってた。

だけどそれでも安心できないの。

荒野にいた時は、何が命取りになるのか、この子を無事に産むために何をすべきなのかをちゃんとわかってた。

どこで狩りをして、どうやって暖を取って、洞窟の入り口をどう塞ぐか……そういうことを常に考えてれば、私もこの子も大丈夫だと思ってたのよ。

でもここじゃ……チッ。

もう出てって。食事も、口はつけてないから持って行ってよ。ここには、私よりそれを必要としてる人がいるはずでしょ。

保育士

……


保育士

あなたは……銃騎士のパトリツィオ様?

パトリツィオ

いかにも。総主教がワシをお呼びだと聞いたが?

保育士

総主教は中にいらっしゃいます。少々お待ちいただけますか。

新しくいらしたサルカズの妊婦さんの状態が芳しくないと耳にするなり、ご自分で様子を見に行かれて……ですが、かれこれ一時間以上も出ていらっしゃらないのです。

あまり憶測で物を言うのもとは思うのですが、種族間の憎しみゆえに、多くのサルカズは私たちの善意をなかなか理解してくれないというのもまた事実です。

総主教は護身用の武器をお持ちでないので、もしかしたら……

パトリツィオ

ワシが様子を見てこよう。


銃騎士パトリツィオは数十年にわたりラテラーノに尽くしている。それゆえに彼は、数え切れぬほどのサルカズに赦しを、あるいは死を与えてきた。

当然、サルカズの口から怒りに満ちた呪詛や、苦しみの叫び声、憎しみの怒号、絶望の中で許しを乞う言葉をさえ聞いてきたが……

そんな彼も、サルカズが紡ぐ、信心深い祈りの言葉だけは聞いたことがなかった。

しかし今この場では、身ごもったサルカズの女性が聖像の前にひざまずき、両手を合わせて、まだ不慣れであろう祈りの言葉をたどたどしく唱えている。

そんな彼女の後ろで、総主教はわずかに身をかがめて、優しく共に祈りを捧げていた。彼女が言葉に詰まった時は、総主教も言葉を止めて待ち――二人は、静かで柔らかな光に包まれていた。

パトリツィオ

……

…………

総主教

人はみな安らぎと喜びを願い、苦しみと悲しみを恐れるもの。

ゆえに我らは祈るのです。種族の違いなどなく。

パトリツィオ

総主教、このサルカズは……

総主教

彼女は休む暇もない放浪の日々をようやく抜け出したところなのです。初めて訪れた安らぎの中で、長年その存在を意識することもできなかった不安が、一気に押し寄せてきたのだと思います。

彼女には、自分の心を慰める手段が必要だっただけなのですよ。

パトリツィオ

あなたが祈りをお教えになったのですか?

総主教

共にいくつか、祈りの言葉を唱えていただけです。

彼女の邪魔をしないように、場所を移してお話ししましょうか。


パトリツィオ

それで、今日ワシをお呼びになられたご用向きはなんでしょう?

総主教

元々はあなたと語らい、あなたの抱いている疑念を取り除くつもりでいました。

ですがこうしてみるに、あまり多くの言葉は必要ないように感じますね。

パトリツィオ

「疑念を取り除く」と仰いますと……? ワシは何も疑ってなどおりませんぞ。

総主教

疑念がないのか、あるいは疑うことを恐れているのか、果たしてどちらでしょうね。

ラテラーノ人であればみな、我らが恒久不変の秩序は、初めから啓示の中の災いに備えて作られたものだと知っているものです。

ですが、実際に災いが近づき、我らの秩序がより徹底的に施行されることになれば……ラテラーノの未来がどうなるかを想像できる者はいないでしょう。

パトリツィオ

想像こそつきませんが、きっと美しい光景になるとワシは信じておりますよ。

総主教

それはあなたが、あまりに多くを捧げてきたからです。共に過ごしてやれなかった孫娘や、名前も忘れた旧友、そして、あなたが秩序の守護者としてこの数年で追放してきたかつての知人たち……

ラテラーノの未来を否定すれば、あなたが捧げ、犠牲にしてきたすべてを、あなた自身を否定することになりますから。

パトリツィオ

……

総主教

ですが恐れることはありません。その未来の予兆は、今や目前に広がっているのです。

ラテラーノの信仰が、信仰を持たぬ者にも慰めをもたらせるのなら……サルカズもサンクタと共に祈りを捧げられるのなら……

我らの秩序は、必ずや万物を包み込むことでしょう。

その時になれば隔たりは消え、何かを忘却することも、ましてや避けられぬ別れが訪れることもなくなるのです。

パトリツィオ

夢のような話ですな。

総主教

我らがこれより成すことはまさに、すべての人々の立ち合いのもと夢と現実の境界を暴くことではないでしょうか?

どんなに壮大な夢も現実にすることができると、すべての人が信じれば、大地に奇跡が訪れるはずです。

そのためにも、降誕の儀式は滞りなく行われねばなりません。

パトリツィオ

全力を尽くしましょう。


モスティマ

ちょっと、画面が見えないんだけど、「聖なる取り立て屋」さん!

フィアメッタ

そんな後ろに座るからでしょうが……まあ、『オクトパス・チェーンソー』なんて娯楽映画だし、数カット見逃したところで問題ないと思うけど。

それと、映画のセリフから適当に取って変な名前で呼ぶのはやめなさい。今はプライベートなんだから、家で過ごしてる時くらいそういうので呼ばれたくないの!

レミュアン

そう? いい呼び名だと思うけど。次の任務のコードネームに採用してもいいんじゃない?

フィアメッタ

レミュアンまで……

あなたたちって、コードネームをでっちあげる時だけは息ピッタリよね。

レミュアン

ふふっ。

モスティマ

ところでレミュアン、枢機卿の仕事には慣れた? 今は忙しくしてるの?

レミュアン

そうね、車椅子に座ってた頃よりは確実に忙しくしてるわ。

モスティマ

そういえば、君の足っていつの間に完治したんだっけ。

レミュアン

あなた、私に対して無関心すぎるんじゃない? 今、とっても傷ついたわ。その角に触らせてくれなきゃ許さないから。

モスティマ

だったら、「聖なる取り立て屋」にも耳羽を触らせてくれないか聞いてみたら?

フィアメッタ

いいわよ別に、減るものじゃないし。

レミュアン

それにしても、長い間離れ離れになってた私たちが、もう一度集まれるなんてね。そのうえ、万国サミットをきっかけになんて。

フィアメッタ

まるで一晩の間に、国外にいたラテラーノ人全員が呼び戻されたみたいに感じるわ。

モスティマみたいなレガトゥスが呼ばれるのはまだわかるけど、サルゴンで重要任務に当たってた私まで、爺さんに無理やり呼び戻されるなんて!

モスティマ

……

ところで、そのお爺さんは今何してるの? 今日のパーティーはあの人の企画なんでしょ?

フィアメッタ

もうすぐ帰ってくるはずよ。

何を考えてるかは知らないけど、もうすぐ引退するから、みんながここに居るうちに重大発表をするとか言ってたわ。

???

仕事から帰ってきた時に、子供たちが騒いどる姿が見られるのはいいもんじゃな。十歳は若返ったような気分じゃわい。

フィアメッタ

それでも十分お年寄りですけどね、パトリツィオ殿。

モスティマ&フィアメッタ

銃騎士殿、おかえりなさい。

パトリツィオ

なんじゃフィア、遅れてきたのを責めとるのか?

こいつを探すのに手間取ったもんでのう。危うくオフィス中をひっくり返すところじゃったわい。

モスティマ

その包み、中身は何ですか?

パトリツィオ

まあ、開けてみい。

モスティマ

わっ! これって……守護銃?

レミュアン

かなり年季が入ってそうね。

フィアメッタ

……

パトリツィオ殿、私の勘違いでなければ……

パトリツィオ

これはワシが生まれて初めて手にした守護銃じゃ。十二の時にこいつを選んでから、銃騎士になるまで十年以上も使ってきた相棒でのう。

もうじき「銃工房」という言葉自体が、ラテラーノの歴史に刻まれた過去となることじゃろう。そうなれば、この銃は本物の骨董品になるわけじゃ。

どうかこいつを受け取ってくれ、フィア。

フィアメッタ

えっ?

パトリツィオ

記念に取っておいてもらいたいんじゃ。ワシのささやかな願いだと思って、な。

おぬしの師としても、保護者としても……何と言うべきか、ワシには後悔しておることがある。

知っての通り、ワシには昔、おぬしの他にも大事な生徒がおった。しかし、教員免許なぞ持っておらんワシは、あの子が本来歩むべき道へと進んでいくのを見届けてやれなんだ。

フィアメッタ

あなたが言っているのは、当時同僚の命を奪ったという銃騎士アウレラのことですか? それとこれとは別の話でしょう。

仮に、私があなたの言う「歩むべき道」へ進めなかったとしても、それは決して私のやり方が過激だからなんて理由ではありませんから。

パトリツィオ

わかっておるさ、ワシの頭上に浮かぶこいつがないからだと言いたいんじゃろう。

とはいえ、ワシがあの時おぬしを引き取ると決めたのは、おぬしがリーベリだったからこそなんじゃよ。

フィアメッタ

……その話は初耳です。

それで、どういった後悔を理由にそんなことを?

パトリツィオ

……はぁ。本当はおぬしに言いたくはなかったんじゃがのう。

当時のワシは、ある友情を犠牲に、気付きを得たばかりじゃった。自分はリーベリのことを、本当の意味では何一つ理解できておらなんだとな。

そしてそれは、自分が不器用すぎるせいであって、リーベリとの向き合い方を学んでいけばいいはずじゃとワシは思うておった。だからおぬしを引き取ったんじゃ。

しかし、結局はうまくやれんかった。

ワシは、常に神経をすり減らすおぬしのことが――あの事件に執着を燃やし、その怒りゆえに周囲と馴染めずにいたおぬしが気がかりではあったが……

どう教え諭してやるべきかもわからずにおった。

共感はワシらサンクタにとって相互理解の助け舟となるが、それがおぬしを締め出す壁になってしもうたんじゃろう。

フィアメッタ

ちょっとちょっと――

歳を取るとみんな、そうやって気難しい言い回しをしたがるものなのかしら?

パトリツィオ

ははっ、そうではないさ。

ワシが言いたいのは、万国サミットが終われば、すべては変わるということじゃ。

「守護銃を扱えるのはサンクタだけ」といった制限は撤廃される。法はおぬしらリーベリを聖都へ住まわせるのみならず、これまでより深く受け入れることじゃろう。

ワシらは真の意味で、同じ存在となるのじゃ。

フィアメッタ

まさか、新しい法律をいくつか制定し、一部の工房を閉鎖して、聖堂を一つ建て、放浪者を少し受け入れるだけで、そんなことが実現するというんですか?

パトリツィオ

ほれ、そういう反応をするじゃろう。

つまりおぬしは、心の奥ではレミュアンや、モスティマや……ワシらと真に理解し合いたいと思うとるということじゃ。

フィアメッタ

……

パトリツィオ

おぬしもじきに、わかるじゃろう。

その時が来れば、おぬしが望むのなら、ワシの跡を継いで本当の銃騎士になることもできよう……あるいは、元はサンクタの特権だった物事をやってみてもいい。

そして、その時には、今と同じように、おぬしの友人が皆でそれを見届けることじゃろう。

さあ、試しにこの守護銃を持ってみなさい。

レミュアン

……

モスティマ

……

フィアメッタには老人の言葉が理解しきれていなかった。二人の親友も黙ってはいるが、全員が笑顔で彼女を見つめている。

フィアメッタはその古びた守護銃を手に取った。

これまでに彼女は様々なグレネードランチャーを扱ってきたが、それでも銃身に触れた瞬間、かつてない不思議な感覚に包まれた。それはまるで、陸上動物が初めて海に触れた時のような感覚だった。

その感覚は、サンクタ同士の名状しがたい「繋がり」が彼女にも開かれたがゆえなのか、あるいはパトリツィオの言葉が彼女の心を揺さぶったからなのかは、彼女にはわからなかった。

パトリツィオ

フィアよ、ワシらは生まれこそ違っても、最後には同じ場所に行きつくものじゃ。

年寄りからすると、我が子が認められることほど嬉しいことはないんじゃよ。

フィアメッタは銃を握りしめると、その銃口を玄関に向けた。

アンドアイン

……

フィアメッタ……久しぶりだね。

フィアメッタ

レミュアン、あなたが呼んだの?

レミュアン

いいえ、来るとは思っていたけどね。

パトリツィオ

ワシが呼んだんじゃ。

本当の意味で理解し合うためには、無論禍根も解消せねばならぬからのう。


ヴァンニーニ

あの、さっきエル姉に一目で気付けなかったお詫びに……何か手伝えることはありませんか?

エクシア

まあそう慌てないでよ。

ラテラーノに関して、気になってることがあって……ほら、何しろ戻ってくるのが久々だからさ、あははっ。

ヴァンニーニ

気になっていること、ですか?

エクシア

教皇庁が銃工房の全面閉鎖を決めたのっていつのこと?

ヴァンニーニ

えーと……つい最近かと。それと同じ日に、都市内の銃工房すべてに通知書類が届いたんです。

まあ、私が物心ついた時にはもう、武装の管理は行われていましたし……それから何年も経った今、教皇庁も銃製造の方法を抜本的に変えたいと思ったんでしょう。

エクシア

そんなの変だと思わないの?

ヴァンニーニ

そう思うべきなんでしょうか?

師匠は言っていましたよ。潰れる店もあれば、新しく開く店もあるというのは普通のことだって。何しろ、何年も前からじきに工房は潰れるとかボヤいてたくらいですし。

エクシア

だけどさ――ここは銃工房なんだよ!

ヴァンニーニ

そ、それがどうかしたんですか?

エクシア

銃工房は、サンクタが自分の守護銃と「出会う」場所でしょ!

ヴァンニーニ

……

エクシア

えっ、まさかサンクタにとって守護銃がどんなに重要な物か忘れたなんて言わないよね?

ヴァンニーニ

ええと……

エル姉、それは?

エクシアは自分の守護銃の中から一丁を無造作に手に取ると、作業台の上に置いた。

そうしてすぐに、慣れた手つきでその銃を分解し始めた。マガジンから銃身、ガスチューブ、排莢口に至るまで……

エクシア

言っとくけど、あたしはテロリストでも、凄腕の傭兵でもないからね。ただ、自分の身体のことを把握してるのと同じように……自分の銃に詳しいだけ。

銃を手にしたときのことは、一つ一つ、ちゃんと覚えてるし――まあ、気付いたらちょっと増えすぎちゃってたけどね。あはは。

とはいえ、一番印象深いのはもちろん最初の一丁なんだ。この小さな銃工房に入ったあの時、父さんも母さんも姉ちゃんも一緒にいてくれて……

エクシアは淀みなく話しながらも、手元の動きを少しも止めずにいた。

エクシア

姉ちゃんが熱心に教えてくれたことには、サンクタなら皆、頭の上に光輪を持つことになるのと同じように、自分だけの守護銃を持つことになるものなんだって。

だから、守護銃を選ぶのは……友達を作るようなものなんだよ。

つまりは、「共感」を信じて、お互いの性質を擦り合わせて、心を開いてやっていかないといけないことなの。

あの頃、キミはまだ四、五歳くらいだったよね。小さすぎてまだ言葉をしゃべれないくらいだから、光輪もついてなかったし、本当に目立たなかったのを覚えてるよ。

それで、みんなが気付いた時には、キミはもうあたしの横にいて、あたしが選んだばかりのスコープを触ってた。興味津々の顔で……

ヴァンニーニ

その……

師匠は、安魂教会の花畑で私を見つけて、この工房に連れ帰ってきたって言ってました。

私は生まれつき、話すのに、その、問題があったみたいで、師匠も最初は、この子は口が利けないものと思ってたそうです。それから二、三年経ってようやく、簡単な音を発せるようになったとか……

師匠には色々迷惑をかけてきましたし、誇れるような子ではなかったと思います。あの日もなぜだか外へ飛び出してしまって、すごく不安で、泣きそうで……

エクシア

手を置いてみて、ヴァニー。あの時みたいに。

ヴァンニーニ

えっ?

少しためらいながらも、ヴァンニーニは手を置いた。

エクシア

パーツを全部選び終えて、パガ先生に組み立ててもらって、それを握りしめた瞬間、あたしの頭の中には色んなことが思い浮かんできたんだ……

家族を守ることも、この先たくさん友達を作ることも、卒業式の時にラテラーノで一番クールに決めることも……あたしならできるって、守護銃が教えてくれてさ。

あの時、キミも感じたはずだよね?

ヴァンニーニ

……

エクシア

キミがさっき言ってたことは、あたしの記憶とは全然違ってる。

あたしが覚えてるのは、知らない女の子と一緒に守護銃を選んで、代わりばんこでスコープを覗きながら向かいの羽獣を観察したり、銃身を三本組み合わせて伝声管を作ったりしたことだけ……

その子は喋れなかったけど、一緒にパーツをいじった時に、気持ちは全部伝わってきたんだ! だから、最後にその子が目を赤くしてた時も、それは喜んでくれてるからだってわかってた。

これは二人だけの秘密だから、キミをいじめて泣かせたんじゃないかって姉ちゃんから聞かれたときにも何も言わずにおいたんだよ。

あたしにとってあれは、親友が二人同時にできた日だったんだ!

エクシアは、知らぬ間に完璧に組み立て直した手元の銃を軽く振って見せ、若き銃器職人見習いに向けて微笑んだ。

ヴァンニーニはじっと彼女を見つめていた。エクシアの顔に終始浮かんでいたのは――自信と誇りだということが、ヴァンニーニにははっきりと伝わっていた。

だが、ヴァンニーニにはその自信と誇りが何に由来するものかがよくわからなかった。それはまるで、「あたしはサンクタだからこれが当然」というだけのことのように見えたのだ。


エクシア

どう、ヴァニー?

当時の状況をなぞってみたんだけど……まだ何も思い出せない?

ヴァンニーニ

はい、何も……ごめんなさい。

でも、でも私は、エル姉を信じてます。

エクシア

そっか……ってマジ?

ヴァンニーニ

私、師匠がこの工房を畳むって言った時、すごく悲しくて。

最初は、ずっとここで師匠と一緒に過ごしてきたから、名残惜しいだけかと思ってたんですが……

エル姉が話してくれた、守護銃がもたらす繋がりを信じることにしたんです。……でも、それってつまり、聖都で何か、私には理解できないことが起きてるってことですよね。

エクシア

そういうこと!

ヴァンニーニ

それじゃ、何かお手伝いできることはありますか?

エクシア

あたし、街中を揺るがすような大爆発を起こしたいんだよね。これだけ銃工房で過ごしてきたキミなら、きっと何かいい方法を知ってるでしょ?


パトリツィオ

フィアは大丈夫か?

レミュアン

ええ、モスティマがついていますから。

フィアメッタの性格はよくご存知でしょう。誰かを許すことは、あの子にとってはそう簡単なことではないんです。

パトリツィオ

アンドアインはどうした?

レミュアン

もう帰りました。

パトリツィオ

しかしレミュアン、怒るべきなのはおぬしのほうじゃろう。当時傷つけられたのはおぬしなのじゃからな。

レミュアン

それを否定した覚えはありませんよ。

ですが、どんな感情も時が経てば変わるものです。

私が昏睡状態になっていた五年の間、アンドアインは移動修道院で刑に服しながら、修道院と共にこの大地の様々な場所へ赴いては、散り散りになった同胞を救い、罪を償ってきました……

そしてついには、ラテラーノへ戻り、ごく普通の保育士としてこの国にもう一度溶け込むことを選んだんです。

今のラテラーノには彼が必要ですし、私も彼にチャンスをあげたいと思っています。

パトリツィオ

おぬしがそう思ってくれるのは何よりじゃが……時に、ワシに何の用じゃ?

レミュアン

フィアメッタのことで少し。ご存知の通り、あの子は昔学校で、銃器関連の課程を一通り自発的に学んでいました。

毎朝一番に教室に来て、射撃場を最後に出るのもいつもあの子。ですから、フィアメッタの銃への愛を疑う人はいませんでした……結局、銃の扱いは身に着きませんでしたけどね。

ですが先ほど、あなたが守護銃を彼女に手渡して、話をしていた時の、彼女の目……

あれが疑念か失望かはわかりませんが、純粋な喜びでなかったことは確かだと思います。

パトリツィオ

そうか……てっきり、喜んでくれとると思ったんじゃがな。少なくとも、アンドアインが入ってくるまでは。

結局ワシには、あの子の気持ちはわからんということか……

レミュアン

先ほど仰ったことを唐突に感じたのは、フィアメッタだけではありません。私もそうでしたから。

あなたは、「守護銃を扱えるのはサンクタだけ」といった制限は撤廃されると仰いましたよね。

ですが、長年にわたる武装管理の取り組みは、今まさに重要局面に差し掛かったところです。

パトリツィオ

要するに、両者が矛盾しているということか?

レミュアン

お伺いしたいのですが、もしやあなたは、より深い啓示をお受けになられたのでは?

我々の武装管理には、思っていた以上の目的が与えられたのではないでしょうか?

パトリツィオ

武装管理の目的は元より変わらん。将来的に、誰もがより効率的にかつ広範囲で銃器を扱えるようにすることじゃ。

銃工房には長い歴史があるが、同時に多くの欠陥も存在する。これまでは職人も客も、それぞれの銃を唯一無二のものにするために、あまりに多くの余計な労力を注ぎこんできた。

ゆえに、ミカエレオン区の製銃聖堂が正式に稼働して初めて、ラテラーノは必要な時に、あらゆる国と種族に武装支援を提供できるだけの資本を持ったと言えるのじゃ。

レミュアン

目的が変わっていないのなら、なぜ今回の変化はこうも唐突で……不自然なようにさえ感じられるのでしょうか?

パトリツィオ

それは、我々が皆、未来を思い描くのは不得手であるせいかもしれんのう。

といっても、先ほどのおぬしの推測通り、総主教が未来にまつわる更なる啓示をワシに与えてくださったのは事実じゃ。間もなく、降誕の儀式の場で、誰もが同じ啓示を授かることじゃろう。

その時には、おぬしもフィアも、ラテラーノ内外の無数の人々も、皆未来が如何様なものになるかを理解することになる。

勘の鋭いおぬしなら、きっとわかっておるじゃろう。ワシらにとって目下の最優先事項は、降誕の儀式を無事に成功させることであるとな。

レミュアン

……

このような時期に爆破を企てた例の容疑者については、引き続き調査を続行します。


アンドアイン

……


フィアメッタ

出て行って。

あなたの顔は見たくない。


アンドアイン

……

結局、パーティーは気まずい雰囲気のまま終わった。

パトリツィオの招待を受けた彼は、考えた末に、出席を決めた。

何が起こるかは予想がついていたが、新たなラテラーノが訪れようとしている今、言葉にできない、あるいはしたくない決意に突き動かされて、彼は旧友に会いにいこうと決めたのだ。

新たなラテラーノが訪れた時、「過去」はどうなるのだろうか?

彼はそれを確かめたかっただけのことだった。

風に運ばれてきた雲が街角に小さな影を落とし、アンドアインは眉をひそめた。

数歩進んだところで、彼はふと足を止め、告解ロボットの行く手を遮った。

自律式告解ロボット

……

自律式告解ロボット、コード「CONFESS-47」です。告解をご希望の場合、クレジットを入れるまたは利用者カードをスキャンしてください。

アンドアイン

……

すまない、別の用事を思い出した。

……

君たちだったのか。

保育士A

ええと、どうかなさいましたか? 誰かに追われているのですか?

先ほど告解ロボットをお止めになったのは、周囲を確かめるためでしたか……巡衛に連絡しましょうか?

アンドアイン

いや、いい。ただの思い過ごしかもしれないからね。

ところで、君たちはわざわざ私を探しに来てくれたのかい?

保育士B

総主教が育児聖堂に戻られましたので。

保育士A

お迎えに上がりました、アンドアイン先輩。

アンドアイン

……

???

……


アモス

レミュアン枢機卿、おかえりなさい。

こちらがファボール区にある五つの銃工房の接収書類です。工房長のパガニーニさんのサインもいただいてあります。

レミュアン

ご苦労様。後のことは公証人役場に任せておけば大丈夫よ。

アモス

わかりました。ところで、ボルゴス通りの銃工房について、少しお耳に入れたいことがあるのですが……

工房長のパガニーニさんにはお弟子さんがおられるのですが、もうすぐ資格試験を受けて、正式に製銃士になる予定だったそうです。工房の閉鎖に伴って、教皇庁から何らかの補償を行うべきかと。

確かヴァンニーニという名前だったと思います。帰る時、偶然すれ違ったんですが……炎のような赤い髪に、笑顔を浮かべた、とても明るい印象の女の子でした。

レミュアン

……

ボルゴス通りか、懐かしいわね……

アモス補佐官、端末の資料を確認して。

ヴァンニーニの容姿はあなたの言うようなものではないわよね。

アモス

あれっ――その……

レミュアン

まあいいわ、単なる通行人でしょう。その女の子は、炎のような赤い髪のサンクタだって言ったわよね?

アモス

はい。フードを被ってはいましたが、向かいから歩いてきたので、はっきり見ましたよ。

レミュアン

(もしかしてエル……!?)

(……一体どうして?)