聖山降臨1101OS-4・戦闘前同じ茎より出でるもの
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カジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ
ウルサスカジミエーシュクルビアリターニアヴィクトリアイェラグ

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聖山降臨1101 OS-4・戦闘前

同じ茎より出でるもの

ラタトス

ああもう、うるさいな! 今日はこれ以上邪魔するなって言っただろ?

一体誰が――

スキウース

……お姉様。

ラタトス

あんた、なんで……

とにかく、座りな。どうした、眠れないのかい?

ユカタンの奴は何をやってんだか。目を離すなって言ったのに――

スキウース

違うの。

彼女は首を横に振った。

スキウース

そうじゃなくて、あたしがユカタンについてくるなって言ったの。

二人きりで話したかったから。

ラタトス

……

ラタトスは、この素直で明るい妹の顔に、こんな表情が浮かぶさまを見ることになろうとは思ってもいなかった。

ラタトス

わかったよ、でも少しだけだからね。終わったら大人しく寝るんだよ。

まったく……もう母親になったってのに、あんたと来たら子供みたいだね。

スキウース

あのね、今日、アークトスがホールで叫んでる声が聞こえたんだけど……

ラタトス

やっぱり起こしちまったかい? クソッ、後で借りを返させないとね。

スキウース

そ……そうじゃなくて。

二人が何で言い争ってたのか聞こえちゃったのよ。それに、最近はイェラグで色々と良くないことが起きてることも知ってるし……

お姉様、お願い。何か知ってるなら、どうか、どうか教えてちょうだい。

ラタトス

我らのイェラガンドに……

スキウース、今はそんなこと気にしなくていいんだよ。

そのうちあんたがこの大役を引き継いだら、悩む機会なんていくらでもあるんだから、安心しな。

スキウース

でも、最近は次から次に事件が起きてるでしょ。部屋に閉じこもってるあたしでも、事態がどんどん悪化していくのを感じるもの。

毎日毎日、窓の外を見れば、険しい顔をした人が歩いてるのが目に入るし、メンヒもいまだに連絡一つ寄こさないし……

ラタトス

あの子の行方なら、今も探させてるよ……きっと大丈夫さ、あの子は今じゃブラウンテイル家でも指折りの戦士なんだから。

スキウース

わかってる……

それに、今はお姉様のほうが心配だわ。

ラタトス

……

スキウース

これまでだって、あたしは大して力になれなかったけど、少なくともそばにいて、支えてあげることはできたでしょ。

それに比べて今は、お姉様一人で全部片付けないといけないから……やっぱりもっと色々話してほしいの。

あまり一人で気負わないでよ。あたしもユカタンも、いつだって力になるから。

ラタトス

……考えすぎだよ、おバカさん。それとも何かい、私が当主じゃ力不足だし、さっさと跡を継ぎたいとか思ってるのかい?

スキウース

そういうわけじゃ――

ラタトス

約束するよ、スキウース。

あんたも、ユカタンも、ブラウンテイル家も、私が守る。

この命に代えても、必ずね。

イェラガンドに誓って、この約束は決して違えやしない。

スキウース

……

ラタトス

どうだい、私を信じられなくても、イェラガンドは信じられるだろう?

スキウース

そんな大げさな言い方しなくてもよかったのに。

ラタトス

はは……じゃあ今すぐ休むって約束しな。

大丈夫、明日はきっと今日よりいい日になるさ。


ヴィクトリア大使

お招きいただき光栄です、敬愛なるブラウンテイルさん。

今私を呼び出してくださったということは、お考えが変わられたのでしょうか?

ラタトス

無駄話はよしな。

シルバーアッシュ家とペイルロッシュ家の人間を襲撃して、三家の関係を引き裂くっていうのが、私に協力を余儀なくさせるための作戦だっていうのかい?

ハッ、ヴィクトリアの政治家ならもう少し賢い手段を取ると思ってたけどね。

男は肯定も否定もせず、ただ笑った。

ヴィクトリア大使

なぜそうお考えになるのやら、わかりませんな。

他国の領内で指導者を襲撃するなど、明らかな宣戦布告です……それが立証されればの話ですがね。

よもや本当に、ヴィクトリアをそのような形で告発なさるおつもりですか?

ラタトス

……だからあんたらは恐れ知らずに振る舞ってるってわけか。

ヴィクトリア大使

失礼ながら、やはり何のことやら。

ですが、こうしてお時間をいただけたからには、喜んで伺いたいと思います――何か私にお手伝いできることはございますか?

ラタトス

……ふん、あんたらの粗末な企みが結果的に目的を果たしたんだから、さぞいい気になってんだろうね。実際、ペイルロッシュとブラウンテイルの関係は崩れ、私は周囲から疑いの目を向けられてる。

エンシオディスに関しては……三家に平穏を取り戻す、なんて言ってたが、あれはその場しのぎで、アークトスのバカを騙すためのことだろうよ。

あいつは今のイェラグの現状から見て、どこかの当主が「事故」で命を落としたら、誰かが少し焚き付けるだけで、最後の希望を失った領民たちが散り散りになるだろうことをわかってる。

私たちが会っていることをあいつに知られたら、たとえ私が何の約束もしてないことを理解していようと、あいつは躊躇いなく、ペイルロッシュと共に私に刃を向けるだろう。

なんせ今のイェラグには、すべての罪を背負う「罪人」が切実に必要だからね。

奴の手腕を鑑みるに、最悪の場合、ブラウンテイル家は永久にイェラグから追放されることになる。

……私には時間がないんだ。

ヴィクトリア大使

あなたの境遇には同情いたします。私としても、その状況分析は正しいものだと思いますよ。

それで、この局面を打破するおつもりはありますか?

ラタトス

……

御託を並べるのは終わりにしようか。

まずは、絶対的な約束をしてもらいたい。どんな状況でも、ブラウンテイル家と領民たちの安全を優先的に保証すると。

ヴィクトリア大使

無論そのように。我々はもとより、シルバーアッシュ家によって追いやられている一般の方々に同情を覚えておりますし、それこそがイェラグとの和平協定推進を考えた理由の一つでもありますので。

ラタトス

チッ……何とでも言いな。

それで、今後ブラウンテイル家がカランド貿易に代わりヴィクトリアとの協力関係を築くことになっても、今ある貿易政策に変更は加えさせないし、イェラグへの援助は続けてもらうよ。

この条件が守れないなら、私たちはいつでもこの協力を取りやめる――そんな事態は、あんたらも望まないだろう。

ヴィクトリア大使

それは心配のしすぎと言うものです。イェラグとの和平協定は願ってもないことですし、それを自ら壊すような真似はいたしません。

あなたがイェラグにおいて唯一の代表者となられた暁には、より多くの場面で協力していけることでしょう。

ラタトス

いいだろう……

だが、カランド貿易に取って代わろうなんて一朝一夕でできることじゃない。お互い準備が必要だろう……目下の急務としては、アークトスをどうにかしないとならないね。

あいつのことだ、ブラウンテイル家がヴィクトリアと手を組んでいると知ったら、必ず手を出してくるだろう。

ある意味、エンシオディスより厄介だよ……あのバカは!

ヴィクトリア大使

何ともお気の毒ですね。

でしたら、あなたがお決めください。そのアークトス氏を如何にして取り込めばよいかを。

ラタトス

……

私がもう一度アークトスに会って、最後にきちんと「話し合い」をしてみるよ。

ヴィクトリア大使

……ほう?

ラタトス

領地南西の山の麓に、ブラウンテイル家の所有する古い屋敷が一軒残ってるんだが、その近くにはほとんど誰も住んでなくてね。

真相を話すから、明日そこで落ち合おうと、アークトスに伝えておくことにしよう。

時刻は夜七時――つまり、十五時間後だ。

期待してるよ……ヴィクトリアが誠意を証明してくれることをね。

ヴィクトリア大使

ええ、必ずご期待にお応えしましょう。

我々も、あなたがペイルロッシュ家を無事に「説得」してくださることを心より願っておりますよ。


山風が雪と混ざり合い、軒先の藁をざわめかせる。

風で舞い上がった数枚の脆い枯れ葉が、屋根に腰かけた少女の髪に舞い落ちた。彼女はそれをつまむと、指でそっと擦る。

裂雲獣が少女の肩から顔をのぞかせて、彼女の赤らんだ頬をつついた。

ジョアンナ

あっ、裂雲獣……

あたしは、ちょっとここで一息ついてただけだから、お前までこんな寒いところに出てこなくていいんだぞ。

白く小さな生き物は、「ゴロゴロ」と喉を鳴らした。それはこれまでジョアンナと共に、無数の辛い日々を過ごしてきていた。

ジョアンナ

ありがとな。

あたし……巫女様とどう向き合えばいいか、わからなくてさ。

あの人はイェラガンドの代行者であって、本来は敬うべき人だと思うけど――

でも、なんであんなことが起きたんだろう? どうしてうちの家族が罰を受けなきゃいけないの……?

少女は裂雲獣を抱きしめると、細雪が髪を真っ白に染め上げるまで屋根の上に静かに座り続けていた。


木の小屋の裏庭に通じる扉が開かれた。

雪上に新しく淡い足跡を残して、エンヤは左へ進んでいき、そこで乱雑に置かれた三丁のクロスボウを見つけると、そのうちの一丁を拾い上げ、しげしげと眺めた。

それはジョアンナが使っているものより一回り小さく見えた。

その場から前方を眺めれば、そう遠くない場所に三つの的が置かれており、何本かの矢が回収されないまま残されていた。

エンヤ

この小さな武器……持ち主は幼い子のようだけど、もう訓練をしているなんて。

持ち手に名前が彫ってあるわね……弟さんか妹さんのものかしら?

その時、庭の反対側に積まれた雑多な物がエンヤの目を引いた。その空き地にはいくつもの彫像が無造作に置かれていたが、彼女はその中に、見慣れた顔が彫られたものを一目で見つけたのだ。

そして、エンヤはその中でも一番大きなものへと歩み寄り、それを持ち上げた。明らかに熟練の職人の作であるそのイェラガンドは、エンヤをまっすぐに見据え、穏やかな微笑みを浮かべていた。

エンヤ

これは……銀心湖に建てた彫像にそっくりだわ。

皆の心の中のあなたも、こういう顔をしているんですね。

彼女の足元には、それとは少し趣の異なる作品も落ちており、エンヤはそれを手に取った。

その像は少し細身で、やや粗く彫られた顔は削れすぎていて、どこか意地悪そうにすら見える。恐らくは、製作者が顔の部分を彫る際に力を入れすぎたのだろう。


ヤエル

やっぱりおかしいわよね。イェラガンドには全然似てないわ!

せめて顔をもう少し細くして、スタイルも……

ねえ巫女様、あなたの侍女のささやかなお願いを聞き入れてくださらない?

エンヤ、ねぇエンヤってば~。


エンヤ

これでわかってくれましたか? 輪郭は少し丸いくらいが素敵に見えるんですよ。

……

それから、大小二つの彫像は、丁寧に元の場所へと戻された。

荒れ果てた見知らぬ庭で、エンヤは両手を合わせる。蔓珠院の長老たちが、イェラガンドの彫像へ向けて恭しくそうするように。

彼女は具体的な願いを口にすることなく、ただ奇跡が降臨することを望んでいた。


エンヤ

……

日が沈んでも、小さな猟師は一人で庭に座り続けていた。

彼女はエンヤの姿を見るなり、慌てて立ち上がり、一礼しようとした。しかし、エンヤは少女の腕をぎゅっと掴んだ。

ジョアンナ

……巫女様。

エンヤ

そんなことはせずとも良いのですよ。この周りには誰もいないのですから、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。

それと、私のことはエンヤと呼んでください。

ジョアンナ

……わかりました。

そう言うと、少女は再びそっぽを向いて、口を閉じてしまった。

エンヤ

ところで……庭にイェラガンドの彫像がたくさん置かれていましたが、あれはあなた方の作ったものですか?

ジョアンナ

(黙ってうなずく)

エンヤ

では、形がそれぞれ少しずつ違っていたのは、皆さんが古書に記されたイェラガンドのイメージを、それぞれ異なる形で解釈されていたからでしょうか?

ジョアンナ

……

よくできてるのが父ちゃんの彫ったやつで、そうじゃないのはあたしが彫ったやつだから……

エンヤ

ふふっ――

あっ、ごめんなさい……! ええと、お聞きしたいのですが、なぜあんなにたくさん彫像を作っていたのですか?

ジョアンナ

……うちはその昔、ペイルロッシュ家から離れて、イェラガンドのお導きに従い雪山に入っていった家系なんです。それからは、代々ずっと猟師をやってきました。

山にいる命は全部イェラガンドの魂を分かち合うもので、あたしたちはその一部としてここの循環の中にいて、生き続けていく……そんなふうに信じて。

だからみんなイェラガンドの恵みに感謝していて、家族の誰もが、一人で狩りができるようになったら、イェラガンド像の作り方を学び始めるんです。

それから、主の印を刻んだ毛皮の服や、骨の彫り物や、飾りなんかの作り方も。

エンヤ

「狩人に幸多かれ。これより述べる言の葉を聞け。」

「風が吹き、草が伏せるは主の啓示ならずや。生きとし生ける獣は皆、主の化身ならずや。」

「生滅の循環は、水が凍り、また氷が融けるが如く、始も終もなきものなり。」

「ただ汝のみに、イェラガンドの知と愛を説かん。」

ジョアンナ

「奇しき兆しに頼らず、ただ雪山を求めよ。」……ええと、それから――

エンヤ

「さすればこそ、主との契りを得られん。」

ジョアンナ

そう、それです……この一節だけ、『イェラガンド』の他の部分とは違ってるから、いつも忘れちゃって。

エンヤ

経典の細部にこだわる必要はないのですよ。それよりもイェラガンドが我々の言葉を聞き、行いをご覧になっているということを、常に心に留め置くことが大切なのです。

難しい言葉をスムーズに暗唱できずとも、あなたは懸命に生きているでしょう。その狩りも、彫刻も、いずれも主の教えに従った行いです。

巫女である私自身、ジョアンナさんに出会わなければ、この一節の意味を真に理解することは一生なかったかもしれません。

あなたは私が今まで出会った中で最も敬虔な信徒の一人です。イェラガンドはきっと、あなたたち一家に幸福をもたらしてくださいますよ。

ジョアンナ

……

本当ですか?

エンヤ

ええ。主に選ばれた巫女たる私が言うのですから、間違いありません。どれほど困難な状況にあろうとも、主は我々が最も救いの手を欲している時に、姿を現してくださるはずですよ。

ジョアンナ

……

うぅ――

これまで強がり続けていた少女の幼い頬を、二筋の涙が伝って、二人の足元に落ちた。

エンヤ

ジョアンナさん? 何があったのですか? 話してもらえますか?

ジョアンナ

あ、あたし――

エンヤはジョアンナの震える両手を強く握った。

ジョアンナ

あたし、狩りができるようになったばかりの頃に、源石に感染した獣に噛まれて……鉱石病になっちゃって……

それから、あたしの病気の治療のために……父ちゃんは毎日狩りが終わったら、家に戻って急いで彫像を彫って、それを町で薬と交換してくれてたんです……そんなふうにして、何年も……

それで、一昨日、父ちゃんの友達から聞いたんですけど……天災があった日、父ちゃんは……駅にいたみたいで……

もし、あたしが――

うっ……うあぁっ……

エンヤ

ジョアンナさん……

ジョアンナ

イェラガンドは、どうして……


少女は悲しみに暮れてその場に崩れ落ち、膝を抱えて身を丸めた。

エンヤはそばにしゃがみこみ、懸命に慰めの言葉を探したが、経典の文言をいくら思い返そうとかけるべき言葉は見当たらない。結局彼女はわずかに躊躇いながら手を差し出し、少女の背中を撫でた。

彼女の喉は締め付けられるようで、声が出なかった。永遠なるイェラガンドすらも沈黙するというのなら、その巫女に何ができるというのだろうか?

ヤエル、聞いていますか……


その時、窓辺の裂雲獣が何かを見つけたかのように、出せる限り大きな声で「グルルル」と鳴くと、あっという間にジョアンナのフードの中へと戻っていった。

ジョアンナは鼻をすすり、手のひらで頬の涙を慌ただしく拭った。

ジョアンナ

……誰か庭先に来てるみたいです。ちょっと行ってきますね。

通りすがりの老人

お嬢ちゃんや……

すまんのう、お尋ねしたいんだが、一番近い町にはどう行けばいいのかね?

ジョアンナ

道に迷っちゃったんですか……? ええと、あそこの灯りは見えますか? この道沿いにまっすぐ山を下って、分かれ道に出たらあの灯りに向かっていけば――

通りすがりの老人

はぁ……こんなに暗いと、わしの目ではよく見えなくてなあ。

ジョアンナ

じゃあ、あたしが送って――ううん……今は離れられないよね。

よかったら、うちに一晩泊まっていきませんか? それで朝になってから山を下りたほうがいいと思います。

通りすがりの老人

いやいや、そこまで迷惑はかけられんしな。自分で何とか下りてみるよ。

エンヤ

どうしたのですか?

ジョアンナ

何でもありません。道に迷ったおじいさんが来ただけでしたから。

エンヤ

ここは町から随分離れた場所ですが、普段から人が通るのですか?

ジョアンナ

この辺りにはうちの家族しか住んでませんから、いつもはほとんど誰も通りませんね。巫女様が初めてってくらいで……

エンヤ

……

――危ない!